幻想月、白砂
私は歩いている蟻から世界を見ていた。
月であるわたしは言い表せようのない好奇心と知的欲求を人間に向けている。
何故こんなに人間の事を考えてしまうのか、
何度も考えた、人間から与えられた感情を使って、思考能力を使って何回も考えてしまった。
それでも答えは出なかった、答えは見つからなかったということだ。
理由は考え尽くしたというのに、此処まで無き心が踊ってしまう理由がわからない。
人間たちのことを考えると、わたしはとても複雑な気分になる。
私を生み出したものたちだ、だがそれは矮小な集団で小さき生命の集合体だ。
とても可愛らしかった、愛おしかった。
醜かった、言葉にするのも悍ましいほどに醜悪だった。
そんな人間たちは嫌いではない、好奇と知的がくすぐられ、ずっと見ていてしまうのだ。
わたしは今、歩いている蟻、わたしが入り込んだ事で蟻に智慧が与えられた。
私と同じように答えがない問いに悩むことになってしまったようだ。
白い砂の地平線をただひたすらに歩き続ける。
意味はない、見出すのだ。
私があらゆる世界を知って、人を知って尚、人間を観察し続けてしまう永く続く幻想の思いを止めてほしいものだ。
幻想白、百花繚乱
咲き乱れた煌めく桜たちは様々な色彩を持つ。
世界のあらゆる場所に出現し、その場所に異常現象を発生させる。
藤色の桜は時空干渉
青色の桜は死者回帰
緋色の桜は空間を乱す
橙色の桜は失った大切な人間との再会を果たす力を働かせる。
私が観測してきた限り、冥界にも、現世にも、地獄にもこの桜たちはどこかしらに存在していた。
人が植えた桜ではない、自然発生した存在。
妖怪でも、神でもない、精霊でもない。
そこに存在してしまう、世界の鏡像のようなものだろう。
異常現象は桜に纏わりつく螢が起こしているらしい。
月の眼をもってしても、異常を引き起こす百花繚乱は完全に観測しきれないのだ。




