↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛び降り団地  作者: 大好き丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/10

CASE.4

 ──インタビューを開始します。ご協力に感謝いたします。あなたのことはMさんと呼ばせてください。Mさんはメグミさんと交際されていたとお聞きしています。当時のことをお話ししていただけますね。


 Mさん:

 わ、分かりました。

 (数秒の深呼吸)……当時の僕はサッカー部に所属していて万年補欠でした。と言っても僕自身は特にサッカーが好きということも無くて、友達に誘われて入っただけなので本気度は全然でしたけど……。

 マネージャーとかもすっごく可愛くて、部活に参加してるだけで青春してるって思えました。けどすぐに格差は出来るもので、部員は次々と彼女を作ってました。垢抜けていく奴らを見て僕も何とかしないといけないって焦ってたのを覚えています。

 モテる髪型とか、スキンケアとか、脱毛とか、化粧にも手を出したりして、とにかくついて行くことに必死で……。


 ──つまり『彼女』を得ることは一種のステータスになっていたと。


 Mさん:

 言い方は悪いですがその通りです。誰誰と付き合った、別れた、ヤった、ヤれなかったってのは話題の定番でした。僕も話題に参加したかったですが、付き合ったこともない僕では馬鹿にされるだけなので入りたくても入れないもどかしさばかりを感じ、童貞いじりをされながら悔しい思いをしていました。


 何度告白しても失敗する僕を見かねてマネージャーがクラスメイトを紹介してきたんです。藁にも縋る思いで頼みました。不細工が来たら嫌だなって思いつつも、可愛い子は僕なんか断るだろうなって思ってましたね。

 メグミが来た時は内心喜びました。でも付き合えたら嬉しいけど絶対断るだろうなって諦めましたよ。マネージャー的には面白半分だったようですが、当たって砕けろの精神で告白はしました。そしたら意外にも簡単にOKがもらえたのであの時は凄く嬉しかったです。


 ですがそこからは一気に嘲笑の的です。だってあの団地の子だって後で分かったんですから。

 主将たちは笑いものにしてきましたよ。「お前呪われるぞ」って。顔が良くても背景がアレだと嫌厭されていたんですよ。

 みんなから距離を置かれていたから彼女も内心焦ってたのではないかと考えるようになりました。彼氏でも作って人並の生活環境を整えたら友達を作れるとか思ってたんじゃないかって漠然と。

 そう思うと僕もだんだん腹が立って、早くヤって捨てようと腹に決めてました。今考えると最低な考えですが、とりあえずメグミで童貞を捨てられたら自信が付くと思っていたんです。

 けどメグミは身持ちの固い子で簡単な女性ではありませんでした。主将たちは簡単にヤっているのにここでも差を埋められないと苛つきました。


 ホテルなんて行けないし、家に誘っても来ない。お互い大変だって分かってるんだから協力し合おうって勝手に思ってました。このままでは埒が明かないので逆に団地に行ってやろうと考えたんです。

 めちゃくちゃ怖かったですが、それでも今後の学生生活を思えば乗り切れると判断してのことです。


 本当に自分勝手で最低だと今更ながらに後悔しています。


 ──後日、団地に行って彼女は自殺したと。


 Mさん:

 ……はい。当時の僕にはムードなんて分からないので、部屋に入れてもらったら後は流れで行けるものだと考えていました。

 閉鎖される前の団地は古く、外壁は黒くくすんで汚らしい印象を受けました。ここで初体験かと思うと一瞬一生の恥のようにも考えて不安になりましたが、逆に自殺の名所で初体験は話のネタに良いのではないかとポジティブに考えて案内する彼女の小さな背中を見ていました。


 団地に着くなり彼女は「上を見ないで」と言ってきました。咄嗟に言われたことに意味が分からず上を向いちゃいました。特に何かあるとは思わなかったのですが、視線を戻すとメグミは青ざめた顔をしてこっちを凝視していたんですよ。

 何と言うかあの顔は『終わった』って顔です。まったく意味が分からずオロオロしてるとメグミはすぐに帰るように促してきました。ここまで来て変なルールで帰されるのはあり得なかったので当然食い下がりましたよ。でもメグミはそれ以上一歩たりとも動きませんでした。


 最終的に明日僕の家に来てくれることになったので渋々了承してその場を後にしました。

 そのすぐ後に自殺したんですね。僕とするのがそんなに嫌だったのかと沈みましたよ。僕はサッカー部を辞めて身の丈に合った生活を始めました。女の子と話すのは若干抵抗がありましたが、だんだん気持ちを落ち着けることで普通に会話できるようになり、今は結婚を考える彼女もいます。


 ──それはおめでとうございます。団地の話に戻しますが、上を見るなと言われたのは直前だったと言うことで間違いないですね。


 Mさん:

 あ、すいません。自分語りばかりになって……。

 団地に着いて早々のことです。あの時メグミに言われなかったら視線を外すこともなかったのですが、当人は注意喚起を忘れていたと今にも死にそうな顔で慌ててました。

 メグミの死からそれほど経たない内に団地の閉鎖が決定され、みんな退去したと聞いています。でもいまだに残っているものですね。僕にとっても忌まわしい事件です。


 ──(これ以降は他愛ない会話が続いたため)インタビュー終了。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。