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45. 旅の疲れとレイ探し

「で、何を隠しているんだ。ナミさんの意図は分かったが、金のこととは別だろう。」

トビーは俺の質問の矛先を逸らしたので本題に戻す。


「はあ。まあ、そうだな。あの金は身代金に使えるように余分に入っている。万一、レイが人質だった場合、本人にその自覚があるかないかに関係なく要求される可能性がある。」

身代金か…

中を確認したわけではないが、ぱっと見少ない気がする。


「…足りない分はエーハルーンが出すことになっているので安心しろ。基本的には生活費として使ってくれたらいい。」

やはり最近、思っていることが顔に出るようになってきているらしい。

気をつけよう。そんなところは咲に似たくない。


「本来、天界には誘拐とか身代金とか考える奴らはいない。俺もナミに言われるまで思いもつかなかった。でもグネルのように狂信者は善意で何をするか分からない。シャドーをまとい、自身を燃やしてまでも全うしたかったことは何なのか、俺には想像もつかない。」

「そうだな。善意でというのが怖いな。」

グネルは天界生まれの天界育ちだった。

なのに自らシャドーを宿して、それを操っている幻覚に囚われて最後は飲み込まれた。


あの博士の何に惹かれるのか。

ずっと博士を忌み嫌ってきた俺には分からないし、分かりたくもない。


「そろそろ、降りるぞ。緑の時間までに連絡すればエーハルーンもお昼と称して街中を出歩けるので、話す機会があるそうだ。西天界に着いたら連絡しておけ。エーハルーンとその妹のミワンタと両方に連絡して欲しいそうだ。あとは頼む。」

そう言って俺の手に紙切れを乗せると、トビーは風通路を飛び降りた。


天界間の移動はもう三回目なのに咲は相変わらず乗るのを躊躇っていた。

高所恐怖症はすぐに治るものではないから仕方ない。


西天界に着くと主天界の出入り口と同様に森の中に到着する。

樹々の作る道に沿って行くと遊歩道に出る。


街までなかなか距離がありそうだな。


まだ森を抜けていないのに息が切れている。

こんなに体力なかったっけか?

それとも天界間の移動に疲れたのだろうか。

それにしては妙に身体が重たい。


遊歩道を抜けると街の端っこに出た。咲が樹々に確認して西天界の中心に有る樹の館を目指す。


流石に疲れたので途中で風板を借りることにする。二人乗りをしながらのんびりと向かうと中央に大勢の人が集まっていた。


そういえば、祭りがあるとか言っていたな。


お昼を食べているとエーハルーンから返信があって店を移動することになった。

できれば動きたくない。でもトビーから預かっている手紙を渡さないといけない。


重い腰を上げて待ち合わせの場所に行くと立ち飲み席しか空いていなかった。早くエーハルーンを見つけて移動しよう。

人混みに目を凝らしてエーハルーンを探す。


ひどい混みようにこれは会えないかもしれないと心配になる。でも今日は何としてでも会わないと泊まる場所すら分からない。


焦っていると、街の人に話しかけている体でエーハルーンが女性と二人でこちらに挨拶に来た。


エーハルーンもまた手紙を用意していた。

紙をお互い交換すると当たり障りのない話をして二人は去って行った。

一緒に居た女性が妹のミワンタなのだろう。


一刻も早く座われる場所に移動したくて飲み物をぐいっと飲み干すが、咲は飲み物を堪能している。

美味しいものを食べるのが幸せと言う咲を急かす気にならなくて、飲み干すのを待ってから席を立つ。


人気のない横道のベンチに移動して手紙を見ると、西天界の簡易地図と今後の事が書いてあった。


まさか俺たちのこれからの住居がさっき通ってきた街外れにあったとは…

先に知りたかったが、仕方ない。


風板でもと来た道を戻る。

住居に着くと、ちょうど家から出てきた隣人が挨拶をしてくる。


天界全体の祭りなのにこの人は行かないのか?

勘繰っていると、咲は普通に自己紹介している。


あまり街の人に認識されない方がいいのに何しているんだ…

だが止める元気もない。


今日はもう外出は終わりだ。

そう思った矢先、咲は早速近くの森を散歩に行きたいと言い出した。


「今は休みたい」と言うとお茶を淹れようと咲が準備を始める。

でもすぐに部屋には何もないことが分かった。


「私が探してくるよ。待ってて。」

一緒に行きたいが、腰を下ろしてしまったら動くのが億劫になってしまった。


咲は時計草に食料品店の場所を尋ねるとさっさと出かけて行った。


咲を見送ってちょっと横になったつもりが気付いたらもう青の時間で辺りが暗くなり始めていた。


咲は起きてきた俺を心配そうに見ているが、俺自身はさっきよりもスッキリしていた。


「さてと、飯でも作るか。」

咲の買ってきた材料を確認する。

買ってきた野菜が丁寧に机に置いてある。


野菜の下ごしらえをして…


何も言わずに咲に買い物を任せたのは間違いだった。調味料が見当たらない。


「調味料買った?」

咲はきょとんとしている。

…買っていないらしい。


急遽、方向転換してトマトのように煮崩れて味も出るグロウを味付けに使うことにした。


飯の味が心配だったが「調味料なくても美味しい!」と咲は絶賛した。食べてみると、グロウの優しい味が今の身体にはちょうど良かった。


翌朝、赤の時間に目覚めるとまだ少し外は暗かった。

昨日疲れて確認できなかった西天界の地図をしっかり頭に叩き込む。樹の館の背後には岩や森が広がっていて普通の人はあまり立ち入らなさそうだ。


全体的に南天界と街の作りが似ている。樹の館の後ろに海があるか、岩山があるかの違いだけだ。


昨日通ってきた感じだと俺たちの家のある北側は割と廃れていたように見えたのは祭りで店がほぼ閉まっていたせいだろうか。数日歩き回ればもう少し様子が分かるだろう。


咲をそろそろ起こそうかと思ったらちゃんと起きてきたので驚いた。少しは成長したらしい。


今日はまずはレイを探すことにした。

エーハルーンの兄姉の身辺調査するにしても限度があるからだ。レイを見つけて、一緒にいるやつを突き止める。その方が早いはずだ。もちろん、レイがここに連れてこられている前提ではあるが。


飯を食べるとすぐに中央の広場に向かった。

どうやら祭りというのは、ずっと開発していた新しい素材の完成祝いのようだ。


誰もが真剣に広場に並んだ素材を吟味している。

これからここに並んだ六枚の素材のテストをして一番を決めるらしい。

公正を期すためにどれがどの工房なのかが分からないように番号だけが素材に書かれている。

そのため、それぞれがどこの工房のものか推測し合っていて始まる前から盛り上がっている。


しかし、この人混みの中レイを探すのは難しかつた。

しばらく探し回って疲れたので休もうと店に入ると、近くから興味深い話が聞こえてきた。


アンセは明らかに体調が悪いけど、咲に心配かけまいと振る舞っています。

でも咲はちゃんと気づいてます。

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