34. 新たな不安
南天界の出した答えに、盛り上がっている奴らをよそに俺は不安を覚えた。
主天界でシャドーもどきを撒くのは最終手段だったのは分かる。
ナミさんが気づかないはずがない。
気づかれた時点で計画の終了を意味する。
では他の天界ではどうだ?
北はハルがいる。
シャドーが見えて、樹として十分な知識もあるからシャドーもどきの危険性が分からないはずがない。だから北でハルを経由して広がる可能性は低い。
でも、定期的に主天界に来る使者に博士がアプローチしていたら分からない。
それは西天界も同じだ。
とは言え、絶対に樹に近い人間が関わっているはずだ。
その結果うまく隠されて、しばらく後に大事として顔を出す可能性はないのか?
ハルもエーハルーンも今の時点で何も知らないとするならば、それは本当に白なのか、埋もれているだけなのか、どうやって確認するんだ。
もう、次がどこかで始まっているのか?
俺には探す術が思いつかなかった。
「アンセどうしたの?」
まさか咲に表情を読まれるとは思っていなかった。
俺まで咲に影響されたか。
みんなが明るく楽しそうな中、俺一人が辛気臭かったらしい。
咲に懸念を話すと、アンセが樹になればいいのにね、なんて言われる。
そういう問題ではない。
今考えても結論が出ないので懸念は一旦置いておき、一緒に今の場を楽しむことにした。
こんなにぐだぐだな終わり方でもいいのか。
それはそれで少し気が軽くなった。
お開きになり、それぞれの部屋に戻る。
シャワーを浴びようとドアを開けると、咲の声がハルの部屋の方から聞こえてくる。
んん?何があった?
乗り込もうとして思い止まり、ドアの影から様子を伺う。
俺のことを話しているのか?
「… 今の私はアンセと共に成長してきた結果です。だから私に好意を持って頂いてとても嬉しいのですが、気持ちに応えられません…アンセがいいんです。」
なぜこんなにあっさりとハルには伝えられるんだ?
うん、俺がいいのか。
「…だそうですよ、アンセさん。」
まさか…居るのがハルにバレていた。
咲は俺を突き飛ばすと、部屋を飛び出して行った。
「なんか、悪かったな。」
「いえ。私もスッキリしました。勝機があるかと思った時もありましたが、お二人が根底で信じあっているのを見せつけられただけでした。」
「いや、お陰でまあ、色々助かった。」
「どういたしまして。でも僕は諦めないですよ。いつお鉢が回ってくるか分かりませんからね。天界の時間は長いので。」
「そりゃどうも。」
そう言って、振り向かずに軽く手を上げてハルの部屋を出る。
終わりよければ全て良し…
廊下に出るとなんとエーハルーンもグナヤンムーも聞き耳を立てていた。
…少し気まずいが、一気に虫除け完了したってことにしておこう。
翌日はもう帰る日だ。
今朝は咲に声をかけるのをやめておいた。
いつも通りの時間に一人で朝飯を食べに出かける。
このさざ波を聞きながらの飯も、これでおしまいか。
短い間に色々あった。
さっさと食べ終わると荷造りをしに部屋に戻る。
元々荷物は少ないのですぐに終わる。
咲は起きているか?
部屋に行くと流石に飯を食べに出ているのか、部屋は空っぽだった。
帰る時間分かっているのか?
どうせ無駄になるが、一応電話にメッセージを残す。
咲にGPSを、付けたいな。
毎回探す羽目になる。
落ち着かなくて部屋を出たり入ったりしていると、咲がエーハルーンと一緒に戻ってくる。
「お…はよう。」
おはようの時間じゃない。
荷支度してグナヤンムーに挨拶したら即出発だ。
グナヤンムー兄妹を訪ねると、ひとしきりお礼を言われる。それから天界の分離した歴史を聞いて咲は何やら考えている。
そうだよな、天界の歴史も知らされていないんだよな。
知っている知識の差がすごくて何が当たり前で何を知らないのか分からなくなる。
それなのに、咲はいつの間にかみんなの中心にいる。
みんな出発時間は同じなので揃って入り口に着く。
こうして四天界集まるのもまた先の話だ。
咲は怖がってまた風通路に乗れないので担ぎ上げて乗り込む。
乗り込んだはいいがこれから二人の時間だと思うと落ち着かない。
咲は至って普通で、また一緒に別の天界に行きたいね、と言っている。
そうだけどな、そんなんだが…
それよりも今俺たちのことじゃないのかよ。
何度か突っ込んでみたが暖簾に腕押しだった。




