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ヴィジターキラー  作者: 反物質
第六章 「完璧主義者(パーフェクショニスト)の魔王は、仇なす者全てを徹底的に蹂躙す」黒鉄徹
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6-19

 少々時を遡る。

「さああんた達!!やっちゃいな!!」

「「「ブッヒィイイイイイイイイイイ!!」」」

 カラドボルグはビシャァン!!と蛇腹剣を床にたたき付け、モンスターに命令する。彼女の「命令」を聞いたモンスター達は下品な声を上げて、喜々とした様子でネロ達に襲いかかる。

「随分と下品な反応をするもんだね!!」

 ネロは袖口からガトリング砲を伸ばし、火を吹かせた。

「ブヒヒヒヒ!!カラドボルグジョウノ“メイレイ”ハオレタチヲコウフンサセルノダ!!」

「コノテイドノコウゲキデヒルムワケガネェンダヨ!!」

 汚らしい擬音語が聞こえそうな格好のカラドボルグが挑発的な口調で命令する度、モンスター達は色とりどりのオーラに包まれる。

「オラァッ!!」

 グーフォはオーク向けて鉤爪を振るった。それは皮膚にガギギッ!!と食い込んだ後に止まったが、決して深くまで入り込んでは居なかった。

「オレサマタチハブツリダメージヲ90%ケイゲンスルウエニカラドボルグジョウノ“メイレイ”デサラニボウギョガアガッテイルノダ!!キサマノツメテイドデキズツクワケガネェンダヨ!!」

「チッ!!」

「面倒くせぇ!!この豚共が!!」

 ブオン、と振るわれる大木のような腕を躱すグーフォは舌打ちした。ネロも満足にダメージを与えられず苛立っている。

 と。

「きゃぁあああああ!?」

「ゲイボルグ!!」

 ネロはとっさにロケットランチャーを装備し、ゲイボルグに近寄ってきていたオークを吹き飛ばした。

「大丈夫かい!?」

「ひ・・・・・ひいいいい・・・・」

 ゲイボルグは怯えきっていた。身を震わせ、か弱くその場にうずくまっている彼女は槍を振るうことさえできなかった。

「おやおやゲイボルグ、魔王様に見捨てられた分際でよくもおめおめと帰ってこれたわね!!」

「か、カラドボルグ・・・・!!」

「ネロ隊長殿。どうやらあの女もゲイボルグのトラウマになっているみたいだな」

「成る程・・・・・これは又随分厄介なことになっているね」

 どうやらゲイボルグはカラドボルグの姿を見ただけでもトラウマを呼び起こしているらしい。彼女がゲイボルグを追い出し心に深い傷を負わせた、ある意味直接の原因でもあるため納得ではある。

「豚野郎共!!命令よ!!“あの女を犯しなさい”!!戦乙女としても、女としてもズタズタにしてやるわ!!」

「「ブヒイイイイイイイ!!」」

 カラドボルグの号令で、オーク達は目の色を変えてゲイボルグに群がってくる。彼女を確実に再起不能にするために。

「ゲイボルグ!!“ワンタイムシールド”を起動して!!」

「!!」

 ゲイボルグは懐から六角形の金属板を取り出すと、ぐっと握り込んだ。その道具を中心にバリアが展開される。

「(マズい・・・・・ボクはこれから“召喚システム”の解析に向かわなくちゃ行けないのに・・・・)」

 ネロはゲイボルグやグーフォが気を惹いている間に「召喚システム」の解析をしなければならなかった。黒鉄に出くわしたときに解析を進められたのも、ひとえに他のメンバーが気を惹いていたところに「隠密」との併用で解析していたからだ。

 だが、ゲイボルグが戦力にならない今では、グーフォだけでは囮としての役はあまりにも荷が重すぎる。それに元々グーフォはネロ以上に「隠密行動」に特化した能力を持っている。とてもでは無いが、役割に適しているとは思えない。

 ネロが悩んでいるうちに、バリン、と「ワンタイムシールド」が割れてしまった。

「さあ、観念しなさいゲイボルグ!!アンタの居場所なんて、ここには無いのよ!!」

「ひっ・・・・・・」

「ウヒョオオオオオ!!」

 下卑た雄叫びを上げて、ゲイボルグを傷物にしようとモンスターが襲いかかる。

「(だめ・・・・・・・!!)」

 ゲイボルグは恐怖におののく中、ただ震えてうずくまるしか無かった。

「仕方が無い・・・・・・・やるしか無いか!!」

そして、ネロが白衣の裏側から4門のガトリング砲を展開し、砲撃を開始しようとしたとき。





「ヒュルルルルルゥイイイイイイイッ!!」

 グーフォの鋭い咆哮とともに、襲いかかろうとしたオークの脳天に別のモンスターが激突した。





「俺様の仲間に!!ましてや女に!!手ェ出してんじゃねぇえええええええええええ!!」

 グーフォは目元の模様を赤く染めて、鬼の形相で怒鳴りつけた。

「グーフォ!!落ち着くんだ!!この数相手じゃ______」

「ピュルルルルルルルゥイイイイイイイイイイイイイイイッ!!」

 グーフォはネロの叫び声をかき消すように咆哮し、モンスターの注意を強制的に引き寄せる。

「安心しろ、ゲイボルグ!!俺様が、お前を守ってやる!!・・・・・・・・・さあ、醜悪なモンスター共!!俺様が美しく狩ってやる!!」

「ナニヲナマイキナ!!トリコウノクセニ!!」

「テバサキニシテヤル!!」

「・・・・・・・・・グーフォ、様・・・・!!」

 グーフォはモンスター達を挑発し、ゲイボルグから意識を外させようとする。

「(グーフォ・・・・・済まない・・・・速くボクは自分の仕事を済ませよう!!)」

 ネロは心の中で詫びながらも非情な決断を下す。それはグーフォを見捨てるような行為である事は自覚している。

「ああ・・・・・・・グーフォ様が行ってしまった・・・・・」

 ゲイボルグは自分の自身の不甲斐なさを痛感した。グーフォにとって彼が請け負った役目がどれほどの重荷なのか、彼女自身も把握して居るからだ。

「(そうです・・・・・・私が・・・・・私が動かないから・・・・・!!)」

 モンスターの群れの中に突っ込んだグーフォ。彼はゲイボルグからモンスターの意識を反らすために立ち向かったのだ。だが、彼が稼げる時間などたかがしれている。つまり、詰みの状態なのだ。

「(私は・・・・・これを、この過去を、乗り越えなければ!!)」

 だから、ゲイボルグは今一度奮起した。過去に怯えたままではなく、過去と向き合って、それを乗り越えなければならないのだ。

 そして、グーフォの勇姿を見てその事に気付かされたゲイボルグは、自分の服の襟元をつかみ、









フリルのあしらわれたメイド服を、まるで蝶が羽化するように、ビリッと脱ぎ捨てた。










 グーフォは直撃を喰らわないようにしながら飛び回るが、その物量故捌き切れていなかった。オークの眼前に鉤爪を振り下ろすなどして対抗していたが、徐々に体勢を崩していく。

「(マズい・・・・・これ以上は・・・・・・・)」

 走ることにスタミナを消費するように、飛行には魔力を消費する。いくらハルピュイアが飛行可能だとしても、ずっと飛び続けるというのはそう簡単なことでは無い。さらにここに至るまで長時間飛行していたグーフォは、極限まで疲弊していた。

「さあ、鳥公!!観念なさい!!」

「ブヒイイイイイイイ!!」

「ガハッ・・・・・・・・!!」

 オークの拳がグーフォに向かって突き出される。しかしグーフォはもはや体勢を立て直すだけの余力が残っていなかった。拳を避けられず、まともに食らう。

「ダメ押しよ!!死ね!!」

「グアッ・・・・・・・」

 そして、カラドボルグの鋭い蹴りがグーフォに襲いかかる。蹴り上げられたグーフォは、あっけなく空中に投げ出される。

「(ああ・・・・・・俺様は死ぬのか・・・・・・・)」

 グーフォはかつて同じ里に住んでいて、恋い焦がれていた少女のことを思い出した。

「(ファル・・・・・・・・・・)」

 オオタカのハルピュイアで、人なつっこく、そしてグーフォなんかよりも何倍も強かった彼女。しかし彼女はもうこの世には居ない。転生者に里ごと滅ぼされ、命を奪われたのだ。ただの経験値のためだけに。

「(みんな、ごめんな・・・・・俺は、ファルの元に・・・・・・)」

 そして、地面の激突する瞬間、





ぽふっ、と柔らかな何かに抱きかかえられた。


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