No.2 女神の加護はギャンブルの為に存在しない
こっからスタートです
※この物語には一部異常に短気な人物がいますがそれはカルシウムが足りてない為です。
「あんた誰よ!?」
目の前の赤い髪の女が言った。
思わず声を荒げて聞き返してしまった。
「き、君こそ誰ですっ!?」
ここは僕の家だ。
一度整理しよう。
今日も普段通り7時ピッタリに起きた。それから顔を洗おうと洗面所へ向かった。その時リビングから物音がしたのだ。この時間父さんはまだ寝ている。そしてドアを回してリビングに入ると全く知らない女がいた。
年は高校生ぐらいだろうか。真っ赤な長い髪は後ろで簡単に束ねている。服はこれまた真っ赤な浴衣を着ていた。顔立ちこそ中の上ではあったが彼女はまるで人形の様に絵になる、と言うか単純に綺麗だった。
「もう一度だけ聞いてあげる」
混乱する僕に御構い無く話が進められてく。
「あんた誰よ?」
何度も言う様だかここは僕の家であり異端者は彼女のはずなのである。まあ、さっきから上から目線から察するに話なんて聞いてくれそうにない。
「ショウ、神流ショウです」
すると女は近づいて来てまるで品定めでもするみたいに見てくる。
「あ、貴女は?」
余り女性に免疫のないので声が上擦ってしまった。
「聞いてないの?私はショウコ」
次の言葉に耳を疑う事になる。
「本名、神流笑子」
…………はい?
「それにしても狭い部屋ね」
待て待て、どう言う事だ!?名前が似過ぎてる。
「あんたのそのキノコ頭何?こっちだと流行ってんの?それはそれでキモいわ」
母さんは死んでるし、父さんの隠し子か……
「もしも―し、聞いてんの」
ヤバイ、頭がパンクしそうだ。
「無視すんな!」
「ぐふぅ!?」
笑子の蹴りが腹にクリーンヒットした。頭がパンクする前に内蔵がパンクする。
しょ、初対面の人間を蹴るか、普通……
「もしかして父さんの隠し子ですか?」
腹を擦りつつ、どうにか起き上がり彼女に問うた。でも、直ぐに聞かなきゃ良かったと後悔した。
「隠してたかは知らないけど、私ら実の双子らしいよ」
はい、シンキングタイムの御時間です。
双子とは同じ時に、同じ母親の中で育ち生まれた人を指します。ですから、僕と彼女は異母ではない正真正銘の肉親になります。結論、意味わからんっ!
双子の話等全く聞いた事がない。でも、本当なら父さんが何か知ってるはずだ。先程から相当物音を立ててるから、いい加減起きて来る……はず。
その時、まるで図ったかの如くドアが開く音と共に酷い寝癖をした父さんが入って来た。これで話に整理がつ
「貴様は誰だ!?」
父の声がした。
かなかった。
* * * *
「大きくなったな、笑子」
僕たちは何故か3人でこの狭い机を囲い朝食を食べていた。今日は味噌汁にご飯と、父さんが漬けた漬け物が並んでいた。
「父様、この『ハシ』は使いづらいんだけど…」
「ああ、ならこっちのフォーク使いな」
「ありがとう♪このスープ凄い美味しい。もしかして、これが『オフクロノアジ』って言う究極の料理ね」
「いやいや、これはな…」
何か凄く馴染んでた。若干空気になりつつある僕である。
「父さん、そろそろ話してくれない?」
娘(?)との会話を邪魔されたのにムッとしたのか機嫌悪そうに「何を?」と聞き返してきた。
「分かるでしょ」
少し頭を捻った後、父さんは思い出したかの様に頷いた。
「昨日はパチンコで4万円勝っ――」
「そっちじゃない」
父さんはニートだ。しかしながら、ギャンブル一筋で僕を16年間育ててくれた上に家まで建てた人だ。一度だけ何故勝てるのか聞いてみた事があるが、「女神の加護があるから」と適当に流されてしまった。
今聞きたいのはそれじゃない。目の前の女の事だ。
「だから双子だって言ったでしょ?」
話に割って入る笑子。
「馬鹿だから勘弁してやって」
言葉の暴力を奮う父。
やっと真面目にしてくれた話をまとめると
19年前父さんの元に異世界から女勇者が飛ばされて来た。父さんは行く宛のない彼女を保護して後に恋が芽生え結婚。3年後に双子を出産。
幸せに暮らしていたものの、14年前女勇者に異世界から当時の仲間が現れ助けを求めてきた。夫婦で話し合い、彼女はまだ幼い笑子を連れて此方の世界に別れを告げた。
これだけの事を聞くのに1時間掛かった。何故なら話の90%は妻へのノロけ話だったから。親のノロけを聞くほど辛いものはないと知る。
でもそもそもに
「……異世界なんてあるわけない」
「これで信じるでしょ?こっちは魔法ないらしいし」
「………」
彼女の手のひらから炎が火花を散らしている。
あり得ない。
「いや、アリエェr――」
「それ以上言うな」
振りではない。お昼のCMではない。察してくれよ。
まあ理屈は分からないけど炎が出てるのは確かだ。異世界の件は取り敢えず置いておこう。それよりもだ。
「母さんは死んだんじゃなかったっけ?」
小さい時からそう言う風に教えられて来た。生きてるなら何で教えてくれないんだ。影でこっそり泣いていた小さい時の僕が浮かばれないじゃないか。
「へ!?」
父さんは態々手まで付けてオーバーリアクションをとって驚いた。笑子には何だか冷たい目で見られている。
さっきから父さんと双子の相方(すっかり信じている訳ではない)に上からおちょくられている気がするのは気のせいであろうか。
「言っただろ」
「ずっと死んだんだって――」
そこで言葉を遮られた。
「何度も答えたはずだ。『母さんは俺達の手の届かない所へ行ってしまったんだ』って」
…………紛らわしい
「それ普通死んだと思うよ!?」
バンッと机を叩いてしまった。
「そうか?」
「そんな事ない、理解力の問題よ」
ああ、と頷き会う父娘。
14年ぶりの再会ですよね。何でそんなに仲いいんだよ。
ひとつ分かった、突っ込みを一々入れてたら僕の精神がもたない。
「で、異世界から何しに来たんです?」
「あ、それ俺も気になってた」
貴方も知らないのかっ!?なら何であんなに家族団らん出来るんだよ?
父さんは特に深く考えない人である。
すると彼女の顔が急に強張った。
父さんを見ると彼も珍しく真剣な顔になった。
「何があった」
「一月前、歴代の魔王が一斉に復活したの」
何その修羅場……
彼女の手に力が入ったのが分かった。
「母様も勇者の一人として魔王退治に名乗りを挙げた、それで安全の為って此方に送られの」
目が潤んでいた。
そうか、魔王が何人いるか知らないけど勝ち目がないんだ。だから彼女は此方の世界に逃がされたんだ。多分……
父さんは突然彼女の頭を力強く撫でた。
そして立ち上がると何も言わずに部屋から出ていった。2階に上がる音がして何かを漁る音もする。
はっきり言って気まずい。
2歳までは一緒に暮らしていたみたいだけど、今はほぼ赤の他人である。
でも彼女もひとりで見ず知らず土地に来て不安だろう。目を擦っている笑子を見て少しは気遣ってあげないとな思う。
「女の子の顔じろじろ見るなんて変態ね」
うん、心配損だね。
「自意識過剰ですよ」
「うわぁ、言い訳とかキモ~い」
「どーも、でも貴女の中2病的スタイルには負けますよ―あはは」
「意味分かんないけど、視界から消えて――うふふ」
御互いに満面の笑み(目は笑ってない)で双子の会話を楽しむ。
「本当?僕も同じ事考えてました」
「そうなんだ♪なら早く何処か行ってね」
双子って凄いと思う。気が合うな。
そんな双子の仲を深めていると階段をかけ降りる音と共に父さんが部屋に入って来た。アタッシュケースを抱えている。それを机の上に叩き付けるかの様に置いた。焦ってるみたいだ。
「ショウ、ここに1億ある」
「え?」
開いたケースの中にはお札がみっしり詰まってた。
「俺のギャンブル人生の集大成だ」
「………」
何と言っていいか分からない。そんな大金どうしたんだか。もしかして違法なことしてないよね、この人。背筋に冷たいものを感じた。
「これ何?お金?父様凄いっ!」
先程とは別の満面の笑みの彼女。
そして父さんは真剣な顔のまま、とんでもない事を言い出した。
「俺はレスリーの元へ行く。二人はこの金で頑張って生きてくれ」
「…レスリー?」
誰だよ?
「母様の名前も知らないのね」
机越しにケンカ売ってくる笑子は無視する事にする。
「どうやって行くんだよ」
「そうよ、上級魔法使いが7人は必要だわ」
懇願する目で父さんを見ている。
そうか、この人がいないと俺と二人きりになる。僕もそれは避けたい。そうなったら多分その内どっちかが死ぬ。
「俺には女神の加護がある。俺が望めば異世界へ行くぐらいどうにかなるさ」
あくまで冷静な父さん。でも、何時もより早口だ。やっぱり焦ってる。
父さんは「てきとー」な人間である。毎日好きな事をして生きてる。真面目な顔等、競馬中継を見ている時ぐらいだ。それと剛笑拳と言う一子相伝の武術を極めながら、僕が継ぐのを拒否すると、あっさり自分の代で最後だと言った。その為先代と大喧嘩して勘当された。けして剛笑拳を継ぎたかったのでは無いが、伝統をああまであっさり消すのは無責任だと思う。自由奔放な人だけど、女性関係の話は聞いた事も見た事もなかった。
そんな父さんが一途に思う母さんはどんな人だったんだだろう。想像が着かない。
「女神の加護は万能ではないわ」
上目遣いをする笑子。
しまった、一瞬可愛く見えた。
「例えば何処ぞの精霊召還するはずが間違って俺を召還しちゃうとか、な」
「父様!そんなこと、あり得な……い?」
いきなり父さんの足下が輝きだした。
「いや、アリエー「口説い!」でしょ」
この父にシリアスは似合わない。
「冗談だよ。何かあったら×××-2×45-××33に連絡すればいい。助けてくれる気がする」
え、何、このまま異世界行くつもり?マジで何なんだよこの人は。
「笑子も会えて良かった。レスリーは必ず守るから」
笑子は困惑した表情を見せている。目に涙が溜まっていた。
「まあ、あれだ。自由に生きろ」
ニカッと笑ったかと思うと、光りが父さんをつつみ、父さんは消えた。
俺は棒立ちとなり、笑子は膝から崩れ落ちた。
「貴方は自由過ぎるでしよ……」
※御父様はギャンブル依存症ではありません。女神の加護を有効活用しているだけであり、一応に精神は安定しています
2週間1話投稿を目指します。




