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26. すれ違う思い

ちょっと待て!

どさくさに紛れて何を言いだすんだ。

丁度いい、指輪はいつでも炎を出せる状態になっている。


「突然過ぎてごめんなさい、飲み込めないのですが。」

咲、飲み込めないじゃない。

俺のものだとはっきり言ってくれ…


ハルが続けた言葉は許しがたかった。

咲は傷つかない鈍感なやつで、地上から来たから長生きだし自分の側に置いておきたい、そう言った。


「咲は、俺の婚約者です。咲は道具じゃないんです。一人の人として僕は咲が必要なんです。愛しています。」

そんなやつに咲は渡さない。

咲を背中に隠すようにしながら宣言する。


「僕は咲さんに話しているのです。アンセさんには関係ないので黙っていて頂きたい。」

頭に血が昇る。

指輪から炎を出しそうになるのを堪える。

やっぱりシャドーもどきの影響に違いない。

まだ残っているちっぽけな理性が俺をとどまらせる。


咲がハルにやんわり断るが全く響いていない。

コイツにはもっとハッキリ言わないと伝わらないだろう。


でも、俺のことをどう思っているのかとハルに聞かれて困った顔をしている咲に、俺は酷く落ち込んだ。


そういえば、一緒に居たいとは言われたが好きだとは言われたことはなかった。

独りよがりの気持ちだったのかもしれない。


俺も一緒なら一緒にご飯に行っても良い、と咲がハルに返答しているのを聞いて合点がいった。

俺は咲の保護者で、これから咲が見つかるであろう伴侶を見極める係に任命されたのだ。


咲は恥ずかしくなったのか、トイレと言って部屋から出て行った。


「そんな顔しないでくださいよ。僕にも平等に機会が欲しいだけです。先に会ったのが僕だったら、結果は違っていたかもしれない。それを確認したいんです。保護者として僕が相応しいか判断してもらって構いませんよ。」

ハルは自信満々で、既に咲が自分に傾いていると思っているようだった。


返す言葉がない。

何を言っても負け犬の遠吠えになりそうだ。


気まずい時間が流れる。

咲がなかなか戻ってこない。


ふと冷静になって考えてみる。

もしかしたら、邪魔なのは俺かもしれない。

ハルを選ぶかどうかは咲の問題だ。


咲には、ハルと二人で出かけるように後で話そう。

俺は一緒に行かない方がいい。


部屋に戻ろうと廊下に出ると、咲が自分の部屋に戻ろうとしていた。


全く…


声をかけるとビクンとなった咲に思わず顔がニヤける。

咲はどんな仕草も可愛い。


…今、話しておこう。決心が揺らぐ前に。

俺にとっても早めに区切りをつけた方が楽になる、はずだ…


俺と一緒に居たいと言う咲の気持ちは嬉しいが、それは俺の求めている答えじゃない。

俺は咲の保護者にはもう戻れない。


ハルは…樹の力があるから、咲はこれから倒れる心配はないだろう。そうすれば大いなる力からも守ってもらえるはずだ。


悔しいが、ハルと向き合う価値はある。


「そういうことだから今日は二人で飯に行ってこいよ。話はそれだけだ。」


待って…

そう言った咲の声に一瞬、縋りたい気持ちになったが振り返らずに部屋を後にした。


終わる時はあっという間だ。

ベッドで天井を見つめた。

また真っ白な世界に戻ってきてしまった。


翌朝、腹が減って目覚めると早めに部屋を出て朝飯を食べた。

昨夜、夕食を取っていなかった。


咲は朝起きれるだろうか。

サンドイッチを二切れほど持って帰る。


会議室に一番に入るとすぐに人がやってくる。

一人でいるよりも気がまぎれる。


咲は寝坊だな。

集合時間スレスレに咲はやってきた。


ハルと楽しい夜を過ごしたのだろうか。

咲をチラリとみると眠そうにぼーっとしている。


多分何も食べてないな。

サンドイッチ持って帰って正解だったな。


休み時間になってパンを置くと野生動物のようにむくっと起き上がり食べ始めた。


咲はいつだって色気より食い気だ。


サンドイッチが足りなかったのか、咲はその後の話もなんだか聞いていなさそうだった。 


大丈夫か?


心配していると咲に昼飯に誘われる。

昨日の話をちゃんと聞いていたのか不安になる。

俺は咲の恋愛相談なんて聞きたくない。


二人で浜辺で弁当を食べることにした。

風で砂がご飯に混じって口の中がじゃりじゃりするのに、世界が彩りを取り戻し光に満ちているように見える。


「食べる場所失敗したね」と言って笑う咲に頷く。


このまま時が止まればいい…

そう思わずにはいられない。けれど休み時間はあっという間に終わってしまった。

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