47. レイ探しとモオントレー
何度引き返そうと思ったか分からない。
ようやく岩を抜けると森に出た。
道の開かれるままに進むと、細長い葉っぱの大きな大木にたどり着いた。
見たことがないと思うが、みんな似ているから自信はない。そういえば、クノーに誰かに会えって言われた気がする。
こいつかな?名前が思い出せない。
咲が名前を聞くとその大木はモオントレーと名乗った。
「ああ、思い出した!クノーがもっとくれ、みたいな名前の奴に会えって言ってたぞ。多分この人だ!」
そう言うと咲がとても嬉しそうに笑った。
人、と言ったのが嬉しかったらしい。最近樹々の声が聞こえるせいで、いつの間にか樹々を対話する対象として見ていたことに気がついた。
モオントレーは導く樹なのだと言う。
咲も何を導くのかその真意を聞こうとして質問するが教えてもらえない。考えろってことだがヒントが少なすぎる。
その答えの代わりなのかモオントレーはその大きな身体に似合わず、さくらんぼのような小さい白い実を咲に渡す。
前に咲の家にあったような巨大なクノーやエネールの実を考えると、この実も特別なんだろうがかなり小ぶりだ。
エーハルーンに会うのでは、とモオントレーに促されて急いで待ち合わせの場所に向かう。示される道に沿って進んでいくと広場の真ん中に出た。こんな近道があるなら最初から通りたかった。
時計台を見るともう約束の時間だ。
急いで店に行くと行列になっていた。
予定時間までに入れるか?
心配しているとミワンタが隣にやってきた。一緒にメニューを見るフリをしながらメモを交換する。順番が来るまで世間話をするとミワンタは列を離れていった。
最後の力を振り絞って家に帰ると咲がお茶を淹れてくれる。
二人でお茶を飲みながらメモを確認する。
レイに関してはエーハルーンも南で話を集めるとあった。あとはエーハルーンの兄姉の行動も書かれていた。
「オペランにメモを託して受け取ってもらうとか。」
エーハルーンとは出来るかもしれないがレイは難しいだろう。大体どいつがオペランなのか説明しないといけない。
「…オペランは色んな所に居るから間違いやすいかな。それにオペランが歌っちゃったら、他の人に聞こえるかもしれないから心配。」
樹々の声が日常的に聞こえるのは咲くらいだ。俺も最近聞こえるが、咲みたいに全て聞こえるわけではない。
…オペランの事は一旦置いておこう。
咲が納得した理由は理解不能だが、オペランの助けを借りるのは諦めたようなので放っておく。
疲れた…
咲には悪いがそろそろ体力の限界だ。
先にベッドに横になった。
朝はいつも通り目が覚める。
朝黄色の時間くらいまでは体調もいいのに、それを過ぎると途端に怠くなる。
この異常さは誰に聞けば分かるのだろう。
主天界を出たこととは関係ないはずだ。
南天界のときは普通に過ごせていた。
西天界が肌に合わないのか?
体調のことを考えても仕方ない。
今日はレイがいる可能性のある南の街を探索することにした。咲が昨日の岩の隙間を見ているので、二度と行かないと宣言する。
言っておかないとまた行きたいと、言い出すに違いない。
レイが昨日話に出ていた職人かもしれないので工房を優先して見て回る。
なかなか面白い道具があるな…
思わず道具屋のおじさんと話が盛り上がる。
型で作品を作るのは好きではないが、これからは速さも欲しい。それにこの素材なら細かいデザインも作れるかもしれない。
俺の指定したもので作ってもらいたいと話すと、おじさんの息子が工房で作っていると言うので紹介してもらう。
気持ちが上がってきた。
疲れている場合じゃない。
「レイのこと忘れてない?」
咲が怪訝そうに尋ねる。
「…いや、今から行く工房にいるかも知れないだろう。そしたら堂々と入れるじゃないか。」
咲は俺の言葉に頷きながらも腑に落ちていなさそうだった。
まあ、道具に夢中になって、レイのことを一瞬忘れてた俺も悪い。
紹介されたイーロンと言う工房に行くと、さっきのおじさんの息子が出てきた。
ダツと名乗った息子は、素材の開発が主な仕事で道具作りは趣味らしい。勿体ない。
忘れないうちにデザインを書いて、型を注文する。
お代は即席で、装飾に施すデザインを考えてやることで手を打った。
金はナミさんからしっかりもらっているから、普通に払えば良かったかもしれない。俺のあげたデザイン画に喜んで浮き足立っている様子を見て反省した。
「俺の発注した型を忘れるなよ!」
ダツの背中に向かって念押ししたが、ちゃんと聞いていたのか怪しい。




