謎の訪問者
ブックマーク、評価ありがとございます!
書き溜め全く無いんで不定期です!
やる気はあります! そこそこ!!
祝50話!!
「わーい!」
「ちょ! ルフ! そんな走ったら危ないわよっ!」
「二人ともー。はしゃいでも良いけど怪我はするなよー」
穏やか風が吹く公園を二人が駆けて行く。
はしゃぐルフを竜華が追いかけていく様子を目で追いながら一応俺からも注意しておく。
結局あの後、二人と何するか話し合って、出掛けることにした。
やってきたのはつい先日下見に来たあの公園。
リシと対峙した公園。俺が初めて力を使ったこの場所。
つい先日の話のはずなのに、激闘の跡は全然無い。まるで時が巻き戻ってしまったかのように跡形もなく。
まあおかげでこうして子供達も目一杯遊べているのだが。
周りを見渡せば俺達の他にもお子さんを連れた家族がいっぱいいる。
流石は森林公園、広さがとてつもない。目を離した隙に子供が見失ってしまうなんてことも考慮すれば、お母さんお父さんに気が休まる暇なんてない。お疲れ様です。
その点、うちの妹達は心配しなくてすむ。
俺も目を光らせてるのは勿論のこと、やっぱ竜華の存在が大きい。
今もルフを後ろで抱きしめながら滑り台を滑っている。っていうか、あの滑り台長いな。
暴走する妹の制止は最早姉でないとならない。兄のストッパーはぐにゃぐにゃだ。その分の役割は視か……じゃなくて、静かに見守ることである。
二人があの長くて尻の痛くなりそうな滑り台を滑り終わると、そのまま今度はアスレチックへ走っていく。あぁ! そんな走ると危ない。
そわそわするが態度には出さない。どっしり構えた心はスライムが如くグニョグニョ揺さぶられているが動揺を何とか押し留める。
俺の心なんてつゆ知らず、二人はひょいひょい昇っていく。
いつの間にか妹を制する姉の存在はいなくなっていた。
今はただ無邪気に遊ぶ妹が二人。
その様子を既に遊んでいた子供達が羨望の眼差しで見ているが、こっちは気が気じゃない。
はらはらしながら二人の様子を見守る。
折り返しの頂点に辿り着いた二人が俺に向けて手を大きく振っている。
俺も二人に見えるように手を振り返すと、満足した二人が駆け足でアスレチックを下っていく。
ぴょんぴょんと軽やかな足取りで攻略していく様は大人顔負けの身のこなしだ。
それだけにもう心配で心配で心臓の音が高鳴る。あぁーっ! ツルッて滑って落ちたらどうすんの⁉
感情のアップダウンがアスレチックなんかの比じゃない。そのせいでただベンチに座ってるだけなのに変な汗をかく。
無事攻略が済んだ二人が走って戻ってくる。
見る限り、どうやら二人は競争しているようだ。
多分どっかでルフが竜華をけしかけたのだろう。なんやかんやで竜華は負けず嫌いで挑発に乗りやすく、流されやすい。
そんなところも竜華の可愛い一面なのだが、悪い男に引っ掛かりそうで将来が不安だ。
「とうちゃーくっ! いっちばーん!」
「いいえ! 私の方が早かった!!」
額に汗を滲ませた二人がほぼ同時に辿り着く。
息を上がるなんてことはなく、寧ろあんな手を振って全力で走ってきたのに、弾んで言い争いをしている。
竜華と目が合う。ゴールになった俺に公平な判断を仰いでいる。
正直な所、不安と安心が入り混じっていてちゃんと見てなかった。
しかしそんな言い訳が通じるような雰囲気ではなく、
「私とルフ、どっちだった⁉」
「ルフのほうが早かったよね!」
二人の視線が射抜く。
勝利をもぎ取りたい貪欲な視線と自分が一番だと誇示するわんぱくな視線。
どっちに軍配を上げるべきか……そもそもどっちかに上げて大丈夫だよな? 泣いたりしないよな……
迷いに迷って、俺は二人に告げた。
「うーん、竜華の方が早かった」
「――えっ」
「むぅ、リュウお姉ちゃん早いー」
俺の言葉にルフがむくれた。けど、ちゃんと竜華を認めていた。俺の心配が杞憂に終わって一安心。
「ルフもいっぱい走ったな。ほら、こんなに汗が」
「わわっ⁉」
持ってきておいたタオルで垂れる汗を拭う。
あれだけ全力を出した後なら、自然と発汗が良くなるだろう。
拭いて拭って最後にわしゃわしゃしてから、これまた持ってきた水筒をルフに渡す。
いっぱい遊ぶのも良いけど、水分補給は忘れずに。
「次は竜華も――竜華?」
「あ、うん、何でもない……」
竜華は竜華で何故か意外そうな声を出し、目を丸くしていた。
もしかしたら、俺がルフを贔屓するのではないかと思っていたのかもしれない。
そうであるならばちゃんと伝えないと。
「竜華の方が早かったよ。流石お姉ちゃん」
「え、うん、ありがと――わっ⁉ ちょっと⁉」
二人のことはちゃんと見ているつもりだ。
良いとこは褒めるし、悪いところは叱る……は出来ないけど言い聞かせることはしてきたつもりでいる。
そこに贔屓とかお姉ちゃんなんだからとかは言いたくない。勝負ごとであるなら尚更。
竜華を捕まえ、膝に乗せてタオルでわしゃわしゃって拭いてあげる。
竜華は驚いて戸惑った様子だったが、やられるに連れしおらしくなっていって、されるがままに俺に身を預けてくれた。
何だよ、やっぱやって欲しかったんじゃん。
そう思いつつ、竜華用の水筒を渡す。
「いいか二人共、はっちゃけても良いけど怪我だけはしないようにな」
「はーい!」
「わかってるわよ。そもそもこれくらいじゃかすり傷すらつかないわ!」
隣から両手に持った水筒をごくごく飲んでいたルフが元気良く返事をする。
だいぶ機嫌の良い竜華が頭をリズム良く動かしながら自慢気な声で俺を見上げる。
「そうかもしれないが、転んだり落ちたりしないか見ててドキドキする」
「お兄ちゃんだいじょーぶだよ? ルフつよいよ?」
「そもそも竜が落ちたりしないわ!」
駄々っ子達があーだこーだ言ってくる。
本来は注意すべき何だろうが、語る言葉に謎の説得力があって俺はこれ以上言うのを止めた。
「まあ、俺の目の届くところで遊んでな」
「任せてちょうだい!」
「はーい! さてリュウお姉ちゃん……? もっかいしょーぶ!」
「ふん! 望むところよ!」
どうやら第二ラウンドが開始されるらしい。
いつゴングが鳴ったのかは分からないが、お互いが同じタイミングでまた走って行った。
「遠くには行くなよーッ!」
聞こえてるかは定かではないが、声を大にして言っておく。
一先ず俺が不安に思うことはあまり無いのかな。
周りを見渡せば、一緒に遊んでいる親子がちらほらといるようだが、子供同士で遊んでいるほうが圧倒的に数は多い。
いや違うな。多分ベンチに座ったり、シートを敷いて横になってる親御さん達は遊び疲れてしまったのだろう。
それだけ子供が持ってる力ってのは凄まじい。
もし俺があの二人と一緒に遊んだら……想像するだけで既に疲れが……
「はあー。だる……」
二人に揉みくちゃにされる想像をしていると、一人の男性がベンチに腰掛けてきた。
ちらりと窺うその人はこの場に於いて似つかわしく無いスーツ姿の若めの男性。
前髪を上げて綺麗に整えてた髪型を見るに、仕事終わりかはたまたサボ……ちょっとした休憩か。
「あっつい……おっと」
男は汗を拭うためポケットに手を突っ込み、ハンカチを取り出そうとして、中身をぶち撒けた。
丁度それが俺の足元にも落ちてきたので拾うのを手伝う。
煙草にライターにカードケース、あとは――何だろうこのボール。
「ああ、すみません。助かります」
ピンポン玉くらいの大きさに何やら猫? 虎? の絵が描いてある。
が、まじまじと見るのも失礼かなと思いそのまま返す。
受け取った男は柔らかく笑い、お礼の言葉を言うと、そのまま言葉を続けた。
「いやー、五月だってのに今日は暑いですね」
「そうですね」
「実はですね、ここだけの話、仕事をサボってきてるんです。暑さで身が持たなくて」
「はあ……」
やはりと言うべきかサボりだったらしい。あの笑顔の感じからすると営業か何かか……?
いや別に何の仕事していようが良いけど、世間話の二言目でサボりを告白するのは常習だったりするのだろうか……
「お兄さんも大変ですね。休みの日に子供の面倒なんて」
「いえいえ、それを言うならお互いさまってことで」
額を拭いながら男は話してくるが、こちらとしてはあまり踏み入れて欲しくない。
二人のことは勿論、もしかしたらがあるかもしれないから。
「ほんとですよ。世間では連休なのにうちはどうして――」
「はあ……」
「それもこれも上の管理が杜撰だから俺がこうして――」
「大変ですね……」
二人に目を光らせつつ、男の会話に相槌を打つ。
二人は一人の子供が遊んでいる砂場の方へと向かっていた。
うーん、警戒し過ぎか……? さっきからこの人仕事の愚痴しか言っていない。
「――おっと、すみません。せっかくのお休みにこんな会社の愚痴なんて」
「いえいえ」
「でもまあおかげですっきりしました。これで少しは気が楽になりました」
「いえ。ただ聞いてただけなんで」
「それでもですよ。あ、そうだ俺――んんっ、私こういう者です」
「あ、どうも」
「さて、そろそろ戻ります。一本吸ってからですが」
さっき拾ったカードケースから男が名刺を取り出すと、ビジネスマナー顔負けの仕草でそれを渡してくる。
俺は少しまごまごしながら受け取ると、男はニコリと笑って帰って行った。
どうやら一服してから仕事に戻るらしい。
「やっぱ警戒し過ぎだったか」
貰った名刺を持ってきたカバンにしまいながら、そう思うが何事にも慎重になった方が良いだろうと結論づける。
たまたま今回が何も無かっただけで、いつ何が起こるか分からないから。
「お兄ちゃーん! 見てみて!」
「ちょっ! ルフ! ああもう、この子は――ほんとごめんなさい」
「み、見ないで……見ないでぇー!!」
男の後ろ姿を見送ってる間、ちょっと目を離してしまった。
しかしそれはほんのちょっとだった。だからこそ何が起こったのか分からなかった。
「―――え?」
「おっきいお耳、もふもふー!」
「えぇ、ほんと。じゃなくて! 慶お兄ちゃんこれって」
「ひゃーっ⁉ お耳は触らないで下さい〜!」
二人に連れられてやって来た、イヌ耳を必死に自衛しているこの少女の存在が。
「えっと、あの、その……」
「――どうしたラウ? 目を離したら隙に――ん?」
何て声を掛けていいのか分からずに居る中で更に混乱する事態が発生した。
聞き覚えのある声が聞き馴染みの無い名前を呼んだからだ。
目を合わせれば、この場に似つかわしくの無い猛禽類の眼が俺を捕らえていた。
「―――え? 課長……?」
「慶志郎……?」
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