42.二度目の求婚
カヅキの突然の告白にナミさんやトビーは優しく見守っている。
咲は驚いたあと、笑顔で答えている。
「うーん。まだちょっと早いかな。カヅキは小さいから大きくなっても同じ気持ちだったらお願いしようかな。」
するとカヅキは俺たちは三百年以上生きるから歳の差なんて関係ないと答える。
咲を見つめる目は真剣だ。
子供のそれとは違う。
一人の男として対応しないといけない気がした。
咲を引き寄せて、俺たちは婚約しているから咲はカヅキと結婚しないと宣言する。
咲も俺に賛同するものだと思っていたら「俺の方が若くていいぞ」というカヅキの言葉に喜んでいる。
ちゃんと反論しろと言うと咲は「まだ求婚されてない」と口を尖らせている。
それを聞いたナミさん達はニヤニヤして俺を見てくる。風向きが怪しくなってきた。
咲、今その話をする場じゃないだろう。
いたたまれなくなってずっと持ち歩いていた、俺のファレルジェルをはめた指輪を取り出す。
なんと言って求婚したらいいのか適切な言葉が見つからなくてずっと渡せなかった。
求婚するのは初めてではない…
地上で求婚した時はさらりと言えたのに、なぜか咲への言葉が見つからなかった。
でも、このままだと格好がつかない。
「結婚しよう。もう一度大いなる力に…」
話している途中でトビーに止められる。
咲も目を見開いて指輪を見ている。
「そうか、求婚するには指輪がいるんだな。待ってろ、オレがもっと良いの用意してやる。そもそもずるいだろう、アンセの方が先に出逢っているから先に好きになるに決まっている。」
カヅキに余計な情報を与えてしまった。
咲がカヅキをなだめるが、カヅキは「出会う順番が違ったら結果は違ったはずだ」とハルと同じようなことを言う。
樹はみんな自分に自信がある奴ばかりだな。
咲はカヅキに求婚のお礼を言った後、ハルに言ったのと同じことをカヅキにも話す。
「カヅキ君、それは違うの。今の私がいるのはアンセのお陰なのよ。だから私がアンセに出会っていなければ貴方に求婚される事もなかったと思うの。」
カヅキは不満そうに引き下がった。
ガキの割には引き際を心得ている。
「アンセは、一度既婚者に求婚の方法を聞くと良いかも知れませんね。三度目は無いですよ。」
ナミさんに釘を刺されるのは納得できない。
確かに一回目は、ちょっと焦って咲が理解しているか確認しないまま大いなる力に誓いを立ててしまった。
さっきも流れで地上流の求婚をしようとしてしまった…
次はない気がしてきた…
「トビーはどうだったんだ」とこの場にいた唯一の既婚者に聞く。
忘れたとぼけているあたり、同じような感じだったに違いない。
ナミさんに聞いてやろうとすると、もう帰りなさいと追い返された。
咲のように顔に出ていたんだろうか…
館を出ると咲が「このまま出かけよう」と東の街に向かった。
それにしてもさっきのやりとりは失敗したなと反省する。
もっとスマートなやり方があったのに、あんなガキにやられてしまった。
色々考えていると、咲がそろそろ石が小さくなったから、ブレスレットを買いたいと言い出した。
俺は既にいくつかの装飾品を身に付けている。
親父のファレルジェル、指輪状の風電話、火を無にする石、火を生み出す石。
どれも日常的に必要で外せない。
役に立っているとは全く思えないが、透明な厄除けの石も樹々を燃やして以来携帯している。
これは減りが早いので数ヶ月に一回は買い替えている。
それに加えて咲との結婚指輪もつけることになると、結構いっぱいだ。それでも嬉しそうに石を探しているのを見ていると自分も欲しくなった。
石選びは不思議だ。
これがいいと直感的に見つかるのだ。
俺が選んだ透き通ったエメラルドの石は希望の石…転じて夫婦愛、安定の意味もある。
咲は紫のアメジストのような直感の石を選んだ。
俺と咲はまだ見ている未来が違うのだろうか。
気が付いたらお揃いのデザインのブレスレットが作られていた。
ま、いっか…
咲がさっきから俺の表情が暗いと心配そうに顔を覗き込む。
正直に俺の不甲斐なさを打ち明けると、「プロポーズ初めてじゃないでしょ!」喝を入れられてさらに情けなくなる。
なのに突然「ありがとう」と咲が言って俺の肩にもたれかかってきた。
驚いて体が反応する。
咲から甘えてくるなんて…
ここで油断して抱きしめると逃げられるやつだ。
俺もそれなりに学習している。
咲は美味しいものを食べて幸せになろうと言う。
「これをすると幸せになるってものを見つけたらいいよ!」と咲に提案される。
幸せになれるもの…
俺の気分が上がるのは咲の笑顔だ。
だから飯を食べることにしよう。




