表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
144/183

D-DAY+170-171 2027年6月上旬 グリーンランド防衛戦 氷の砦攻防戦

日本側の控室で待つp.adminとN君のもとへ、K子様とM子様が少し急ぎ足で入室した

N君は、立ったまま簡潔に事情を説明した


N君:

「殿下。緊急の事態が発生いたしました。詳細は申し上げられませんが、我々はこれより直ちに楽園島へ帰還し、対応に当たらねばなりません。 つきましては、急な予定変更となりますが……」


K子様・M子様:

「私たちも、ご一緒します!」


N君の言葉が終わる前に、二人の声が重なった。そこには迷いなど微塵もなかった

M子様は力強く頷き、K子様も静かな決意を瞳に宿してp.adminを見つめていた


その真っ直ぐな視線を受け、彼は一歩踏み出し、K子様の前で深く頭を下げた


p.admin:

「K子様……本当に申し訳ありません。 今回のイギリスでの一連の出来事……世界中に私たちの姿が報じられたことで、帰国後、君とM子様はご両親への説明という、あまりに重い責任を背負うことになる。 本来なら、私が隣にいて一緒に居るべきなのに、本当に申し訳ない……ただ、自分に責任があるから、暫く現場を離れることができません」


p.adminは顔を上げ、K子様の瞳を覗き込んだ


p.admin:

「ですが、これだけは約束します。 私は必ず責任を果たします。K子様に不義理を働くようなことは、絶対にしません……ですから、楽園島としての、元首しての仕事が終わるまで、待っていてくれませんか?」


その言葉は、事実上の「未来の約束」だった

K子様の大きな瞳が潤み、震える唇が微かな笑みを形作った


K子様:

「……はい。お待ちしております。 貴方が世界を守るために戦っておられる間、私は私の戦い(両親への説得)を全うしますわ」


その様子を見て、M子様がチラリと隣のN君(Alex)に視線を送った

N君も心得たように頷き、普段のクールな表情を少しだけ崩して語りかけた


N君:

「M子様……私も同様です。 私は補佐官として、朱雀陛下の隣で支えなければならない立場。今すぐ貴女の盾になることはできません。 ですが、仕事が一段落しましたら……必ず、貴女の元へ向かいます」


M子様:

「ええ……信じているわ、Alex」


* 粋な計らい


感動の余韻が部屋を包む中、M子様はふと周囲を見渡し、少し悪戯っぽい声で言った


M子様:

「ねえ……私たちと朱雀陛下、そしてN参事官だけで、少しの時間を作ってもらえませんこと?」


その意図を察した女官Aは、恭しく一礼した


女官A:

「殿下。我々には監督と補佐の義務がございますが……あいにく、少々お手洗いが近くなってしまいまして。 殿下方は皇室の品位を逸脱なさらぬよう、くれぐれもご自愛くださいませ」


女官B:

「私は、急ぎの帰国に関して大典侍様へご説明し、最後にチャールズ国王陛下ならびにカミラ皇后陛下へご挨拶できるよう、段取りを取り計らってまいります……では、お先に失礼いたします」


二人の女官は、見事な連携で退室していった


部屋に残ったのは二組のカップルと、屈強なSP二人だけ

さすがに警護対象を残して退室はできないSPたちは、無言で視線を交わすと、示し合わせたように部屋の隅へと移動した


SPたち:

「……自分たち、窓から外の不審者を警戒しますので。 お二方……いえ、四名様は、どうぞ我々を気にしないでください」


彼らは完全に背中を向け、窓の外の風景を凝視する「警備モード」に入った


実質的な二人きりの空間が出来上がった瞬間、M子様は情熱的に動いた


M子様:

「Alex……!」


彼女はN君の胸に飛び込み、その背中に腕を回して強く抱きしめた。N君も躊躇なく彼女を抱き留める

その様子に驚きつつ、p.adminは顔を赤らめながら、目の前の華奢なK子様に問いかけた


p.admin:

「あ……私も、K子様を……ハグすることを許してもらえませんか? その、下心はないことは……保証します」


太くて体が大きいp.adminは、壊れ物を扱うように恐る恐る許可を求めた

K子様は頬を染め、恥ずかしそうに、しかし嬉しそうに両手を広げた


K子様:

「……はい、どうぞ……」


p.adminは、K子様をふわりと優しく抱きしめた

彼の広い胸板に顔を埋めたK子様は、その温もりと鼓動に包まれ、恐る恐る彼のアウターの背中へと手を回し、しがみつくように抱き返した

しばらくの無言の後、K子様が胸元で小さく呟いた


K子様:

「……あの。これからは、プライベートの時は……私を『K子』と呼んでください」


p.admin:

「分かった。 K子、だったら私も『陛下』ではなく……『椿』でも、『Azure』でも、好きな方で呼んでくれ」


K子様:

「はい……椿様……」


* 衝撃のキス


二人が名前を呼び合い、純愛の空気に浸っていると、隣から衣擦れの音と微かな吐息が聞こえた

p.adminがチラリと横目で見ると

なんと、M子様がN君のネクタイを引き寄せ、自分から背伸びをして彼の唇を奪っていた


M子様(小声):

「んっ……プリンセスのファーストキスをあげたんだから、もう逃げちゃだめよ……!」


N君:

「……! 仰せのままに、マイ・レディ」


p.admin(心の声):

(や、やべぇ……! M子様、肉食系すぎるだろ!)


p.adminは慌てて視線を逸らし、SPの方を見た。彼らは微動だにせず、窓の外の雲を数えている。プロだ


p.admin(心の声):

(俺も……いや、まだH親王殿下の正式な許しを得ていない。唇は不味い)


p.adminは腕の中のK子様の顔をそっと上げさせた

期待と不安に揺れる彼女の瞳を見つめ、彼は静かに身を屈め


挿絵(By みてみん)


チュッ


K子様の滑らかなおでこに、温かいキスを落とした

それは情熱よりも、守護と慈愛に満ちた、騎士の契約のようなキスだった。


K子様:

「……ぁ……」


K子様は顔を真っ赤にして、再びp.adminの胸に顔を埋めた


* 夢の終わり


コンコン


無情なノックの音が響き、女官Aと女官Bが戻ってきた

甘い時間は瞬く間に終わりを告げた

四人はパッと離れ、何事もなかったかのように居住まいを正した


女官B:

「失礼いたします。チャールズ国王陛下へのご挨拶の段取りが整いました。 また、帰国の準備も進めております」


p.adminとK子様は、名残惜しそうに視線を交わし、事務的な連絡事項を確認し合った


p.admin:

「では、後ほどロイヤル・バルコニー裏のサロンで」


p.adminとN君は退室した。 廊下に出た瞬間、p.adminは横を歩くN君の顔を覗き込んだ


p.admin:

「……N君、お前、さっき……」


N君:

「何か?」


N君は涼しい顔をして手帳をチェックしていたが、その耳がほんの少しだけ赤くなっているのを、p.adminは見逃さなかった


p.admin:

「やるな、補佐官」


p.adminはニヤリと笑い、来るべき戦いに向けて気持ちを引き締めた


#### UTC PM 16:00 旅立ちのバルコニー


夕刻のロンドン。バッキンガム宮殿の象徴である「ロイヤル・バルコニー」に、静かな緊張と温かい空気が同居していた p.admin一行と、K子様・M子様(SPを除く)の総勢約15名が整列し、イギリス王室のホストたちと最後の対面を行っていた


正装したチャールズ国王陛下、カミラ皇后陛下、ウィリアム王太子ご夫妻、そして大典侍が、親愛の情を込めて彼らを待っていた


チャールズ国王陛下は、政治的な話題をせず、一人の父親として、そして元軍人としての顔でp.adminに語りかけた


チャールズ国王陛下:

「朱雀陛下。今日は、本当にありがとう。 国王として、そしてかつて空を飛んだ者として……貴殿が我が国の若きパイロットたちを救ってくれたことに、心から感謝する。彼らは未来だ。それを守ってくれたことは、どんな同盟条約よりも重い」


p.admin:

「恐縮です、国王陛下。彼らの勇気に、私は感銘を受けて、協力したに過ぎないのです」


続いて、カミラ皇后陛下が優雅に進み出た


カミラ皇后陛下:

「朱雀陛下。本来ならお茶会でも……と思いましたが、貴方はこれから『北の守り』でお忙しいでしょうから、今回は諦めるわ。 ……それにしても、あなた。そしてかおり皇后、リコ妃、さや妃。 貴方たちを見ていると、まるで自分の息子や娘のように思えてくるわ。 もちろん、いつか本当に私のことを『お義祖母さん』と呼んでくれても良いのよ?」


皇后は悪戯っぽく微笑んだ。p.adminは苦笑いしながらも、深く一礼した


p.admin:

「光栄です、カミラ皇后陛下。いつも温かいご指導をいただき、若輩者として感謝の念に堪えません。 ……名残惜しいですが、J首相のご負担にならぬよう、またデンマークの件もありますので、早急に帰還させていただきます。 これ以上ここに居座っては、アメリカに『宮殿』という素晴らしい歴史遺産をターゲットにする口実を与えてしまいますから」


p.adminは最後まで、イギリスへの配慮とアメリカへの皮肉を忘れなかった


* 未来の妃へのエール


カミラ皇后陛下は、次にK子様へと向き直った


カミラ皇后陛下:

「プリンセスK子。 貴女がこれから日本で直面するであろう、ご両親や世論との対峙……それは困難な道のりでしょう。 ですが、それは貴女が朱雀陛下の隣に立ち、真に彼の役に立つパートナーとなるための『必要な試練』です。 安心なさい。彼は……不器用だけど真面目な男よ。必ず貴女を守ってくれるでしょう」


皇后の言葉は、人生の先輩としての力強いエールだった


K子様:

「……はい! カミラ皇后陛下のお言葉、一生忘れません。 この試練を乗り越え、必ずや胸を張って、再びここに戻ってまいります」


K子様は涙をこらえ、凛とした笑顔でカーテシーを行った。その姿は、昨日よりもずっと強く、美しく見えた


* 次世代の約束


ウィリアム王太子:

「朱雀陛下。昨日の式典では少ししか挨拶できず、申し訳ない。 妻の治療……これからも、どうぞよろしくお願いします」


王太子はp.adminの手を固く握った。キャサリン妃も感謝の微笑みを向ける


S子:

「ええ、ご安心ください殿下。 まだ治療は続きますから、5日後にまたお邪魔いたしますわ。手土産に楽園島のハーブティーをお持ちしますね」


S子は「主治医」としての頼もしさを見せ、王太子夫妻を安心させた


その後、T先生、OKA先生、N君、SADA大使、Lee先生といった「チーム楽園島」の面々も、順に国王夫妻に挨拶を行った

彼ら一人ひとりが、この数日間でイギリスとの絆を深めていた


K子様は最後に、再びカミラ皇后陛下の前へ進み出た


K子様:

「皇后陛下……昨夜の、あのお言葉。 『自分の心に従いなさい』という助言がなければ、私は今も迷いの中にいたでしょう。 私に勇気をくださり、本当にありがとうございました」


カミラ皇后陛下:

「ふふ。貴女の瞳が答えを出していたわ。お幸せにね」


* 帰還


挨拶を終え、総勢25名の一行はバッキンガム宮殿の中庭へと移動した

夕暮れのロンドン。衛兵たちが敬礼で見守る中、国王ご一家と大典侍がバルコニーから手を振ってくれている


p.admin:

「では皆様、準備はよろしいですか? 忘れ物はないでしょうか? ……よし。 『システム命令、転送エリア内の全対象を、つくば楽園島大使館のワープゲートへ転送せよ』」


シュンッ! 空間が歪み、ロンドンの夕景が一瞬で掻き消えた


* D-DAY+171 AM 1:00 つくば楽園島大使館 屋上


次の瞬間、全員は真夜中の静寂に包まれたつくば楽園島大使館の屋上に立っていた

ひんやりとした日本の夜風。月の光に照らされて、遠くに見える筑波山のシルエット

T先生の事前指示により、待機していた大使館職員たちが迅速に誘導を開始した


応接室に通されると、そこには宮内庁大夫をはじめとする日本側の出迎えが待機していた


宮内庁大夫:

「おかえりなさいませ、M子内親王殿下、K子内親王殿下。 長旅、お疲れ様でございました」


K子様:

「ただいま戻りました、大夫。 ご心配をおかけしましたが……とても有意義な旅でした」


p.adminも大夫に進み出て一礼した。


p.admin:

「大夫殿。この度は、K子様、そしてM子様に大変お世話になりました。 今後、彼女たちは公私において、私とN君のために奔走することになると思われます。 どうか、大夫殿におかれましても、殿下方をサポートしていただけますよう、お願い申し上げます」


宮内庁大夫:

「朱雀陛下。お気になさらないでください。 殿下方を陰日向かげひなたなくお支えするのが、わたくしの本分でございます。 ……それに、お二人のあのような晴れやかなお顔、久しぶりに拝見いたしました」


老練な大夫は、全てを察した上で温かく微笑んだ


* 別れの抱擁


時刻は深夜1時20分

大使館のエントランスには、宮内庁の黒塗りの公用車が列をなして待機していた

職員やSPが大勢見守る中、別れの時が来た


その時だった

K子様は周囲の視線を一切気にせず、p.adminの元へと歩み寄った


K子様:「椿様……」


彼女は背伸びをし、p.adminの首に腕を回して、優しくハグをした

p.adminも一瞬驚いたが、すぐに彼女の背中に手を回し、しっかりと抱きしめ返した


同時に、M子様もN君に抱きついていた 周囲の職員たちは驚愕で目を見開いたが、大夫だけは「やはり」といった顔で頷き、R子も少し複雑そうな表情を見せたものの、すぐに納得したような穏やかな顔つきに戻った


p.admin:

「……では、私たちも楽園島に戻ります。 K子様。……後日、必ず迎えに行きますから」


p.adminが耳元で囁くと、K子様は体を離し、潤んだ瞳で彼を見つめ返した。


K子様:

「はい……お待ちしております。 どうかご無事で。……私の愛する、ただ一人の王様」


その言葉は、深夜のつくばの空気に溶け込み、二人の絆を永遠のものにした


* それぞれの帰路


K子様とM子様を乗せた車列は、テールランプの光を残して、深夜の高速道路を東京・赤坂へと向かって走り去った

それを見送った後、p.adminは振り返った


p.admin:

「じゃあ、俺たちも戻りましょうか」


つくば勤務のT先生と、自宅へ一時帰宅するOKA先生に見送られ、残る13人の楽園島メンバーは再び屋上へ上がった


p.admin:

「システム命令、ここにいる13人を、楽園島中央広場へ転送せよ」


再び光が弾ける。 彼らが次に目を開けた時、そこには南国の朝焼け(AM 5:00)と、懐かしい楽園島の風が待っていた

長いようで短かった、激動の「ロンドン遠征」が幕を閉じた

そして、新たな戦い(グリーンランド防衛戦)が始まろうとしていた


#### D-DAY+171 AM 5:00 楽園島・中央指令センター(CIC)作戦開始


ロンドンから帰還したばかりのp.adminとS子、N君がCIC(Command Information Center)の扉を開けると、そこには既に頼もしい「留守番チーム」が勢揃いしていた 早朝5時という時間にも関わらず、彼らの目は冴え渡っている


H先生: 楽園島無任所大使。p.adminの恩師であり、台湾出身。その温厚な人柄と卓越した実務能力で、島の行政全般を支える

Riu先生: 楽園島幹部。同じく台湾出身の恩師。ミャンマー解放作戦を指揮した実績があり、軍事・戦略面での嗅覚はp.adminも頼りにする存在

Iwaさん・KATOさん: 楽園島産業・異星技術管理の総括官たち。元AIST(産総研)の研究員であり、p.adminのポスドク時代の理解者。技術的な裏付けを行う

INOさん: インフラ建設アドバイザー。元NEXCO東北支社からの出向組。物流と動線のプロフェッショナル。


p.admin:

「H先生、皆さん。早朝からすみません。留守番ご苦労様でした。島の方で何か変わりはありませんか?」


H先生:

「朱雀様、お帰りなさい。 事務的な連絡はいくつか来ていますが……例えば神島建設からの見積もりの件などですね。ですが、いずれも緊急性は高くありません。今はグリーンランド防衛戦を最優先しましょう」


H先生は手元のタブレットを置き、p.adminの顔を見て力強く頷いた


p.admin:

「ありがとうございます。では、直ちに取り掛かりましょう。 N君、まず量子通信を使ってデンマーク側に連絡を。 『シールド発動リング』と『配置人員』は、輸送機を使わず、我々が責任を持って目的地までピンポイントで転送すると伝えてくれ」


N君:

「御意。直ちに回線を繋ぎます」


* デンマーク国防省とのホットライン


N君が異星タブレットを操作すると、ホログラムウィンドウにデンマーク国防大臣の疲弊しきった、しかし希望にすがるような顔が浮かび上がった


デンマーク国防大臣:

『……こちらコペンハーゲン。朱雀陛下の補佐官殿か。 先ほどの外務大臣とパイロットの救出、国家を挙げて感謝する。だが、状況は切迫している』


N君:

「大臣、単刀直入に申し上げます。 現在、貴国は米軍基地に近い3つの村へ人員と装備を派遣しようとしているとお聞きしましたが、現状はいかがですか?」


デンマーク国防大臣:

『ああ。だが、我々も先の襲撃で学んだ。 輸送機を飛ばせば撃墜されるか、乗っ取られる。 現在は海路を使い、さらにカモフラージュのために3つの別ルートで、1便につき「兵士2名とリング2個」という極小規模で分散輸送を行っている……だが、これでは時間がかかりすぎる』


N君:

「理解しました。その速度では、アメリカの工作員の展開に間に合いません。 我々が輸送協力を申し出ます。 今から2時間以内に、配置すべき人員のリストと、正確な座標(WGS84形式)を共有してください」


デンマーク国防大臣:

『本当か!? それは助かるが……どうやってデータを送ればいい? メールや既存の回線は、間違いなく「エシュロン(通信傍受網)」に監視されているぞ』


N君:

「仰る通りです。デジタル通信は使いません。 『物理メディア』でやり取りしましょう。 人員の名前、顔写真、ID番号、そして配置座標を入れたUSBメモリを一本用意し、国防省の中庭の指定座標に置いてください。 我々がワープで直接回収します」


デンマーク国防大臣:

『……なるほど、アナログだが最強の暗号化だ。直ちに手配する!』


* 作戦会議:見えざる「情報の包囲網」


N君が通信を続けている間、p.adminはホワイトボードの前でRiu先生たちと向き合っていた。


p.admin:

「さて……物理的な配備はこれで解決するとして。 シールドでミサイルや銃撃は防げても、アメリカが狙っているのはそれだけじゃない気がします。 もっと曖昧な……『世論』や『立場』を攻めてくるはずだ」


H先生:

「朱雀様、先生もそう思うよ。 アメリカは軍事力で我々に敵わないことは、先のF-22の一件で骨身に染みているはずだ。 彼らが欲しいのは『正義』だ。つまり『宣伝戦』による世論操作の実績作りだよ」


ここで、腕組みをしていたRiu先生が鋭い眼光で口を開いた


Riu先生:

「俺がアメリカ軍の司令官だったら……まず『目と耳』を塞ぐな。 グリーンランド全土のインターネットを切断し、衛星通信もジャミングで封じる。 その上で、情報の孤島となった村に工作員を送り込み、あることないこと風説を流布して不安を煽り、『住民投票』を強行する。 外部と連絡が取れない住民は、目の前のアメリカ軍を頼るしかないからな」


p.admin:

「……情報の遮断、ですか。いい視点です、Riu先生。 Iwaさん、グリーンランドのネットインフラはどうなっていますか?」


Iwaさんが即座に端末を操作し、海底ケーブルのマップを表示させた


Iwaさん:

「朱雀様。グリーンランドの通信は脆弱です。 主に『グリーンランド・コネクト』と呼ばれる海底ケーブルで、カナダとアイスランドに繋がっていますが……物理的な接続点はわずか数箇所。 ここを切断されたら、全土がオフラインになります。あとは低速な衛星通信しかありません」


p.admin:

「たった2本ですか。切られたら全滅ですね。 それに衛星通信の『Starlink』などはアメリカ企業の管理下だ。当てにはできない ……よし。 KATOさん! 直ちにADDI(日本の通信会社)※1に連絡してください! 予備の『50万人規模』の通信回線ゲートウェイを緊急確保してほしいと!」


KATOさん:

「50万人規模……グリーンランドの全人口(約5.6万人)を遥かに超えますが、帯域の確保ですね?」


p.admin:

「ええ。ポルポ・カラマリと共同開発した『量子通信中継端末ブリッジ※2』を使います。 これをADDIのバックボーンに直結し、もう片方をグリーンランドの陸揚局や主要村に置く。 そうすれば海底ケーブルが切られても、日本経由でネットが繋がります」


KATOさん:

「了解しました! 日本は深夜2時ですが、緊急ホットライン※を使います!」


KATOさんは通信技術の専門家として、即座に行動を開始した。数個の量子ブリッジ装置(見た目は無骨なサーバールックの箱だが、10Gbps LANポートやQSFP規格の100GBpsポート等を多数備える)を抱え、ADDIのデータセンター前への転送準備に入る


※1:楽園島のインターネットと5GネットワークはADDI提供のため、通信障害等の緊急連絡のため、一般ユーザーと違うホットライン的な窓口が存在する

※2:ポルポ・カラマリとADDI共同開発の量子通信ブリッジ装置、10個の10GBps RJ-45 LANと10個のQSFP28 100GBps端子があって、装置はペアとして存在し、距離と関係なく遅延0で繋ぐ


* デンマーク国防省中庭:消える兵士たち


それから一時間後。 デンマーク国防省の中庭には、完全武装した兵士たちと、物資の入ったコンテナが整然と並んでいた

中庭の一つ箱の上には、N君の指示通りUSBメモリが入った小さなケースが置かれている


その後すぐ、N君の操作でデンマークから配置人員の第一波の100人の人員転送リストが入っていたUSBメモリがp.adminの手元に転送されてきた

p.adminはUSBメモリを自分のノートPCに差し込み、ファイル共有で異星タブレットにアップロードしたら指示を出しました


p.admin:

「N君、向こうはもう転送の準備が済ませましたか?」


N君:

「はい、USBメモリが転送される時点で、転送人員は既に屋外の所定位置に待機されています」


p.admin:

「データ受信確認。リスト展開……よし。 システム命令! リストにある人員と物資を識別し、指定座標へ転送せよ! 現地に敵対的反応がある場合は、即座にシールドを展開し保護せよ!」


p.adminが命令を出した直後

コペンハーゲンの曇り空の下、数百人の兵士とコンテナが、まるで映像のノイズのように次々と消失していった

見守っていたデンマーク軍の将校たちは、呆気にとられてその光景を見ていた


デンマーク将校A:

「……消えた。本当に一瞬で」


デンマーク将校B:

「おい、現地から連絡が入ったぞ! 『こちらグリーンランド・カーナーク村! 先遣隊、到着しました! 異常なし!』だと!?」


デンマーク将校A:

「バカな……通常なら輸送機で数時間はかかる距離だぞ……」


* グリーンランド:極北の防人たち


同時刻、グリーンランド北西部。 氷点下の寒風が吹き荒れる極北の村の郊外に、突如としてデンマーク軍の精鋭部隊が出現した。


デンマーク兵士:

「……うおっ!? さ、寒い!」 「おい、本当に着いたのか? さっきまでコペンハーゲンにいたんだぞ」


彼らの目の前には、N君が手配した「シールド発動リング」と、KATOさんが用意した「量子通信端末」の入ったコンテナが鎮座していた


隊長:

「無駄口を叩くな! 直ちに展開せよ! 朱雀陛下が時間を稼いでくれている間に、村を『情報の孤島』にするな! リングを起動し、通信機を設置しろ! アメリカ軍が来るぞ!」


楽園島チームの迅速な連携により、アメリカの「オペレーション・アイスピック」に対抗する防衛線が、物理・情報の両面で敷かれようとしていた


#### D-DAY+171 AM 2:30 東京・赤坂御用地 H親王邸 嵐の前の猶予


つくばからの移動を終え、宮内庁の黒塗りの車が静かに赤坂御用地の砂利道を踏みしめた

午前2時30分。草木も眠る丑三つ時だが、H親王邸のリビングには、まだ暖かい明かりが灯っていた


K子様とM子様は、玄関で出迎えた老侍従に軽く会釈をし、重い足取りでリビングのドアを開けた そこには、ソファに深く腰掛けたH親王殿下と、その隣で静かに紅茶のカップを手にしている親王妃殿下の姿があった テレビは消されていたが、テーブルの上にはタブレット端末が置かれ、画面にはEBCのニュースサイトが表示されたままになっている


K子様・M子様:

「……ただいま戻りました。 夜分遅くに、ご心配をおかけして申し訳ありません」


二人は揃って深々と頭を下げた。その姿には、皇族としての品位と、叱責を覚悟した娘としての緊張が滲んでいた


親王妃殿下は、ゆっくりと立ち上がり、娘たちの元へ歩み寄った

そして、母としての優しい眼差しで、二人の顔を順に覗き込んだ


親王妃殿下:

「お帰りなさい。M子、K子 ……ずいぶんと長い一日でしたね。ロンドンから北米、そして南半球まで。 世界中を飛び回り、さぞお疲れでしょう」


その言葉には皮肉はなく、むしろ、激動の世界を見てきた娘たちへの労いと、無事に帰ってきたことへの安堵が含まれていた


M子様:

「はい……お母様。 信じられないような経験を……たくさん、させていただきました」


その時、それまで沈黙を守っていたH親王殿下が、重々しく口を開いた


H親王殿下:

「……顔を上げなさい」


二人が恐る恐る顔を上げると、殿下は厳しい、しかしどこか諦観を含んだ複雑な表情で娘たちを見据えていた

怒鳴られるかと思ったが、殿下の声は予想外に静かだった。


H親王殿下:

「あの放送は、全て見ていた。 お前たちが何を考え、誰の隣に立ち、何をしてきたか……全てな」


殿下はちらりとタブレットに視線を落とし、再び娘たちを見た

その目には、「もはや親の管理できる範疇を超えてしまった」という父親としての寂しさと、「覚悟」を決めた男の厳しさがあった


H親王殿下:

「聞きたいことは山ほどある。……だが、今は午前2時半だ。 お前たちも、そして我々も、今日はもう限界だろう。 この状態で話をしても、感情的になるだけだ」


殿下は立ち上がり、背を向けた


H親王殿下:

「話は明日……いや、今日の朝になってから、改めて聞く。 全てを包み隠さず話してもらうぞ ……今夜はもう、部屋に戻って休みなさい」


それだけを告げると、殿下は振り返ることなく、足早に自室へと去っていった

その背中は、世界の激変と娘たちの成長を前に、父親としてどう振る舞うべきか苦悩しているようにも見えた


親王妃殿下:

「……お父様も、お疲れなのよ。 さあ、貴女たちも早くお休みになりなさい。お風呂は沸いていますから」


K子様:

「……はい。お休みなさいませ、お母様」


***


自室に戻ったK子様は、重いドレスを脱ぎ捨て、慣れ親しんだベッドに倒れ込んだ。 天井を見上げると、そこはいつもの自分の部屋だ 数時間前まで、バッキンガム宮殿のバルコニーに立ち、異星の王の隣で世界を見ていたことが、まるで遠い夢のように感じられる


彼女はそっと、自分のおでこに手を当てた


K子様(独白):

『……熱い』


朱雀陛下――いいえ、椿様の唇の感触が、まだそこに残っている気がした。 あの大きな体に優しく抱きしめられ、おでこにキスをしてくれた瞬間。 「責任を果たす」「待っていてくれ」という言葉


K子様:

「……もう、逃げません」


彼女は枕を抱きしめ、小さく呟いた。 明日、お父様に何を言われても、世間がどう騒ごうとも。 あの背中に守られている限り、私はどんな嵐でも耐えられる

「朱雀の巫女」ではなく、「彼のパートナー」として生きる覚悟は、ロンドンの空の下で既に完了していたのだ


* M子様の自室


一方、隣の部屋のM子様は、ドレッサーの鏡の前で、自分の唇を指先でなぞっていた

メイクを落とした素顔の自分。しかし、その瞳は以前よりもずっと強く、輝いている


M子様(独白):

『……やっちゃった。本当に』


N参事官 - Alexへのキス。 そして、「結婚前提の交際」という既成事実

数日前までの自分なら、考えられないような大胆な行動だ。 だが、後悔は微塵もなかった


M子様:

「ふふ。お父様のあの顔……半分くらいは諦めてらしたわね」


彼女はスマホを取り出し、画面に映るN君の連絡先を見つめた

彼は今頃、楽園島で、世界を相手に頭脳戦を繰り広げているはずだ

自分はここで、家庭内という「戦場」を制圧しなければならない


M子様:

「負けないわよ、Alex。 貴方が世界を支えるなら、私は貴方の帰る場所を守ってみせる」


二人のプリンセスは、それぞれの部屋で、それぞれの「愛の証」を胸に、短い眠りについた

赤坂の夜明けは近い。そしてその朝は、彼女たちが本当の意味で「自立」するための、長い一日の始まりでもあった

金曜日の373pv祭りの後、昨日の土曜日は31pvまで落ち着きました(笑)

グリーンランド防衛戦シリーズは、暫くの間こうした公と私の二正面作戦が続きます

なお、なぜ人口6万人未満のグリーンランドは50万人規模の帯域が必要かとすると

肝は「平均」、普段、ユーザー全員はウェブサイトをサーフィンしたり漫画をみたりYoutubeをみたりするので、全員が帯域を一杯使うわけではありません

ただ、もし全員が同じネットのライブ放送を見ようとしたら、お分かりますよね

p.adminはそのための「50万人規模の帯域」を想定しています

ただ、誰かその「ADDIの通信サービス代金」を支払うかは…結構興味深いかもしれない


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ