No.8 ゴブリンの知能指数は低いか否か
※レスリーと日本に来たゴブリンさん話です。名前が二郎で金持ちだと分かれば飛ばして頂いて構いません。
「Giro Company―ジロウカンパニー―」はここ数年間で急成長を見せた会社でる。元々はしがない仲介企業であったが、今は日用品から車まで手広く製造から販売までを行っている。現在日本トップの大企業と言っても相違ない。
そこまで会社をでかくしたのは創設者にして現最高取締役の緑野二郎である。
その内偉人辞典にでも名前を乗せそうな彼は今……
「ショウ様も笑子様、挨拶が遅れた事は大変申し訳なく思っております」
土下座していた。
ここはジロウカンパニー傘下の大学病院の一室である。偶然にも意識を失った笑子が運ばれた場所でもあり、警察署を出たショウは二郎に連れられ直接この病院にきた。
数時間ぶりに再会した双子は謝りこそしないものの怒り事態は暴れない程度に冷めていた。ただ「本気じゃなかった」と笑子がショウに釘を刺したものの、敗け惜しみにしか聞こえなかった。
ふかふかの見るからに高級なソファーに腰を下ろす双子は目の前で土下座する男に対して困惑を隠せずにいる。
「ちょっと、何でゴブリンが日本にいるのよ!?」
我慢出来ずに笑子が口を開ける。
二郎はレスリーと共に日本に迷い混みんだゴブリンの1匹であった。
「ゴブリン?」
「魔物、魔王の下部よ」
ショウの疑問に笑子が答えた。彼女は答えつつも警戒を解いていなかった。魔物は一部の家畜やペットとして人に飼われている種族は別にして、そのほとんどが魔王軍に所属している。ゴブリンはその筆頭と言ってもいいだろう。異世界では何度も戦ってきた相手であった。
しかし、目の前のスーツを着こなすゴブリンからは殺気の様なものはかんじられない。
「信じられないかもしれませんが、私は日本で人間と共存の道を選んだのでございます」
頭を低くしたまま二郎はこの19年間の自身の人生を語りだした。
19年前、3匹のゴブリンが魔王の罠の巻き添えとなり勇者レスリーと日本に転送された。ゴブリン達は運悪く転送先の家主の聖人の宝くじを粉々にしていまい、報復を受ける事になる。
その時は勇者と戦う以上に恐怖したと震えながらも二郎は言う。
それを止めてくれたのが少し遅れて現れた勇者レスリーであった。ゴブリン達にとって今まで敵であり、異世界へと飛ばした魔王の手先であるはずの自分達を助けてくれたレスリーの慈悲に感謝し、この人ために生きる事を決意した。
後にレスリーはこの時の事を「魔物とはいえ流石に可哀想だった」と言っている。
ゴブリン達は聖人から緑色だから「緑野」と言う姓と、右から「一郎」「二郎」「三郎」と何の捻りも無い名前を与えられた。ゴブリン達に名前の文化はない。所詮は若くして魔王の捨てゴマにされる運命にあるからだ。
加護のない彼らは1年かけ日本語を学び、レスリーの通訳も要らないまでになる。その後は二郎と三郎は1億円返済のため奉公に出された。
二郎は奉公先で経営学を学び、10年前に会社を立ち上げて今に至る。
「―――と言う経緯で私はここにおります」
語り終えた二郎は真っ直ぐに双子をみた。
「ですのでご安心下さい。新しい住まいも私が用意致します。宜しければ笑子様には高等学校も手配させて頂きます。勿論ご要望とあらばショウ様にも」
再び頭を下げる二郎。
二郎はビジネスでは対等の立場である事を重んじており、へこへこ頭を下げる日本の文化を余り良く思っていない。その事は部下にも常に口を酸っぱくして言っている。その彼が土下座している姿を社員が見たものなら卒倒ものである。
しかし道中にショウから現在の状況を聞き、既に各方面に働き掛けマンションの一室を直ぐにでも生活出来るレベルで用意しているのは、流石は「出来る男」と言える。
「ねぇ、新しい住まいって?」
家が全焼した事を知らない笑子が首を傾げるのも無理は無い。
ショウが家のことを説明した。
「ふぅん、そうなんだ」
聞いておいて興味なさげに返事が返ってくる。
異世界から来た笑子にとって、加護のない家が全焼する事(魔王軍によるものだが)は珍しくなかった。幼い時の大きな家ならいざ知らず、全焼したと言うあの家には一切の親しみ等なかった。
今朝日本に来たばかりなのだから当たり前ではある。
「では、これからの事は食事をしながらと言う事でいかがでしょうか?」
二郎が提案する。
時計は20時を指そうとしていた。
「私、ハンバーグが食べたいっ!」
笑子が興奮して立ち上がった。単純にも食事の一言でゴブリンに対する警戒心は消え失せる事となる。
そして、双子は二郎に進められるままにハイヤーに乗り込み病院を後にした。
直ぐに次話投稿します。




