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俺に歳の離れた妹が出来た、しかもその少女、鬼らしい  作者: 三雨
オウミ先生とアレイスターさんと修行
46/81

生命

ブックマーク、評価ありがとうございます!

おかげさまで二桁いきました。感謝!

これからも頑張りますので、温かく見守っていただけると幸いです

 舞った砂煙が晴れた視界の先。

 俺はネーセフに告げる。


「後はアンタだけだ!」


 暴れる大蛇はもういない。

 ビクビクと小刻みに体を動かしてからは土に還ったようにパタリと動かなくなった。

 事切れたと見て良いだろう。


 これで俺達とネーセフの間を障害するものはもう何も無い。

 後はこの人を討ち取るだけ。

 この人をぶっ倒せば良いだけ。

 この戦いを終わらせてオウミさんの下に、ルフと竜華の下に駆け寄ってあげたい。


 焦る気持ちと急かす鼓動を落ち着かせながら冷静さを保つ。

 隙を見せたらまたやられる。またオウミさんを傷つけてしまうかもしれない。

 だからここで終わらせる――確実に。


 意思を滾らせた炎を拳に乗せて、気合いを入れる。

 だがこの戦いの終わりは呆気ないものだった。


「慶志郎、もう大丈夫だ。奴はもう戦えない。見てみろ」

「えっ」


 後ろからオウミさんに声を掛けられ、ネーセフを見る。

 ネーセフは地面に片膝を付き、苦渋に満ちた顔をしていた。

 激しく乱れた息使いが、崩れ落ちそうな身を支える片腕が、オウミさんの言った事を物語っている。


 立てない、動けそうにない、それでも意識だけは飛ばさない限界の状態。


「えっ? どうして……?」

「奴の力の代償だ。あれはネーセフと生命が繫がっている。その前に湧き出たものも同様にな」


 オウミさんが視線で大蛇を示す。

 どうやらあの大蛇、そしてそれ以前に湧き出た無数の蛇、それらがネーセフと繫っていたらしい。

 言うなれば自分の分身体、生命の運命共同体。

 それらを倒したことにより、自ずとネーセフも倒せたということのようだ。


「この世に無限なんてものは無い。力も命も限りがある。私達皆形あるものはな。だからこそ力に制約がある。生命に息吹を吹き込むというこはそういうことだ。もしこの世に無限など――制約の無い夢幻の力など馬鹿げたものがあるのならそれは」

「それは?」


 オウミさんの目が俺を見据える。

 真っ直ぐに俺を捉えたその目が、何かを躊躇ったかのように泳いで瞑られた。

 被りを振ったオウミさんが、閉ざした言葉を濁して話を続ける。


「夢を彷徨う大馬鹿者だ。そんなことよりも、今回地味にあいつを苦しめたのはアレイスターだろうな」

「え、何でアレイスターさんが」

「お前を助けた時、アレイスターが焼き払っただろ。あいつの炎は私とは違う。まるっきりな」


 ふぅ、と息を一付きしてオウミさんが言う。

 確かに一番最初アレイスターさんに助けてもらった時、ドス黒い炎で焼いていた。

 ということはアレイスターさんの攻撃もネーセフにくらっていたのだろう。

 しかし、あんな手で払ったような軽い炎が致命的な攻撃になるとは思えない。何か裏があるのだろうか……?


「知らなくて良い。今はまだな。それよりも慶志郎、お前はよくやってくれた。感謝する」


 まあ、過程はどうあれ結果的に俺とオウミさんが勝ちを掴んだことに変わりはない。

 その気持ちは多分オウミさんと一緒なんだと思う。

 だけど、こうやってお礼を言われると心の中にどうしても残ってしまう。


「でも……俺が居なかったら……もっと俺が強ければ、オウミさんはこんなに傷だらけにならず……もっと楽に勝てたのに……」


 心の中に残る後悔の棘。抜こうとするも、たらればの返しが直に抉る。

 言ってもしょうがないことはわかってる。でもこうやって言葉にしないと弱い心にはもっと深く突き刺さっていくような気がして……


「慶志郎――」


 でもこの人は――オウミさんはそんな俺の全てを見透かして、抱きしめて、受け入れてくれる。


「焦るな、何度も言わせるなこの大馬鹿者」


 全てを受け入れた上で、励ましや慰めじゃない言葉をくれる。

 でも今の俺にはそれで充分だった。優しい言葉を貰ったらまた甘えてしまうから。

 甘えに甘えて泣いちゃうかもしれないから。


「お前を強くする。それは私の使命であり、願いだ。こんなすぐ叶ってしまうような小さな願いなど願い下げだ」


 抱擁と微笑いと弾む声。

 この人とならきっと、オウミさんとなら俺はもっと強くなれる。

 だから今は棘がこれ以上喰い込まないように、弱い心でも堅く誓えばいい。

 いつかこの棘を貫くような真っ直ぐな芯を通せばいい。

 これ以上オウミさんもルフも竜華も、誰も傷付かないように強くなればいい。

 皆を護る。それだけのために戦うって。


「うん。それで良い慶志郎。私もお前を守れるように精進する」


 強固な護りが縁を結ぶ。

 決意と熱意の篭った炎を宿した赤い糸。

 慈愛に満ちたその眼差しと交差した先、自然と顔が引き寄せられる。

 お互いの息が交わるその僅かな隙間が埋まる瞬間、縫って怒号が響いた。


「何イチャこら見せつけてんだゴラアアァァァーーッ‼」


 ネーセフの声に応じて大蛇が尻尾を俺達目掛けて振り落とす。

 慢心を付く一瞬の隙。寸分違わず狙ったここぞとばかりの騙し討ち。

 それを俺達は回避したが、二手に別れてしまう。


「ハァ……ハァ……ハァ……」

「ネーセフ! お前まだ力がッ⁉」


 オウミさんの反応を見るに、有り得ないと言ってる気がする。

 それは戦闘経験がほぼ皆無な俺でも、ネーセフを見れば何となくで分かる。


「ブッ殺す……」


 半ば強引に立ち上がり、よろける足に無理を言わせ、立っているだけがやっと状態のネーセフが怨情を剥き出している。


「止めろネーセフッ! 無茶をするとお前が死ぬぞ!」


 オウミさんの叫びが通っているかは分からない。

 だけど一つ言えることは、どっちだったとしてもネーセフに止まる気がないということ。


「オウミさんッ!」

「慶志郎! 奴を止めるぞ! あいつをここで死なせるな。あいつからは聞きたい事が山程ある」


 そうは言うが、どうやって止めれば良いのか分からない。

 さっきの炎は多分後何発かは打てる。だが、オウミさんがさっき教えてくれた事を考えれば、それは出来ない。

 ネーセフと大蛇の運命共同体。力の有限。それ即ち、どちらかが力尽きた時、死を意味する。

 そして、それは刻々と時を刻んでいる。


 大蛇ががむしゃらに暴れる。最早、何を狙っているかも判別出来ない位、無差別に。

 その間をすり抜けながらオウミさんと合流する。


「どうしましょうオウミさん、やっぱ一発かましますかっ⁉」

「いや、私の炎では燃え尽きてしまう……どうするべきか……いや、これは――ふっ、全くあいつは良いところばかり掻っ攫っていくな」


 考えを巡らせていたオウミさんが空を仰ぎ、何かを閃いたようだ。


「あまり気乗りしないが……しょうがない。慶志郎!」


 だが、あまり気乗りしないらしい。不安を残す前置きを置いて俺を呼んだ。


「はいっ!」

「あの娘っ子達の力を使え」

「はいっ! ……えっ?」


 思いも寄らない言葉に気の抜けた言葉が漏れる。

 ルフと竜華の力……? 確かにリシと戦った時は使えたが、それ以来、出そうにも出せないでいた。

 それを承知の上でオウミさんは言っているのだろうか?

 だとしたらものすごい賭けになる。


「嗚々そうだ。だが賭けではない。出来るとわかりきったこれは所謂出来レースと言ったところだな。お前なら出来る」


 何処でそんな言葉を覚えたのだろうか。いや、今はそんな事より、オウミさんの想いに応える時だ。


「ルフ、竜華。俺に力を貸してくれ……」


 雑念を取っ払い、念じる。

 すれば、貰ったお守りが光が放ち、拳を包む。

 出来た――? 何で? いや、考えるのは後だ。今は寧ろ集中――

 青く、白く、銀色に輝く想いを感じれば、そこに二人が居るような安心を俺に与えてくれる。

 二人の想いを胸に、拳を握る。そして叫びと共に俺は駆け出した。


「気絶しろおぉぉーッ!!」

「アアァァ……! アァァアアッ‼」


 バリバリと響く蒼き雷鳴と荒れ狂う暴風の衝撃。

 吹き荒ぶ嵐の中から産まれた悲鳴が終わりを告げる。

 なるべくダメージが少なそうな背中部分を狙ってみたが、本当に大丈夫なのだろうか……?

 再び動きを止めた大蛇に舞った砂煙の中で無事であることを祈る。

 広がる砂煙はまだ何も教えてくれない。でも一個だけ、教えてくれたものがある。


「お兄ちゃあぁーーんッ!」

「慶お兄ちゃーーんッ!」


 青く白く目覚める空、昇った太陽の先で俺を呼ぶ聞き慣れた声がした。

 俺の戦う理由が、生命よりも大事な妹達が無事の知らせをくれる。


「ルフーッ! 竜華ーッ!」


 その安堵から力が抜けそうになるが、意地で腹から声を出す。

 何処にいるかは分からないが、それでも声のする方へと呼びかける。


「みーっけた!」

「わっ! ちょっとルフ! 危ない!」


 俺の声が聞こえたのだろうか。ルフと竜華を乗せたアレイスターさんが降りてくる。

 その前に上空から俺の姿を捉えたルフがあろうことか、空からダイブしてきた。

 それを何とかキャッチしたは良いが、疲労を蓄積した俺の体はグギりと悲鳴を上げる。


「ル、ルフちゃん……危ないから……やめて……」

「あぶなくないよ。楽しかったよ、お空を飛ぶの!」


 腰が悲鳴を上げていたが、お構い無しにルフがキラキラとした目を向けてきた。俺が言ってるのはそういうことじゃなくて……


「……ふむ。どうやら逃げられたようですね。流石は蛇、しつこさが違う」

「アレイスター、お前……」


 少し遅れてアレイスターさん達も合流した。

 見ればすっかり砂煙はおさまっている、そこにあった筈の一人と一匹の影を微塵も跡形も無くして。


「こらッ! ルフッ!」


 竜華がルフに向けて怒った目を向けている。

 多分さっきの危険な行為を叱ってくれるのだろう。こういうところがお姉ちゃん。


「私より先にいくのズルい!」

「えーっ、だって。リュウお姉ちゃんもとべば良かったじゃん!」

「二人で行ったら片方落ちるでしょ! ね! 慶お兄ちゃん」


 俺に振るの止めて。片方どころか普通は両方拾えないから。


「……頑張って二人拾えるようにするから」


 けど、そんなこと言うのはお兄ちゃんとしてのプライドが許さないのだろうか。

 無理難題のお願い事がまた増えた気がする……。


「追いますか? 今なら生け捕りにして拷問の末、全てを聞き出しますよ」

「アレイスター、お前……」


 何かあっちはあっちでドン引きする会話をしている。

 子供達がいるのに止めて、そんな話しないで。

 オウミさんの顔もめちゃくちゃ引き攣っている。


「冗談です。しかし――」

「分かっている。でも今は休息と状況の整理が必要だ。色々とな」


 冗談を言ってる顔には見えないのが恐ろしい。

 そう思っていると、ルフがキラキラしたままの眼差しを向けて興奮しながら俺に言ってきた。


「お兄ちゃんあのね、アレのおじさんね、すごかったんだよ! こうブワァーッてなって、ゴウ、メラメラーッて!」


 ……ちょっと何言ってるのか分からないけど、多分アレイスターさんが戦っているところを話してくれてるんだろう。詳細……竜華に聞けば分かるか。

 そう思い、竜華に視線を向ける。俺の言いたい事はどうやら伝わったようで「分かったわ」と短く返してくれた。

 なにはともあれ。


「二人共、無事で良かった」


 こんなことがあっても、いつもと変わらない二人のやりとりがたまらなく愛おしくて、俺は二人を抱きしめた。


「アレイスターな」


 これも俺の日常になっていくのだろうか……。

とりあえず書きたい所までは書けました。

お読みくださりありがとうございます!

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