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No.4 女魔族の胸は皆同様にお化けスイカ……だといいね

笑子視点です。



※我が儘な子とぼっちに直接の関係性はなきにしもあらず、と言う前提でお読み下さい。




※誤字脱字を編集しました15/4/22

「美味しい…」


 ここはファミレスと言う所だと、今朝14ぶりの再会を果たした弟に教えてもらった。


 驚いた事にこの世界ではコックやメイド達がいる事は一般的で無い。どう考えて不便だと思いつつもこのファミレスに連れてこられた。


 道中は更に驚きの連続だった。見るもの全てが私の世界ではない物ばかりだ。

 でもゆっくり見ていると弟に急かされる。「周りの目が」とか言ってた。多分、自分のキノコを型どった髪形を人様に見せたく無いのだろう。あの髪形をしている人間は誰にも会わなかった。一般的では無い様だ。


 確かに周りからの視線は感じた。地味過ぎて逆に目立つ弟を持つと苦労するな。



 何はともあれ、お店に着き綺麗な内装に見とれつつも席に座る。

「好きな物選んでいいですよ」

 弟が冊子を渡してきた。どうやらメニューが書かれているみたいだけど読めない。弟に物を聞くのは屈辱的だが、折角なので美味しい物が食べたい。

「……あのさ、これ何て書いてあるの?」

「え?日本語です」

「読めないのよ」

「女神の加護は?」


 女神の加護は万能ではない。人によって強弱がある上に、私達は母様の序でに加護を頂いてるに過ぎない。それもあって、喋れても字は読めない。喋るのだって完璧に翻訳してくれる訳では無い。


 仕方無く弟のオススメを食べる事にし、今に至る。


「このお団子凄く美味しい」

「ああ、ハンバーグの事ですか」


「ハンバーグ」何て素晴らしい響きだろうか。この肉汁が染みでててジュウシーなところがまた……


「これなんの肉?」

「え?」

 貴女は馬鹿ですか、みたいな目を向けられた。ムッ

「初めて食べたのよ…」

「ああ、そうなんですか」

 だからその目を止めれ。

「ひき肉です」

「轢き難い?」

「恐いわっ!」


 大声を出したもんだから周りの視線が一斉に私達の方に集まった。本人も気が付いた様で俯いてしまった。


「…………で……あ…」

 急にボソボソ話し出したので最初何言ってるのか分からなかった。最初から言わせるとひき肉について教えてくれるみたい。



 食用の家畜の肉を潰して細かくしたもので、ハンバーグはそれに細かくした野菜を混ぜ会わせて焼いた物らしい。

 その発想に驚いた。潰して混ぜ合わせるなんて考えた事もなかった。流石は世界観から違う。


 父様に置いてかれて、こんな出来の悪い弟と暮らす事になってしまい、一時は絶望もしたが、こんな美味しい物が有るなら少しはマシと言うものだ。


 でも、これはあの料理ではない。

「ハンバーグって言ったっけ、こんなに美味しいのにオフクロノアジではないのね。オフクロノアジはどんなに美味なのかしら…」

「いや、お袋の味ってのは……」




  * * * * *



「笑子様、最後までお食べ下さい」


 屋敷の中で一番大きなテーブルに並べられた色とりどりのご馳走を前にする5歳の私に、世話役のダイアナが口を尖らせる。


「食べたくない」

 こんなに沢山あるのに一人で食べろなんて、酷と言うものだ。

「いけません。レスリー様のお言いつけです」

 ダイアナの嗄れた声が部屋に木霊する。ダイアナは名前こそ美しさがあるが、その姿はしわを隠す事を遠の昔に諦めたであろう老婆だ。だが、本人にその話をしないと言う暗黙のルールがこの屋敷にはある。


 母様は沢山食べればそれだけ強くなるとでも思っているのかもしれない。現に、食事に関しては事に煩い。しかし、直接母様が言ってくれる事はない。

 最近、魔王封印の呪文が急激に弱まりつつあり、勇者である母様も原因解明のために旅に出て家にはいない。最後に会ってからそろそろ1年なる。


「折角のお料理が冷めてしまいますよ」

「……分かった」


 仕方無くスプーンをスープに浸けしたものの、やはり食欲はなく、ぐるぐる液体に円を描く。


「はしたない…」


 ダイアナの愚痴が聞こえたが、何も聞かなかった事にしよう。同じその言葉を何度聞かされて来たことか。


 大体、料理を食べろと言うが、そもそもに不味い。

 どの料理も見た目ばかりで、味は薄すぎたり濃すぎたりでぱっとしない。口当たりも悪い。

 コックの腕の問題だと思い、この一年間だけで15回は採用と解雇を繰り返した。にも関わらず一向に美味しくならない。


「女神様、夕食をありがとね」

 スープにスプーンを立てたまま、感謝の御祈りをして席を立った。

「なんと言う事でしょう、その様な御祈りでは偉大な女神様からの加護を頂けなくなります」

 ダイアナの何時もの小言が始まりそうだから、無視して自室に向かった。


 この世界は女神様によって存在しているらしい。だから、此方の生きるものは事あるごとに女神様に感謝の祈りを捧げる。それには特に決まった型はない。言葉でなくそれに込める思いが重要視されている(節度はあるが)。

 なので、生きている事事態が女神の加護だと言う考えもあるぐらいだ。


 長い廊下を数分は歩き、一際目立つ赤い扉が見えた。

 何度見ても輝かしい。これぞ勇者の娘に笑子にふさわしい扉だろう。私自身のセンスに恐怖を覚えてしまう程だ。


 そして中に入ると、人の気配がした。魔法でランプに火を灯すと案の定招かざる客人がベッドで寝転がっていた。

「フィーネ!出てい来なさい!」

「あら、笑子ちゃん♪やっほ~」

 ベッドに転がるフィーネが手だけ振って呑気に挨拶をしてくる。


 フィーネは「よく寝た♪」と伸びをしながらベッドサイドに座り直した。目がしっかり開いていない。本当に寝ていたみたい。


 ……起こして悪かったかな



「今日はお話しがあるの」

 フィーネは大きなあくびをしながら言う。

「お話しなんてしないから」

 思う事ははっきり言わないと伝わらないと言うのが、私の持論だ。

「ここは魔族が来て良い場所では無いの」

「時々思うけど、笑子ちゃんて本当に5歳児?」


 フィーネは魔族だ。魔族は魔王から加護を得ている存在で勇者である私達とは敵対関係にある。種族によっては人の数倍生きている者もいるらしく、目の前のお化けスイカと勝手に命名した胸を持ち羽と尾と角を付けた、女の私から見ても絶世の美貌をした彼女も本当の歳は分からない。もしかするとダイアナよりも年を喰っているのかもしれない。


 本来この屋敷にも加護があり、魔族を含む闇の者達は近寄るさえ出来ない。しかし、一年前フィーネは突然この部屋に迷い込んだ。

 それからこの部屋に訪れる様になり、帰れと言っても帰らず勝手に世間話だったりを一通り喋っていつの間にか帰っていく。


「でも知ってるのよ」

 フィーネが嫌らしく笑顔を浮かべる。こんな時はろくな事が起こらない。

「十日位前に貴女、髪を赤く染めたでしょ」

「ふん、そんなの見れば分かるわ」

 確かに先日、母様譲りの金色の髪を赤く染めた。ダイアナは驚愕し、罰として夕食を抜きにされた。何でも、赤い髪は数千年前に封印された初代魔王がその毛色だったため、不吉らしい。実際私の知る限り赤い髪を持つのは魔族ぐらいのものだ。


「ふふ、言っていいのかな~」

 フィーネがニヤニヤしながら勿体振ってみせる。

「私は赤が好きなの。文句ある!?」

 しかし、余裕笑みのまま彼女は語り出した。

「今日は長く続いた雨も上がり久し振りの良いお天気だった。心も晴れ晴れ!……でもフィーネが来なかった。帰れと言っても居座るのに、急に来ないなんて自分勝手よ。もしかして、私がなにか気に座る事言っちゃったのかな?凄く不安。明日は来るよね」

「な、なんで」


 自分の顔が青ざめていくのを感じる…


「今日は久し振りに魔法学校へ行った。私ぐらい才能があるとすでに卒業レベルに達しているから通わなくて良いのにダイアナに行かされた。皆、頭を下げてばかりで馬鹿みたい。勇者の娘とは言え私みたいな幼児に負けて悔しく無いのかしら?まあ、私は天才だから仕方の無い事か。でも、フィーネを少しは見習って対等に扱って欲しい時もあるかも……

 そうそう、この最後の一文は上からインクが架かって読めなくなってたから魔法で修復しておいたからね♪」


 わざと消した事を絶対分かって言ってる…


「今日はお座敷の資料室で本を見付けた。資料室の本のジャンルが幅広いのは知ってたけど、こんな本もあってびっくり!題名は『友達と仲良くなる必殺技』。注目したのは第五章のページ。友達と同じアクセサリーを付けたりして、何かを共有する事が大切らしい。アクセサリーなんかは明ら様だから、髪色なんてどうかな?」


 今すぐここから逃げたい…


「赤く染めた。ダイアナには酷く叱られたけど……フィーネと同じ色、気に入ってくれるかな、ハート♪」

「ハートなんて付けてなかったっ!」

「あらあら、お顔真っ赤にしちゃって可愛い♪」

「うぅ」


 まさか、普段は厳重に魔法で封印している日記を見られるなんて……

 その魔法は魔王封印に匹敵するとさえ言われるレベルなのに。実際は本物の方が数段階上なのだろうけど。

 恥ずかし過ぎて涙出そう。



 私は我が儘だ。自覚はあるけど、そんな風に育つ環境だったのだから今更どうにもならない。だから友達も出来ずで、ちゃんと目を見て思ったこと言ってくれるのはダイアナしかいなかった。そのダイアナも母様の命が無ければ私になんて目もくれない事なんて解りきっている。


 本当は魔族なんかと仲良くしてはいけないのは分かってる。でも、初めて出来た友達だから、離したくない。

 フィーネが屋敷に毎日の様に来ている事は誰にも言っていない。ばれたら、母様が戻って来て、フィーネは跡形もなく消滅させられてしまうかもしれない。


「もう知らない!」

 私は着替える事もせず、布団の中に潜り込んだ。


「ふふ、笑子ちゃんは食べちゃいたいくらい可愛い♪」


 フィーネが布団越しに頭を撫でてくれた。

 凄く気持ち良い。


「お話しってね、暫く会えなくなるの」


 突然の友の言葉に直ぐに理解が追い付かなかった。


「勇者が、貴女のお母様が帰って来ているの。私も魔族の端くれだからね、近付いて来るのが分かるわ」


 女神の使徒である勇者と魔王の使徒である魔族は戦いの定めにある。数千年にも渡り繰り返されてきた世界の理だ。


「いつか必ず迎えに来るから」


 その声は凄く、凄く優しく暖かさがあった。


「フィーネっ!!」

 被っていた布団を蹴り飛ばしてみるが、そこにはフィーネの姿はなかった。



 それから三日間涙が止まらなかった。

 その後日記帳を開いてみると、端に「笑子の赤い髪、とっても素敵よ」と書かれている事に気が付き、また泣いた。



 更に十日と二日後、母様が帰って来た。


 私は思わずフィーネの事を全て話してしまった。

 最初こそ怪訝な顔した母様だったが、最後は優しく抱き締めてくれた。

 そして、少し考える表情をしてから、2歳まで住んでた異世界では、血の繋がりも種族も関係なく家族となれる究極の料理があることを教えてくれた。いつかフィーネと食べる事が出来たら良いね、と。




 その名は「オフクロノアジ」


 


  * * * * *



「―――がお袋の味ですよ」

 ぼそぼそと声がした。


 昔を懐かしんでたらショウが何か言ってた様だけど聞いてなかった。まあ、大した話しでは無いだろう。

 


 取り敢えずはハンバーグとの出会いを女神様に感謝します。


 こんな素敵な料理とのこれからの出会いに今から興奮してしまう。今までの食事が不味かったのだから、少々の贅沢も許されるはずだ。よくは分からないけど父様から沢山のお金を貰ったし………あれ?



 何で私、2歳までの此方の世界にいた記憶あるのに、何を食べてたのか覚えて無いんだろ?



ギリギリ2週間です

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