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61. メタセキュオイアの加護

ぐちゃっという湿った音と共に穴から頭を出した。

目を瞑っていて良かった、隙間から入り込んだ液体が目に染みて痛い。

さっき吸った鼻の奥も痛い…


護るって言わなかったか?


咲も予期せぬ俺の姿に驚いたのか、メタセキュオイアにどうしたらいいのか尋ねてくれる。


護るって言ったの

樹液を吸収するの


メタセキュオイアは護ると繰り返すが、どちらかというと嫌がらせにあった気分だ。

それにこの液体を吸収するってどうしたらいいんだ?

これを舐めるのか?食べるのか?


鼻がバカになっているので臭いは分からないが、あまり気が進まない。

身動きできずにいると段々と頭を重くしていたものが軽くなっていく。


と同時に、頭の不快感がすうっと消えていく。

恐々目を開けてみると目は痛くないし、視界がはっきりしている。


「アンセ、どう?」

「…なんだか頭がスッキリした気がする。」

咲はほっとしたように笑った。


メタセキュオイアに礼を言うと、家に戻ることにした。


家に向かって歩いているとその効果をさらに実感する。

上手く言えないが、いつもの調子に戻ってきた感じだ。もうすぐ黄色の時間になるのに眠くもない。

当たり前の感覚が戻ってきて嬉しくなる。


メタセキュオイアの所でだいぶ時間を使ったので、先にレイが家に来ているかと思ったらまだ来ていなかった。


「レイまだかなあ」

咲は窓の外を見る度にレイの名前を呟く。


嬉しいのは分かるが…

これから帰るまでの数日間、レイと三人で一緒に暮らすのにこれを毎日見せつけられるのか。

…堪ったものではないな。


「ずっと側にいてね。」

急にそう言って咲がもたれかかってきた。


「何だ、どうした、何が起きた?」

突然の咲の言葉に嬉しさよりも動揺して思ったままを口にしてしまう。


「そんなに驚かなくても良いじゃない。素直に思った事を口にしたのに。もう恥ずかしいから言わない!」


しまった…

素直に受け止めておくべきだった。


咲はさっと俺から離れると「お腹も減ったし、エンカントでお祝いしよう」と言い出した。


咲は待ち合わせ場所を変更する、とレイに連絡した。

レイはちょうど家を出たところで無駄足にならずに済んだようだ。


俺たちもエンカントに向かう。

すっかり忘れていたが祭りの最終日だった。


エンカントのある広場は今までとは比べ物にならないほどの人混みだった。一歩前に進むたびに肩がぶつかって思うように前に進めない。咲を守りながらとなると、とてもエンカントに辿り着けそうにない。


レイに連絡すると、同じように広場の人混みに阻まれ、店には辿り着けそうにないと言う。

結局、俺たちの家に集合することになり、家へととんぼ返りする。


何を作るかな。

食材があまりない。

買い物に行きたいが咲を置いて行くわけにもいかない。


そんなことを考えていると咲がまた余計なことを口にする。

レイを北天界に連れて行ってハルとお見合いさせようというのだ。


レイは放っておいても相手に不自由しなさそうだし、俺たちが心配することではない。


咲の提案は、恋愛の心配ではなくレイの寿命の心配からきていた。

今回レンが一人で長く生きて孤独を感じていたのを見て、その姿をレイに重ねたのだ。


俺たちは中途半端に地上から呼ばれたから、ナミさんのように長生きする人だと周りに思われていない。

だが、確実に天界人よりも長生きすることになる。


今はいい。

でも歳を重ねるに連れて奇異な目で見られるようになるだろう。

レイには俺たちもついているし、いいんじゃないかと思うが咲はそうではないらしい。


「それはそうなんだけど。会ってみるくらいは良いかなって思うの。」

「じゃあ好きにしたら。あとは知らん。」

あとは本人次第だろう。

無理やりくっつけてどうにかなる話じゃない。


…大体ハルも気の毒だ。好きな女に別の女を紹介されるなんて。ちょっとだけ同情する。


話が終わるとちょうどレイがやってきた。


二人がいちゃつくのを見ていたくないので、二人を買い物に出す。


ふー…

ようやく落ち着いた気がする。

リラクフラグランを飲んで一息つく。


ふとメタセキュオイアが言っていた言葉が頭をよぎる。


「護る」

昇華することから俺を護る、とは思えなかった。

天界の存在意義は魂を昇華させることなのに、昇華を邪魔をするのはその意に反する。

それに俺の業が百年も経たずに浄化されるとも思えない。


とすると俺は何かに狙われていると、暗に示唆されたのだ。


でも一体何に?

メタセキュオイアが加護を与えなくてはならないほどの力…


嫌な汗が背中を伝った。


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