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「________グーフォ様、ありがとうございます。もう、もう大丈夫ですよ」
「ゲイ・・・・・・・・・・・・・ボルグ・・・・・?!」
グーフォは始め、後頭部の柔らかな感触の正体を認識することができなかった。優しく語りかける彼女の顔を目にして、初めて彼女にまるで母親に抱かれた子のように抱擁を受けていること、そして豊満な胸が押し当てられていることに気付いた。
「お、お前!!な、何して・・・・・・・!!」
「うふふ。グーフォ様ったら、以外と初心なのですね。でもこれは立派な“戦乙女”のスキル、他意はありません。安心してください」
「な・・・・・・・あ・・・・・・」
グーフォは思わず目元の模様どころか顔そのものを赤らめる。彼の目には薄いピンクのフリルの付いた下着姿のゲイボルグが移っていた。艶のある肌に豊満な乳房、形の良い尻・・・・・男にとって一つの理想型の女性がそこに居た。
そしてグーフォは、そんなセンシティブな格好をしている彼女に困惑するだけの余裕が生まれていることに気付いた。彼女の抱擁によってグーフォに治癒魔法が掛けられたのだ。
「さあ、私の大切な仲間に手をかけたことを、悔い改めなさい!!」
ゲイボルグは虚空から槍を取り出し、カラドボルグに切っ先を向ける。
「へっ!!ちょっと仲間に守って貰えたからって強気になるんじゃ無いわよ!!あのトール様に改造を受けたモンスター共の肉○器になりな!!」
カラドボルグはビシャァアアン!!と蛇腹剣を床にたたき付け、モンスター達に命令する。だが、ここで全く予想だにしないことが起こった。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「オイ、豚野郎共!!さっさとしなさい!!その女を犯すのよ!!」
何度命令を下そうと、モンスター達は微動だにしなかった。いらだち、何度も床に蛇腹剣を振るうカラドボルグだが、それでも異形の群衆は彼女の命令を聞き入れない。
「ヤベェ・・・・・メチャクチャ・・・メチャクチャコウフンスルジャネェカ・・・・・」
「何をバカなことを________」
「そりゃこんなにエロい体をした女が居るんだ。男の目を引きつけちまうのは当然だろう?」
「なっ・・・・・・・・・!?」
モンスター達に怒鳴りつけようとしたカラドボルグの言葉を、グーフォの言葉が遮った。
「うふ。皆様にこんなに見られたら、恥ずかしいです」
ゲイボルグは言葉とは裏腹に、自分の体を見せつけるような仕草でモンスター達を誘惑している。自分の胸を寄せてあげて谷間を強調させたり、お尻をプリッと突き出したりして見せているのだ。顔若干赤らめているだけに余計に劣情を煽られる。端から見ればただの痴女にしか見えないだろう。
「モ、モウガマンデキネェーーーーーーーーーーッ!!」
やがて、モンスターの一体がしびれを切らしたようにゲイボルグに飛びかかった。目を血走らせ鼻息を荒くし、涎を垂らしたその形相はまさしく性欲に理性を喰われた哀れな雄そのものだ。そして、彼女はそれを待っていた。
「ハヤク、ハラマセテ______」
「はい、ダメですよ。ヴァルキリー槍術“旋風槍”!!」
ゲイボルグは向かってきたモンスターを両断し、その勢いのまま槍を振り回し始めた。その穂先の剣戟に沿って淡い緑の光が当たりを駆け巡る。
「さあ、皆様に朗報ですよ。“この斬撃の嵐に耐え抜き、このゲイボルグの元までたどり着いてください!見事ここまで来た殿方に、この体を差し上げます!!”」
そう唱えながら、ゲイボルグは美しくも豪快に槍を振り回す。まるで乙女が舞を舞うように。
「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」
「な、アンタ達!!何勝手に突撃してんのよ!?」
カラドボルグの叫びもむなしく、モンスター達は目の色を変えて次々とゲイボルグの方に殺到する。そして彼女に近づこうとした者から無残にも切り刻まれていく。まるで劣情を煽るような官能的なダンスを踊る美女を目の前に、モンスター達は儚く命を散らしていく。
「なんなのよ・・・・・・アイツ、あんなコトできないはず・・・・・なんで?!」
「成る程。トラウマを乗り越えたことで本来の“戦乙女のスキル”が使えるようになったって訳か。この場合なら“誘惑の舞”ってところか」
「!?」
歯がみするカラドボルグの背後に、いつの間にかグーフォが忍び寄っていた。カラドボルグは反応するも時既に遅し、ハルピュイアの力強い脚力の前に瞬く間に組み伏せられてしまった。
「そりゃあそうだろうな。お前達“戦乙女”には本来“攻撃用のスキルは無い”。お前からすればあいつの強さが理解できないだろう」
「・・・・・・・・・・・・!!」
そして、グーフォの口から衝撃の事実が明かされる。
「ゲイボルグはうちの研究者のネロに改造を受けた、“戦闘・支援両用型戦乙女”だ」
「改造された・・・・・・戦乙女・・・・・・!?」
信じられない、と言うように呆然とつぶやくカラドボルグ。その言葉に、そうだ、とグーフォは返す。
「元々戦乙女は“前衛をバックアップする支援特化型で、最低限の自衛ができるようにと攻撃手段を持っているユニット”だという話だからな。うちの技術士はその一人であるゲイボルグに“ステータス”と“スキル”に手を加えていたって訳だ。正直正規の方法では無いからたいした効果には期待していなかったが・・・・・・まさか“転生者”の魔王サマの元手先だったって事から、それが予想以上に功を奏しているらしい」
「功を奏している・・・・・意味がわからない!!」
「要するに、“転生者産のボディだから、本来以上にスペックを引き上げることができた”って言ってんだよ。でなければほとんど物理を通さない手駒共をあんなにスパスパ切れるわけがねぇ」
「・・・・・・・・・・ッ!!」
グーフォの口から告げられる事実に、カラドボルグは怒りに肩をふるわせる。
「改造なんてそんな悪辣な手段を採りやがって!!この外道!!」
「外道?・・・・・・ああ。お前達からすればそう見えるのか」
カラドボルグの怒りの咆哮を、しかしグーフォは軽く聞き流した。
「モンスターの命を何とも思わない、差し伸べられた手を払う、おまけにそもそもこっちの世界ですら無い奴の手先の言うことじゃねえな」
「!!この野郎!!」
カラドボルグは更に顔をゆがめ、力任せにグーフォを引き剥がす。
「流石は転生者産の戦乙女、俺よりもステータスが高いのか。・・・・・だが、うちのゲイボルグに勝てるか?」
「ヴァルキリー槍術“烈風槍”!!」
「!!」
グーフォが飛び立つと同時に、ゲイボルグの振り下ろした穂先から、翡翠色に輝く斬撃が飛んできた。カラドボルグはそれを間一髪で避ける。
「この妾が!!さっさと豚共の肉○器になってりゃ良いんだよ!!」
「あらあら・・・・そんなに怒らないでください」
やがてついに1対1になった「戦乙女」二人。本来のカタログスペックなら、ゲイボルグはカラドボルグに勝ち目は無いはずだ。
「だったら細切れにして、豚の餌にしてやるよ!!死ね!!」
鬼のような形相で蛇腹剣を振り回し、ゲイボルグを切り刻まんとするカラドボルグ。その剣戟を、まるでゲイボルグは踊るように避けていく。
「きいいい!!なんで当たらないの!!」
「ただ改造されただけではありません!!私はあなたたちに追い出されてから3年間、“転生者殺し”で修行しました!!全てを拒み続けるあなたたちに、私たちが負けるわけには行かないんです!!」
そして蛇腹剣を伸ばそうと突き出した瞬間を狙い、ゲイボルグは一気にカラドボルグに近寄り、そして棒高跳びの要領で跳躍した。そしてくるくると美しく舞い上がると、
「えいっ!!」
「ムグッ!?」
ゲイボルグはその形の良い尻でカラドボルグの顔面捕らえ、そのまま床にたたき付けた。ゴギン!!という首が心配になる音がしたが、幸いにも折れては居なさそうだ。
「ふぐぅ・・・・・・」
ゲイボルグのお尻の下でくぐもった声が聞こえると、それっきりカラドボルグは動かなくなった。頭を強く打ち、気絶してしまったようだ。
「・・・・・・えげつねぇ」
「ふう。でもこれで一瞬で片が付いて良かったです。これでまだ抵抗されるようなら、思いっきり臭いのを“ぶうっ!!”ってやってやろうかと思いました!!」
「・・・・・・別の意味でもえげつねぇ」
プリン、と突き出したお尻を振りながら勝ち誇るゲイボルグ。特定の趣味を持っている者には「ご褒美」かもしれないが、実際に喰らうとなると相当きついものになることは想像に難くなかった。というか彼女の屁が相当に臭いこと、それを彼女は自分の意志で出せること、そして彼女自身が誇っていることをグーフォは知りたくなかった。
目の前の敵を全滅させた彼らは、「召喚システム」の核である水晶玉に向き直る。壁に埋め込まれた巨大なそれに、ネロが何やらケーブルのようなもので箱状の機械とつなげていた。
「・・・・・・さて、そっちはどうだ?隊長殿?」
「うん、概ね解析できたよ。どうやらここで召喚されたモンスターや使い魔達の生命は、この“使役システム”からは独立して居るみたいだ」
「考えてみれば、ゲイボルグがこっちに渡っている時点で切り離されていると考えるべきだったな」
「それは結果論だよ。他の使い魔達がこれを壊して死んじゃったら意味が無い。ここを訪れた意味は十分あったんじゃないかな。・・・・・・さて、思いっきり破壊工作といきますか!」
ネロは「召喚システム」の解析が済んだらしく、ケーブルを水晶玉から引っこ抜いていく。そして道具を一通り片付けると、余っている袖口からガトリング砲を伸ばした。
しかしそれを、
「待ってください!」
とゲイボルグが制止した。
「「?」」
「これは、私が破壊します。後の禍根を断つため・・・・・そして、こことの因縁を絶つため、私にやらせてください!!」
「・・・・・・・そうだね。それがいい」
「きっちりと“ご主人サマ”に別れを告げなきゃな」
ネロとグーフォは、ゲイボルグの申し出に賛同した。彼女の攻撃に巻き込まれないように、水晶玉から離れる。
「では・・・・・いきます!!」
ゲイボルグは腰だめに槍を構えて、勢いよく駆けだした。彼女の周りに淡い緑の魔力の奔流が生まれる。
「ヴァルキリー槍術“神風槍”!!」
ゴバッ!!と一気に加速し、魔力による加速と全体重を乗せて水晶玉の表面に穂先を突き立てる。
「これであなたともお別れです!!黒鉄徹、あなたの偽英雄譚はここで終わりです!!」




