第六章 運命を変える坑道
炭鉱主を屈服させたことで、田川の街にはようやく平穏が訪れた。
だが、僕には知っている未来があった。
――筑豊炭田の衰退。
昭和30年代、石炭から石油への転換で炭鉱は次々に閉山し、街は急速に寂れていく。
さらに、その過程で多くの大規模事故が起き、人命が奪われる。
(……このままじゃ、せっかくの勝利も無駄になる。未来を変えないと!)
◆◆◆
その最初の兆候は、坑道の奥で現れた。
壁のひび割れ、異常な熱気、硫黄のような臭い――。
【坑道鑑定 Lv.2】
危険:ガス爆発の可能性 90%
時間予測:12時間以内
(……来たか。これが歴史で起きた“田川第三鉱ガス爆発事故”の兆候だ)
普通なら、労働者の訴えを無視して掘り続け、事故が起こる。
だが僕は迷わなかった。
「全員退避だ! 今すぐだ!」
「な、なに言ってる!? まだ掘れる炭層だぞ!」
「いいから信じろ! ここは死ぬぞ!」
怒鳴り声に押されて坑道から人々が避難する。
その数時間後――坑道は轟音と共に吹き飛んだ。
もしあのまま作業を続けていれば、数百人が命を落としていたはずだった。
◆◆◆
街は震撼した。
「若旦那が命を救った」と炭鉱夫たちが口々に叫ぶ。
大仁会の博徒すら「……仁義の神がついとる」と頭を垂れる。
そして僕は決めた。
「これから起こる事故も、全部止める。炭鉱を“地獄”から“希望”に変える!」
◆◆◆
それからの僕は奔走した。
•アイテムボックスで酸素マスクや工具を常備
•スキル【坑道鑑定】でガス溜まり・地盤崩落を事前に察知
•大仁会の人員を「坑道警備隊」として組織し、安全管理を徹底
次々と事故が未然に防がれるたび、炭鉱街の評判は全国に広まっていった。
「田川には“事故が起きない炭鉱”があるらしいぞ」
「奇跡の街や……」
◆◆◆
だが、その噂はやがて国の耳に届く。
通産省の役人たちが視察に訪れ、こう告げた。
「……君は何者だ? なぜ事故を防げる?」
「ただの炭鉱夫ですよ。でも、街を守るために全力を尽くしてるだけです」
役人たちは顔を見合わせた。
石炭から石油へ舵を切ろうとしていた国の政策に、この“奇跡の炭鉱”は大きな疑問を投げかけていた。
(……来るな。いずれ、国そのものとぶつかる日が)
僕は未来を知っている。
――炭鉱衰退の波は止められない。
だが、その中で 街を守り抜く方法 だけは、必ずあるはずだ。
拳を握りしめたその時、親分・大田 仁が笑った。
「若旦那ァ、国が敵でも、俺たちゃ味方やぞ。仁義は通す。それが大仁会や!」
月明かりの下、僕は誓った。
「炭鉱の街を、必ず未来へ繋げる――!」




