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43. レイの行方

翌日はまた樹の館に引き継ぎに行くことになっていた。


夜は色々と考えさせられた。

咲は待つと言ってくれたが、カヅキみたいな奴がまた現れないとは限らない。


咲に分かりやすく誓わないと、なかったことにされかねないがどうしたものか。


こういう時、俺には相談する相手がいない。

咲は天界育ちではないから、むしろ地上流でいいのかもしれないが、そうなると尚更、相談相手がいない。


…ハルくらいだ。

でもこの件は相談できない。羞恥心もあるが、余計なことを話すと横槍が入りそうだ。


そうだな…指輪を渡してから、大いなる力に誓うのがいいかもしれないな。

咲のことだ、どんなに万全を期しても邪魔が入らないとは言い切れない。

咲には目に見えた約束の方が、見えない誓いよりも良さそうな気がする。


そんなことを考えつつ、しばらくは本業の仕事ができなくなるのでルサーイに連絡したり、持ち帰っていた作品を加工したりする。

もっと作品を仕上げるはずだったのに、今日はなんだかとても疲れて手が動かない。このまま続けても碌なものができなさそうだ。早く寝るとしよう。



翌日、樹の館に着くと、レイはどうするのかとナミさんに問われた咲が「忘れてた!」とレイに再び連絡を入れている。


昨日のうちにレイから返信がなかったのか? 


それは少しおかしい。咲なら分かるがレイはきちんとしている。行くのを悩んでいたとしてもその旨を咲に連絡するはずだ。

咲は気にしていないようなので黙っておく。今波風を立てるようなことではない。


ナミさんが早速昨日の西天界の出入りについての続報を教えてくれる。どうやらエーハルーンが、俺たちを西天界に呼んでいるらしい。

内密に身内を調査するのには限界があるし、これから祭りが始まるので手が回らないようだ。

ナミさんもそれを知っていて俺たちに予め声をかけていたのだろう。


それからカヅキのことですが、と改まってナミさんが言うので何事かと思ったら、カヅキが咲に贈る婚約指輪を用意すると張り切っていると言う。まあ、子供のやることだから俺の渾身のファレルジェルには勝てないだろうが、あとで面倒な事になりそうだ。


そんな話をしていたら昼になり、見回りに行くついでに飯を食べようということになった。


東の街に着くと、小洒落たレストランで「奥の部屋を」とナミさんが言うと、優先的に店に案内された。

クノーリアンも同じように横入りしていたが、日常的にこんな事をしているのか。


込み入った話をする時は必要でしょう、とナミさんは笑顔で言う。全く悪気はなさそうだ。

咲は美味しいもの好きだから、そんな権利を得たら緊急じゃなくてもレストランを片っ端から食べ歩きそうだ。今から先が思いやられる。


店では西の昔話をナミさんが打ち明ける。西天界ではなかなか後継ぎが生まれず、エーハルーン以外の兄姉も樹になる教育を受けていると言った。

その言葉の節々にナミさんはエーハルーンの三人の兄姉を疑っているのが感じられた。

闇雲に探すよりも、目星が付いているならありがたい。


夕方になってもレイから返事がなかった。


流石におかしい。

最初の連絡から一日が過ぎようとしている。

咲も気になったようでレイの家の様子を見に行きたいと言い出した。

今はまだ仕事をあがるには時間が早いので、俺の家で飯を食ってから一緒に見に行こうと説得しながら帰宅した。


家に着いたらまずは飯の支度をする。

昨日早く寝たはずなのに、今日はもう眠い。疲れが溜まっているのだろう。


よし、今日は飯作りに気合を入れよう。

美味いものを食べて笑っている咲を堪能して元気をもらうことにしよう。


咲はここに来る途中でレイの家を覗いたがまだ帰っていなかったと心配そうにしていたが、机に並んだ料理に咲は大喜びで、幸せそうに飯を食べた。


咲の笑顔にほっと癒される。

束の間の安らぎだ。


咲といると時間が経つのが早い。

気づくと青の時間を過ぎていたので、咲を家に送るついでにレイの家に行くと、まだ帰っていなかった。


これは何かに巻き込まれたかもしれない…


そう思ったが、明確な根拠もなしに咲を不安にさせるわけにはいかない。「忙しそうだから明日の朝にもう一度声をかけよう」と促すと咲も渋々同意した。


レイはおそらく西天界に連れて行かれたのだろう。

咲の連絡に全く反応しないのはおかしい。


返事しないのではなく出来ないのだ。

レイも地上から来た身だから昇華するには早い。

とすると風電話の通じない主天界以外の場所にいることになる。そして現時点で一番怪しいのは西天界だ。


咲にどうやって話すか。

あくまでも仮定の話だ。

不用意に話すと碌なことにならない気がする。


西天界に行って、天界間を移動した者の特定をしながら、レイを探すことになるだろう。


…ちょっと待てよ。じゃあ、西天界で俺は咲と二人で寝泊まりすることになるのか。

もしかしたら、求婚する機会があるかもしれない。

もう三ヶ月も考えて出てこない求婚の言葉が早急に必要になりそうだ。


結婚しよう

…ありきたりだな。


俺のファレルジェルを受け取って欲しい

…前に誰かがここでの定番の言葉だと言っていたが咲には遠回しで分からないかもしれない。


俺の飯を毎日食べて欲しい

…普通にシェフ認定されて終わりな気がする。「毎日来るね!」で終わってしまう未来しか見えない。


一緒に幸せになろう

…無難だがガツンとこない。


ガツンってなんだ?

そんなの必要なのか?

疲れた頭ではとてもいい言葉が浮かびそうになかった。

一週間くらいは滞在するはずだから、もう少しゆっくり考えよう。


明日はきっと早くからレイを探す咲に付き合うことに…

思考の途中で眠りに落ちた。

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