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19. 全ては炎の中に消える

「俺は不器用だから二つのことを同時にするのが苦手だ。咲、頼む。ここから出てくれ。お前を守りたい。」

咲を後ろにぐっと押しやる。


咲が離れたので良かったと思ったら、突然しゃがみ込んだ。


おい、大丈夫か?


助けようと、よく見ると炎が咲の周りを避けている。どうやら氷の盾を作ったらしい。


こんな時によく新しいことを思いつく。


グネルが咲に攻撃をしている隙に炎を消せないかやり合っていると、グネルの左腕が焼け落ちる。


それを見た咲が叫んで、氷の盾が消える。


「危ない!」

咲を慌てて庇う。


ううゔ


歯を食いしばる。うっかり自分の防御を忘れて、もろに炎を喰らってしまった。

心配する咲に笑顔を向ける。


グネルはこの隙をついて炎を伸ばしてくる。

俺もこれ以上火傷をするわけにはいかないので防御をする。咲も盾を再び作り上げる。


「同情は不要ですよ。私は無敵です。炎も水も効かない!」

どす黒いシャドーの混じった炎を旋風に乗せて送り込んでくる。

咲の盾は炎を消しシャドーも浄化してくれるので安全だが、水がそんなにないので咲の盾の力が弱くなるのは早かった。


今度は俺が咲を守るために盾を作るが、それは炎からは守ってくれてもシャドーは通過する。


「良いって言うまで目を瞑れ!呼吸を止めろ。」

こういう時、咲は素直で助かる。


咲が目を瞑ったのを確認すると盾を残したままグネルに向かう。


ここで一気に決着をつけるしかない。

グネルも俺には炎が効かないことは分かっているので、シャドーをこちらに投げてくる。


くそ!

避けるくらいしかできない。


段々と体が熱くなってくる。

あいつを殴ってやりたい。

咲をこんなことに巻き込んで、倒れたらどうしてくれるんだ。


嬉しそうに笑うグネルに近づいていく。もはやシャドーすら気にならない。


このままもっと燃やしてやろうかと思ったら、勝手にグネルの体が焼け崩れた。

もう体の半分しか残っていない。


黒い気持ちがすっと俺の中で広がる。


ざまあみろ!

口角が上がる。


じゃあ、仕上げといくか…

指輪を向けようとした瞬間、柔らかい優しい温もりが俺を包む。


…咲だった。


俺を見て何かを言いながら、首を振っている。


浄化してくれたのだろう。

力を使って、今にも倒れそうになるのを必死にこらえている。


「咲!」

「アンセ戻ってきて…」

心配そうに俺を覗き込む。


するとドスンというすごい音がして見ると、グネルが最後を迎えようとしていた。

もう体は形が崩れているのに、笑っている顔の表情だけが残っていて不気味だった。


「咲、咲、しっかりしろ。もうこれ以上は無理だ。グネルも体がああなってしまった以上、助けることは無理だ。出るぞ。」

最後まで救うと叫ぶ咲を担ぎ上げて家の外に出る。


見るな、と言ったが咲はグネルがシャドーに呑まれ焼かれていくのを最後まで見届けてしまった。


焦点の合わないまま泣き叫び暴れる咲を、力任せに抱きしめる。

叫び声は俺の胸の中に閉じ込められて周りが静かになる。


しばらくして咲が声を出さなくなったので、抱きしめる力を弱めると全身が震えているのに気が付いた。

咲はその震える手を俺の頬に向かって上げるが、届かなくて途中で落ちそうになるのを掴まえる。


小さな咲の手をそっと包み込む。


俺は大丈夫だ。


咲は何かを言おうとして、口を開くが歯がガタガタ言うだけで言葉にならない。


もう一度抱きしめる。


「咲、怖かったよな。火の俺ですら恐怖を感じたくらいだ。熱さもあってもっと辛かっただろう。やっぱり中には俺だけで行くべきだったな。ごめんな。」

俺の判断ミスだった。


救護隊が来て俺たちはリノの病院へ行くように言われた。咲は俺から離れないので、病院まで運んだ。


記憶はそこで途切れてしまった。

どうやら、火傷が酷かったらしい。


珍しく数日寝込んで目覚めると咲がいた。

手を握りしめたまま、俺に飛びついてきて思わず顔をしかめた。










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