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D-DAY+170 2027年6月上旬 グリーンランド防衛戦 次の一手

#### 静寂のダイニングとそれぞれの帰路


p.adminたちが個室から戻ると、ダイニングルームには重苦しい空気が漂っていた

イギリスのJ首相の姿はなく、代わりに顔面蒼白の通商大臣が、カナダT首相とオーストラリアA首相に何かを必死に説明していた


一方で、テーブルに残っていたW子とR子は、全く動じていなかった 「あの人が動いたのなら、もう解決したのでしょう?」と言わんばかりに、優雅に紅茶を啜っている

その姿は、既に夫が修羅場を潜り抜けてきた歴史を知る「王妃」の貫禄そのものだった。


* 語らぬ王と、隣国の憂鬱


p.adminが席に戻ると、通商大臣が弾かれたように駆け寄ってきた


イギリス通商大臣:

「す、朱雀陛下……! 我が国のF-35の3機が、あろうことかこのヒースロー空港の『TOKYOゲート』予定地に出現したと! 民間機の乗客やメディアがその姿を撮影し、現在SNSとニュース速報がパンク状態です! 『ワープゲートから戦闘機が湧いた』と……一体何が!?」


大臣の額には脂汗が光っていた。民間空港に最新鋭ステルス戦闘機が突然現れるなど、前代未聞の椿事だ

しかし、p.adminはその問いに一切答えなかった


彼は黙って席に着き、少し溶けかけた「トロント風ドーナツ・プディング」を口に運び、グラスに残っていた最高級のアイスワインを一気に飲み干した その沈黙こそが、「私がやった。だが文句はあるか?」という無言の圧力だった


一息ついたp.adminは、ふとカナダのT首相に視線を向けた


p.admin:

「……T首相。貴国も大変ですね。 あの『民選独裁』のアメリカの隣にいるというのは、火薬庫の隣で暮らすようなものでしょう。 もし、国境付近で何か異変……理不尽な圧力を感じることがあれば、遠慮なく知らせてください。直ぐに対処しますから」


カナダT首相は、手に持っていたコーヒーカップを静かに置いた。彼の立場は親・楽園島だが、カナダは経済も国防もアメリカと不可分な関係にある


カナダT首相:

「……ご配慮、痛み入ります、朱雀陛下。 我々は長い間、あの巨大なアメリカの隣で、踏み潰されないように寝返りを打つのに細心の注意を払ってきました。 ですが……今日、陛下が見せてくださった『ゲート』は、我々にとっても新たな選択肢となるでしょう。 いざという時は、その『生命線』を……頼りにさせていただきますよ」


T首相は肯定も否定もせず、しかし確かな信頼を込めて頷いた。それは、アメリカへの「面従腹背」を示唆するギリギリの外交的サインだった


約5分後、別室で対応に追われていたJ首相が戻ってきた。彼は息を切らしていたが、その表情は明るかった


J首相:

「朱雀陛下! 先ほど空軍参謀総長より連絡がありました。我が国のパイロットたちは無事です! 陛下が救ってくださったのですね……国民を代表し、心より感謝いたします!」


J首相はp.adminの手を固く握りしめた


p.admin:

「……礼には及びません。 正しい責務を忠実に遂行しようとした英雄たちを見捨てるのは、私の信条に反しますから。 ただ、首相殿の仕事を……事後処理という面倒な業務を勝手に増やしてしまい、申し訳ない」


p.adminは軽く会釈した

「F-35がワープしてきた理由」をどう世界に説明するか、J首相の胃痛は確定事項だ


J首相:

「い、いえ! 命あっての物種です! ……しかし、事態が事態ですので、私はこれより官邸に戻り、対応に当たらせていただきます」


この空気の中、のん気にランチを続けるわけにはいかない。 カナダとオーストラリアの首相も空気を読み、それぞれ自国大使館へ戻って情報収集に当たることとなった


* 姫たちの撤退戦


昼食会は急遽お開きとなった ターミナルを出ると、黒山のようなメディアが「戦闘機出現の件で一言!」「あれは楽園島の技術ですか!?」とマイクを向けてきたが、

p.adminは一切顧みず、SPに守られて車に乗り込んだ


バッキンガム宮殿へ戻る車列の中。 K子様とM子様が乗る車両には、沈黙が流れていた


M子様:

「……ねえ、K子。 さっきの朱雀陛下の顔……見た? いつもの優しい雰囲気とは別人だったわ」


K子様:

「ええ……あれが、一国の、いえ、地球の運命を背負って戦う王の顔……正直、私達の覚悟は甘かった…」


K子様は膝の上で手を握りしめた。 彼女は先ほどまで「最後まで付き添う」と意気込んでいた

しかし、事態は「外交」のレベルを超え、米軍機を相手にした「軍事衝突」の領域に入っている


K子様:

「お姉様。私……これ以上、陛下のお傍に居座るのは控えようと思います」


M子様:

「えっ? どうして? 諦めるの?」


K子様:

「違います。逆です。 今の陛下は、アメリカという巨大な敵と対峙し、次の一手を考えておられます。 そんな張り詰めた軍事会議の場に、私たちのような部外者が……しかも守られるだけの存在が同席していては、陛下の判断を鈍らせ、ご迷惑をおかけしてしまいます」


K子様は窓の外を流れるロンドンの街並みを見つめた


K子様:

「私、考えたのです…『付き添う』というのは、ただ物理的に横にいることではありません。 陛下が戦いに集中できるよう、今は身を引いて、後方で待つこと……それが今の私にできる、『同伴』の在り方だと思うのです」


M子様:

「……そうね。 貴女、本当に強くなったわ。流石は私の妹、そして未来の……ふふ。 分かったわ。宮殿に戻ったら、私たちはお部屋でおとなしくしていましょう」


二人のプリンセスは、恋心よりも「王のパートナーとしての分別」を選んだ

それは彼女たちが、単なるお飾りではない証明でもあった


* 次なる手と、防衛大臣の来訪


バッキンガム宮殿に戻ったp.admin一行は、足早に楽園島ゲストルームへ集合した

姫たちは「旅の疲れが出ましたので」と気を使い、自室へと下がっていった


p.adminは直ちにシグマ副艦長からの報告を確認した


シグマ副艦長(ホログラム)

「司令官。デンマーク外務大臣は無事にコペンハーゲンへ到着した事を確認。 『シールドリング』等の装備一式は、待機していたデンマーク軍幹部に引き渡されたようです。 現在、グリーンランドへの空輸準備中とのことです」


N君:

「ひとまずは安心ですね。しかし……」


p.admin:

「ああ。アメリカはこれで諦めないだろう。 F-22をフロリダに飛ばされた屈辱もある。次はもっと陰湿な手で、現地の村を切り崩しに来るはずだ」


p.adminが次なる一手を思案していたその時


コンコン


重厚なドアがノックされた


使用人:

「朱雀陛下。イギリス国防大臣がお見えです。 緊急のご相談があるとのことです」


p.admin:

「国防大臣? ……通してくれ」


部屋に入ってきたのは、軍服に身を包んだイギリス国防大臣だった。その表情は極めて険しかった

アメリカとの「同盟」と、楽園島との「新秩序」の狭間で、大英帝国が大きな決断を迫られていることは明らかだった


#### 同盟の限界


イギリス防衛大臣は、入室するなり帽子を脇に抱え、p.adminに向かって直角になるほどの最敬礼を行った

その表情は、安堵と悔恨、そして深い感謝が入り混じっていた


イギリス防衛大臣:

「朱雀陛下。この度は……我が空軍(RAF)のパイロット3名の命をお救いいただき、言葉もございません。 彼らは国の宝です。陛下がいらっしゃらなければ、今頃は冷たい北海の底でした」


p.admin:

「頭を上げてください、大臣。 J首相にも申し上げましたが、これは私の信念に基づく行動です ……ただ、緊急事態だったため、ランディングギア(着陸脚)を下ろす暇もなく転送してしまいました。 現在、貴国の最新鋭機はヒースロー空港のコンクリートの上に胴体着陸状態で転がっています。 もしご都合が悪ければ、指定された基地へ再度ワープで移動させましょうか?」


F-35Bは垂直着陸能力があるとはいえ、エンジン停止状態で転送されたため、機体底部は滑走路に擦れている状態だ


イギリス防衛大臣:

「いいえ、滅相もございません! これ以上、陛下のお手を煩わせるわけにはいきません。 既に整備チームとクレーン車をヒースローへ急行させております。自国の機体の始末は、自国でつけさせていただきます」


* 最悪のシナリオ


大臣は一息つくと、声を潜めて続けた


イギリス防衛大臣:

「それと……現在ロンドン滞在中のデンマーク国王陛下ご夫妻についてですが、MI5(保安局)と連携し、厳重な保護下に置きました。ご安心ください」


p.admin:

「ああ、それが一番心配でした。無事で何よりです」


イギリス防衛大臣:

「はい……正直、震えが止まりませんでした。 もし今朝、国王陛下が外務大臣と共にあの政府専用機に搭乗され、アメリカ軍の脅迫を受けていたら……。 それはもはや『事故』ではなく、NATO崩壊と世界大戦の引き金になっていたでしょう」


大臣の手は微かに震えていた

同盟国であるはずのアメリカが、一歩間違えば他国の元首を殺害しかねない行動に出た事実が、イギリス政府に与えた衝撃は計り知れなかった


* 情報漏洩のルート


p.admin:

「……そこで、大臣。今後のために伺いたい。 私がデンマーク外務大臣と会ったこと、そして『例のシールドリング』を渡したこと。 この情報が、あまりに正確なタイミングでアメリカ側に漏れていました。 ……貴国を責めるつもりはありません。純粋な問題提起として、どこに穴があったとお考えですか?」


p.adminの静かな問いに、大臣は痛恨の表情で答えた


イギリス防衛大臣:

「……弁解の余地もございません。 昨日の式典、そして本日のパレード。各国からの来賓、メディア、そして親米的な立場の国賓も多数招かれておりました。 デンマークの皆様が陛下との面会に向かう様子や、宮殿内での人の動き……これらを完全に隠匿することは不可能でした」


大臣は悔しげに唇を噛んだ


イギリス防衛大臣:

「我々の分析では、アメリカは『荷物』の正確な中身までは把握していなかったと思われます。 ですが、『朱雀陛下がデンマークに何かを渡した』という事実は掴んでいた。 そして……彼らは完璧なタイミングを計りました。 陛下が各国の首相と『ウィンザー・スイート』で昼食会に入り、すぐには席を立てない瞬間を狙って、作戦を開始したのです」


p.admin:

「なるほど……私がロブスターに夢中になっている隙を突いたわけですね。 敵ながら見事な作戦立案だ」


* 信頼できない翼


ここで大臣は、決然とした表情で新たな決定を告げた


イギリス防衛大臣:

「朱雀陛下。今回の事態を受け、英国防省は重大な決断を下しました。 原因が完全に究明され、安全が保証されるまで、我が国が保有する全てのF-35Bの飛行を停止いたします」


p.admin:

「えっ、全機ですか? そうなると、貴国の空を守る主力戦闘機はユーロファイター・タイフーンだけになってしまいますが……防空体制は大丈夫なのですか?」


イギリス防衛大臣:

「痛手ではあります。しかし……」


大臣は軍人としての誇りを込めて断言した


イギリス防衛大臣:

「いつ、何者かによってリモートで制御を奪われ、撃墜されるか分からないような『棺桶』に、名誉あるRAFのパイロットを乗せるわけにはいきません。 たとえ旧式機を引っ張り出してでも、信頼できる翼で空を守るのが、王立空軍の矜持であります」


p.admin:

「……その矜持、感服しました。 しかし、これはアメリカ製兵器を採用しているEU諸国共通の爆弾ですね」


p.adminは腕を組み、未来を見据えるように言った


p.admin:

「私にも考えがあります。 今すぐには無理ですが、そう遠くない未来、この『キルスイッチ問題』……あるいは『バックドア問題』を技術的に無効化する手段を提供したいと思います。 アメリカも、今回のようなあからさまな真似は暫く控えるでしょうが、それまでは米軍製の装備を扱う際は十分にご注意ください。 何か異変があれば、すぐに共有を。こちらも対策を練りやすくなります」


イギリス防衛大臣:

「……! ありがとうございます。陛下のお言葉、全軍の励みになります」


* 不可解な線引き


話題は今後のグリーンランド情勢に移った。


p.admin:

「私は一度介入を決めた以上、中途半端で終わる気はありません。 アメリカ側が徹底的にグリーンランドを諦め、デンマークの主権を認めるまで、最後まで助力するつもりです」


p.adminの力強い宣言に対し、大臣は肯定的な態度を示しつつも、どこか歯切れが悪かった


イギリス防衛大臣:

「……陛下のご決意、尊重いたします。 ただ、正直に申し上げまして……イギリス政府としては、これ以上アメリカを過度に刺激することは避けたいのが本音です。 情報提供や後方支援は惜しみませんが、軍事的なプレゼンスにおいて、これ以上イギリスが表立って動くことは……難しいかと」


p.admin(心の声):

(……ふむ。不思議なものだ。 たった今、自国のパイロット3人がアメリカによって殺されかけたというのに。 それでもなお、アメリカとの正面衝突は避けたい、か。 これが長年の「特別な関係(Special Relationship)」の呪縛なのか、それとも腐っても超大国への恐怖なのか……)


p.adminは外交の複雑さと、国家というものの重たさを改めて感じ取った


最後に、防衛大臣は姿勢を正して伝言を口にした


イギリス防衛大臣:

「最後に、J首相からの伝言をお伝えいたします。 『本来であれば、明日にもノース海峡橋(イングランド・北アイルランド間の架け橋)の起工式を行いたかったが、この騒ぎでそれどころではなくなってしまった。 ほとぼりが冷めた頃……後日、TOKYOワープゲートの正式開通式と共に、盛大に行いましょう』 とのことです」


p.admin:

「ええ、賢明な判断です。楽しみに待っていますよ」


イギリス防衛大臣:

「本日は、本当にありがとうございました」


大臣は深々と、何度も頭を下げ、重い足取りで退室していった

部屋に残されたp.adminたちは、窓の外のロンドンの空を見上げた。そこにはまだ、見えない緊張の糸が張り巡らされていた


#### 懲りない人達:ワシントンD.C. ホワイトハウス


ホワイトハウスの地下深くにある危機管理室

普段は世界を動かす指令が飛び交うこの部屋は、今、鉛のように重い沈黙に支配されていた


大型モニターには、フロリダ州のティンダル空軍基地に着陸したばかりの2機のF-22ラプターの映像と、CNNが報じる「ヒースロー空港に謎の戦闘機出現」というニュースが交互に映し出されている


長テーブルの上座に座るトランプ大統領は、真っ赤な顔で腕を組み、モニターを睨みつけたまま、一言も発しなかった

その目は怒りに燃えているが、同時に深い屈辱の色も浮かんでいる


(まただ……またしても、あの『朱雀』に煮え湯を飲まされた!)


かつての楽園島侵攻作戦での敗北。そして今回の北海上空での完全なる無力化

「偉大なアメリカ」を掲げる彼にとって、手も足も出ずにあしらわれることほど、耐え難い屈辱はなかった


会議には、統合参謀本部議長(軍良識派)、CIA長官(強硬派)、そして空軍作戦トップ(強硬派)が集まっていた

口火を切ったのは、制服組のトップである統合参謀本部議長だった。


統合参謀本部議長:

「……大統領。申し上げにくいことですが、最初からこのような無茶な作戦を実行すべきではありませんでした。 同盟国の政府専用機を脅迫し、あまつさえ撃墜しようとするなど……狂気の沙汰です」


議長はテーブルを拳で叩いた


統合参謀本部議長:

「結果をご覧なさい。朱雀王は本気です。 彼は一瞬で我々の最強の翼をフロリダへ追放し、デンマーク機を安全圏へ逃がした。 軍事的な勝算はゼロです。これ以上傷口を広げる前に、外交ルートを通じて『グリーンランドへの領有は断念する』と伝えるべきです!」


「諦める」という言葉を聞いた瞬間、トランプの眉がピクリと跳ね上がり、不快感を露わにした

だが、彼は反論しなかった。反論できるだけの「カード」が、今の彼には一枚もないことを知っていたからだ


* CIAの悪魔的提案


その沈黙を破ったのは、冷徹なCIA長官だった


CIA長官:

「議長、少し弱腰すぎませんか? 確かに作戦は失敗しましたが、我々が失ったものは何もありません。 パイロットも機体も、無傷でフロリダに帰ってきた。燃料代が無駄になった程度です」


長官は薄ら笑いを浮かべた


CIA長官:

「むしろ、今回の件で確信しました。朱雀は『不殺』を貫いている。 ならば、何度でもチャレンジすべきです。彼が手を出せないギリギリのラインを探り、一度でも我々の要求が通れば、それが既成事実の勝ちになるのですから」


その言葉に、議長は激昂した


統合参謀本部議長:

「正気か!? 半年前の『D-DAY(楽園島侵攻)』をお忘れか!? あの時、我々は156人の勇敢な兵士を失ったんだぞ! 今回、彼が不殺を選んだのは、単なる慈悲ではないかもしれない……」


議長はモニターに映る、ヒースロー空港でのp.admin一行の映像(遠くに見切れる日本のプリンセスたち)を指差した


統合参謀本部議長:

「案外、日本のおかげかもしれんぞ。 日本の内親王殿下たちが彼の傍にいて、彼がその目前で血を見ることを避けたかった……その程度の理由で、我々のパイロットは命拾いしただけかもしれんのだ!」


さらに、空軍作戦トップの方を睨みつけた


統合参謀本部議長:

「それに空軍! 貴様らはやりすぎた! イギリス空軍のF-35に対するハッキング……あれは一歩間違えば、同盟国のパイロット3人を殺害していたことになるぞ! もし彼らが海に落ちていたら、NATOは崩壊し、アメリカは世界中から孤立していた!」


空軍作戦トップ:

「……あれは必要な措置でした。彼らが邪魔をしたので」


統合参謀本部議長:

「貴様ッ……!」


* 泥沼の応酬


CIA長官:

「結果論で語るのはやめていただきたい。 今は『次』をどうするかです。ここで引けば、アメリカは朱雀に屈したと認めることになる」


統合参謀本部議長:

「認めるも何も、負けたんだ! 現実を見ろ!」


会議室は怒号と責任のなすりつけ合いで紛糾した

トランプはその醜い争いを、ただじっと、忌々しそうに見つめていた。彼の沈黙は「解決策を持ってこない無能ども」への苛立ちだった。


* 最後のあがき:「民意」という名の武器


議論が平行線をたどる中、トランプの「意向(絶対に負けを認めたくない)」を敏感に察知したCIA長官が、切り札を切った


CIA長官:

「……大統領。軍事的な直接対決が難しいことは認めましょう。 ですが、我々にはまだ『政治』と『世論』という武器があります」


長官は地図を広げた。グリーンランド北西部、チューレ米空軍基地に近い、人口100人程度の小さな集落を指差した


CIA長官:

「この村です。基地に近く、経済的に我々に依存している住民も多い。 ここに工作員を送り込み、予定通り『住民投票』を強行します」


統合参謀本部議長:

「まだやる気か……」


CIA長官: 「朱雀がどんなハイテク兵器を持っていようと、『住民自らがアメリカへの帰属を望んだ』という結果が出れば、それを力尽くで覆すことはできません。そんなことをすれば、彼は『侵略者』になりますからね」


長官はトランプに向かって、狡猾な笑みを向けた


CIA長官:

「本当にグリーンランド全土を占領できるかはともかく……この小さな村一つでも『アメリカを選んだ』という事実を作れば、一矢報いることができます。 世界中に配信しましょう。『圧制に苦しむ村人が、自由の国アメリカに助けを求めた』と。 これなら、戦闘機もミサイルも使いません。いかがですか?」


トランプはゆっくりと顔を上げた

「朱雀に一矢報いる」「世論で勝つ」

その言葉が、傷ついた彼のプライドをわずかに刺激した


トランプ大統領:

「…………やれ」


短く、低く、それだけを呟いた


CIA長官:

「御意に(Yes, sir)。 直ちに『オペレーション・アイスピック』フェーズ2へ移行します」


統合参謀本部議長:

「大統領……!」


良識派の嘆きは届かなかった

軍事的な敗北をごまかすため、超大国は恥も外聞もなく、人口わずか100人の小さな村をターゲットにした「選挙工作」という泥沼へと足を踏み入れたのだった


#### シミュレーションの迷宮


イギリス国防大臣が去った後のゲストルーム

p.adminは、部屋の中央で腕を組み、沈思黙考の海に沈んでいた

彼の「白昼灯籠」という、極端な悲観主義を発揮、頭がフル回転し、アメリカの次なる一手を数百パターンで予測していた


p.admin(脳内):

(デンマーク軍の装備……特に輸送機C-130やC-17は、ほとんどがアメリカ製だ。キルスイッチのリスクはゼロじゃない。 それに、グリーンランドは広大だ。首都ヌークから最北端の村まで、空輸だけでも数時間かかる。 その間に、村に工作員が入り込んだら? 住民を脅迫したら? リングの使い方のレクチャー……デンマーク軍人が現地で説明する暇なんてない。 間に合わない。アメリカの妨害工作に対して、デンマーク軍単独での展開速度じゃ遅すぎる……!)


彼の周囲には、重苦しい空気が漂っていた

S子やT先生たちは、彼が「最悪の事態」と戦っていることを知っていたため、あえて声をかけずに見守っていた


約10分後。 p.adminは顔を上げ、カッと目を見開いた


p.admin:

「決めた。 デンマーク側に連絡。グリーンランドへの人員派遣と物資輸送は、デンマーク軍機を使わせない。 我々が直接、ワープゲートで各集落へピンポイント輸送する」


その言葉に、すかさずN君が進み出た


N君:

「陛下。作戦には賛成ですが……場所を変えましょう。 これ以上、ここバッキンガム宮殿で軍事会議の真似事をするのは不適切です。 異星ドローンを指揮し、他国の領土へ部隊を送る……これはれっきとした軍事行動です。 中立であるべきイギリス王室の管轄下の宮殿から、軍事命令を出すわけにはいきません」


N君の指摘は鋭かった

昼間のF-35救助は「人命救助」という大義名分があったが、これからの行動は明確な「介入」だ

イギリスに迷惑をかけることになる


p.admin:

「……! 確かにそうだ。 ありがとうN君、完全に失念していた。熱くなりすぎて周りが見えていなかった」


p.adminは素直に非を認めた


p.admin:

「よし、直ちに楽園島へ戻ろう。 一緒に来たK子様とM子様にも知らせないと……こちらの都合で振り回して申し訳ないが、一緒に帰国してもらおう。俺が直接謝りに行く」


S子:

「待って。立つ鳥跡を濁さずよ。 戻る前に、チャールズ国王陛下とカミラ皇后陛下には一言ご挨拶しておきましょう。 私が使用人を通じて、大典侍様にアポを取るわ。陛下は姫様たちのところへ行ってらっしゃい」


S子は手際よく動き出し、p.adminとN君は日本側のゲストルームへと向かった


* 嵐の前の静けさ: 同刻 バッキンガム宮殿 M子様とK子様の客室


一方、日本側の客室では、K子様とM子様がソファに向かい合って座っていた

窓の外のロンドンは曇り空

二人の心模様を映すように、どんよりとしている


K子様:

「……そろそろ、日本へ帰る時が近いですわね」


M子様:

「ええ。あの騒ぎだもの、長居はできないわ」


二人の胸にあるのは、帰国後に待ち受ける「両親への説明」という巨大なプレッシャーだった

世界中のメディアがあれだけ報じたのだ。言い逃れはできない


K子様は意を決したように口を開いた


K子様:

「お姉様……実は、私、お話しなければならないことがあります。 昨夜、舞踏会の後で……リコ姉様とお話ししました」


M子様:

「えっ? リコさんと?」


K子様:

「はい。和解……いえ、許していただきました。 カミラ皇后陛下にも背中を押していただき、そしてかおり皇后様とリコ姉様の許しを得て…… 私、朱雀陛下と真剣に交際させていただくことになりました」


K子様の頬が微かに染まる

それは、重圧の中でも確かな「幸せ」を感じている証拠だった


* M子様の懸念と、まさかのカミングアウト


M子様:

「ま、まあ……! そこまで進んでいたのね。 でも、K子……あの『誓い』(これ以上妻を増やさないというp.adminの公開発言)はどうなるの? いくらかおり皇后様とリコさんが許しても、公的な立場としては……」


K子様:

「陛下は『必ず公的に解決する』と仰いました。具体的な解決策はまだ……でも、私はあの方を信じます」


K子様の揺るぎない瞳を見て、M子様はふっと息を吐き、悪戯っぽい笑みを浮かべた


M子様:

「そう……貴女がそこまで言うなら、私も腹を割るしかないわね。 実はね、私も昨夜……Nさんに、『逆プロポーズ』みたいなことをしちゃったの」


K子様:

「ええっ!? お姉様が!?」


M子様は昨夜の舞踏会での出来事、N君への強引なアプローチと、彼からの前向きな返答…等を包み隠さず話した


* ふたりでの作戦会議


M子様:

「というわけで、私も貴女も、もう後戻りできない『共犯者』よ。 帰国したら、お父様とお母様にどう説明するか……作戦を練りましょう」


K子様:

「はい…… 『ワープゲート開通式への出席』は公務の延長として。 お姉様はN参事官との『結婚を前提とした交際』。 私は……『かおり皇后の許可を得た、朱雀陛下の妃候補としての修業』……でしょうか?」


M子様:

「うーん、お父様、卒倒するかもね。でも、事実だもの。 もう、強行突破しかないわ」


二人が頭を抱えつつも、どこか楽しげに「言い訳」を考えていたその時


コンコン


女官:

「殿下。朱雀陛下ならびにN参事官がお見えになりました。 控室にてお待ちです」


K子様・M子様: 「!!」


二人は顔を見合わせ、居住まいを正した


K子様:

「お迎えに来てくれたのね」


M子様:

「行きましょう、私たちの『未来』の元へ」


二人のプリンセスは、覚悟を決めた表情でドアへと向かった

それは、日本の皇室という鳥籠から飛び立ち、広い世界へ羽ばたくための第一歩だった

話の進展が遅くて恐縮です

次はp.admin達とK子様M子様達がそれぞれ楽園島と日本に帰国し、それぞれの「戦い」が待っている状況になります

今回はただのチートパワーによる軍事介入ではなく、並行的に公的、私的戦いが始まる展開と思われます

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