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66.咲と帰還

俺はいつの間にか、むさ苦しいメンバーの一員にされていた。


飯だ、会合だと何かと呼び出される。

面倒なので断っていたら病室が会合の場になって逃げ場がなくなってしまった。


常に咲のそばにいられるのはありがたいが、いつも部屋に誰かがいて落ち着かない。


ダターンあたりから咲のことを聞いたんだろう。

「こういう時は一人じゃない方がいい」と肩を叩かれたり、咲の様子を聞かれたりするが余計なお世話だ。

むしろ咲との二人の時間を邪魔しないでもらいたい。


一方でエーハルーンたちとの連絡はパタリと途絶えた。ダターンがちょくちょくやってきては進捗を確認しにくるくらいだ。


まあ、ここにいてもアイツらのやることはないが。


日中は周りが賑やかで、咲との静かな時間は夜だけになった。

咲の顔色が少しずつ良くなってきている。魂が戻ってきている証だ。

良かった…今回はこの前みたいに先が見えないほど長くなることはなさそうだ。


それでも咲が目覚めたのは倒れてから一月以上経ったあとだった。毎日工房の奴らが騒がしくてなんだかあっという間だった。


「アンセ…?」

咲が目覚めたのは朝みんなが来る前だった。


「…咲!!目覚めたのか!!!じゃあ帰ろう!今すぐに帰ろう!」

抱きしめようとして、あまりにも弱々しい姿に咲の手をそっと握る。


邪魔が来る前に帰ろう。

岩山も俺の手を離れているし、レイは見つかった。咲も心残りはないはずだ。


ところがすぐにエーハルーン達がやってきた。

仕方なく咲をベッドに座らせてみんなと話せるようにする。

お見舞いに来た奴らは口々に咲の目覚めた喜びとお礼を伝えているが、俺の顔色を伺っている。

分かっているならさっさと挨拶を終えろ。


黙っていると出られそうにないので「帰ります」と宣言する。


エーハルーンは表情を引き締めると「準備はできています」と言った。


いざ出ようと思うと、咲は帰る前にレイに会いたいと渋る。

レイはすぐに主天界に帰ってくるだろうから気にせず帰ろうと促すが納得していない。


すると外から誰かが駆けてくる音がして部屋にレイが飛び込んできた。


俺は我慢したのにレイは咲に飛びつくと「おかえり」と言って抱きしめた。咲は嬉しそうに「ただいま」と返し、二人は抱き合ったまま話し続けている。


「帰るぞ!」何度も心の中で叫ぶ。

でも嬉しそうな咲の顔を見る度に言葉を呑んで我慢する。


ようやく咲も落ち着いて出る準備ができると、満を持してザケールが風球を外に用意した。

エーハルーンが天界の出入り口まで見送りに来た。


「何かあればいつでも来てください。いつでも全員で歓迎します。もし困った事があれば駆けつけるので言ってくださいね。ではしばしお別れです。」


ようやく二人になって、主天界に向かう風通路で咲を抱きしめた。やっと咲がここにいるという実感が湧いてくる。

咲は苦しいと騒いでいるが、咲を狙う奴が多すぎる。目を離したら誘拐され、気を失ったら大いなる力に囚われる。できることならずっとこうしていたい。


腕の中の咲の存在を実感していると「シャワー浴びてなくて臭いからやだ」と暴れている。

毎日俺が清拭していたから大丈夫だと言うと今度は恥ずかしがって顔を胸に埋めている。

くるくると態度が変わる咲に思わず目を細めて笑みが溢れる。


流石にからかいすぎたのか「もうしらない!」と怒ってしまった。俺が拭いたのは顔だけだと言っても本当のことなのに信じてもらえない。


なんとか機嫌をとると、咲は心配かけたと俺に謝ってきた。今回は咲は悪くない。どちらかというと俺のわがままに付き合わせてしまった。


そして長く眠っていた間は、予想通り大いなる力と話していたらしい。その話の中で、大いなる力が俺のことを口にしたと言う。


大いなる力が俺のことを気にかけていた…?

大いなる力は一つ一つの魂に関わらないはずだ。俺なんてここに来る時に呼ばれてもいないのに、にわかには信じられない。

ただの話題の一つなのか。

それとも何か意味があるのか…


主天界に着くとナミさんとリノが俺たちを待っていた。


咲を抱きかかえながら、家に連れて帰ろうとすると引き留められる。

咲は病院。

俺は家。

またこの話だ。


もうたくさんだ。

俺たちは婚約者だからもういいだろう。

ようやく咲が俺の元に帰ってきたんだ。またどこかに連れ去られないように目の届くところにおいておきたい。


今回の功績から俺も病院にいられるように説得できた。咲は体調も良さそうなのですぐに退院できそうだが、その短い時間でさえ離れるのが惜しい。


咲の部屋に入ろうととすると、何やら看護師と楽しそうに話している。耳を澄ますと婚約の時の言葉について盛り上がっていて、部屋の中に入りそびれた。

アンセはすぐに連れ去られる咲が心配なのに、本人は全く気にせず。

むしろ咲に暑苦しいと思われている残念なアンセ。

西天界の樹一族はアンセに頭が上がりません。

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