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No.3 双子に姉と弟の関係は成立するのか

ちょっと早めに投稿。



※この物語には情緒不安定な人達が出てきますが、多分気のせいです。自由に生きているだけです。

 父さんが消えて数時間が経過した。

 笑子は椅子の上で膝を抱えて俯いていた。何か励ましの言葉をかけれればと思うが僕の対人スキルでは無理な話だ。

 取り敢えず僕は彼女の近くに座り読書をしていた。


「……聞いていい?」

 数時間前の威勢は何処えやら、すっかり意気消沈してしまっている。

 本にしおりを挟んでから彼女の方を向き頷く。

「何で落ち着いてるの?」

「何でって……」


 父さんの事は別に嫌いな訳では無い。だからと言って居なかったら悲しい訳でも無い。それに多分今は、異世界だの何だのの話に付いて行けない事が大きいと思う。


「別に」

「この気持ち、あんたには分からないみたいね。きっと、父様とも母様とももう会えないのよ」

 静かな部屋でその声だけが響く。

「そうでも無いでしよ。要はその魔王ってのを倒せば全て終わりなんですよね?」

 僕の精一杯のフォローは

「魔王軍に勝てるはず無いっ!」

 不発に終わった。


「その母様ってのは知ってても、父さんは今朝会ったばっかりなんだしさ」

 まあ、実際は2歳まで一緒に暮らしていたらしいが。

「覚えてるから」

「え?」

 顔を此方に向けると睨んで来た。


「あんたとは双子でも出来が違うのよ」


 これは怒っていい所かな。凄い嫌味言われた気がする。


「私は産まれてこの方、全てを鮮明に覚えてるの」

「無理でしよ――」

 そんな事が出来るなら記憶力がいいとかそんなレベルの話では無い。

「女神の加護よ」

「だから何なんです、それって」

 父さんもそんな事言っていたはずだ。あ、また馬鹿を見る目で見られた。

「母様は勇者だから、女神様から加護を頂いてる。その夫や子供、つまりは私達もまた然りね」

 目元は赤く腫れていたが、調子が戻ってきたのか声にも張りが出てきた。

 異世界とやらには、女神が実在しているらしい。と言うかだ。

「そもそも『加護』って何があるんですか?」

「例えば、何で今会話出来てると思ってるの?」

 意味が分からない。普通に日本語で話している。残念ながら僕は日本語以外に使える語学は無い。


「私が使ってるのはマグナ語よ」

「何言って――」

「これが女神の加護のひとつ」


 女神の加護って勇者特有のチートスキルみたいの様だ。何語でも相手には通じてしまうらしい。そう言う事かな。


「他にも色々あるけど、人よって加護には強弱がある訳。私は魔力補正と記憶補正が高いの」

 

 そんなチート能力が僕にもある、と言う事みたい。しかし、思い当たる節が何もない。

 まあ、考えても仕方ない。今朝から訳が分からない事が多すぎる。このままでは知恵熱出そう。


「きっと、父様の加護は幸運補正って所ね」


 ああ、それで異常にギャンブル強かったのかあの人。

 父さんと言えば、別れ際に電話番号を教えられたっけ。一応当てにしたいし、登録しとこ。


 ポケットからケータイをだし番号を保存していく。


「何それ?」

 いつの間にか横に笑子が立っていて覗き込んでいた。何だか目が輝いている、気がする。

「ケータイです」

「ケータイっ!!」

 鼻息が荒くなる。この子こんな子だったっけ?

「母様から聞いた事ある。魔力使わずに遠くの人と話せるんでしょ!?後、手紙のやり取りを瞬時に出来るだって、すごーい、今なにしたの!?」

「父さんが言ってたケー番を登――」

「ケーバン?なにそれ?」


 言わずと知れたケータイの電話番号の事である。異世界にはケータイが無いらしい。まあ、魔法が有れば要らないのであろう。僕としては魔法の方が使いたいが。でも、話を聞く限り、僕も勇者の息子らしいから魔力のひとつ有るかもしれない。

 ちょ、顔近いって。

 しかし、改めてこうして見ると父さんの顔を連想してしまう。父さんは40歳の割には肌は若々しく、髪もフサフサしていた。あれも加護とやらだったのかもしれない。

 いくら女性でも、身内に似ていては暑苦しいばかりだ。でも、面影があるからこそ、僕からしたら初対面なのに、思ったことがスッと言えるのだろうか……


「早く教えなさい、弟の癖に」



 …………は?



 お決まりの『貴方は馬鹿ですね』の目を向けられる。知らないものは知らないのだからしょうがない。

「……双子でしょ?」

「そうよ、でも私が先に産まれたの」

 いや、そんなどや顔されても。

「どーよ♪」

 終いには口に出したよ。





 僕はこの数時間で学習した事がある。 気にしたら負けだ。


「さて、お昼でも食べようかな」

 気が付けば、12時を過ぎようとしていた。いい感じに小腹も空いてきた。

 立ち上がり、本を本棚へと片付ける。

「どーよ♪」

 お昼ご飯は何かな~

「無視すんなっ」

「ぐふぅ」

 女が男の尻を叩くと言う言い回しがあるが、それを実際にやるのはやめて頂きたいものだ。

「姉は敬いなよ」

「数分の違いでしょうがっ!」

 思わず拳に力が入るが辛うじて止める事が出来た。これでも中学生までは剛笑拳の修行に明け暮れていた。素人に手は出せない。昔、学んだ事があるから……

 

「そもそもお腹の中では同時ですよ」

 詳しくは知らないが、あれだろ。卵子に精子が受精した時に分離したとかだろ。

「確かにね、でもお腹の中で先に物心ついたのは私なの。あんたは何時まで経っても動かないから死んでるのかと思っちゃったぐらいよ」


 そんな昔も覚えてるの?なにそれ、ちょー怖い。


「何でそんなに姉弟にこだわ………あっ!!」

 不味い。非常に不味い事に気が付いてしまった。

「なによ、急に大声出して」


 まだ、まだ手はあるはずだ。


「笑子さんお尋ねするんだけど」

「笑子でいいよ」

「笑子、料理出来る?」

 女の子だもんね、出来るよね。

「え?料理って、コックが作るものでしょ。この家のコックは何処?今朝は私の為に父様が作ってくれたけどいるんでしょ」

 ああ、御嬢様の方でいらっしゃいますか。




 勿論、内には専属のコックなんていない。

 父さんは家にいる時は何時も、寝るかテレビ見るか筋トレするかだ。働いてる何処なんて見たことが無い。しかし、三食ちゃんと用意され、どの部屋も小綺麗に整頓されホコリひとつなかった。


 今まで当たり前過ぎて気が付かなった。

 僕は家事がなにひとつとして出来ない、分からない。多分彼女も。



 ………詰んだ


 


※※前書きの訂正とお詫び


気のせいてばなく、作者の力不足であります。

悪しからず。

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