神様からのおもてなし!
これは渋々の対応だった。
「ほらほら、ねっ! 神様が夜なべして作った座布団の座り語心地は最高でしょ!? 絶対にご利益があるんだからっ!」
「へー、具体的にはどんな?」
「え? えーと……足が痺れません!」
――しょっぱいご利益だな
「ほら、このお菓子とお茶もグイッといって! 神様が選定した品々よ! 天井知らずの超希少価値があるんだからっ!」
「へー、それは凄いねー」
「聖剣クラスと言っても過言ではないわっ! 私に感謝する事ね!」
ルークは饅頭に目を落とす。
これは確か王都で、1つ100Gで売られていた。
――聖剣は安価、と
「なぁ、旦那様……」
隣のアイリスが耳打ちする。
「足が痺れた」
「座り方の問題だ。こう足を崩してみたらどうだ?」
「おぉ……なるほど、流石は旦那様だ」
こうして神様から必死にもてなされること、約1時間。
イブリースで耐性を磨いたと自負するルークでも、我慢の限界が近付きつつあった。
「あの、神様」
しかし切り出そうとすると、
「そうだ、今晩は泊まって行きなさいな! 神様お手製の料理も出しちゃいますよ!」
神様はもてなそうとする。
――神が人間をもてなすなよ
ルークは頭を抱え、
「あのっ!」
強硬手段に出る。
「は、はひっ!?」
神様はびっくり驚き、肩を跳ね上げる。
だが、ルークは躊躇しない。
「本題に入れないなら帰らせて下さい。俺たちは遊びに来たんじゃないんです」
「本題? 本題、本題……あーっ!」
神様は合点がいった様子で手を叩くと、対面に座る。
「勇者になりたいという話でしたね?」
雰囲気が変わった。
ようやく話が進むと、ルークが安堵したのも束の間。
「それにはいくつか条件があります。私への信仰具合によって、この表に基づいて――」
「――もう結構です」
2人は見つめ合い、神様がニッコリと微笑む。
「この表に――」
「――無理です」
再び2人は見つめ合い、
「このひ――」
「――そろそろめげて下さい」
不毛なやり取りとなる。
すると、神様は目に涙を溜めて、
「もーっ!」
激高した。
「何なんですか、貴方はさっきから!」
「それはこっちのセリフです! さっきから何なんですかっ!? こんなに回りくどいことをして、本当に神様なんでしょうねっ!?」
「あーっ、言ったな! これを見なさい、これをっ!」
神様は懐から一枚のカードを取り出す。
――神様証明証、だと
「どうだ、参ったか! 参ったと言え、この野郎!」
「神様の免許なんて聞いた事もないんですがっ! 第一、これ手書きじゃないですかっ!」
「そりゃそうでしょ! 私が今作ったんだからっ!」
「それに何の意味があるんだぁあぁぁぁっ!」
「私がルールだぁあぁぁぁっ!」
2人は肩で息をしつつ、一度、呼吸を整える。
「人間よ、何か勘違いしていませんか?」
先に口を開いたのは神様だった。
――どうせ、神様なんだから言う事を聞けとでも言うんだろうな
ルークは内心で悪態を吐く。
「私を神聖だの何だのと囃し立てるのは結構です。しかし、だからと言って話し相手の1人も寄越さないのはどうかと思いますがね?」
「……はい?」
「勝手に勇者というシステムを人間が作ってからうん百年。あれこれと試行錯誤するのは良し。最後に私の神託を受けるとするのもまた良し。でも、私を独りぼっちにしておく非道……断じて許せないと思いませんか?」
「えーと……うん?」
予想外の言葉にルークは首を傾げる。
「考えてもみなさいな。私はこの神聖な空間の住人です。しかし人間たちはこうして訪ねて来られる。でも来なかった。誰も、何百年もの間、ずーっとですよ?」
「え、えーと……その」
ルークは口ごもる。
どんな結末になるのか予想が付いてしまったから。
「いつ人間たちが来ても良いようにと準備をし続け、どんな人種が来てもいいようにと言語を習得し、今か、今かと待ち続けてようやく……ようやく! 勇者候補がやって来たと思ったら!」
「すみませんでしたっ!」
ルークは謝罪した。
深々と、床に頭を着けるほどに。
「神様だって選ぶ権利はありますからね!? むしろあって然るべきなんですからね!? それなのに、それなのにっ! 話は通じず、礼儀はおろか、私を見るや服を剥こうとしたあの野郎を勇者にせざるを得なかった! この苦悩を理解しろっ!」
「返す言葉も御座いませんっ!」
勇者の被害者は多い。
これは周知の事実だが、まさか、こんな所にもいたなんて。
ルークは余りの居たたまれなさに狂ってしまいそうだった。
「ふー……」
ひとしきり言い終えた後、神様はホロリと涙を流す。
「私は間違っていました。勇者に最も必要な素質……それは、魔王を倒せる程の戦闘力ではありません。まともなコミュニケーションを取れることだったのです」
――それは人として必要な素質では?
とは聞けず、そっと胸の内にしまい込んだルークだった。
2018年12月17日 読みやすくするため、一部の表現を修正しました。物語に影響はありません。




