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俺に歳の離れた妹が出来た、しかもその少女、鬼らしい  作者: 三雨
オウミ先生とアレイスターさんと修行
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遺恨

 お、俺が王子……?

 意味が分からない。俺の知らないところで俺が成り上がっていた。

 身に覚えのない革命が起こっている。祝え! 新たな変革を! 讃えろ! 新たな王子の誕生を!

 って祝えるかあぁぁーッ!


「革命も何もお前は元から王子だぞ」

「お前が産まれた時、既に盛大に祝われたぞ」


 うるさーい! うるさいうるさいうるさーいッ!

 こっちはそんな事情一切知らずに育ってんだよ! 平凡に毎日を生きてきたんだよ! そんなカミングアウトをいきなり「はい、そうですか」って飲み込める訳ねぇだろおーッ! しかも英雄の正体が親父だって確定しちゃったし!


 っていうかちょっと待って。ルフのお母さんが今の女王で親父が英雄で――え? 俺のかあーちゃんって小さい頃亡くなったって聞いてるんだけど、ほんとは女王で、ルフのお母さんと親父が再婚したわけじゃなくて、元から俺とルフのおかあーちゃんは同一人物で――あ、ヤバい頭こんがらがってきた。


「おや? あいつはそんなこと言っていたのか」

「いえ先生、確かあいつは遠い所に居ると言い残してきた、と言ってました」


 あー、そう言われてみれば、そんな気もする。

 でも遠い所って言われたら普通天国だと思うじゃん! 異世界? だなんて思う訳ないじゃん! 俺の頭にそんなお花畑は沸いてないんだよ! うわあーん!


「ええい、やかましい! 男なら泣き言言うな! どっしり構えろ!」

「ちなみに今でも人目を憚らず公の場でイチャつく位には仲が良い」


 仲が良いのは良い事だけども、今そんな情報要らないよ! イケメン不死鳥め、面白がりやがって。


 しかしオウミさんの言う通り、狼狽える場合ではない。どっしり構えるってさっき誓ったばかりじゃないか。

 今は嘆いている場合ではない。俺の身元含め、そっちの世界の現状に目を向けよう。

 えっと簡単にまとめると、おかあ……女王の家臣である四聖の一人が国家転覆を計ろうとしているっとことだよな。

 それをオウミさん達は阻止しようとしている。

 一触即発。いやもしかしたらもう既にその段階は超えているのかもしれない。


 そんな中で俺はオウミさん達にどうやって手を貸せる?

 オウミさんは託したいと言ってくれた。ルフと竜華を守るってことに繋がるなら、俺もその意志に応えたい。

 しかし正直国の存亡に俺が関われる事なんて何もないのも事実。

 二つ返事で了承したが、戦争も知らないで生きてきた俺が、おとぎ話みたいな魔法の力も知らないで生きてきた俺がどうやったら手を貸せるのか――


 話し合い……は無理だよな。既に火蓋を切った銃に待ったをかけられるわけがない。それこそ考えが頭がお花畑じゃねーか。

 しかしこのまま事が進んでしまえば、お互いに傷と遺恨を残し続けるだろう。それは数多の歴史を読み解いても、過去と現代が証明してくれているし、どの世界もそれは変わらない筈。


 ダメだ、さっぱり分からん。やはり平凡に生きてきた俺の頭では太刀打ちなんて出来やしない。

 もどかしさのあまり無意識に拳を握っていた。

 儘ならない感情が光となって体の内から溢れ出していた事に気付く。

 最近どうも感情が揺さぶられると漏れ出してしまう事が多い。俺もとうとう人間を辞めてしまったのだろうか。


 不意にオウミさんと目が合った。

 心中は俺に分からない。けどその目は驚いたと語るように見開かれていた。


「すみません。どうも最近感情の揺れ動きでお漏らししてしまいがちで」

「ああ、それは大丈夫だ、問題ない。鍛えれば治る。頻尿と一緒だ」


 人の光をそんな年寄りの悩みみたいに……いやオウミさんももしかしたら同じ悩みを――


「お前と一緒にするな」


 す、すみません。どっちかって言うとオウミさんは見た目的からしておね――

 そこまで考えて睨まれた。早急に話を戻さなければ。


「全く、お前段々と遠慮が無くなってきているぞ。ちゃんと先人を敬え」

「す、すみません。でもどうしてもこう、雑念が……」

「何でそれでそんな高濃度な力を纏えるんだ……いや、皆まで言うまい」


 呆れた顔でオウミさんがやれやれとため息を一つ吐く。

 その傍らでアレイスターさんが見定めるかのように俺を見据えていた。

 その目を見返した瞬間、禍々しい何かが俺を突き刺した。

 宝石のような紅の瞳が全てを灼き尽くす業火に見える。

 その火に当てられ、背中からドッと冷や汗が吹き出す。


「落ち着けアレイスター」


 オウミさんが静かに呟くとアレイスターさんからの殺気が止んだ。

 体の内から燃やされているような熱さが消える。灰になった気分だ。


「ですが先生――」

「お前もあれに遺恨があるのは承知している。だが、慶志郎を恨むな。それはお門違いだ」

「……そうですね。申し訳ございません」

「いや良い。だがこれは私の責務である……」


 何やら二人で小さな声で会話している。

 内容は聞こえないが二人の表情が見るに大事な話をしていそう。


「慶志郎、私はお前に――お前達に確かな未来を見ている。だからこそ私がお前達を鍛えてやろう」

「え」

「何、心配するな。お前のそのくらいの力があれば、死にはしないだろう」

「あ、いや、あの……死……?」


 話が終わったとおもえばオウミさんが不穏な事を言い出した。

 死ぬとかどんな鍛え方しようとしてるの? ルフと竜華を見ると何かを思い出したかのように震えていた。

 あー、そういえばこの人、怖い人だった。

 ルフと竜華の目からは全力で断って! と聞こえている気がする。


「あー、その、非常にありがたいと思うのですが、その、何ていうか、こっちも事情がありまして……」

「おや、確かお前は今日から休みになると聞いていたが?」

「え⁉ 何でご存知なんですか」

「うちの情報網も侮るな。お前の事など筒抜けだ」


 つまり俺の周りにスパイ、もしくは見張りが居るって訳⁉

 誰だよそいつ、絶対この状況楽しんでるだろ!

 情報が知られてるとならば俺にこれ以上抵抗のしようがない。ルフ、竜華、ごめん。俺にはもうどうすることも――


「そう悲観するな。二人はアレイスターが見てくれる。それで良いな?」


 そう言ってオウミさんがルフと竜華を見やる。

 さっきまでの絶望とした表情とはうって変わり、二人の顔は喜びに満ちているように感じた。


「やったねリュウお姉ちゃん!」

「ええ、何とか生き延び――じゃなくて! 四聖に鍛えてもらえるのは嬉しいわね」


 本音がだだ漏れしてますよ竜華ちゃん。

 しかし、あの竜華がそこまで言うなんて。一体オウミさんは何をしでかしたのんだ……


「さあな、それは自分の目で確かめるといい」


 ニッコリと笑ったオウミさんにこれまでにない恐怖を感じた。

 あ、これおれ死ぬかも……


「さてと、話が纏まったな。では私達は戻るとしようか。明日から本格的に鍛えてやるから今日はゆっくりと休むといい」


 そう言ってオウミさんがアレイスターさんを連れて立ち上がる。


「あ、もし良かったらお昼ご飯一緒にどうですか? 簡単なもので良ければ作りますよ」

「ありがたい申し出だがまだやる事があってな、すまないな」


 そう言い残し、二人は部屋を去った。

 見送りが終われば、残された部屋にいつもの三人の空間が広がる。

 もう何か鍛える前からどっと疲れた。寝起きだったのにほんとよく対応した自分を自分で褒めたい。


「はあ~、疲れた。聞いてないわ、チウリ――先生が来るなんて」

「ルフは、ちょっとおどろいたけど、たのしかった! アレのおじちゃんにも会えたから!」


 アレイスターおじちゃんな……はっ⁉ 俺は何を……

 思わず口癖が移ってしまった。

 しかしながらどうやら二人も疲れたように見える。

 このまま何もしない方が今日は良いのかもしれない。ともあれは先ずは――


「二人共、お腹すいたよな。ご飯作るからちょっと待ってて」




 ――お昼も過ぎれば午後の2時。

 部屋に入る日差しとゆっくりと過ぎる時間の流れに思わずうとうとしてしまう。

 ルフと竜華は既に夢の中へと遊びにいった。口ではああ言っていたがルフも相当疲れていたらしい。ベッドに入ればすぐにこてんと眠りにつき、そのすぐ後を竜華が追うようにすぅすぅと寝息を立てていた。


 それにしても……俺のおかあーちゃん、生きてるのか……。

 亡くなったと勘違いしていたから正直気持ちの整理が追い付いていない。

 嬉しいと言われれば嬉しいが、何ていうかそこまで嬉しいかと言われるとそうでもない。

 俺にはおかあーちゃんとの記憶が無さすぎる。顔すらも分からない。そんな他人に近い人を今更おかあーちゃんと俺は呼べなくて――

 いや頭では分かってるつもりだ。女王として、国のトップとしての立場があることくらい。けどどうしても俺にはそういう人って印象の方が残っている。

 歓喜するにはどうしても思い出が足りない。足りな過ぎる。

 可笑しいよな、話を聞いただけなのに。


 っていうか、そもそも親父の言い方に問題が……いや、ありのままを言われたとて真に受けないだろう。寧ろ、若くして老化がきたんかと心配になりそうだ。

 だったらあの時、世界を救うじゃなくておかあーちゃんに会いに行くと一言言ってくれれば……。

 いや駄目だな、それはそれで一番ダメなヤツだな、うん。


 英雄か、何でそんな大それたもんになってしまったんだ。

 そもそも親父はどうやってそんな成り上がってしまったんだ。

 俺の親父は面倒臭がりですけべでそれでいて時に厳しく、時に優しい、そんな存在だったのに。

 ダメだ、自分の親の事なのに分からない事が多い過ぎる。


 頭の中で思考と思い出がぐっちゃぐちゃに絡まり合っている。

 これじゃあ、まともな考えも出来ないだろう。こういう時は寝るに限る。

 そう思い、俺は一旦頭の中の全てを放り出してルフと竜華を迎えに行った。


 そういえば、俺のおかあーちゃんってどういう人なんだろ。

 俺と親父の共通の嗜好を考えると――巨乳という文字が頭を過ったが、そういやあの時ルフが言ってたっけな。ちょっと残念だ……

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