第三章 大仁会との火花
炭鉱住宅の食堂や金融事業を広げていくうちに、僕は急速に頭角を現した。
普通の炭鉱夫が長屋で一生を終える時代に、二十そこそこの若造が金を回し、仲間を雇い、街の人間を救っている。
当然、面白くない連中が出てきた。
「おい、新入りの若旦那よぉ……。ここらの商売は、大仁会のシマだって知らんのか?」
暗い路地裏で、数人の男に囲まれた。
胸元には龍の刺青、腰にはドス。
彼らは炭鉱街を牛耳る博徒組織――大仁会の者たちだった。
◆◆◆
噂によれば、大仁会は筑豊一円を勢力下に置く任侠組織。
表向きは炭鉱主の用心棒だが、裏では博打やシノギで街を食い物にしていた。
そして親分の名は――大田 仁。
筑豊でも知られた大親分であり、仁義を重んじると同時に、手を出せば容赦なく潰す男だ。
◆◆◆
最初は嫌がらせから始まった。
商店に火をつける。
金融の帳簿を盗もうとする。
炭鉱住宅に脅しをかけ、僕の支援を受けている家族を震え上がらせる。
だが僕も黙ってはいなかった。
アイテムボックスに隠していた物資をバラまき、被害をすぐに補填する。
「大仁会に従う必要はない」――そう言い切ることで、人々の信頼はむしろ強固になった。
◆◆◆
ある夜、ついに親分本人が姿を現した。
漆黒の着流しに身を包み、分厚い胸板にドスを差す大男。
――大田 仁。
「……お前が“若旦那”か。ずいぶんと粋な真似をしてくれるじゃねぇか」
「俺はただ、みんなの暮らしを守りたいだけです」
「はっ! 炭鉱の街は仁義で回っとるんじゃ。テメェみたいなガキに好き勝手はさせん!」
次の瞬間、盃が叩き割られた。
それは――仁義なき宣戦布告。
「タイマン張ろうや。俺に勝てたら、この街は好きにしろ」
「……上等です」
こうして、筑豊の炭鉱街を揺るがす 若旦那 vs 大仁会親分 の一騎打ちが始まった。
◆◆◆
場所は、炭鉱の資材置き場。
月明かりに照らされ、二人を囲むように炭鉱夫や博徒たちが息を呑む。
「若旦那ァ! やられたら終わりぞ!」
「親分! 血祭りにあげちゃってください!」
大田 仁がゆっくりとドスを抜く。
その刃は月光を浴びて妖しく輝いた。
対する僕は素手――いや、正確にはスキルがある。
【身体強化 Lv.2】【直感回避 Lv.1】。
この時のために、坑道作業の中で地道に鍛えてきた力を解放する。
(負けられない……ここで倒れれば、街の未来ごと潰される!)
「いくぞ、若造ォォッ!」
「来いよ、親分ッ!」
炭鉱街の運命をかけたタイマンが、今まさに幕を開けた――。




