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俺に歳の離れた妹が出来た、しかもその少女、鬼らしい  作者: 三雨
オウミ先生とアレイスターさんと修行
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一人じゃない

 家に戻り、少し眠って、再び起きたら昼前だった。

 むくりと起き上がった体は疲れが抜け切っておらず、まだ重い。

 リビングへ向かえばルフと竜華がソファーに座ってテレビを見ている。


「おはよう二人共。お腹すいただろ? 今作るからな」


 俺が声を掛けると二人の視線がテレビから俺へと移された。

 暇つぶしのようにぽけーっと眺めていた目がパアッと明るく輝いたように見える。よほどお腹が減っていたのだろうか。


「うんっ! ルフね、お兄ちゃんのお手伝いする!」

「ふげっ⁉」


 竜華を踏んづけ、跳びつくルフを受け止める。

 竜華を見れば、太ももらへんを押さえながら小刻みに震えていた……。

 そんな竜華はお構い無しといった様子でルフが腕の中で楽しそうな笑顔を向けている。


「……たしも……る」

「り、竜華……? だ、大丈夫か……?」

「私もやるっ!」

「お、おう。助かる……」


 プルプル震えていた竜華が勢い良く立ち上がり、そう告げる。

 見れば、目元に少し涙を浮かべていた。やはり相当痛かったのだろう。

 ゆっくりとした足取りでキッチンへ向かう竜華の後を付いていき、その場でルフを降ろす。


「じゃあ、ルフは冷蔵庫の中からお肉と野菜を取って。竜華は野菜を洗ってくれ」


 二人にそう言って踏み台を用意する。

 用意している間にルフは既に冷蔵庫から野菜を取り出していた。

 両腕にごっそりと抱えたルフが踏み台に乗る竜華の隣に並ぶ。


「わっ⁉ ちょっとルフッ!! 危ないじゃない!!」


 お構い無しに上がってきたルフに竜華が声を上げた。

 見れば、シンクの縁に掴みながらではあるが足一本で器用に踏み台で留まっていた。


「ルフも洗うの」

「ちょっとルフ! 慶お兄ちゃんは私に頼んだの!」


 ルフはそう言って、抱えた野菜をごろごろとシンクへとなだれ込ませる。

 それを二人は取り合うかのように手にしては勢い良く捻った蛇口で洗っていく。

 おかげで水飛沫が辺り一面に飛び散った。っていうか二人もそうだが、俺にまで水が飛んできた。


「ほらっ、二人とも喧嘩しないの。皆びちゃびちゃじゃないか」

「だってルフが!!」

「リュウお姉ちゃんが!!」

「だってじゃないの。タオル持ってくるから大人しくしていてな」


 二人にそう言ってタオルを取りに行く。

 全くあの二人は何をそんなに張り切っているんだか……。

 顔をタオルで拭きながら、少しばかり考える。

 何というか二人の動きが妙にぎこちない。まるで俺に気を使っているように思える。

 もしかしたら――二人は俺を労ってくれているのだろうか。

 最近――と言っても二日だけど、オウミさんとの修行の疲れがよほど顔に出ていたのかもしれない。

 それでルフと竜華なりに考えて、少しでもお手伝いをして俺の負担を減らそうと考えてくれたのかもしれない。

 だとしたら――ふふっ。


「あの二人は全く――」


 不意に出た言葉とは裏腹に自然と笑みが溢れる。

 だからこそ、戻って二人のしょげた顔が堪らなく愛おしい。

 から回って上手くいかず、今にもぐずりそうになっているルフの顔に、俺は持ってきたタオルを押し当てた。


「わぷぷっ」

「ほらルフ、タオルでしっかりふきふきしような」


 顔を包み込み、わしゃわしゃと手を動かす。


「お兄ちゃ、お水、ふいたから、だいじょーぶだよ」


 袖が異常に濡れているからそれくらい知っている。

 でも、こうやって拭いてあげたい衝動に駆り立てられている。


「ほら竜華も」

「ちょっ……んっ」


 ルフを一通り撫で回し、次は竜華を捉える。

 竜華にはぐしぐしと乱暴に拭ったような皺がシャツの裾に付いていた。

 全く、女の子なんだからそんな小僧みたいな真似はしてほしくない。


「二人とも手伝ってくれてありがとな」


 充分に撫でくり回した後、二人を腕に抱き寄せる。

 二人から貰った気持ちに負けないくらい、感謝の気持ちを目一杯込めながら強く。


「ううん、ルフ、ぜんぜんできなかった……」

「私も……慶お兄ちゃんの邪魔しちゃった。慶お兄ちゃん、疲れてるのに……いっぱい……邪魔しちゃ――」


 けれど、ルフも竜華も目の前の失敗でいっぱいいっぱいだった。

 途切れ途切れの涙声が落ち着くまで、竜華の頭をぽんぽんと俺は撫で続けた。


「落ち着いたか?」

「……うん」

「そっか」

「慶お兄ちゃん……ごめんなさい」


 落ち着いたのは良いが未だ竜華の表情は暗い。

 何というか、自分の失敗を悔いてるような雰囲気が竜華から漂っている。そんなに気に病むことでも無いだろうに。

 むしろ子供なんだからいくらでも失敗して、それを糧にいっぱい成長していってくれた方が嬉しい。

 せっかく二人が進んでお手伝いしてくれたのなら尚更だ。二人の成長の糧をこのまま台無しにしてしまうのは勿体無い。


「それにしても、竜華も失敗することあるんだな」

「なっ⁉ 何よ……私だって……私なんて……」

「いやいや違う違う! 言い方が悪かった。そう泣きそうな顔をするな」


 うつむきながら震える竜華の誤解を解こうとして竜華に触れるとびくりと怯えたのが指筋から伝わる。

 それに臆することなく、俺は竜華を額が合わさるくらいの高さまで抱き上げ、続けた。


「俺はさ、竜華は何でも卒なくこなせちゃうから何でもかんでも任せっきりにしちゃってた」

「うん……だけど、出来なかった……」


 俺を見据えていた潤む瞳がそっと放れる。

 その不安を拭うように優しく頭を撫でながら話し続ける。


「だから俺なんて要らないんじゃないかって思ったりさ、俺じゃ竜華に何もしてあげられないんじゃないかって思ったりもしてさ」


 ふと、リシとの戦闘が頭を過る。

 俺はあの時、ルフと竜華に、俺が守ると心に決めた二人に助けられっぱなしだった。

 今の俺じゃ何も出来ない。だからこそ、家にいる間くらいはちゃんと面倒を見てあげたい。

 少しでも二人が楽しく朗らかに暮らせるように良きお兄ちゃんでありたい――


「そんなことないもんっ!!」


 竜華の叫び声に少しばかり体がびくりと震えた。

 竜華は一筋の涙を流しながら、真剣な眼差しで俺を射抜く。


「慶お兄ちゃんは私にとってなくちゃだめだもんっ!」


 それはまさに魂からの叫びだった。

 何度も何度も泣きじゃくりながらそう言ってくれる竜華に俺も目頭が熱くなる。

 こんなにも俺の事を思ってくれているって感じると心が温かくなる。

 だからこそ、俺は思いの丈をすっと出せた。


「うん、ありがとな。俺はまだまだ竜華やルフのお兄ちゃんでいられる。だからいっぱい失敗しても、いっぱい頼って――二人のお兄ちゃんでいさせてくれ」

「グスン……うん……うん……!」


 ぐしぐしと目元を拭った竜華から笑顔の花が咲く。

 目元を強く擦ったせいか、竜華の目元は少し腫れぼったさを残しているが、それよりも今は明るく笑った竜華を撫でることに振り切る。


「お兄ちゃん! ルフも!」


 見ればルフが両手を上げてせがんでくる。

 俺は竜華を片手に抱き上げながらルフを抱き上げ――グッ、腰が……


「ルフもいっぱい頼れよ。俺が全部受け止めてあげるから」

「うん!」


 何とか耐えながら、ルフを抱き上げる。

 ルフはいっぱいに笑って俺にギュッとしがみつく。あっ……グギッて言った……。

 俺の思いとは裏腹に頼りない腰が悲鳴を上げていたが、意地でも耐え抜く。

 すると、不意にルフが顔を上げて言った。


「でもお兄ちゃんもルフにいっぱいたよってね。ルフ、いっぱいお兄ちゃんのお手伝いする!」

「わ、私にだって! ちゃんと頼ってね! 慶お兄ちゃんはいっぱい無理し過ぎなんだか」


 二人の言った言葉に意表を突かれ固まってしまう。

 けど、それはほんの少しの時間で、俺の目頭を再度熱くさせた。

 じんわりとこもる熱が溢れる前に二人を下ろしてからググッと乱暴に目元を拭う。


「ありがと。さて、ちゃちゃっとご飯の準備するか」

「うん!」

「今度は大丈夫!」

「けどその前に――」


 やる気になった二人の顔を再度タオルで撫で回す。


「全く、竜華? 女の子がそんなぐしぐしと雑に拭かないの」

「んっ……ちょ……」

「ルフもそんな乱暴に拭くとお目々痛い痛いになるよ」

「わぷぷ……でもお兄ちゃんもさっき……」

「俺はいいの」

「良くない! ズルい!」


 二人の反応に、笑いながら思う。

 俺は一人じゃないんだって――

投稿遅れてすみません。他の作者様の作品読んでたら全然書いてなかったです。

頑張って書きますのでお読みいただけたらありがたいです。

これからもよろしくお願い致します。

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