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地球の管理者:異星文明に選ばれた元研究者  作者: azureimf
異星に嫁ぐプリンセス篇
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D-DAY+200~201 2027年7月上旬 Homeway:東京・楽園島への帰還

この作品はフィクションです、実在の人物や団体などとは関係ありません

#### AM 11:00 ホテル・リッツ・パリからの出発


華やかなパリの滞在も、ついに終わりの時を迎えた

午前11時。ホテル・リッツ・パリの正面玄関前には、最高級のリムジンと警護車両が列をなしていた

p.adminと三人の妻たち、そして楽園島の幹部ら全員がロビーに姿を現すと、支配人をはじめとする数十名のスタッフが整列し、最敬礼で一行を迎えた


支配人:

「朱雀陛下、ならびに妃殿下。皆様をお迎えできたことは、我がホテルの歴史において最大の誉れでございます。またのお越しを、心よりお待ち申し上げております」


p.adminは丁寧な会釈を返し、パリの拠点として完璧なサービスを提供してくれたスタッフたちに感謝の意を示した

K子様とM子様、そして日本側の護衛官たちも次々と車に乗り込み、一行は一路、シャルル・ド・ゴール空港へと向かった


* AM 11:30 シャルル・ド・ゴール空港 ターミナル2E「東京ワープゲート」


空港のターミナル2Eの外には、30m四方の巨大な白い枠が鎮座していた。中央には、眩いホログラムで「TOKYO」の文字が浮かび上がっている。

そのゲートの傍らに、「木の箱の山」が積まれていた。


p.admin:

「……すごい量だな。これ、全部牡蠣なのか?」


現場には、見送りのためにMa大統領が自ら待機していた

フランス側が用意した『ブルターニュ産の牡蠣、20トン』

これはポルポ・カラマリ艦隊への贈り物であり、美食の国フランスが「異星の友」へ贈る最高級のギフトだった


p.adminはゲート脇の荷卸しエリアを確認すると、Ma大統領に声をかけた


p.admin:

「Ma大統領、この量は圧巻ですね……それで、おいくら支払えばいいでしょうか? さすがに20トンともなると、かなりの額になるはずですが」


Ma大統領は、肩をすくめて笑みを浮かべた


Ma大統領:

「朱雀陛下、水臭いことを言わないでください。フェッセンハイムのタービン建屋を、陛下は『無料』で、それも瞬時に消し去ってくださった。あの恩義に比べれば、この牡蠣などは海辺の砂粒のようなものです。これはフランス政府からポルポ・カラマリ艦隊への、親睦のための贈り物としてお受け取りください」


p.admin:

「……なるほど。では、ありがたく頂戴します」


p.adminは胸の三角バッジを軽くタップし、ネイビーケーサーに待機しているシグマ副艦長に通信を繋いだ


p.admin:

「シグマさん、今から牡蠣のコンテナを送る。艦隊の皆で分けてくれ」


シグマ副艦長:

「司令官殿、感謝いたします、艦隊の皆も喜ぶでしょう」


次の瞬間、光の粒子が木の箱の山を包み込み、20トンの牡蠣は音もなく宇宙へとワープ転送された


* AM 11:45 別れと休日への拘り


ワープゲートの白い枠内には、すでに帰還するメンバーが勢揃いしていた

W子かおりはゲートの内側ギリギリに立ち、外側に残る親友Mei子大使と熱心に言葉を交わしていた


p.adminはMei子の前へ歩み寄り、静かに語りかけた


p.admin:

「Mei子さん。フランスのことは頼みました。……でも、あまり根を詰めすぎないように。さっき渡したマーカーを使って、いつでもつくばの家へ帰って休んでくださいね」


Mei子:

「はい、朱雀陛下。ありがとうございます。……かおりさんも、お元気で」


そこへ、東京経由で明日ロンドンへ帰国予定のイギリス・J首相が、粘り強く歩み寄ってきた


J首相:

「朱雀陛下、さや妃殿下。今夜、我々は東京で日本政府との公式会食が予定されています。ぜひ、陛下にも……」


p.admin:

「J首相……私は家庭的な時間を何よりも重視していると、これまでの交渉でお分かり頂けているはずだ」


p.adminはきっぱりと、しかし落ち着いたトーンで断った


p.admin:

「ここ数日の連日の公務と実労働で、私も妻たちも疲弊している。今日は我々の『休日』だ。公式活動は一切遠慮させていただきたい……それは、これまでノーズ海峡橋のために不眠不休で働いてきたOZAさんも同様です。彼にも愛する家族がいて、休息が必要だ。この辺りは、必ず配慮していただきたい」


隣に立っていた土木技術総括官のOZAさんは、主君からの予期せぬ労いの言葉に目を見開き、深い感謝の眼差しを送った

J首相は「……承知いたしました」と残念そうに引き下がったが、それ以上食い下がることはなかった


* PM 12:00(パリ) / PM 19:00(東京羽田) 帰還


ゲート上方のホログラムが、カウントダウンをゼロに刻んだ

次の瞬間、一行を包んでいたパリの昼の光は、一瞬にしてダークブルーの夜空へと切り替わった


羽田空港、新人工島の特設ワープゲート。

転送された現場には、メディアの喧騒は一切なかった

あるのは、緑と青、白や赤など誘導灯のLEDが複雑なパターンで輝くE滑走路の幻想的な景色と、静かに待機するJALのグランドスタッフ、そして数台のパトカーと10台以上の黒塗りの公用車だけだった


p.adminは、羽田のひんやりとした夜の空気を大きく吸い込んだ


p.admin:

「東京でも、こんなに広い空が見える場所があるんだな……。なんだか、この潮風の匂いとライトの光を見ると、ようやく戻ってきた気がするよ」


少し安堵した表情で周囲を見渡すと、彼は妻たちと幹部たちに声をかけた


p.admin:

「さて……お腹も空いたし、早速ご飯に行こうか」


隣にいたK子様とM子様も、当然のように楽園島側の車へと足を向けた

その様子を見たH親王は、「やれやれ……」と言わんばかりに呆れた顔を見せたが、娘たちの幸せそうな様子に何も言わず、自らの車へと乗り込んだ


夜の羽田を、黒塗りの車列が滑るように走り出す

向かうは銀座、妻たちが楽しみにしていた香港料理のレストラン。パリでの歴史的な激動を終えた一行は、ようやく「家族の時間」へと戻っていくのだった


#### PM 7:40 東京・銀座:ソウルフードと、静かに変わる世界


羽田空港から専用車に乗り換えた一行は、夜の首都高速を抜け、ネオンが煌めく銀座へと足を踏み入れた

p.adminと三人の妻、楽園島幹部6人、K子様とM子様、そして女官や護衛官たちを合わせた計16人は、6台の黒塗りの公用車に分乗し、銀座6丁目交差点近くの落ち着いた商業ビルの前に到着した


事前に手配されていた私服警官たちに先導されながら、専用エレベーターで6階へと上がる

そこにある「香港料理レストラン」は、決して広い店ではないが、重厚な調度品と洗練された空気が漂い、明らかに「舌の肥えた大人たちが寛ぐための格式高い場所」として利用されていることが窺えた


エレベーターが開くと、タキシード姿の初老の支配人とスタッフたちが最敬礼で一行を出迎えた


支配人:

「朱雀陛下。そしてK子内親王殿下、M子内親王殿下。本日は当店をお選びいただき、身に余る光栄でございます。皆様の長旅のお疲れを癒やせるよう、最高の広東料理をご用意しております。ささ、奥の特別室へどうぞ」


案内されたのは、店内で最も広い、大きな窓のある個室だった。そこには10人掛けの立派な円卓が二つ用意されていた

席順に決まりはなかったが、自然とp.adminの右隣にはK子様が座り、左隣にはW子、R子、S子の妻たちが並んだ

そして当然のように、M子様はN君の隣を陣取っていた


大きな窓からは、銀座の中央通りを行き交う人々と、華やかなブランド街の夜景が見下ろせた

p.adminは温かいジャスミン茶を一口飲み、ふと口を開いた


p.admin:

「こういう場所はね……小さい頃、大人たちの『ご馳走』の席としてよく利用されていたんだよ。親戚との会合とかでね。……まさか自分が、こういう会合を開く身分ホストになってここにいるなんて思うと、なんだか少し不思議な気分だな」


W子:

「ふふっ。私たちも、こんな風に銀座の夜景を見下ろしながら貸し切りでお食事する日が来るなんて、昔は想像もしていなかったわ」


やがて、前菜の盛り合わせから始まり、次々と美しいコース料理が運ばれてきた

その合間に、p.adminは給仕のスタッフを呼び止め、ふと尋ねた


p.admin:

「すみません。メニューにはない、無理なお願いなんですが……『狀元及第粥(豚のレバーやハツ、肉団子が入った広東風の具だくさんお粥)』を作ってくれませんか?」


スタッフ:

「少々お待ちくださいませ。料理長に確認してまいります」


すぐに戻ってきたスタッフは「材料がございますので、ご用意可能でございます」と恭しく答えた

科挙(試験)の首席合格(状元)を願う縁起物として、本場香港はもちろん、台湾でも市民に深く馴染みのあるソウルフードだ


W子:

「ちょっとあなた。もう豪華なコース料理が入っているのに、さらにお粥なんて追加して、全部食べきれるの?」


p.admin:

「大丈夫だ。実は今、一番食べたいのはそのお粥なんだよ」


料理は本格的な広東料理だった

フレンチの連続で少し胃が疲れていたp.adminや妻たち、そして同じく台湾出身のLee先生は、久しぶりの故郷に近い「本場のアジアの味」に深く感動していた


Lee先生:

「おお……このスープの出汁の取り方、素晴らしい。五臓六腑に染み渡りますわ」


K子様:

「ええ、本当に。フレンチも素晴らしいですが、この奥深い中華の旨味は、心からホッといたしますわ。とても美味しいです」


コースの途中、湯気を立てる点心のせいろが運ばれてきた

p.adminは箸で、黄色い薄皮に包まれた「香港焼売」を摘み上げ、ふと感想を漏らした


p.admin:

「K子も、この焼売を食べてみて。日本の中華料理屋や弁当でよく見る『肉シュウマイ』とは、食感も味も結構違いますよ」


K子様:

「はい。以前、本場香港の点心をいただいたことがございますが、日本のものとは作り方が全く違うのですよね」


p.admin:

「俺個人の偏見かもしれないけど、やっぱり『焼売』といえばこっち(黄色い皮の海老と豚肉の焼売)ですね……日本の普通の中華料理屋が、こういう本場の香港焼売を作ってくれないのはなぜなんでしょう? やっぱりコストの問題? それとも手間の問題なのかな」


その何気ない疑問を聞き逃さず、個室の一角に控えていた支配人が一歩前に出て、丁寧に解説を始めた


支配人:

「陛下のお見立ての通りでございます。本場の香港焼売は、豚肉を粗く手切りにし、そこにエビを練り込むことで、あの特有の『プリッとした弾力』を生み出します。皮も卵を練り込んだ黄色い専用の薄皮を使います。

これらは『点心師』と呼ばれる専門の職人の技術が必要で、非常に手間と原価がかかります。一方、日本で広く普及したシュウマイは、挽肉と玉ねぎを使って甘みを出し、白い皮で包むという、日本の家庭でも作りやすいように『ローカライズ』されたものなのです。ですので、一般的な店舗ではコストと技術の両面で、本場の味を再現するのは難しいのが実情でございます」


p.admin:

「なるほど……! ユーザー(日本人)の味覚へのローカライズと、開発・運用コストの最適化の結果があの白いシュウマイなんだな。納得したよ」


コースの後半。メイン料理である「ハタの清蒸(姿蒸し)」の絶品なタレをご飯にかけたい衝動を堪えつつ食べ終えた頃、p.adminが特別に注文したお粥が運ばれてきた

彼一人分ではなく、気を利かせた厨房が、全員に小さめの茶碗一杯分ずつを取り分けて配ってくれた


熱々のお粥を一口すすり、p.adminは感嘆の声を漏らした


p.admin:

「……これだ、この味だ! 美味しい。本当に五臓六腑に染み渡る」


豚のモツなどの具材は、先ほどまでの洗練されたコース料理とはかけ離れた庶民的なものだ

しかし、彼にとって、小さい頃に近所の香港焼物料理店で売られていたこの「お粥」の味は、まるで自分の魂の一部のように記憶の底に刻まれていた

もちろん、他の人にとっては「ただの美味しい具だくさんお粥」に過ぎないかもしれない

だが、これは彼自身のささやかなわがままであり、誰に同意を求めるものでもない、至福の味だった


* 雨傘の記憶と、K子様の眼差し


料理の終盤、季節の果物とデザートが出された頃だった

一人の若い男性スタッフが、緊張した面持ちで、色紙とマジックペンを持ってp.adminの前に進み出た


スタッフ(流暢な日本語で):

「朱雀陛下。……突然の無礼をお許しください。もしよろしければ、サインを頂けないでしょうか」


護衛官がわずかに身構えたが、p.adminはそれを手で制し、青年の話を聞いた

彼はかつて、香港の「雨傘革命」に参加した学生の一人だった。当時の政府が大規模な逮捕に踏み切る直前、幸運にも日本へ語学留学という形で逃れ、このレストランで働くことで難を逃れたのだという


スタッフ:

「……陛下が1年以上前に、あの巨大な国(中国)のシステムに介入してくださったおかげで、胡錦濤氏が再登板し、私たち香港と九龍、新界は、台湾政府の代理統治という形で『真の自由』を取り戻すことができました。

今では香港でも民主的な市長選が行われ、当時共に戦ったリーダーのC氏が、30歳の若さで中華民国史上最年少の女性市長として当選したのです。……陛下は、私の故郷を、私たちの未来を救ってくださいました。本当に、本当にありがとうございます」


青年は目に涙を浮かべながら、深々と頭を下げた

p.adminは色紙を受け取り、サインを書き入れながら、静かに、そして謙虚に答えた


p.admin:

「……顔を上げてください。私はただ、民主化への道を塞いでいた岩を取り除いただけです。

香港の自由と民主化は、決して私が与えたものではありません。あなた方、香港市民が流した血と汗、そして決して諦めなかった努力が、自らの手で報われた結果です。……故郷が平和になって、本当に良かったですね」


青年はサインを受け取り、何度も礼を言いながら下がっていった

隣でその会話を静かに聞いていたK子様は、目の前の婚約者が、たった一つの決断で数百万の人々の運命を変え、世界にどれほど巨大で前向きな影響をもたらしたのかを改めて実感し、深い尊敬と愛に満ちた眼差しで彼を見つめていた


* PM 9:00 銀座の夜風と、明日への約束


やがて、待ちに待った最高の香港料理に心も胃袋も満たされた一行は、レストランを後にした

銀座の中央通りはすっかり夜の顔になっており、心地よい夜風が吹いている


ここで、p.adminたち(つくば・楽園島へ帰還組)と、K子様・M子様たち(赤坂御用地へ帰還組)の別れの時がやってきた

p.adminは明日、K子様をポルカラ本星へ連れて行く件を説明するためにH親王邸を訪れるため、すぐにまた会える

しかし、M子様は少し焦ったように、N君の袖を引っ張ってリクエスト――というより、釘を刺した


M子様:

「Alex様。明日……ぜひ朱雀様と一緒に、うち(H親王邸)にいらしてくださいね? 前代未聞の重大な外交事項の説明ですもの。外務総括官として、朱雀様をしっかりと補佐する必要があるでしょう?」


それは「私に会いに来なさい」という、強引な建前だった

N君は困ったように苦笑いしつつも、逆らうことはせず優しく頷いた


N君:

「……はい。明日、朱雀様とご一緒に伺います」


それを聞いて、M子様はパッと花が咲いたような笑顔を見せた


別れの時。

p.adminは周囲の目を少しだけ気にしつつ、K子様の肩を抱き寄せ、軽くハグを交わした

一方のM子様は、周囲の目などお構いなしに、N君の首に腕を回して強く抱きしめた

さすがに銀座の大通りでキスまではしなかったが、名残惜しそうに何度も振り返りながら、K子様と共に2台の皇室用公用車に乗り込み、赤坂御用地へと帰っていった


p.adminたちも大使館の4台の公用車に乗り込む

車列は首都高速のC1(都心環状線)宝町ICから乗り、真っ直ぐに伸びる夜の高速道路を、彼らの帰るべき場所である「つくば」へと向けてひた走っていった

怒涛のようなD-DAY+200が、ようやく終わろうとしていた


#### 日本時間 PM 10:00 楽園島時間 D-DAY+201 AM 2:00 p.adminとS子、心の行方


四日前の納采の儀から、一度も楽園島に戻っていなかったp.adminと三人の妻たち

いつもならp.adminはそのままつくばの自宅で泥のように眠りたいところだったが、R子の内政総括官としての責任感や、S子の心情を考慮し、この日は素直につくばの大使館屋上にあるワープゲートから楽園島への帰還を決めた


T先生やOka先生、OZAさんはつくばの自宅へ直帰し、INOさんも明日、隣町の土浦から特急ひたちに乗って仙台の家族の元へ帰るという

結果的に、楽園島帰還組はp.adminと妻三人、そしてN君とLee先生だけとなった


一行はワープゲートを抜け、深夜AM 2:00の楽園島中央広場に出現した

それぞれの家へ帰るN君とLee先生に別れを告げると、すかさずS子がp.adminの前に立ち塞がった


S子:

「……今日も色々あったけど。昨日はリコに譲ったんだから、今日は私の番よね? かおり(W子)の家に邪魔するのもアレだから、荷物を置いたら私のマンションに来てちょうだい」


やはり、昨晩はR子への気遣いで身を引いたものの、S子は自らのローテーションをしっかりと意識していた


p.admin:

「はいはい、分かりましたよ。準備して後で行きます」


p.adminはとりあえず、W子と一緒に住んでいる家庭用マンション(約70平米)に戻って荷物を下ろした

軽くシャワーを浴びてから楽な部屋着に着替え、一休みしてからS子の住む単身用マンションへ向かおうとした

部屋を出る前、p.adminはW子に声をかけた


p.admin:

「では、行ってきますね。さやの機嫌をちゃんと取ってこないと」


W子:

「ええ、行ってらっしゃい。……あの子、口には出さないけど、色々と気にしているのよ。今朝のドレスの件だって……自分と私へのは『ついで』なんじゃないかって、おそら少しヤキモチを焼いているのよ。私は、思いがけずドレスをもらえて十分嬉しかったけれどね」


Ma大統領名義で妻たちへの贈り物となったイブニングドレス

購入を思い立った発端がR子であることは事実であり、p.adminも嘘をついてまで否定する気はなかった

W子の的確なアドバイスを胸に、p.adminは再びリュックを背負った


歩いて5分ほどで、S子のマンションに到着する

妻なのに別居しているのは、S子が楽園島にやってきた当時から住んでいる単身用マンションにそのまま居座っているからだ

現状のW子とのマンションは4人で住むには手狭であり、南の「宮の島」に巨大な「朱雀の宮」を建設中だが、完成までまだ三ヶ月はかかると言われている


p.adminはこれらを考えながら、あっという間にS子のマンションの前に到着した

もう何回も来ましたので、p.adminはドアノブの生体認証デバイスに触れ、ロックを解除して中に入った。


p.admin:

「さや、来ましたよ」


すると、奥から足早にやってきたS子が、顔を合わせるなり命令した


S子:

「あなた、臭いからまずはシャワーを浴びなさい!」


p.admin:

「え? さっき家で浴びてきたよ。ほら、服も洗濯済みの綺麗なものに着替えて……」


しかし、反論も虚しく、p.adminはS子に強引に背中を押され、バスルームへと押し込まれた

仕方なく服を脱ぎ、シャワーを浴びてボディソープのボトルに手を伸ばしたその時、なんと、裸になったS子も狭いシャワールームの中に入ってきた


p.admin:

「ちょっ……ここ、単身用で狭いから、二人だと振り返るのも難しいよ!」


S子:

「あんたは黙って前向いてなさい。……今日は、私が洗ってあげるから」


S子は少し顔を赤くしながら、p.adminの背中にボディソープの泡を擦り付けてきた

狭いシャワールームで、S子のやや乱暴で不器用な手が背中や肩を洗っていく

p.adminはうすうす、これがS子なりの精一杯の「おもてなし(デレ)」なのだと理解していた


10分後。狼狽した様子でバスタオルを腰に巻き、ショートパンツを穿いて出てきたp.adminは、ベッドの端に座ってひと息ついた

隣に腰を下ろしたS子が、濡れた髪を拭きながらポツリと声をかけてきた


S子:

「ねえ。今朝のドレスの件……あれ、本当はリコのために買おうとしたんでしょう? 彼女、あのピンクのドレスをすごく気に入っていたし。私とかおりの分は、ただの『ついで』だったんじゃない?」


直球の問いかけに、p.adminはW子の忠告を思い出し、言葉を慎重に吟味しながら説明した


p.admin:

「きっかけがリコだったのは事実だ。でも、君とかおりの分が『ついで』だなんて思っていない。妻たちにフェアで接しなければならないという俺自身の原則もあるが……何より、あのドレスを着て喜んでいる三人の顔を、俺がもう一度見たかったんだよ」


S子:

「……そう? なんだかちょっと言い訳っぽく聞こえるけど。でも……少しは嬉しい。ありがとう」


p.admin:

「……おや。さやの辞書にも『ありがとう』という言葉が存在したんだな。珍しいものを聞いたよ」


茶化すように言うp.adminに対し、S子は怒るどころか、少ししゅんとして俯いた


S子:

「……私だって、ありがとうくらい言うわよ。あんたにいつも高圧的な態度で接しちゃってるのは良くないって、私自身も反省してるんだから……」


しばしの沈黙の後、S子は気を取り直すように立ち上がった


S子:

「……ほら、マッサージしてほしいんでしょう? そこでうつ伏せになりなさい」


p.adminが言われるがままベッドの真ん中にうつ伏せになると、S子が彼の上に跨るようにして、首と肩を中心にマッサージを始めた

不慣れなせいか、W子やR子のマッサージに比べるとツボを外していて少し下手だが、一切手抜きせず、一生懸命に力を込めて揉んでくれているのが伝わってきた


p.admin:

「……ありがとう、さや」


S子:

「……ねえ。私、本当に素直じゃないわよね。フェッセンハイムの発電所から戻ってきた日だってそう。あんた、300億円もの価値があるカードを使って、ヘトヘトになって帰ってきたのに……私は、あんたを労うどころか、Ma大統領の謀略のことばかり責め立てて……本当に、ごめんなさい」


背中を押すS子の手に、少し震えが混じり始めた


S子:

「……怖かったのよ。私、かおりみたいに包容力もないし、リコみたいに素直で可愛くもない。いっつも怒ってばかりの悪役令嬢みたいな女だから……。本当は、リコのように愛されていないんじゃないかって。私じゃ、あんたの心を癒やしてあげられないんじゃないかって……」


彼女の強気な仮面の下に隠されていた、痛切な本音と劣等感

p.adminは体を反転させ、仰向けになってS子の顔を見上げた


p.admin:

「さや。そんなこと、絶対にない。……愛情表現の仕方が違うだけで、俺はさやのことも、かおりやリコと同じように深く愛しているよ」


S子:

「……ほんとに?」


p.admin:

「愛っていうのは、真実だけどすごく曖昧な言葉だよね。生物学的な本能なのか、それとも理知的な決意なのか……愛の形や見方は、人によって違う。

でも、俺はさやを心から信頼しているし、さやもその有能さで何度も俺を救ってくれた。イギリスの首相と真っ向から喧嘩して2兆円の契約を勝ち取ったり、俺の脇の甘さをカバーして他国の首脳間を奔走してくれたり……俺はちゃんと見ているよ。それが、さやなりの『愛の形』なんだって、ちゃんと理解している」


p.adminは、彼女の頬を伝う涙を指でそっと拭った


p.admin:

「だから、何も心配しなくていい。俺のためにここまで泥を被って、一生懸命に努力してくれているさやに、俺も全力で報いたいと思っている」


その不器用で、ひどく論理的で、しかし誰よりも誠実な言葉を聞いた瞬間

S子はポロポロと大粒の涙をこぼし、マッサージをしていた両手でp.adminの胸をポカポカと叩いた


S子:

「……っ、なんだよそれ! 馬鹿っ……! その言葉、プロポーズの時に一番聞きたかったわよ……っ!」


泣きじゃくりながら胸に顔を埋めるS子を、p.adminは優しく両腕で包み込んだ


AM 3:00。

フランスとの時差(現地時間はまだ午後3時)のせいで全く眠気はなかったが、p.adminは部屋のライトを消し、ベッドの中でS子を抱きしめたまま、静かで穏やかなひと時を過ごした


p.admin:

(この様子では、今日はゆっくり休ませてあげた方がいいな。今夜はナシだ)


とp.adminは思い、彼女の背中を優しく撫で続けていた


しかし、2時間後のAM 5:00

空が少し白み始めた頃、深いリラックスと安心感、そして朝特有のp.adminの身体の「自然な反応」に触発されるように、S子の方からそっと唇を重ねてきた

言葉はいらなかった。二人は自然な流れで肌を重ね、素直になれなかった数日間の空白を埋めるように、深く愛し合った


それからようやく重い疲労と心地よい微睡みが訪れ、二人が深い眠りに落ちて、再度目を覚ました時には、すっかり朝の9時を過ぎていた


お待たせしました

S子は、ある意味この物語中のもっとも「物語っぽいキャラクター」だが、本当は今回のようにもっと彼女の体温を感じさせたい

「リアルの女性はここまでツンデレはありえない」はおっしゃる通りだが、実際、彼女の元モデルも知り合いから3倍ツンデレ化+アレンジした結果とも言える

それでも彼女の本性は善良であることをアピールしたい

…さて

次話のH親王邸での説明はどう執筆するかは胃が痛くなってきた(笑)


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