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35. 毎度お馴染み行方不明

帰るとナミさんへの報告が待っていた。


疲れているだろうと朝ゆっくりしてから咲を迎えに行くと家に居なかった。


いつもの咲の「なしのつぶての電話」にも連絡する。


はあ、また咲探しか。


とりあえず樹の館に行く。

もしかしたらトッキーたちを迎えに行っているかもしれない。


樹の館に着くとナミさんが書類仕事をしていた。

ナミさんの隣にはトッキーとシアがいて咲が来た気配はない。


「あら、一人?」

「咲、知りませんか。」

「何度目かしらね、この会話。」

ナミさんが笑う。


もう毎度お馴染みだが、毎回ヒヤヒヤさせられる。

どこにいてもいいが、無事がどうかは知りたい。


「あ、何だ、来てたんだ。」

そんな話をしていると咲がひょっこりやってくる。


ため息しか出ない。


「役者が揃った様なので話を聞きましょうか。」

ナミさんは俺のことは気にせずに報告を求めてくる。


俺の周りは自由な奴ばかりだ。

諦めるしかないのか…


南天界のことの顛末を話すと、南天界らしいわね、の一言でナミさんはくくった。


いやいやいや…それだけなのか?

もっとあるだろう。シャドーもどきが拡散しているか確認するとか、過去を調べるとか…

ナミさんに視線を送るがニコリとかわされる。


ナミさんの注目は、エーハルーンの作った新しい素材の水筒だった。

軽いだけではなく、保温ができて見た目も装飾されている。

ついに出来たのね、とじっくり見ている様子は母親のようだ。


でもそんなナミさんの軽い反応を見ていると、もう終わったことだと思えてくるから不思議だ。


安心していると突然俺に話が振られる。


また顔が緩んでいて気持ち悪いと言う。

放っておいてくれと言いたい。


俺の顔よりどう考えてもシャドーもどきの方が大事だろう。


「咲も、面倒臭くなるのが分かっているのですから行き先くらい出し惜しみせず伝えておきなさい。今回は報告頂く事もありましたし良いですけれど、毎回ここで迷子の恋人探しはごめんです。」 

散々言われた後、咲のせいで俺まで怒られる。


咲も呆れているように見えて救われない。


そんな軽口を言っていられたのは、束の間で翌週に咲は突然姿をくらました。


珍しく「北の森に行ってくる」とだけ俺とナミさんに伝言を残して行ったが、それから全く連絡がつかなくなった。


ナミさんは「森にいるなら安心でしょう、樹々が咲を害することはないでしょうから」と意に介していない。

でも青の時間を過ぎても、一向に連絡がこない。


もうすぐ藍の時間が終わる。

それを過ぎたら、シャドーの粉が降ってくる「夜」になる。樹々が眠り、浄化をやめる間、空はシャドーで埋め尽くされる。

それを界膜が受け止めているが、許容量を超えるとシャドーが降ってくる。

主天界ではそれを「夜は闇に食われる」と言い伝えていて、天界の奴らは夜は外に出ない。


咲が葉が深く茂る森にいてシャドーから守られていればいいが、それすら分からない。


ナミさんにもう一度直談判しに樹の館に行くが、今やれることはないので明日考えようと言う。


樹々が騒いでいないから大丈夫だと繰り返すナミさんをの言葉を、信じられなくなってきた。


翌朝、仕事道具を持って樹の館に行く。

今日は咲の居場所が分かるまで居座ってやる。


優雅にお茶を飲むナミさんに、何度も樹々への確認を頼む。

毎回首を振るだけのナミさんに我慢できなくなって声を上げる。


「咲が心配じゃないんですか?夜をどう乗り越えたのか…樹は自分を浄化できないでしょう!」

「…あなたに叡智を分け与えて良かったのか…時々悩むことがあります。まさに今も…私も心配だから樹々に聞いているけど何も教えてくれないのよ。咲の風電話に伝言する以外何ができるの?メッセージを溜めて伝言を溢れさせて気付いてもらうしかないじゃない。」

もうとっくに許容量は超えてずっと俺の声が鳴り響いているはずだ。

それでも気づかないんだ。

何かあったと思うだろう。


「大体、南天界の件も放置でいいんですか。他の天界でも同じようなことが起きているかもしれないんですよ?」

「その件は、調べてもらっています。何か分かればいいですが、何か起こらない限り現時点で見つけるのは難しいでしょうね。」

なんだ、既に動いていたのか。肩透かしを食らった気分だった。

てっきり関心がないのかと思った。


「それにね…こんな形で伝えることになってしまって申し訳ないのだけど…私は近く昇華するかもしれないのです。そうすると自動的に咲にその白羽の矢が当たるでしょう。突然受け継いで大変な時に他の天界のことなんて気にしている余裕はないと思うのです。もちろん、原則的には各天界を治めるためにそれぞれ樹がいるので、気にする必要はないんですけれど。でも咲は気にするでしょう。」

ナミさんは、咲が引き継いだ時に主天界に集中できるように敢えて南天界の顛末に興味を示さなかったのか。

てか、ナミさんがもうすぐ昇華するのか?

待て待て、そんな急に言われても…


「いつです?いつ昇華するんです?」

「さあ…でもトビーとお腹の子供に申し訳なくて。」

え、妊娠してたのかこの人。

それで戦いに挑んでいたのか?

鉄人だな。

このタイミングで新しい情報が出てきて頭が追いつかない。


「そんなに驚かなくてもいいでしょう。前にも話したでしょう。」

そう言われればそんな気もしてきたが、ナミさんから妊娠している素振りが全く見えなかったので、すっかり頭から抜けていた。


「とりあえず咲には早めに話してくださいね。俺、ナミさんがいなくなった後、混乱した咲を一人でどうにかするの嫌ですからね。…じゃあ尚更、早く咲を見つけないとじゃないですか!」

「そうなのよね。話そうかなと思っていた矢先に、これだもの。」

この調子だと、咲を見つける前にナミさんが昇華したら俺に全部投げる気だ。


そうは問屋が卸さない。

一刻も早く咲を見つけなくては!



ナミはもう樹を引退する気満々ですが、心残りもあります。

次は咲の帰還です。

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