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地球の管理者:異星文明に選ばれた元研究者  作者: azureimf
異星に嫁ぐプリンセス篇
184/186

D-DAY+200 2027年7月上旬 怒涛の三日間の終わり

この作品はフィクションです、実在の人物や団体などとは関係ありません

#### AM 7:00 ホテル・リッツ・パリ「スイート・アンペリアル」


柔らかな朝日が、ヴァンドーム広場を見下ろす豪奢なスイートの窓から差し込んでいた

目を覚ましたp.adminが横を見ると、隣で眠っていたはずのR子リコの姿はすでになく、彼女はパウダールームで身支度を整え終え、寝室の片付けを始めていた

R子は昔から常にp.adminよりも早起きで、彼は結婚してから一度も彼女の「寝顔」を見たことがない。これもまた、彼女の几帳面で奥ゆかしい性格の表れだった


p.adminがトイレから戻ると、R子が昨日着ていたピンクのイブニングドレスを大事そうに撫で、名残惜しそうな表情でガーメントバッグにしまおうとしているところだった


p.admin:

(……リコは、あのドレスのことをすごく気に入っているみたいだな。いっそ、買い取ってプレゼントすればいいんじゃないか?……いや、しかし。彼女だけに買い与えるのは、かおりにもさやにもフェアじゃない)


ならば、妻三人分のドレスをすべて買い取ろう

そう決意しかけたp.adminだったが、直後にある懸念が頭をよぎり、少し躊躇してしまった


p.admin:

(本当にこれでいいのか? リコはともかく、かおり(W子)とさや(S子)の意見も聞かずに勝手すぎるか? 特にかおりに『ドレスを買わないか?』と正面から提案したら、十中八九『そんなの勿体ないからいいわよ』と断られるのがオチだ。リコだって本心では欲しくても、ブランドの特注品だ、値段を聞いたら間違いなく遠慮してしまう。

さやなら喜んで受け入れるだろうけど、彼女一人だけドレスをもらっても、俺の最初の意図と違う……よし。ここは俺が独断で動くしかない)


p.adminは、朝10時にはホテルをチェックアウトし、シャルル・ド・ゴール空港のワープゲートから東京へ帰還するというタイトなスケジュールになる可能性を思い出し、すぐさま行動に移した


彼はスマホを取り出し、N君宛てにメッセージを打った


p.admin(N君へメッセージ):

『妻たち3人が昨日着ていたイブニングドレスを、俺のポケットマネーから購入したい。時間がないから、フランス側の担当者に連絡して、「後日、請求書をこちらに送るように」と調整してもらえないか? 朝早くからプライベート絡みの頼み事ですまん』


送信ボタンを押す。約2分後、p.adminのスマホが短く震え、N君から簡潔な返信が来た


N君(メッセージ)

『了解。今すぐ手配します』


仕事の早いエリート外交官に感謝しつつ、p.adminはリビングへ向かった


* AM 7:30 王のささやかな朝食


身支度を終えた妻たち三人がリビングに集まり、恒例の「朝食のルームサービス注文タイム」となった


p.admin:

「さて、今日は何にしますか? ホテルの標準的なコンチネンタル朝食? それとも、また昨日みたいな『台湾朝食』にする?」


W子:

「私は、台湾風の豆漿トウジャン蛋餅ダンピンが良いわ。……あ、それと。食後にアイスクリームを乗せたワッフルもお願い」


R子とS子:

「「私たちは、最終日だからホテルの伝統的な朝食セット(クロワッサンと卵料理)で」」


妻たちのオーダーを聞き、p.adminは少し悪戯っぽく笑った


p.admin:

「じゃあ俺は……『チーズバーガー』に再挑戦してみようかな。本当は朝マックのソーセージマフィンみたいなジャンクな味が欲しい気分だけど、さすがにこの超高級ホテルで『朝マック買ってきて』と注文するのはアレだから自粛するよ。つくばに帰ったら、ドライブスルーで買えばいいしね」


初日、p.adminは到着の疲労からルームサービスでチーズバーガーを注文しようとしたが、「ハンバーガーはランチとディナーのみの提供となっております」とやんわり断られた経緯があった


p.adminは備え付けのIP電話機を取り上げ、ルームサービスの受付に流暢な英語でオーダーを伝えた


p.admin(英語):

「おはようございます。スイート・アンペリアルの朱雀です。朝食のルームサービスをお願いしたいのですが。台湾風の豆漿と蛋餅を一つ、食後にアイスクリームを乗せたワッフルを一つ。伝統的な朝食セットを二つ。

……それと。無理を承知で伺いますが、私に『チーズバーガー』を作っていただけないでしょうか? どうしても、お宅の素晴らしい厨房で作ったハンバーガーが食べたくて」


電話口の向こうで、受付が少し戸惑った後、すぐに「かしこまりました、朱雀陛下。特別に、シェフに腕を振るわせます」と快諾の返事が返ってきた


(やっぱり、VIP待遇と三日目の融通ってやつだな)と、p.adminは満足げに受話器を置いた


約15分後

スイートルームの重厚なドアが控えめにノックされ、白いクロスが敷かれたワゴンに乗って、四人分の朝食が運ばれてきた

窓の外に広がるパリの朝の美しい景色を眺めながら、p.admin一家はリラックスした雰囲気でナイフとフォークを動かした


W子:

「ふふ、やっぱりここのワッフル、サクサクで美味しいわ」


S子:

「あんた、朝からよくそんな重たいバーガー食べられるわね。胸焼けしない?」


p.admin:

「するかもしれないけど、これは男のロマンなんだよ。……美味い。牛のパティにトリュフの香りがする。朝マックとは全然違う、ガチの高級フレンチバーガーだ」


和やかな朝食の風景

しかし、p.adminの内心は全く穏やかではなかった


* AM 8:30 王のふところ事情


朝食が終わり、妻たちが出発に向けて自らの荷物の化粧品や小物を片付け始める中、p.adminはスマホを何度も確認していた

しかし、N君からの「ドレス買取の調整結果」の返事はまだ来ていない


p.admin:

(……やばい。ドキドキしてきた)


p.adminは、自らの『お小遣い』を頭の中で猛スピードで計算し始めていた


現在、p.adminの公式な年収(楽園島幹部と同額)は2,000万円だ。

楽園島の公式通貨である「楽園島金貨(10G=15万円)」で受け取って非公式ルートで換金すれば、実勢価格のプレミアムがついて4,000万円近くになる。他の幹部たちはその裏技を使っているが、元首であるp.adminが自らの「主権の象徴」である金貨を、自ら進んで外貨(日本円やユーロ)へ換金・売却するのは、立場上少し引け目があった


そのため、ここ二年の給料は律儀に「現金(日本円の振り込み)」で受け取っている

前回の「ダブルデート(D-DAY+181)」で、W子かおりと共に休園中の動物園と遊園地を貸し切るため、それぞれ1,000万円ずつ出し合った出費が響いている

よって、『朱雀椿』名義のMSB銀行の預金残高は、概ね3,000万円だ

(ちなみに、別人格である『Azure』としての口座にも、かつてのカメラレビュー代や妻たちの写真集の印税、一般人時代の貯金などで3,800万円弱があるが、これは別会計だ)


p.admin:

(高級な仕立てのイブニングドレスなんて、いくらになるか全然想像もつかないけど……。高めに見積もって1着300万円だとしても、3着で1,000万円弱か……よし、まあ、払えない額じゃない。俺の個人口座から一括で振り込もう)


もちろん、楽園島という「国家」としては、MSB銀行口座に5,000億円以上の現金(うち1,500億円は神島建設への朱雀の宮工事支払い用)があり、さらに昨日開設したパリ国立銀行にも25億ユーロの現金と10億ユーロのフランス国債(総額6,000億円以上)が眠っている

しかし、これらは全て『国家財産』であって、p.adminの私物ではない

「愛する妻へのプレゼント」という完全にプライベートな目的のために、ルールを破って国家予算に手をつければ、それはもはや公私混同の独裁であり、法治国家の根幹が揺らぐ

エンジニアとして、国家元首としても、そんな汚職を自ら起こすわけにはいかなかった


お金の計算と、もし予想以上に高かったらどうしようという不安で、p.adminは無意識のうちに眉をひそめてしまっていた

その険しい表情に気付いたR子が、荷造りの手を止め、心配そうに歩み寄ってきた


R子:

「旦那様……何か、心配事がございますか? 私にできる事は多くないかもしれませんけれど、一人で考え込むよりも、みんなで解決しましょう?」


優しく気遣ってくれるR子

しかし、今回ばかりは「あなたへのサプライズプレゼントの値段にビビッている」などと、本人に相談できるはずもない

しかも、妻のR子は楽園島の内政や財政支出を厳格に管理する『内政総括官』なのだ(S子が経済産業総括官として契約を取ってきても、財政の紐を握っているのはR子である)

国家予算からの横領など、彼女の目をごまかせるはずがなかった


p.admin:

「……いや、いいんだ。大した事じゃないから。気遣ってくれてありがとう、リコ」


p.adminは無理に笑顔を作って誤魔化した


AM 9:00

スイートルームの重厚なドアが、控えめだが力強くノックされた。

出発前の最後のブリーフィング(現状報告)と、パリに残るMei子大使を激励するための、朝の仕事の報告会が始まろうとしていた


#### AM 9:00 ホテル・リッツ・パリ「スイート・アンペリアル」 橋の値段とドレスの値段


AM 9:00

スイートルームの重厚なドアが再度控えめにノックされ、N君、INOさん、Mei子大使、そして昨日から合流しているT先生、Oka先生、Lee先生、OZAさんが入室してきた

K子様とM子様は、昼12時のワープゲート便で東京(羽田)へ直行して帰還するため、この場には同席していない


入室するなり、N君はすかさず一枚の封筒をp.adminに手渡した


N君:

「朱雀様。例の『ドレスの件』についてです。後でお読みください」


p.admin:

「分かった。朝早くからご苦労かけたね」


幹部たちがソファに腰を下ろし、リラックスした気分で雑談を始めている隙に、p.adminは待ちきれないように封筒を開け、中身を覗き込んだ

そこには請求書ではなく、美しいカードに書かれたMa大統領からのメッセージ(英語)が記されていた


Ma大統領のメッセージ:

「朱雀陛下。ご夫人方が我が国のメゾンのドレスをあのように美しく着こなしてくださったこと、フランス共和国の誇りです。妃殿下たちのドレスは、フェッセンハイムの奇跡と、我々の強固な同盟を祝した、私からのささやかなお礼(贈答品)としてお受け取りください」


p.adminはほっとしたように、しかし同時に少し厄介なものを抱え込んだような顔で、無意識に日本語でつぶやいた


p.admin:

「只より高い物はない……と思うが。まあ、フェッセンハイム原発のタービン建屋除去で、すでに十分すぎるほど『貸し』は作ったからな。ありがたく貰っておこう」


やがて幹部たちが全員着席し、N君が本日のスケジュールと現状の報告会の進行を始めた


N君:

「本日のスケジュールをご報告します。

1.本日は休息を優先するため公式行事は一切ありません。AM 11時にホテルを出発し、12時のシャルル・ド・ゴール空港発のワープゲート便で羽田空港へ帰還します。日本時間でPM 19:00の到着予定です。

2.イギリスのJ首相夫妻も同じくワープゲート経由で日本に渡り、そして日本政府側経由で英日と楽園島間の会食の打診がありましたが、朱雀様は堅苦しい席を嫌がるでしょうから、日本政府経由での誘いはお断りしておきました」


p.admin:

(N君、ナイス!)


N君:

「よって今日の昼食……日本時間でのディナーは、我々楽園島側のみで気兼ねなく行います。銀座近くにある、朱雀様と妃殿下たちが以前から好まれている香港料理のレストランを貸し切りで予約いたしました。もしご気分に合わなければ、今からでも変更可能ですが」


p.admin:

「いいえ! 香港料理で完璧です。みんなもそれでいいよね?」


妻たちも嬉しそうに頷いた。連日のフレンチに胃が疲れていたため、気取らない香港料理は最高のチョイスだった


* ノーズ海峡大橋、100億ポンドの全貌


次に、土木技術総括官のOZAさんが立ち上がり、「ノーズ海峡橋建設契約」に関する報告を始めた。一緒にイギリスのJ首相とハードな交渉を行ったS子も隣に立つ


OZAさん:

「結果から申し上げますと、スコットランドと北アイルランドを結ぶ全長30kmの『ノーズ海峡橋』の総建設費は、100億ポンドで妥結いたしました」


100億ポンド。日本円にして約2兆3,200億円である


OZAさん:

「橋のスペックは幅50m、全長30km。水面から高さ50mの斜張橋設計です。橋面面積で計算すれば約1.5平方キロメートル。羽田空港の新人工島(約2.6平方キロメートル)の6割程度ですが、海峡の荒波や強風への耐性、巨大な橋脚の沈設など、求められる技術的ハードルは人工島とはまた次元が異なります」


S子:

「で、ここからが私の仕事の成果だけど。この100億ポンド、日本の時みたいに10年分割払いじゃなくて、イギリス側は『一括』で払ってくれることになったわ」


p.admin:

「100億ポンド(2兆3,200億円)一括……今までで一番まとまった巨大な収入だな」


国家予算を管理する立場であるR子も、あまりにも桁違いな金額を聞いて「に、にちょう……っ」と言葉を失い、目を丸くしていた


S子:

「ちなみに、イギリス側は支払先をロンドンのHSBC銀行にするよう強く申し出てきたんだけど。私が蹴って、昨日開設したばかりの『パリ国立銀行』へ振り込ませることにしたわ」


R子:

「あ……ありがとうございます、さやちゃん。国を跨いで複数の公式口座を管理するのは、為替や管理の面で非常に負担がかかるので……当面の間、ヨーロッパ向けの資金はパリ国立銀行一本に絞りたかったんです」


S子:

「リコの負担は減らさないとね。……で、旦那様。その起工式なんだけど、4日後(D-DAY+204 2027/7/18)の予定よ。旦那様は行きたくなければ、OZAさんと私だけで現地に行ってくるけど?」


p.admin:

「本当にいいのか? OZAさんに現場の責任を押し付ける気がして申し訳ないし……もちろん、さやにもね」


S子:

「よくないに決まってるでしょ。だから、日本に帰ったら今日からしっかり休んで英気を養って。次はイギリスに渡って大仕事よ」


p.admin:

「分かったよ。でも、頼むから今回はしきたりの厳しい式典や、息の詰まる晩餐会は全力で遠慮したい。N君、イギリス側によく伝えておいてください」


N君:

「……承知いたしました。最大限の『努力』はします」


N君の含みのある言い方に一抹の不安を覚えつつも、これ以上の緊急報告はなく、話題はMei子大使の近況へと移った


Mei子大使は今まで、パリの楽園島大使館(兼公邸)の立ち上げや、異星医療ベイを設置する病院・医師の選定に忙殺されており、つくばの公務員宿舎にいる夫と子供の元へ一ヶ月以上も帰れていなかった


p.adminはこの状況を不憫に思い、優しく説得に入った


p.admin:

「Mei子。この一ヶ月の君の働きは見事だった。フランスとの歴史的な国交締結も成立し、大使館の機能も軌道に乗りつつあると聞いている……でも、あまり無理しないでくれ。これを受け取ってほしい」


p.adminはポケットから、金属製の円盤ワープゲートのマーカーを取り出し、Mei子に手渡した


p.admin:

「これを大使館の屋上に設置してくれ。登録対象者である君が範囲内に入れば、つくばの楽園島大使館の屋上へ自動転送されるように設定してある。週末くらいは日本に帰って、子供(Tom君)に顔を見せてあげてほしいんだ」


Mei子:

「朱雀陛下……。お心遣い、本当にありがとうございます。ですが、フランスでの医療ベイの本格稼働に向けて、まだ少しだけ重要な折衝が残っておりまして……」


生真面目なMei子が固辞しようとするのを、親友であるW子が優しく遮った


W子:

「Mei子。仕事に熱中しすぎるのはあなたの良いところだけど、家族との時間も大切よ。旦那様(p.admin)が用意してくださったんだから、ありがたく使わせてもらいましょう?」


Mei子:

「……かおりさん。はい、分かりました。お言葉に甘えさせていただきます」


* AM 9:40 フランスの粋な計らい


幹部たちの報告会が終了し、彼らが退室すると、スイートルームのリビングには再びp.adminと妻たち三人だけが残された


p.admin:

「さて。実はさっき、N君から受け取った手紙なんだけど……みんなが昨日着ていたあのイブニングドレスのことなんだ」


R子:

「えっ……あのドレス、やっぱり返さなきゃいけないんですよね…」


p.admin:

「いや、逆だよ。実は俺の自腹で買い取って皆にプレゼントしようと思って、朝イチでN君に手配を頼んでいたんだ……そしたら、Ma大統領が先回りして支払いを済ませてしまったらしくてね。『フランスからの贈答品として受け取ってくれ』とのことだ」


W子とR子は、驚きと共にホッと胸を撫で下ろした


W子:

「え……! 大統領からの個人的な贈り物ということになるのね。それなら、外交の記念品としてありがたく頂戴しましょう」


p.admin:

「Ma大統領の財布から出したわけではなさそう…おそらく、しかし彼からのプレゼントである事は変わりない、悔しいけど」


R子:

「旦那様、買おうとしてくださっていたんですね……そのお気持ちだけで、私、すごく嬉しいです」


二人が無邪気に喜ぶ一方で、高級ブランドの価値を正確に把握しているS子だけは、腕を組んで呆れたような、しかし少し感心したような笑みを浮かべていた。


S子:

「へえ。あのタヌキ大統領、本当に抜け目ないわね。旦那様が買い取ろうとしているのを察知して、恩を売る絶好のチャンスに変えたってわけだ」


p.admin:

「まったくだよ。俺としては、ただの自分からのプレゼントにしたかったんだけどな……まあ、でも助かったよ。ブランド品なんて値段の見当もつかないから、実は口座の残高が足りるか少しドキドキしてたんだ。全部で1千万くらいはするんだろう?」


その言葉に、S子は「プッ」と吹き出しそうになるのを必死に堪えた


S子:

(1千万? バカね、ディオールとジャンバティスタ・ヴァリ、それに私のヴィトン。全部オートクチュールクラスの特別製よ。安く見積もっても総額で2,000万〜3,000万円は下らないわ。あんたのなけなしの個人口座、一瞬で吹き飛んでたわよ)


しかし、S子はそれを口に出すことはしなかった

ここで本当の値段を教えれば、庶民感覚の抜けない彼が気絶するほど慌てるか、あるいはMa大統領への「借り」の大きさを重く受け止めすぎてしまうからだ


S子:

「……そうね。まあ、それなりのお値段はするでしょうね。あんたのお財布が助かって良かったじゃない。大統領の粋な計らいに感謝しなさいな」


真実を知らないp.adminは「そうだな」と呑気に頷き、パリでの最後の荷造りを再開した


#### AM 10:00 K子の来訪


幹部たちの報告会が終わり、嵐のような忙しさが一瞬だけ引いた

p.adminは豪華なソファに深く腰掛け、手元のスマホで現地のニュースを見ながら、充電器など片付けし忘れた物がないかのチェックを始めた

エンジニアの性分か、どんなに身の回りを世話されても、ふとした瞬間にホテルに何かを置き忘れていないか不安になるのだ


そこへ、再びスイートルームのドアを叩く音が響いた

R子がドアを開けると、そこには水色のドレスに身を包んだK子様が、女官を伴って立っていた

M子様から「楽園島側の会議が終わった」と聞き、この出発直前のわずかな時間を縫って訪ねてきたのだろう


p.admin:

「K子、どうしたの? 出発まであと1時間もないけれど、何か忘れ物かな?」


K子様:

「いえ……朱雀様。少しだけ、これからのことでお話ししたいことがありまして」


その真剣な眼差しを察し、同席していたW子、R子、S子の三人は顔を見合わせると、「最終チェックをしてくるわね」と空気を読んで、揃って隣の部屋へと席を外した


静かになったリビングで、K子様が口を開いた


K子様:

「朱雀様……今後のスケジュールを伺ってもよろしいでしょうか?」


p.admin:

「ああ。今日は羽田に着いたら銀座で食事をして、明日は少し休むけれど……四日後には、また仕事でイギリスへ渡ることになりそうだ」


K子様は少し伏せ目がちに頷いたが、彼女の本当の心配事はもっと別の、途方もないスケールの話だった


K子様:

「……実は、先日アルファ提督からいただいた『ポルカラ本星』への招待状のことなのです。これをお父様……H親王や、日本政府の方々にどう説明すべきか、ずっと悩んでおりまして」


p.admin:

「ああ……フランスでの騒動で、脳から完全に追い出されてしまっていたよ」


三日前、火星軌道にいる母艦でアルファ提督から渡された正式な招待状

ポルカラ最高評議会によれば、司令官階級の者が異星のプリンセスと婚約した場合、本星へ赴き『結婚の報告義務』を果たす必要があるという


目的地は、ポルカラ本星、地球から約40光年離れた、人類側に「トラピスト1e(TRAPPIST-1e)」と呼ばれている系外惑星

アドバンスド・ワープコアを搭載したネイビーゲーザーでも、片道で約10日間(ワープ9=光速の1516倍)

往復の旅路と現地での滞在を含めれば、一ヶ月以上地球を空けることになる

重力の違いによる時間の進み方の微差まで含めれば、文字通り「異世界への旅」だ


K子様:

「日本政府が、皇族である私を一人で行かせるはずがありません。外交官はもちろん…きっとJAXAや自衛隊の方々が同行すると言い出すでしょう……どのタイミングで、どうお話しすればよいのか……」


p.admin:

「……皇室会議の時と同じだね。K子、一人で悩まなくていいよ。日本政府への説明は、私が直接引き受ける。君だけにこの重圧を背負わせるわけにはいかないからね」


K子様:

「朱雀様……そのお言葉を聞いて、とても嬉しかった…」


二人は真剣に議論を重ね、明日、まずはH親王邸を訪れて両親に報告し、そこから宮内庁・政府へと協力を要請する手順を踏むことで合意した

あの保守的なH親王に「娘を40光年先の惑星へ連れて行く」と切り出す

フランスとの国交締結という大仕事を終えたばかりのp.adminの肩に、再び「父親への挨拶」という別の種類のプレッシャーが重くのしかかった


その時、隣の部屋で準備を終えた妻たちが戻ってきた

話の概要を聞いていたS子が、すぐさま実務的な釘を刺す


S子さや

「……いい、旦那様。地球を空ける一ヶ月の間、誰を『代理管理者』にするか、出発前に必ず決めて周知しなさいよ。元首不在の楽園島をどう回すか、これは死活問題なんだから」


p.admin:

「分かっているよ。一ヶ月とはいえ、代理者の決定は重大だ。幹部の皆の意見を聞いて、慎重に決めるよ」


すると、それまで黙って話を聞いていたW子かおりが、意を決したように口を開いた


W子:

「……あなた。もし、あなたがそんなに遠い星へ行くのなら……私も、一緒に行きます」


その言葉に、R子とS子は絶句した

かつてp.adminが親友の裏切りで暗殺されかけ、異星医療ベイの中で眠り続けていた時、W子はたった一人で代理管理者として楽園島を背負った経験がある

彼女にとって、夫が再び「手の届かない場所」へ一ヶ月も離れることは、何よりも恐ろしいことなのだ


R子とS子も付いていきたい気持ちは山々だったが、彼女たちには「内政」と「経済産業」という、楽園島に残って死守すべき重大な責務がある

一方でW子は、現状特定の役職は持たず、対外的な「皇后」としての振る舞いこそが彼女の役割だった


S子:

「……かおりさん。そう言うと思ったわ」


R子:

「……寂しいけれど、旦那様にはかおりちゃんが付いていてくれるのが一番安心です」


二人の妻たちは、複雑な想いを抱えつつも、W子の決意を尊重した。


p.admin:

「……分かった。私からも反対はしないよ。ただ、長期間の本格的な宇宙旅行は俺たちも未体験だ。準備は万全にしよう」


K子様は、W子の力強い申し出に、ほんの少しだけ顔をほころばせた


K子様:

「かおりお姉様……。お姉様がご一緒してくださるなら、これほど心強いことはございません。ポルポカラマリの方達の世界を、共に見守っていただければ嬉しいですわ」


AM 10:40

出発まで残り20分。K子様は丁寧に会釈をすると、自らの支度のために部屋へと戻っていった


パリでの歴史的な三日間が終わりを告げようとしているが、p.adminの脳内ではすでに、40光年先の未知の惑星への旅路に向けた「交渉のシミュレーション」が始まりつつあった

こうして、世界のパワーバランスを大きく揺るがした「D-DAY+199」から続くフランスでの怒涛の滞在は、帰路の途につくのだった

お待たせしました、GW中は浮気して以前考えた別の小説の執筆もしてましたが

メインはこっちなので、きちんと話を続けますので心配しないでください

もちろん、何かしらリアクションがあればすごくうれしいです

最近は、アクセス数はbotのみで、人間は殆ど見てくれないじゃないからというマイナス思考に陥った時もありました(笑)

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