02 Wish
「本当に逝ってしまったんだね」
京也の頬に触れる。
白い菊と、蘭、そして白い薔薇。
彼の周りが花で埋められていく。
赤い薔薇はよく持っていたな、そんな事を思い出す。
京也の両親と妹、俺の母と俺。
そして、ルアードの三人。
たったそれだけの参列者よりも多い、大量の供花。
斎場から狭い会場では収まらないから、と広い会場を用意された。
ロンドンを夕方に出て、翌日の昼過ぎに羽田に到着。
一夜明けた今日が告別式だ。
荼毘に付す間、狭い和室で待つ。
何故か皆、落ち着いている。
この数日で気持ちの整理がついたのだろうか。
親族から離れてメンバーのもとへ。
「⋯⋯冴子さんは?」
「事務所が対応で大忙しだ。駆り出されてるよ」
良介さんから当日の状況を聞いた。
自分にそんな事が出来るかどうか考える。
「京也には敵わないな⋯⋯」
零れてしまった言葉に、自分で驚く。
三人はふわふわと現実味のない京也の存在が、今でも尾を引いていると言った。
特にこの二年近くはほとんど会っていなかった。
落ち着いて見えるのはそのせいだろう、と。
「アキ、そういえば、ロンドンでいい出会いがあったそうじゃないか」
秀之さんが探るように言ってきた。
「ええ、帰る前に大変な目に遭いましたが。後でゆっくりお話します。⋯⋯長くなりそうだから」
苦笑い。
「でも、芯が通ったみたいだな」
秀之さんにはそう見えるのだろうか。
「だといいんですが。⋯⋯憧れてた京也がいなくなって、ええと、少し、途方に暮れてます」
「うん、そうか。憧れてたか。⋯⋯まったく二人揃って」
ジーンみたいに秀之さんが口の端を片方だけ上げて笑った。
良介さんと竜二さんも俺を見てる。
「もう、迷いませんから」
「絶対だな? 京ちゃんに誓えよ?」
「⋯⋯はい」
秀之さんの気迫にたじろぐ。
「ははっ、頼りにしてるよ。それからな、敬語はもうやめろよ。なあ?」
「ああ、俺たちは対等だからな」
良介さんが同意する。横で竜二さんが頷く。
「⋯⋯頑張りま⋯⋯るよ」
ブフッと三人が吹き出した。
『アキならできると思うんだ。きっと。君なら任せられる。⋯⋯アキにやってもらいたい』
──うん。京也。俺、改めて君の願いを受け止めるよ。
京也13歳、アキ12歳。
まだアキがひねくれて無かった頃。




