第五章 炭鉱主抗争
五分の兄弟盃を交わした翌日から、街の空気は一変した。
大仁会の親分・大田 仁が「若旦那は俺と五分や」と触れ回ったのだ。
炭鉱住宅の人々は目を丸くし、チンピラどもは黙り込んだ。
だが一番面白くないのは――炭鉱主たちだった。
◆◆◆
田川一帯の炭鉱主は、炭鉱を「金を生む山」としか見ていない。
労働者の命は安い。
だから、僕のように労働者を支援し、街に金を還す存在は目障りだった。
「……若造が親分と並ぶだと? 笑わせるな」
「大仁会をも懐柔したつもりか。なら、潰すしかあるまい」
炭鉱主たちは金に物を言わせ、博徒や用心棒を雇い、僕と大仁会を挑発してきた。
坑道に火を放ち、輸送ルートを妨害し、食堂に嫌がらせを仕掛ける。
(来たな……これが正面衝突だ)
◆◆◆
だが今回は違った。
背後には大仁会がいる。
しかも僕は、炭鉱労働者たちから絶大な信頼を得ていた。
「若旦那のためなら命張るぞ!」
「親分が味方やけん、怖かことはなか!」
炭鉱住宅の男たちがツルハシを握り、大仁会の博徒たちが鉈を構える。
かつては怯えていた街の人々が、今や一つの軍勢となっていた。
◆◆◆
抗争は激しかった。
炭鉱主が雇ったならず者が夜な夜な襲撃を仕掛け、こちらも炭鉱住宅で迎え撃つ。
血と怒号が飛び交う中、僕はアイテムボックスを駆使して物資を補給し、スキルで戦線を維持した。
その結果――。
「……クソッ! 大仁会と若旦那の連中には敵わん!」
ついに炭鉱主たちは膝を屈した。
◆◆◆
そして後日。
炭鉱主たちが頭を下げにやってきた。
「……我々も、今後は若旦那と大仁会のやり方に従う」
「街のために利益を回す。それで手打ちにしていただきたい」
勝った。
炭鉱夫として始まった僕の二度目の人生は、
ついに炭鉱主すら従わせるところまで来たのだ。
◆◆◆
「ハッハッハッ! やるやないか若旦那!」
大田 仁が豪快に笑い、肩を叩いてきた。
「これで炭鉱の街は、お前と俺のもんや。次は……どうする?」
その問いに、僕は拳を握りしめた。
「この力で、炭鉱の未来を変えます。
誰も命を粗末にしない街に――必ず」
昭和の炭鉱街に、黒い炎が燃え上がる。
それはただの石炭ではない。
未来を切り開く、成り上がりの炎だった。




