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60. ようやくの再会

どうやらレンは昨日のうちにあの場所に監禁されていたようだった。


今思えばミワンタがうちに来た時、レンは行方不明だと言うのに家には居ないと断言していたのは不自然だった。


咲の味方だと言うがミワンタはまだ信用できない。


「…レイを探してくれている?」

でも咲はすっかりミワンタを、何ならダターンのことさえも信じているようだ。

咲の言葉にその想いが見て取れる。


「あり得ますね。シツアンルに連絡してみます。」

それに縋るようにミワンタが早速連絡を入れている。


しばらくするとシツアンルから連絡が来た。

念の為、シツアンルからの伝言を聞かせてもらう。


あの職人の学校に集合か。

岩の間を縫うようにして通った苦い経験が頭をよぎる。


祭りで酷い人混みを避けて行くにはその道しかないと咲が言い出す前に却下する。


だが結局、似たような道…家と岩の合間を突き進んで目的地に向かった。

今日はずっとこんな感じだな。


細い道を抜けると学校の近くに出た。

学校のある洞窟を覗く。


「レイ!」

咲は勢いよく飛び出して行った。


中にはレイとダターン、前に見た女性の三人が居た。

レイをようやく見つけたことに喜びよりも安堵感が先に立ち、深いため息が出る。

ようやく帰れる。

肩の荷が下りた気がした。


レイは咲がここにいることに驚いていた。

どうやらこの西天界行きはナミさんに連絡済みだと聞かされていたらしい。


レイは一体何のために西天界に連れて来られたのだろうか。

レイの話を聞いても分からない。


咲は本来天界間の移動は禁止されているが、自分たちのような異端児…地上から呼ばれた魂は特別だとレイに伝える。


「だから、レイにはここに残ると言う選択肢もあるけど、できれば一緒に主天界に帰って欲しい」と咲がレイにお願いする。

咲も一緒に帰って欲しいなら馬鹿正直に残る選択肢があることを伝えなければいいのに…


頼むレイ、帰ると言ってくれ。

これだけ苦労したんだ。

帰ってもらわないと割に合わない。


「帰ろうかなぁ、なんだか思っていたのと違うしね。」

よし、帰ろう。

レイ、英断だ。


「良かった!この機会を逃したら主天界にはなかなか戻れないから会えなくなるなぁって不安だったんだ。」

咲がほっとしたように顔を綻ばせた。


レイは咲の発言にまた驚いている。

どうやらいつでも帰れると言われていたらしい。


ダターンは困ったように、今回に関しては西天界側の問題なのでいつでも帰れるように配慮すると言った。


まあ、どっちでもいい。

レイは俺たちと帰るんだろう。


咲はレイになんでここに来たのか、ここで何をしていたのかと矢継ぎ早に質問する。

レイがそれぞれの質問に楽しそうに答えているのを見て、もしかしたらここに残りたいのかもしれないと思った。


すると咲も同じことを思ったのか、レイに本当に主天界に帰るので大丈夫かと尋ねた。


さっきもそうだが、咲は相手のことを大切にしすぎるきらいがある。


咲の問いに「できるならやっぱりしばらく西天界に残りたい」とレイが答えた。

心配になって咲を見ると寂しそうな顔をしている。


レイのやつ、咲の気持ちは分かっているだろう。


しかも西天界の誰もレイの帰還の自由を保証しないから、咲がエーハルーンに交渉することになってしまった。

西天界の奴らの対応に苛立ちを覚える。


一言物申そうかと思ったら、レイは嬉しそうに咲に抱きついて、俺を見てドヤ顔をしてくる。

俺だって最近は咲を抱きしめるくらいできるんだ。


彼氏としての余裕を見せる。

何なら今は夫婦設定なんだからな。


レイと無言の闘いを繰り広げていると口を挟むタイミングを逃してしまった。


するとミワンタがダターンに質問を投げかける。


「兄さん、あのね、この顛末を知ってどうしても兄さんから直接聞きたかったの。どうしてこんな事したの?馬鹿なことをしたって分かっているよね。」

珍しくミワンタが強い語気でダターンに迫る。


ダターンも驚いたのか「冷静になればおかしかった」と小声で答える。でも部外者がいる中で話せることは何もないと断言する。


話を聞きたいミワンタに俺たちは追い出される。

全く好き勝手言いやがって、聞く権利は俺たちにはあるだろう。


気が抜けて疲れがどっときた。

とりあえず家に帰りたいと思っていたら咲が樹々にお礼に行くと言い出した。

確かに今回はお世話になった。

…今じゃないとダメなのか?

咲を一人で行かせたくはない。休みたいが家に帰ったら今日はもう無理だ。


咲がレイを誘ったので俺たちの家に引っ越すことになった。レイは荷物をまとめてからうちに来ることになったので、咲と二人で森の奥へと向かった。

曲がりくねった道を歩いて連れて行かれた先は、太っ腹な体格の大木だった。


メタセキュオイアというらしい。

喋り方も体格に合ったおっとりとしたおじさんだった。


咲が今回のお礼を言うと、モオントレーも役に立って良かったとメタセキュオイアは言った。


モオントレー…あの白いさくらんぼみたいな実だろう?

何の役に立ったんだ?

片方は俺が、もう片方は咲が持っていたはずだ。

レイを見つけるのにすごい時間がかかったので役に立った気がしない。

と思ったらどうやら咲が行方不明になった時に活躍していたらしい。


双子の実の片割れを持っている者同士が思い合うと磁石のように引き付けられるようだ。

確かに咲はお茶の作用で三日ほど意識がなかったが、目覚めてからはあっという間の解決だった。

モオントレーはあの実をくれた時点で咲のことを予見していたのだろうか。

だったら、実をくれるよりも忠告して欲しかった。


それからメタセキュオイアは咲に時計草を救ったことの礼を述べると、今度は俺を護ってくれると言う。

護る?何から護ってくれるんだ?

メタセキュオイアの話はよく分からないことが多い。


メタセキュオイアに呼ばれてウロの中に顔を近づける。するとにゅっと穴が大きくなり頭が入るくらいの大きさになった。

そして目を瞑ってその穴に顔を突っ込むように言われてその通りにする。


その次の瞬間、息ができなくなった。


ネバネバした何かが俺の顔を一瞬で覆い、鼻が塞がれる。手で取り除こうにも、手はウロの外で顔に届かない。


死ぬ!


幹に足を掛けて両手を突っ張って全力で顔を引っこ抜こうとするが、頭は抜けない。


咲が耳元で「アンセ、息!息吐いて!思いっきり吐いて!」と叫んだのが聞こえて、吸うのではなく思いっきり息を吐き出すと、鼻や口に詰まった液体がぶっ飛んで少し呼吸が楽になる。


危なかった。

本気で死ぬかと思った。


護ってやるなんて言われて油断した。

恐る恐る呼吸をする。息ができた。

そのうち穴が緩んだので、そっと顔を穴から出した。

やっとレイに会えました。

咲は嬉しくてお礼をしに森にいくと、樹々はアンセの心配をしていました。実は真剣にアンセは大変な事態なのです。

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