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俺に歳の離れた妹が出来た、しかもその少女、鬼らしい  作者: 三雨
オウミ先生とアレイスターさんと修行
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不死鳥

ブックマーク、評価ありがとうございます!

拙いですが、頑張りますので見守っていてください(切実)


今回は三人称視点になります

 遡る事、少し――


 日の明ける前の朝をアレイスターは飛んで行く。

 いつも通り先生と仰ぐオウミとその下で稽古をつけて貰っている慶志郎を、名前も知らない山へ運んだ矢先の不運な出来事。

 元の世界で対立し合っているある男の右腕――ネーセフとの対面。

 それだけならアレイスターやオウミにとって、特段大した事ではない。力に物を言わせて捻り潰せば良いだけ。そう言わせるだけの差は開き切っている。

 だが、それをしないのはネーセフだけに戦力を割けない理由があるからだ。

 手薄になった慶志郎の妹の守護、オウミやアレイスター達にとって決して奪われてはなるまい幼き竜の保護。

 そして何より――


 暗き空から切り取られた影が禍々しい姿を揺らして降りてくる。

 尾を、翼を、全身を、ドス黒い炎で燃やしていた不死鳥の姿は本来の人型へと姿を変える。


「ふむ。どうやら俺の方が先に着いてしまったらしい」


 地上に降り立ち、アレイスターが辺りを見回しながら呑気に呟く。

 これから起こり得る守戦を感じさせないくらい、軽く緩く、日常の一コマを切り取ったように。


 だからと言って向かい来る敵に油断しているわけでも、侮っている訳でもない。

 来る者拒まず、向けられた敵意は敬意を持って捻り潰す。遠い昔、師と仰ぐ先生から教えられた言葉。

 普段は温厚であっても、どれだけ適当な性格であっても、これだけは貫いてきた一本の剣。

 例えそれを同族に向けることになっても一切の躊躇いは無い。


「――来たか」


 腕を組み、佇むこと数刻。

 見上げた空が朱い炎を吐いてくる。

 太陽を模したような火球。アレイスターのそれとはまるで正反対に燃える幻鳥が吐き出した挨拶代わりの先制攻撃。


「飛び道具はあまり使って欲しくないのだが」


 迫る熱を帯びた火の玉に、いつもの変わらない口調でアレイスターが言う。

 口ではそう言うが、アレイスターもそれを使う。

 右手に溜めた自身の力を、ドス黒く燃える炎を投げ放つ。

 空で衝突する朱と黒の炎。その結果は呆気ない。

 アレイスターが放った黒い炎が朱い炎を燃やし尽くした。

 体を蝕む毒のように侵食されていった火球は、灰となって地上にパラパラと降り注ぐ。

 灼けて焦げ落ちるそれを見ながらアレイスターはどうするべきか考えていた。


「防衛とは中々に不利だな。先生に後から何を言われるか分からん」


 アレイスターが危惧する事、それはうっかりここを焼け野原にしないことだった。

 お互いに火を操る者同士、そして不死鳥同士が闘えばここが焦土になるのは目に見えている。

 今この戦況より後の説教の方が余程堪える。

 なるべく穏便に、平和的に解決。アレイスターの頭にはその言葉が浮かぶ。

 もし出来なかったとしても、その時は元通りに戻して貰えば良い。それが出来る者を知っているから。そう楽観的な考えを残して。


「やはりお前だったか。オートリー」

「アレイスターーッ!」


 アレイスター同様、地上に降り立った人影に、アレイスターが声をかける。

 真っ赤に染まる赤髪を靡かせ、普段は温厚で優しい眼が今は怒り色に燃えてその元凶を睨む。

 風貌も体躯もアレイスターと似ており、仮にアレイスターを魔王と呼ぶのであれば、人は彼を勇者と讃えるだろう。

 それくらい普段の彼は優しくて、正義感に溢れた青年であった。

 だが、根を深くまで張った因縁がセイレン・オートリーとアレイスター・フェネスの間を隔てる障壁が今の彼という人物像を造っている。

 だからこそ今この瞬間もオートリーと呼ばれた若き男は、憎しみ混じりにアレイスターを呼んでいた。


「何故お前があいつの手先になっている? お前はそういうの一番嫌いだろう」


 しかしアレイスターはオートリーから発せられる怒りなど構うことなく続ける。

 分かっているのいないのか、分かっている上で敢えて無視しているのかは分からない。だが、オートリーの感情に一切の興味も聞く耳も持たない。

 自分の関心のあるもの以外興味が無い。


「お前が、お前があぁぁーっ!」


 それはオートリーも同じことらしい。

 アレイスターの言葉に耳を傾ける事無く激しく憎悪を燃やしていた。

 どうやら不死鳥は人の話を聞かないらしい。そんな事は無い、多分。


 激しく炎を燃やし、オートリーがアレイスターへ突っ込んでいく。

 感情のままに燃やした翼を具現化し、それに似つかわしく無い朱く綺麗に揺れる炎を携えながら。


「煩い、黙れ。子供達が起きるだろ。それと近所迷惑だ」


 向けられた想いを突っぱね、襲いくる炎を軽くあしらって切り裂く。

 切り裂かれた朱色の炎は、腐るかのようにドス黒く変色し、ぐじゅぐじゅに膿を落とした。


 オートリーの攻撃はアレイスターには効いていない。それどころか届く事すら許されていない。

 どれだけ叫んでも叩き落される言葉と同様に。


「俺は認めない! お前の存在を! お前のそれを!」


 にも関わらず、考え無しに、がむしゃらに、子供の癇癪のようにオートリーは放ち続ける。


「青いな。青臭い」

「何をッ……!」


 無表情で無関心に処理をするアレイスターが不意に呟いた言葉にオートリーが反応した。

 初めて会話が成立した瞬間だった。


「いや炎が、では無くて、お前が、な」


 オートリーもその場に居ない第三者でも分かり切っていることをアレイスターが口にする。

 無論、アレイスターも冗談で言ったつもりはない。しかし何故か可笑しそうにアレイスターが笑ったのだった。

 その仕草にオートリーは激昂させる。


「舐めるなアアァァーッ!」


 内から広がる激情を燃やせば、オートリーから炎が湧き上がり、火柱が立つ。

 火山の大噴火、ボルケーノ。流石にこれは不味い。


 アレイスターがこの戦闘で初めて焦りを見せる。

 自身の敗北――ではなく、この状況に。


「流石に丸ごと潰さないと周囲に被害が及ぶな」


 見上げながら己を力を解放する。

 生あるもの全てを死へと誘う地獄の業火を纏わせ、創り上げたのは一筋の剣。

 黒い刀身は生あるもの全ての灯火を滅する滅火の光を放っている。

 オートリーの炎を生とするならば、アレイスターは死そのもの。

 だからこそ丸く収められる。この剣で。


「おぉーっ! 見てみてリュウお姉ちゃん! ひばしらッ!」

「にゃーにルフ……うるさ……ってええぇぇーッ⁉」


「ふむ、どうやら子供達が起きてしまったようだ。成長にあまりよろしくないな」


 おおよそ死を纏う人間からそんな言葉が口から出るなんて思ってもなかった。

 しかしながら、キャッキャと騒ぐルフと驚きのあまり開いた口が塞がらない竜華を守る背中は僅かながらもヒーローに見えなくもない、多分。


「先生風に言えばオートリー、お前のようなしょんべん臭いガキに教えてやる」


 降る火の雨を一蹴するように剣戟を振るう。

 すると、オートリーの火は燃えて、爛れて、灰となり無力にも力尽きて地に落ちてゆく。


「アレイスターッ! 一族の敵イイィィィッ!」


 半狂乱に炎と言葉をぶち撒けるオートリーにアレイスターは冷酷な程冷たい声で告げた。


「不死鳥は死んでこそ不死鳥なんだよ」


 一閃。

 飛翔したアレイスターが火柱ごとオートリーを真っ二つに叩き斬る。

 瞬間、メラメラと燃える業火はオートリーを奈落に引き摺り込むように包み、その身が焼き焦がす。


 その過程の中で、憎しみに満ちた眼がアレイスターを睨むが、何も言葉を残さぬまま灰と化した。

 塵積もったそれを見ながらアレイスターは考える。


「あいつは結局、どうしてダイオンの手先になっているのだろうか」


 オウミやアレイスター達が倒すべき叛逆者。

 無駄にプライドだけは一丁前なあいつが、その手下となって何を企てているのだろうか。アレイスターには見当も付かない。

 だが楽観的にこう考える。


「まあ、また今度会った時にでも聞けばいい」


 足元のそれを蹴散らして踵を返す。


「おぉーっ! リュウお姉ちゃん見た⁉ ゴウッ、メラメラーって!!」

「え、えぇ、流石四聖ね……」


 圧倒的な力を前に言葉の出ない竜華とそれを分かっているのいないのか分からないルフ。

 二人の子守りをオウミから任せられ、脅威は既に去った。だが、アレイスターはここで慢心する程、隙はない。


「さて、子供達。乗れ、二人の所へ連れて行ってやろう」


 そう言った不死鳥は喜びを爆発させて飛び乗る子鬼とやけに慎重に乗り込む小竜を連れて飛び立った。

お読みくださりありがとうございます!

何か最近書けるようになってる。(上手いとかは問わない)

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