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所変わって、ネロ一行。彼らはゲイボルグの案内のもと、「秘密の部屋」を目指していた。どうやら城の中心部に近づくにつれてトラップが増えていくようで、襲いかかるモンスターの他床や壁、天井に仕込まれている罠にも気を配らなければならなかった。
「コレイジョウサキニイカセルナ!!」
金切り声を上げながらモンスター達は行く手を阻んでくる。おそらくは黒鉄から「“秘密の部屋(仮称だが)”に近づけるな」と言われているのだろう。
だが、それ以上に厄介なものがあった。
「待て!!そっちは“触手地帯”だ!!」
「「!!」」
例の双眼鏡を掛けたネロが、グーフォやマナを制止した。目の前に広がる一見ただの洞窟の中にしか見えない空間に、「触手のトラップ」があるという。
「ネロ。過去に“触手型トラップ”が導入された際の目的はどういうのがあったんだっけか?」
「侵入者の排除、その中の“女性への陵辱“だね。こんな卑猥な罠を仕掛けるなんて、随分趣味が悪い・・・・・」
「「・・・・・・・・・・」」
話を聞いていたマナとゲイボルグが、嫌そうな顔をした。女性である彼女たちがこんな反応をするのは当然と言えば当然である。
「うーん・・・・・・でも、この先に“例の部屋”があるんだよね?」
「ええ・・・・・ここ以外を通るルートもありますが、最短となると・・・・」
「だったら、通れるように知れば良いんだろう?」
グーフォはバサリ、飛び立った。その背後からカマキリ型モンスター「シニガミオオカマキリ」が追いかけてくる。
「シンニュウシャ・・・・シンニュウシャ・・・・キル・・・・・」
うわごとのように不気味な声とともにその鋭利な鎌を振り上げて迫り来る。
「きゃあああ!!あ、あんな巨大なモンスターさんが、こんな狭い所に来るなんて!!」
「こ、こんなモンスターは見たことがありません!!」
その巨体はフォルムこそ華奢ではあるものの、「体高」「体長」という要素においては群を抜いていた。他のモンスターと比較し二回りほどの体躯は、ネロ達が通ろうとしているような細い通路では驚異的である。
それを見たグーフォとネロは一瞬目を合わせると、
「「さあ、こっちに来やがれ!!」」
声をそろえてその場から飛び立った。ネロは白衣の内側からガトリング砲を取り出して構え、そのネロをグーフォはその強靱な脚でつかんで飛び立つ。
「アハハハハハ!!ベコベコに穴だらけにしてやるぜ!!」
引き裂いたように笑い、ネロはガガガガガガッ!!とガトリング砲を唸らせる。それはシニガミオオカマキリの硬い甲殻にはじかれ、当たりに弾丸がはじけ飛ぶ。
「キルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキル・・・・・・」
ブオン、ブオンとその巨大な鎌を振るいながら、シニガミオオカマキリは男二人を追いかける。触手地帯におびき出されているとも気付かずに。
『マナ、ゲイボルグ、シロ。ボク達が奴の気を引いているから、その隙に奴の背中に乗るんだ』
「「!!」」
ネロは「思念型通信端末」を通じてマナとゲイボルグに指示を出した。ネロの言葉が届いたと同時にマナはすかさずシロの方を見た。両者は軽くうなずくと、
「ゲイボルグさん、捕まって!!」
「はい!!」
マナはシロにまたがりゲイボルグに手を差し伸べた。ゲイボルグはマナの手を取り素早くシロの背中にまたがってしがみつく。そして、
「シロちゃん!!跳んで!!」
「ウォオオオオオオオン!!」
マナのかけ声に呼応して雄叫びを上げると、勢いよくシニガミオオカマキリの背後から駆け抜けていく。すでに半分以上触手地帯に足を踏み入れているそれに、シロは二人を乗せたまま跳躍し、華麗に背中に着地する。
するとその瞬間、ぞぞぞぞぞっ!と、床から触手が大量に伸びてきた。それは背中に乗ったマナやゲイボルグを犯そうとしているらしく、ネロやグーフォが近寄っても決して反応しなかった。
「ひ、ひぃいいいい!!」
うねうねと伸びてくる触手に嫌悪感を覚えたゲイボルグは、悲鳴を上げながらマナにしがみついた。シニガミオオカマキリほどの体高だと流石に届かない様だが、性奴隷を犯そうとする男性器のようで非常に不快感を煽られる。
だが、それらの触手は片っ端から刈り取られていく。目の前を飛ぶグーフォ達を切り刻まんと振るわれる鎌が、ニュルニュルと伸びる触手を巻き込んでいるのだ。
「オイ!!セナカニノラレテルゾ!!」
「フリオトセ!!」
「キルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキルキル・・・・・・」
マナ達が背中に乗ったのを見ていたモンスターは、シニガミオオカマキリに知らせるべく叫ぶ。しかし当のシニガミオオカマキリはずんずん先に進んでしまう。彼はどうやら目の前に居るグーフォやネロに注意を引かれているらしい。
『ざっと解析してみたけど、この通路はどうやら一面触手地帯みたいだね。ひとまずはグーフォがたたき落とされない方が大事だ』
『わかりました・・・・・・よかった』
ゲイボルグは胸をなで下ろした。彼女が抜けてから色々増設されているのかと思っていたが、少なくともこのルートはあまり手が施されていなかったようだ。強いて言えば、通路一杯に触手トラップが設置されていることぐらいか。
「ゲイボルグさん、次はどんなトラップがあるんですか?」
「当時の記憶が正しければ・・・・“毒の沼”“針のむしろ”“迫る壁”・・・・これ以外にもあるかもしれませんが、そこを抜ければ・・・・・・・」
「・・・・・・わかりました。とっても危なそうですけど・・・・・・」
モンスターの背中の上に居るマナとゲイボルグは、ひとまず安心した。触手はシニガミオオカマキリにどんどん刈り取られていく上に、そもそも彼の背中まで届いていない。女性が近づかない限り反応しない当たり悪意が見え隠れするが、それでも対処法さえ解ればどうとでもなる。
『しかし、隊長殿。こうも触手ばかりだと流石に飽きてくるぜ。撃ち落とされないってのは気楽でいいけどよ』
『だけど、ちょっと引っかかるね・・・・』
『あ?』
『どうもこの城、完璧主義って割にはトラップのガバが目立つんだよね』
『そうだな。この触手も“女が近づかないと反応しない”ってのはなかなかに問題な気はするが・・・・・』
『“対空手段がない”ってもの問題だとは思うけどね。屋内ってのもあるかもしれないけど、こうやってグーフォが飛べている以上、そうとは考えにくいね』
グーフォとネロは「思念型通信端末」を通じて会話している。彼らも「その違和感」に気付き始めたようだ。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・ここは・・・・・・?」
黒鉄の注意を引きながら城の中を走り回っていたトーヤだが、いつの間にか広大な空間に出ていた。まるでどこかのホールのように高い天井に、一段高くなった場所に黄金の装飾の施された玉座が鎮座していて、洞窟然とした内装の中で浮いて見えた。
「俺の“謁見の間”だ。とうとうここまで来やがったか」
「・・・・・・・・・・・・!!」
唸るような低い声が聞こえ、トーヤは背後を振り返る。数多のトラップに掛かっても平然としていた「魔王トール」が暗がりから歩み出てきたのだ。
否、もはや「怪物」。「魔王」どころではない。そんな問題を、超越している。
「(クソッ!!何もコイツの情報をつかんでいないってのに・・・・・・!!)」
いくら「スキル」や「ステータス」を無視できるとは言え、黒鉄の纏っている「不壊の鎧」は文字通り傷一つ付けることができていない。物理的な強度を、トーヤは未だに越えることができていないということだ。
しかし、この大広間に出てしまっては黒鉄を撒くことは難しいだろう。トーヤは、覚悟を決めた。
「(こうなったら、とことんやってやる!!)」
ヒュン、と剣を振るい、パシッ、と左手に拳銃を握る。そして足下にわずかに霜を発生させる。長剣、拳銃、魔法。自分の持てる全てをぶつけてでも、ここで黒鉄を仕留めなければならない。「転生者殺し」として。
「掛かって来やがれ!!“転生者”黒鉄徹!!テメェの偽英雄譚はここで打ち切りにしてやるよ!!」
「来い。俺は“魔王”トール。お前を“徹底的”に叩き潰す」




