表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/185

D-DAY+173-175 2027年6月下旬 グリーンランド防衛戦 王の名の下の民主と皇室会議の根回し

このエピソードは、物語中の日本皇室に対して、かなり踏み込んだ描写をしています

どうか一介の外国人が創作したフィクションSF物語として、楽しんでいただけたら幸いです

劇中人物は元モデルは存在するものの、フィクションのオリジナル設定を採用しています

* D-DAY+173 グリーンランド PM 17:00


グリーンランド北西部、人口わずかなカーナーク村

鉛色の空から、重厚なローター音を響かせてフランス空軍の最新鋭ヘリコプター「H225Mカラカル」が舞い降りた


タラップが下ろされても、赤絨毯も、華美な音楽も、派手な歓迎セレモニーも一切ない

冷たい強風が吹きすさぶ中、降り立ったのはダウンジャケット姿のフレデリック国王とメアリー王妃、一人の秘書官、そして数名のデンマーク派遣兵士だけだった

それは「国家元首の視察」というより、遠く離れた家族の安否を気遣って駆けつけた「家長」の姿そのものだった


国王夫妻は、昨日「テレビ越しの演説」が行われた村の集会所へと足を運んだ

集まった村人たちは、本物の王と王妃が自分たちの目の前に座っていることに緊張していたが、国王は自らパイプ椅子を引き寄せ、村の長老や漁師たちと同じ目線で語りかけ始めた


フレデリック国王:

「どうか、畏まらないでほしい。

私は今日、あなた方に『どう投票する』と説得しに来たわけではない。ただ、皆さんの抱えている不安や、今この村で本当に必要とされているもの……『真実のニーズ』を聞きに来たのです」


その真摯な態度に、村人たちは少しずつ口を開き始めた

テレビや通信が切断された恐怖、物資の遅れ、そして何より「素性の知れない者たちが大金をちらつかせて村を割ろうとしている」という不安

国王は一つ一つの声に深く頷き、隣の秘書官にメモを取らせた


フレデリック国王:

「……よく分かりました。皆さんのその切実な声は、私から直接デンマーク政府および自治政府へ持ち帰り、必ず解決の道筋をつけるよう約束しよう」


対話が終わる頃には夕方となり、国王夫妻は村人たちの誘いを受け、集会所で地元の郷土料理を共に囲んで晩ご飯をいただくことになった

質素な食事だが、王と民が同じ鍋をつつくという光景は、どんなプロパガンダよりも村人たちの心を一つに結びつけていた


和やかな空気が流れる中、集会所の隅に座っていたCIAに買収されていた現地協力者が、焦りを隠しきれずに立ち上がり、声を張り上げた


アメリカ支持派の男:

「騙されるな! 国王によるこんな政治的なパフォーマンスは、憲法が定める『王室の中立義務違反』だ!

アメリカ軍の力に怯えて、慌ててご機嫌取りに来ただけじゃないか! 今の時代、グリーンランドに王なんて要らないんだ!」


静まり返る集会所

国王を直接侮辱するその鋭いヤジに、空気が凍りついた

しかし、フレデリック国王自身は反論せず、ただ静かに、少しだけ哀れむような目でその男を見つめ、スープの入った木の器をテーブルに置いた

王が口を開くより先に、バンッ! とテーブルを強く叩く音が響いた


立ち上がったのは、昨日CIA工作員の「見えない金」を突っぱねた村の顔役、アプットだった


アプット:

「黙れ!! お前こそ、どこの誰にいくらで魂を売ったんだ!」


アプットの怒鳴り声に、他の村人たちも次々と立ち上がり、男に向かって声を上げ始めた


村の老人:

「中立違反だと!? 陛下は我々を愛し、こんな最果ての吹雪の村まで、危険を顧みずに自ら足を運んでくださったんだぞ!」


村の若者:

「そうだ! 王たる者が、脅かされている自分の民を守り、寄り添うことすら『中立違反』だと言うなら……そんな中立はただの『懦弱だじゃく』だ! 保身に走る臆病者の言い訳だ!」


アプット:

「我々は、家族を見捨てて中立を気取る臆病者よりも、泥を被ってでも会いに来てくれる王を支持する!

グリーンランドをアメリカの金で売ろうとする裏切り者は、今すぐこの村から出て行け!」


村人たちの怒号と、王を守ろうとする圧倒的な「民意の壁」に押され、買収された男は顔面を蒼白にし、逃げるように集会所から飛び出していった

それを追う者は誰もいない。集会所には再び、王と村人たちとの温かい絆の空間だけが残された


* 白夜の空へ 時刻: グリーンランド時間 PM 20:00


夕食と対話を終えた国王夫妻が外へ出ると、時刻は夜の8時を回っていたが、夏のグリーンランド特有の「白夜」により、空はまだ明るかった

村人総出で見送る中、フレデリック国王はアプットと固く握手を交わした


フレデリック国王:

「ありがとう。あなた方の強さと誇りに、私の方が救われました」


アプット:

「日曜日には、我々の『本当の答え』を箱に入れます。どうか、良い旅を、陛下」


ローターが回転し始め、冷たい風が巻き起こる

国王夫妻はヘリコプターに乗り込み、窓から大きく手を振った

フランスのトリコロール・マークが描かれた機体は、白夜の沈まない太陽に照らされながら、CIAの魔の手が迫る「次の村」へと力強く飛び立っていった

王の行軍は、まだ終わらない


#### DAY+175 狂気のフェーズ4:雪崩と占領


グリーンランド北西部、カーナーク村の目と鼻の先にある米空軍チューレ基地

本来ならアメリカ空軍の誇り高き前線基地であるはずのこの場所は、今や私服姿やタクティカルギアを着込んだCIAの工作員たちに占拠され、薄暗い陰謀の巣窟と化していた

作戦司令室のメインモニターには、明後日に迫った「諮問的住民投票」の世論調査データが、冷酷なグラフとなって表示されている


CIA現地責任者:

「……で、結果はどうなんだ?」


責任者の問いに、データ分析担当の工作員が苦々しい顔で報告した


CIA分析官:

「絶望的です。我々が用意した『見えない口座』で一番買収が進んでいた村でさえ、明後日の投票で『B』を選ぶと答える住民の予想、全体の3割未満に留まっています」


モニターに、明日の投票用紙のサンプルが映し出された


---

問:あなたは、現在に住む場所およびグリーンランドの帰属を、どちらに相応しいと思いますか?

A:デンマーク王国

B:アメリカ合衆国

---


CIA分析官:

「デンマーク国王の慰問が決定打でした。王が直接足を運んだことで、住民の心は完全に『Aデンマーク』で固まっています。このまま明日を迎えれば、我々の歴史的な大敗北です」


CIA現地責任者:

「……チッ。たかが中立の飾り物に過ぎない王族が、しゃしゃり出てきやがって。

民主主義の土俵で勝てないなら、土俵ごとひっくり返すまでだ。

オペレーション・アイスピック、『フェーズ4』へ移行する。」


* フェーズ4の全貌


責任者の言葉に、部屋の空気が一段と冷え込んだ。

傍らで腕を組んで聞いていた基地指揮官(米空軍将官)が、嫌な予感を覚えて眉をひそめた


基地指揮官:

「フェーズ4だと? 聞いていないぞ。何を企んでいる?」


CIA現地責任者:

「簡単な物理的妨害工作ですよ、将軍。

明日の投票開始時刻に合わせて、村の外れにある雪山の斜面……作業場や狩猟ルートの真上で、工作員が少量のC4(プラスチック爆薬)を起爆させます。

自然発生に見せかけた『人工雪崩』を引き起こすのです」


基地指揮官:

「なっ……爆破!? 正気か! 民間人を巻き込む気か!」


CIA現地責任者:

「直撃はさせませんよ。あくまで『村の近く』です。

イヌイットの連中は、仲間意識が異常に強い。雪崩が起きれば、彼らは投票箱を放り出して、総出でスコップを持って救援に駆けつけるでしょう。

投票所はもぬけの殻になり、選挙プロセス自体が物理的に崩壊するというわけです」


軍人としてのモラルを踏みにじるような汚い手口に、基地指揮官は激昂して詰め寄った


基地指揮官:

「ふざけるな! 我々は軍隊だ、テロリストじゃない!

そこまでして妨害しなければならないのか!? 投票で負ける見込みなら、潔く負けを認めて撤退し、次の外交カードを探るのが筋だろうが!」


指揮官の怒鳴り声に対し、CIA責任者は全く動じることなく、冷たい蛇のような目で将軍を見つめ返した


CIA現地責任者:

「『潔く負ける』? ……将軍。あなたが相手にしているのは、平和な民主主義国家ではなく、『異星の超技術を持った独裁者(朱雀)』ですよ?

もしグリーンランドが完全に奴らの支配下に入れば、アメリカの安全保障は根底から覆る。これは『戦争』なんです」


責任者はタブレットを操作し、基地周辺の米軍部隊の配置図を表示させた


CIA現地責任者:

「それに将軍。もし雪崩を起こしても、なお住民たちが投票を強行し、我々が負ける見込みが濃厚となった場合は……あなたの部隊に出動してもらいます」


基地指揮官:

「……出動? まさか、武装した兵士で村を制圧しろと言うのか!?

そんな真似をすれば、国際社会から『侵略行為』として大非難を浴びるぞ!」


CIA現地責任者:

「侵略? とんでもない。これは『人道的救助活動』ですよ」


責任者は口角を歪め、邪悪な笑みを浮かべた


CIA現地責任者:

「大規模な雪崩災害が発生した。善良なる隣人であるアメリカ軍は、人命救助のために村へ急行した。

……吹雪と混乱の中、安全確保のために村の要所を『警備』し、混乱に乗じた不正を防ぐために投票箱を我々が『保護』する。

名目上は災害派遣でも、実質的な『軍事占領状態』を作り出せる。そうすれば、投票結果など後からどうにでも書き換えられるでしょう?」


基地指揮官:

「貴様ら……!!」


指揮官は怒りで拳を震わせた

だが、彼にはCIAの暴走を止める権限がなかった。このオペレーションの背後には、ワシントンD.C.(大統領やタカ派の有力者たち)の強烈な「朱雀への恐怖と焦り」が渦巻いており、軍の現場指揮官の良心など、簡単に握りつぶされてしまうのだ


基地指揮官:

「……神は、このような卑劣な行いを許しはしないぞ」


CIA現地責任者:

「神は合衆国アメリカにこそ味方しますよ、将軍。

……明日の出動準備を。兵士たちには『救助活動』だと伝えておいてください。我々は皆、英雄になるんですから」


基地指揮官は苦渋の表情で目を伏せ、踵を返して司令室を出て行った。

CIAの放った狂気のシナリオ(フェーズ4)が、静かに、そして確実に、明日のグリーンランドを雪と血に染めようと動き出していた


### D-DAY+175 楽園島 AM 9:00 イギリス患者治療の終了


グリーンランドの運命を決める住民投票まで、あと二日

極北の地で水面下の激しい情報戦と防衛戦が続く中、楽園島には束の間の、しかし非常に温かい日常の時間が訪れていた


朝8時の中央広場

そこには、すっかり顔色も良くなり、自らの足でしっかりと立つ500人のイギリス人患者とその家族たちが集まっていた

数週間にわたる異星医療ベイの治療を受け、彼らは文字通り「新しい命」を得て、故郷ロンドンへ帰還する日を迎えたのだ


その集団の先頭に、華やかなオーラを放つ二人の女性が立っていた

K子様とM子様である

数日間、H親王殿下から「当面の交際」を勝ち取ったばかりの二人は、日本時間の午前4時という早朝(ほぼ徹夜)にもかかわらず、つくばの大使館経由でワープゲートを抜け、この場に駆けつけていた


元々、イギリス患者たちの献身的なケアを担当していたK子様にとって、彼らの「見送り」は絶対に立ち会うべき正当な公務のようなものだった

一方のM子様は、「妹の付き添いよ。それに、婚約者(N君)との大切なコミュニケーションの時間だしね」と堂々と言い張り、同行してきた

ただし、お二人にはH親王から「朱雀が軍事作戦や軍事会議を行っている空間には、決して立ち入らないこと」という厳格な条件が付けられていた


* 王の言葉と、美しき名代


広場の壇上に、作戦の合間を縫ってp.admin(朱雀)が、控えめに寄り添うW子(かおり皇后)と共に姿を現した

本来なら500人全員と握手を交わしたいところだが、グリーンランドの作戦が緊迫しているため、長い時間を取ることはできない

p.adminはマイクの前に立ち、真っ直ぐな視線で患者たちに語りかけた


p.admin:

「皆さん、退院おめでとうございます。

……この島で、皆さんは『再び手に入れた時間』という奇跡を経験されました。どうかその健康と時間を、ご自身のため、そして愛する家族のために大事に使ってください。

そしてもし、これからの人生で少しでも余力があれば……どうか、周りの困っている人を助けてあげてください。それが、この島からの唯一のお願いです。良い旅を!」


広場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた

p.adminとW子は、代表となる20名の患者たちと一人ひとり笑顔で言葉を交わし、握手をした

極度の人見知りであるW子も、健康を取り戻した子供たちや老人の笑顔には、心からの優しい微笑みを返していた


そして、スケジュールの都合で全員と挨拶できないp.adminの名代として、患者たちの中に飛び込んでいったのがK子様だった


イギリス人患者の老婆:

「ああ、K子様! あなたの優しい声掛けと献身的なお世話のおかげで、私たちは不安な日々を乗り越えられました!」


K子様:

「お元気になられて本当に良かったです。ロンドンに戻られても、お体に気をつけてくださいね」


K子様は、一人ひとりの手を取り、時には涙を流して喜ぶ患者たちと温かいハグを交わした

その姿は、イギリスの民にとってまさに「天使」そのものだった

内政総括官のR子や経済産業総括官のS子がそれぞれの持ち場で忙しく立ち回る中、K子様は完全に「楽園島」としての役割を果たしていた


一方、広場の少し離れた場所では

M子様が、p.adminの傍らに控えるN君(Alex)の腕をツンツンと突き、熱っぽい視線を送っていた


M子様:

「ねえAlex。お父様が交際を認めてくれたのよ? もう少し嬉しそうな顔をしてくれない?」


N君(小声で照れながら):

「も、もちろん最高に嬉しいですよ、M子様。でも、今は業務中ですし、朱雀陛下(p.admin)のすぐ横ですから……!」


公私の区別をつけようとタジタジになるN君の姿を見て、M子様はくすくすと楽しそうに笑った


* 帰還の光と、八人の功労者


時刻: AM 9:00


内政総括官であるR子がシステムを操作し、広場の中央にロンドン・バッキンガム宮殿の中庭へと繋がる巨大なワープゲートを開いた

500人の患者たちは、名残惜しそうに何度も振り返りながら、光の向こう側へと帰っていった


患者たち全員が帰還した後、広場には8人のイギリス側スタッフが残された

ブリティッシュ・エアウェイズから派遣された3名のCA、バッキンガム宮殿から派遣された2名の王室医療チーム医師、2名の看護師、そして王宮の連絡役である


p.adminは彼らの前に進み出て、深く頭を下げた


p.admin:

「皆さんのプロフェッショナルな働きがなければ、この大規模な医療受け入れは成功しませんでした。心から感謝します。

CAの皆さん、慣れない環境での1000人分の配膳と細やかなお世話、見事でした。

医師と看護師の皆さん、我々の異星医療システムを素早く理解し、的確な経過観察と心のケアをしていただいたことに敬意を表します。

そして連絡役の方、食事の調整や本国との連携、本当に助かりました」


p.adminは、N君が持っていた漆黒のトレイから、ずっしりと重い皮袋と、美しい装飾が施された証書を手に取り、8人に一人ずつ手渡していった


p.admin:

「これは、楽園島の金貨10枚(約100G)です。現在の市場価値で一人およそ14,000ポンド(約300万円)相当になります。ささやかなボーナスとして受け取ってください。

そしてこちらの『感謝状』には、将来、あなた方自身やご家族が重い病に倒れた際、優先的にこの楽園島で異星医療を受けられる『権利』が明記されています……どうか、お守り代わりに持っていてください」


王室医療チーム医師:

「朱雀陛下……! ここまで手厚い御恩を賜るとは。この経験と感謝状は、我々の一生の誇りです!」


8人のスタッフは感激の面持ちで深く一礼し、ワープゲートの光の中へと消えていった。


* 時刻: AM 9:30


イギリス側の帰還が全て完了すると、白衣の上にスタイリッシュなジャケットを羽織ったS子さやが、足早にp.adminの前にやってきた


S子:

「よし、私もチャールズ国王陛下、カミラ皇后陛下、そして王太子妃の『継続治療』のために、バッキンガム宮殿へ行ってくるわ。

……あんたは、グリーンランドの仕事をちゃんと片付けなさいよ! いいわね?」


S子はp.adminの胸をポンと軽く叩き、愛情と信頼の裏返しである「発破」をかけると、ウインクをして颯爽とワープゲートへ飛び込んでいった

直後、R子の操作によってゲートが閉じられ、祭りの後のような、少し寂しい静けさが広場に降りた


p.adminとN君は、グリーンランドの作戦対応へ戻るため、これ以上時間を取ることはできない

p.adminは、朝陽の中で凛として立つK子様の方へ歩み寄り、申し訳なさそうに視線を落とした


p.admin:

「K子、すまない。

せっかく来てくれたのに、俺はもうCICに戻らなきゃならない。グリーンランドの決着がつくまで、しばらく傍にいてあげられなくて……ごめんね」


p.admin:

「この後は、R子の仕事を見学するか……いや、彼女も忙しいな。無任所大使のH先生か、Lee先生と一緒に、島内をゆっくり見学して過ごしてくれないか?」


R子は内政総括官として、職員達も居るとはいえ、彼女は食材の発注から治安維持、医療ベイやゲートの管理まで島を回す多忙な身であり、Lee先生はその補佐に回っている

H先生も外交交渉や留守番の総括として頼りになる存在だ


p.adminの気遣いに対し、K子様は不満を漏らすどころか、真っ直ぐに彼の目を見て、凛とした微笑みを返した


K子様:

「承知しておりました。

私とM子姉様のことは一切心配なさらずに、椿様はどうか、ご自身の使命に専念してください……私はここで、貴方のご無事を祈って待っています」


その健気な強さに、p.adminの胸が熱くなる。

周囲には楽園島の職員たちの目があるため、大っぴらにハグをするのは憚られた

p.adminは少し躊躇った後、優しく手を伸ばし、K子様のサラサラの髪を「なでなで」と愛おしそうに撫でた

K子様は少し頬を染め、嬉しそうに目を細めた


一方、その数メートル横では


M子様:

「じゃあね、Alex! 作戦が終わったら、たっぷり甘えさせてあげるから覚悟しておきなさいよ!」


N君:

「ちょっ、M子様! 皆が見てますから! ええと、その……」


M子様は、周囲の目など一切気にすることなく、真っ赤になって慌てるN君の首に腕を回し、情熱的なハグと、頬への熱いキスを見舞っていた


静かで奥ゆかしいK子様とp.admin

情熱的で周囲を振り回すM子様とN君


対照的な二組のカップルがそれぞれの別れを惜しむ中、楽園島の時計の針は、来るべきグリーンランドの「決戦の時」へ向けて、静かに、そして確実に進み続けていた


#### K総理による皇室会議の根回し


* 異例づくしの「IFの上の認可」と幻の王位継承権


来週の月曜日(D-DAY+178)に迫った「皇室会議」

M子内親王殿下とK子内親王殿下の「納采の儀(婚約)」を全会一致で可決させるため、K首相はここ数日、連日のように永田町と霞が関を奔走し、各方面への緻密な根回しを行っていた


首相のデスクには、作成された「特例法および皇室典範特例の草案」が広げられている

その内容は、日本の憲政史上、類を見ないほどウルトラCの連続だった


◇◇◇


【M子内親王殿下の処遇案】


女性宮家の設立: 皇籍を保持したまま宮家を創設。

N総括官(伴侶)の地位: 一代限りの「准皇族」として遇する。

次世代の扱い: 将来生まれる子供の皇位継承権や身分については「未定(先送り)」とする。


【K子内親王殿下の処遇案】


身分の保持: 特例法により、降嫁せず「内親王」の身分のままp.admin(朱雀)へ嫁ぐ。

p.admin(伴侶)の地位: 「同盟国の国家元首」として扱い、日本の准皇族認定は行わない。


公務と皇族費: 現行の皇族費(生活費としての年額支給)は「全額辞退(ゼロ円)」とする。公務への出席は「日本政府からの要請制」とし、その際の交通費や警備費は、個人の懐に入る皇族費ではなく「宮内庁の公的活動費(国費)から都度実費として支払う」。これにより「税金泥棒」という世論の批判を完全に封殺しつつ、皇族としての品位を維持する


【共通事項:国籍と氏(苗字)】


両名とも日本国籍から離脱しない

戸籍システム上、相手が外国籍(楽園島国籍)であるため「夫婦別姓」が法的に成立する

ただし、通称(別名)として「長田(Nagata)M子」「朱雀K子」と名乗ることは許可される


◇◇◇


完璧な草案だ。K首相はそう自負していた。

しかし、最大の問題は「現実の皇室会議は、まだ存在しない法律(IF)を前提とした法的な議決を行えない」ということだった


ゆえにK首相は、今回の皇室会議を単なる婚約の認可の場ではなく、「特例法を国会で確実に通すための、三権の長や皇族代表による『超法規的な政治的合意(パッケージ合意)』を形成する場」として利用しようとしていた。ここで全員の「絶対の言質」を取らなければ、この綱渡りは脆くも崩れ去る


* 衆議院副議長の「強欲」


K首相は、皇室会議の議員(三権の長や皇族代表など)一人一人に直接面会し、この草案の意図と「楽園島と縁を結ぶという莫大な国益」を丁寧に説明して回っていた


その夜、官邸の執務室に招き入れたのは、皇室会議のメンバーの一人である衆議院副議長(与党の重鎮)だった

彼は草案に目を通すと、不満げに鼻を鳴らした


衆議院副議長:

「総理。M子様の件は妥協しましょう。しかし、K子様の件は解せませんな。

我が国の宝である内親王殿下を、わざわざ皇籍に残したまま『異星の王』に差し出すのです。皇族費をゼロにするなどという姑息な手段で世間の目を誤魔化しても、それ相応の『見返り』がなければ保守派が納得しませんぞ」


K首相:

「見返り、とは?」


衆議院副議長:

「決まっているでしょう。将来、K子様と朱雀の間に生まれてくる子供に、あの『楽園島』の唯一の継承権を持たせるのです。

日本の血を引く者が、あの超絶的なテクノロジーの次期支配者となる。その確約(書面の承諾書)を朱雀から取ってくるべきです。それがない限り、私はこの特例法案にも、婚約にも賛成できませんな」


血統主義に染まりきった、あまりにも図々しく、傲慢な要求だった。


* 台湾の「失敗」という最強のカード


K首相:

(……この老害が。相手を地球の小国か何かと勘違いしているのか?)


K首相は内心で激しく舌打ちし、昔の自分なら一喝して追い出しているところだった

だが、今回は「全会一致」が絶対条件だ。K首相は努めて冷静な表情を作り、深く重い声で切り出した


K首相:

「副議長。貴方の憂慮は尤もです。日本の血脈が世界の覇権を握る……魅力的ですね。

……ですが、『台湾』の二の舞になりたいとお考えですか?」


衆議院副議長:

「台湾、だと?」


K首相:

「ええ。かつて、台湾政府のD与党は、朱雀陛下が『台湾出身』であることを利用し、楽園島および旗艦ネイビーゲーザーの所有権や技術の優先権を主張しました。

……結果はどうなりましたか? 朱雀陛下の逆鱗に触れ、不可避なレベルまで関係が悪化。楽園島の恩恵から完全に弾き出されたD与党は、今や国民の支持を完全に失い、次期総統選での再選も、国会での多数派維持も『ほぼ絶望的』と言われています」


K首相は、副議長の目を鋭く射抜いた。


K首相:

「楽園島の統治システムは、我々人間の古い『血統』や『世襲』という概念をひどく嫌います。

もし我々が、婚約の条件として『子供への王位継承の確約』などという内政干渉(乗っ取り)まがいの要求を突きつければ……朱雀陛下は即座に縁談を破棄し、日本という国そのものを切り捨てるでしょう。

……そうなれば、東京ワープゲートも、次世代エネルギーの夢も全て消え去る。経済は崩壊し、我が政権は間違いなく吹っ飛びます。

……当然、副議長、貴方の次の『選挙』も危うくなるでしょうな」


衆議院副議長:

「っ……!」


『選挙での落選』という、政治家にとって最も恐ろしい現実を突きつけられ、副議長の顔からサッと血の気が引いた。

相手は、アメリカ軍の精鋭を赤子のように捻り潰す異星の王だ。紙切れ一枚の「承諾書」を強要して機嫌を損ねれば、自分の政治生命など一瞬で消し飛ぶ


衆議院副議長:

「……そ、総理の仰る通りだ。

欲をかいて国益(と自分の議席)を損ねては本末転倒……いや、先ほどの要求は忘れなさい。私は、総理の草案による超法規的合意に『全面賛成』の手を挙げさせてもらう」


副議長は冷や汗を拭いながら、そそくさと要求を撤回した


* 知らぬが仏の皮肉


K首相:

「ご理解いただき、感謝します」


K首相は慇懃に頭を下げ、安堵の息を吐いた

これで、皇室会議での最大の障壁であった「強硬な保守派」の口を塞ぐことに成功した。あとは野党側の代表を丸め込むだけだ


夜の官邸で、K首相は窓の外の国会議事堂を見つめながら、己の政治手腕に一人満足げに頷いていた

「日本の血を引く子が、いつか楽園島を継ぐかもしれない」という淡い期待を、彼自身も心の奥底で(要求はしないまでも)捨てきれてはいなかったのだ


しかし、この時、K首相も、引き下がった副議長も、そしてH親王殿下も

日本のトップにいる誰一人として、「朱雀はそもそも、子供を一切作るつもりがない」という衝撃の事実を知る由もなかった


彼らが必死に議論し、期待し、あるいは駆け引きの材料にしている「幻の王位継承者(子供)」

その前提が根底から覆る時限爆弾が、K子様とp.adminの結婚という輝かしい未来の足元に、静かにセットされていることなど、知る由もなかったのである

おまたせしました

最近は二日ペースの投稿になっていますが、さすがに少し無理して今後は少しペースダウンさせていただきます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ