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44. ナミさんの伝言

朝早くにレイの家を見に行くといつも寝坊助な咲が既に来ていた。


レイの家は空っぽでさっきまで人がいた気配がなかった。

くまなく探したわけではないが、バッグがなく風電話や財布も見当たらない。


咲は動揺しているが、咲なりに感じていることがあるのだろう。

レイが西天界にいるかもしれないと言った時、「なんで西天界なのか」ではなくて「レイは悪いことしない」だった。


咲はダメ元でクノーに話を聞きに行く、と言うのでついて行くことにした。

…樹々は俺を受け入れた。


咲はレイの居所をクノーに尋ねたが勿論教えてもらえない。

分かっていただろうに、咲がクノーに八つ当たりすると、疲れて眠り込んでしまった。

多分、夜ちゃんと寝れていなかったのだろう。


アンセ

咲をお願いしますね

…あなたも気をつけなさい


「どういう意味ですか…」

答えがない。

詳しくは教えられないが樹々がわざわざ声をかける程には危険だということだ。


「忠告ありがとうございます。」

クノーはサワサワと揺れた。


行く時間でしょう


クノーはそう言うと、咲の頭を葉っぱでそっと撫でた。クノーの言う通り約束の時間が近いので眠っている咲を連れて森を出た。


さっきの忠告は、最近疲れて夜に眠くなることと関係あるのか?

いや、それはただの疲れだろうなあ。

今日は既に、一仕事終えて疲れている。


家に着くともう少しで橙の時間が終わり、昼になろうとしていた。咲が目覚めると急いで出かける準備をして樹の館に向かった。


ナミさんとトビーは建物の入り口で待っていて、俺たちが着くとすぐに出発した。

南の出入り口に向かう風通路に乗ると、トビーが相乗りしてきた。おじさんと二人乗りする趣味はないんだが…少し離れて座るとトビーが話しかけてくる。


「ナミからの伝言があるんだ。咲はレイに気を取られて冷静を欠いているから、お前に託す。」

そんなことだろうと思ったが、樹になるのは咲じゃないのか?


「前にも言ったが、樹の在り方はそれぞれだからな。咲に執務は向いてないだろう?任せても結局、アンセお前が尻拭いすることになるのが目に見えている。だったら始めから自分で把握した方がいいだろう?」

それはそうだが、天界と咲の両方の手綱を握り続けるのは至難の技だ。


「まあ、咲に伝えるかどうかも含めて一任するよ。それでだな、レイは西天界に連れて行かれた可能性が高いと俺たちは考えている。もちろん、主天界で何か事件に巻き込まれた可能性もある。それに関しては分かった事があればエーハルーン経由で連絡するから安心しろ。」

確かに主天界にいる可能性もある。

その場合は、西天界に連れ去られたのと同じくらい問題だ。レイが連絡できない状況にいることになるからだ。


その状況を俺が咲に伝えるのか…

この夫婦はすぐに俺に面倒事を押し付けてくる。


「本題の方だが、その件はエーハルーンから逐一こちらに連絡が来ることにはなっている。だが、全てが俺たちに教えられるとは限らない。出来るだけ事態を把握して帰ってきたら報告して欲しい。この件は俺もナミも、博士が絡んでいると睨んでいる。気をつけて行ってきてくれ。金で解決するなら、それでもいい。」

そう言って前の席にいるナミさんの横の重たそうな袋を指差す。

随分と太っ腹だ。


「あんなに金が必要なほど危険だと思っているのか?」

「いや…短期決戦ではない気がしているので多めに生活費をだな…」

いつも歯切れの良いトビーが言葉を濁す。

まだ隠している事があるのか。


「俺たちが、現場に行くんだ。隠し事はやめてくれ。知らなかったせいで何かあったら俺は許さないぞ。」

「そうだな…」

それ以上トビーが口にするのを躊躇う。


沈黙の末、トビーが話を続ける。


「ナミも昨日のうちにレイに連絡しているんだ。でも返信がなかった。もしレイが無事ならナミは今回は自分が西天界に行きたいと言っていたんだ。」

「そんな話は聞いていないが。」

「ナミは、この前の四天界の会合を顔合わせと称して咲に楽しんで欲しかったんだ。でも、その意図とは裏腹に博士の思惑に巻き込まれた。それで、今回も危ないだろうと分かった時点で自分が行こうとした。でもエーハルーンは暗に咲を指名した。」

「エーハルーンが?なんで?」

「知らん。向こうで聞いたらいいだろう。とにかく、咲が嫌ならナミは自分が行く準備をしていた。」

なのに咲は、あっけらかんと西天界に行けると喜んでいたのでとりあえず咲に行ってもらうことにしたのか。


「それでも最初はナミは自分が行くか悩んでいた。だがここにきてレイが絡んでいる可能性が出てきた。咲はレイが拐われたのかもしれないと知ったら、博士が関わっているかどうかに関係なく西天界に飛び出して行くだろう。だからナミは、エーハルーンにかなり強い口調でお前たちを守るように伝えていたし、金も持たせると言って準備した。」

ナミさんは、俺の扱いに比べて咲には過保護だな。

まあ、いいけど。


「咲をちゃんと守れよ。体はどうにかなるが、心は…魂はそうはいかない。咲は…狙われているからな。」

「分かっている。今度はない。嫌われても咲の魂は守るさ。大いなる力になんて負けないから安心しろ。」



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