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D-DAY+169 2027年6月上旬 楽園島・イギリス国交締結式典 その3 首脳会談と、彼女達の思い

#### PM 14:00 デンマークからのSOSと「民主主義という名の侵略」


公式ランチョンが終わり、各国首脳がp.adminとの面会を求める「外交的修羅場」が始まりました

場所は、バッキンガム宮殿内でも特に格式高い「1844ルーム」

p.admin、N君、T大使、そして案内役のSADA大使とLee先生が待機しています


p.adminは水を一口飲みながらN君に問いかけた


p.admin:

「……さて、トップバッターは誰だ? どうせフランスのMa大統領だろう? 『なぜイギリスだけ医療4台なんだ!』ってクレーム対応の準備はできてるぞ」


N君はSADA大使やLee先生が作成した手元のリストを見て回答した


N君:

「いえ、陛下。予想外ですが……デンマークです。外務大臣と、国防省の駐在武官が面会を強く希望しています。かなり切羽詰まった様子で」


p.admin:

「デンマーク? ……グリーンランドか」


* 氷上の「買収工作」


入室してきたデンマーク外務大臣と駐在武官は、挨拶もそこそこに、悲痛な表情でp.adminに懇願しました


デンマーク外務大臣:

「朱雀陛下! ……どうか、デンマークをお守りください! このままでは、我が国は『平和裏』に領土を奪われます!」


事情を聞くと、その内容は現代の「ハイブリッド戦」の極致とも言えるものでした アメリカのトランプ大統領(物語中)は、p.adminの介入により、ロシアの弱体化や中国の民主化により北極圏の軍事的脅威が薄れたにも関わらず、相変わらずグリーンランドの領有に執着していました

そこにあるのは戦略的合理性よりも、「アメリカを偉大にするために、巨大な島を買収した大統領」という歴史的実績への渇望です


駐在武官:

「米軍による直接的な武力侵攻の兆候はありません。彼らはもっと陰湿です。グリーンランドの集落ごとに、住民一人当たり100万ドル(約1.5億円)という莫大な現金提供を条件に、アメリカへの帰属を支持させようとしています」


p.admin:

「100万ドル……札束で顔を叩くとはこのことか」


デンマーク外務大臣:

「ええ。そして、法的拘束力のない『住民投票ごっこ』を集落単位で開催させ、賛成多数という既成事実を作ろうとしています。我々の懸念は、その結果を『住民の総意』とし、ノード(Thule)米軍基地から『民主主義の保護』を大義名分に部隊を進駐させ、実効支配を強行することです」


p.adminは腕を組み、難しい顔をしました

楽園島の介入ポリシーは「武力による侵略の阻止」や「独裁政権による住民迫害からの解放」です

しかし、形式上とはいえ「住民の投票」を盾に取られた場合、介入は「民意の弾圧」と映るリスクがあります


p.admin:

「……そもそも、一部の住民が金で賛成したからといって、その土地の主権や他人の国籍まで他国に売り渡せるというのは、論理的におかしい話ですね。アメリカに行きたい人だけが移住すればいいし、家が財産だと言うなら売却して出ていけばいい」


デンマーク外務大臣:

「仰る通りです! しかし、米軍が『住民保護』の名目で村を囲んでしまえば、我々には手出しができません。それは侵略と紙一重の危機なのです」


ここで、N君が静かに口を開きました


N君:

「陛下。これは非常に厄介な『グレーゾーン事態』です。もし米軍が、住民投票の結果を盾に『平和維持活動』として進駐した場合、我々がそれを攻撃すれば、楽園島が先に戦端を開いたことになりかねません。しかし、放置すれば『金と偽の投票で国境線が変わる』という悪しき前例を世界に残します」


p.admin:

「ああ。民主主義のバグを突いたハッキングだな……だが、我々がもつ技術なら『物理的』に拒否権を行使できる」


* 「シールド発動リング」の供与


暫く考え込んだ後、p.adminは顔を上げました


p.admin:

「分かりました……とりあえず、デンマーク政府とのホットラインを設置しましょう。いざという時、アメリカの通信妨害を無効化するために、異星文明製の量子通信端末をいくつかお貸しします」


デンマーク外務大臣:

「あ、ありがとうございます……!」


p.admin:

「それと、もう一つ。以前、我が国が中東で女性保護のために『避難リング』を配った件はご存知ですね? あれの『拠点防衛強化版』を提供します」


p.adminは空中にホログラムを投影し、新しいデバイスの仕様を説明しました


p.admin:

「これは半径1km、つまり集落一つを丸ごとドローンのシールドで覆うためのビーコン(発動リング)です。これを、貴国が信頼できる現地の村長や、駐在する軍・警察官に持たせてください」


機能:ボタン一つで、上空待機中のドローンが対象エリアに不可視の障壁を展開

効果:米軍車両や兵士の物理的な侵入を完全に遮断する

論理:「シールド」は攻撃兵器ではない。しかし、米軍がこれを突破しようと発砲すれば、その瞬間に彼らは「侵略者」となり、楽園島の介入対象となる


p.admin:

「とりあえず100個あれば足りますか? これで『物理的』に米軍が入って来られない状況を作れば、買収工作も無意味になるでしょう」


* 信頼と未来への種蒔き


駐在武官は震える手でその提案の重大さを受け止め、深く頷きました。


駐在武官:

「……完璧な抑止力です。我々が望んでいたのは、まさにそのような『盾』でした」


p.admin:

「特注品なので少し時間がかかりますが、今日中にはなんとかします。貴国が帰国する前に受け取れるよう手配しましょう……N君、詳細な受け渡しと運用マニュアルのレクチャーを頼む」


N君:

「承知いたしました。本件はSADA大使ではなく、私が直接担当します」


SADA大使は一瞬反応しましたが、軍事レベルの技術供与において自分がまだ蚊帳の外であることを悟り、Lee先生の視線もあって黙って頷きました


デンマークの一行が、何度も頭を下げながら退室していきました


ドアが閉まると、p.admin椅子に背を預けて嘆いた


p.admin:

「イギリス王室の次は、デンマーク王室とも付き合いが始まるのか? 気が重いな」


N君:

「仕方ありませんよ……すべては、朱雀陛下ご自身が蒔いた種ですからね。さあ、次はフランス大統領です。お覚悟を」


p.adminは苦笑いを浮かべ、次の「クレーム対応」に向けて居住まいを正しました


※補足情報


・避難リング(選択的にシールド発動用のビーコン):イスラム女性配布VER


リングにあるボタンを押すと、自分と自分が許した親族が半径2メートルのシールドに保護される仕組み

リング自身はシールド生成能力はないが、周辺に待機したドローンがボタン反応を検知しリングを装着している人を中心にシールドを展開する

リングはいわばビーコンやリモコン的な存在である


・シールド発動リング(シールド発動用のビーコン):デンマーク政府用VER


リングにあるボタンを押すと、発動者が所在地の村や集落の中心から、最大半径1kmのシールドを展開

もし集落の範囲は半径1km円を超えた場合は、複数の異星ドローンの共同で複数のシールドを展開させる

リングはいわばビーコンやリモコン的な存在であるが、発動する・解除権限は一部のケースに除いて所持者(生体認証)が決められる

リングには量子通信による音声通信機能も搭載


#### PM 15:00 フランスの焦燥と共和制の守護者


デンマークとの会談を終え、p.adminは深く息を吐きながら座り込んでしまった

しかし、N君が差し出した次のリストは、休息を許してくれません


N君:

「陛下、休憩はありませんよ。次は『本命』、フランスのMa大統領ご一行です」


p.admin:

「……ああ。一番文句を言いたそうな人たちだな」


部屋には、次期駐仏大使となるMei子と、その実習指導担当であるウクライナ大使のOka先生も同席しています

フランス一行の到着を待つ間、p.adminは少し気になっていたことをMei子に尋ねました


* 夫という名の「足枷」


p.admin:

「Mei子、今回の式典参観だけど……ご主人の様子は大丈夫かい? 確か、今日はつくばで待機させていると聞いたけど」


Mei子は一瞬、苦い表情を浮かべ、小さく溜息をつきました


Mei子:

「……お気遣いありがとうございます。ですが、連れてくれば『外交上のリスク』になると判断しました」


彼女の脳裏には、夫の顔が浮かんでいました。大使就任の頃から顕著になった彼の態度は、妻の出世に対する「嫉妬」と、その妻の威光を利用しようとする「野心」が入り混じった歪なものでした

もし今日、彼をこの場に連れてきていれば、各国の要人に無作法に名刺を配り歩き、Mei子の、ひいては楽園島の品位を損なう振る舞いをしたことは想像に難くありません


Mei子:

「夫は『なぜ俺を紹介しないんだ』と激昂していましたが……今回は私にとって初めての正式な外交公務です。私情や家族のエゴで、陛下の顔に泥を塗るわけにはいきませんから」


Oka先生は優しく頷いてMei子をフォローした


Oka先生:

「賢明な判断だよ、Mei子くん。公私の別を厳しくつけられるのも、大使としての重要な資質だ」


* 「一番乗り」を逃したフランスの不満


ドアが開き、フランスのMa大統領と外務大臣が入室しました

お互いに握手した後に、Ma大統領は開口一番、流暢な英語で不満を漏らしました


Ma大統領:

「朱雀陛下……率直に申し上げますが、我々は嫉妬していますよ。本来なら、貴国と最初に国交を結ぶのは、自由と博愛の国フランスであるべきだった。なぜイギリスなのですか?」


すかさずN君が割って入り、丁寧に、しかし毅然と説明しました


N君:

「大統領閣下。今回の順序は政治的な優劣ではありません。チャールズ国王陛下のご病気治療、および英国内の難病児救済という『人道上の緊急性』を最優先した結果です。人権を重んじるフランスならば、この判断をご理解いただけると確信しております」


「人権」という言葉を出され、Ma大統領は矛を収めざるを得ませんでしたが、隣の外務大臣が食い下がりました


フランス外務大臣:

「ええ、その人道支援についてです。英国での治療例が報道されて以来、我が国の保健省には市民からの問い合わせが殺到しています。『なぜイギリスの子供は助かって、フランスの子供は待たなければならないのか』と……陛下、我々も医療ベイの早期設置を希望します」


* Mei子大使への特命


p.adminは(やはり来たか……フランスにも4台の医療ベイは避けられないか…)と思案しました

ただし、英国や日本には信頼できる「王室医師・侍医」がいますが、フランスにはそのシステムがありません

誰に「命の選別権トリアージ」を持たせるか、これは重大な問題です


p.adminは視線をMei子に移しました


p.admin:

「……分かりました。ですが、フランスには私の知る医師がいません。そこでMei子、君に最初の任務を与えます」


Mei子:

「はい、何でしょうか」


p.admin:

「国交締結の事務手続きは後回しでいい。君は先にフランスへ行き、君の目で『本当に信頼できる医師たち』と『公正に医療を行える病院』を探してきてほしい。医療ベイの操作権限を与えても良いと思える医師が見つかり次第、直ちに医療ベイを設置します」


Mei子:

「私が……医師の選定を、ですか?」


p.admin:

「ああ。性別は問わない。重要なのは、善良で、個人的な野心がなく、大局的な視野を持っていることだ……君の旦那さんのようなタイプは避ける、と言えば、私の求めている人物像が分かるね?」


Mei子は頷きました


Mei子:

「……はい。痛いほどよく理解できます。必ず、陛下のお心に適う人物を見つけ出します」


ここで、p.adminとMei子間の会話を聞いたMa大統領が切り出した


Ma大統領:

「話は決まりだ。ではMei子大使、明日にでも私の専用機(Cotam Unité)に乗ってパリへ来てくれたまえ。大使館の候補地選定も、病院の視察も、大統領府が全面協力する」


Ma大統領の提案に対して、p.adminはMei子大使がつくばにいる家族(子供と夫)に心配して問いかけた


p.admin:

「Mei子、ご家族は大丈夫か? 急な話になるが」


Mei子は夫から離れて仕事に集中できる、と内心で安堵しつつ、決心をついたように口を開いた


Mei子:

「はい!大丈夫です! ……こういう急務があることも想定して準備してきましたから」


p.admin:

「頼もしいな。大使館が決まったら屋上の座標を送ってくれ。すぐにワープゲートを設置して、行き来できるようにするから」


* 共和制への疑念


実務的な話が終わると、Ma大統領は表情を引き締め、少し声を潜めて新たな議題を切り出しました


Ma大統領:

「朱雀陛下……単刀直入にお聞きしたい。最近の英国王室への接近、そして日本の皇室との親密さ。陛下は、『王政復古』を推進するご意向がおありでしょうか?」


p.adminは不慣れな言葉である「王政復古(Restoration of the monarchy)」を聞いて、少し躊躇しました


p.admin:

「王政復古?……いいえ、全くありません。私と楽園島のポリシーは、『自由と人権』が保護される限り、各国の政治体制を尊重することです。内政干渉はしません」


N君もすぐさまに主君の説明に補足した


N君:

「大統領閣下。我々が付き合っているのは『国家のリーダー』であって、『王冠』ではありません。たまたま友人が王族だった、というだけのことです」


Ma大統領は少し安堵した様子でしたが、まだ懸念を拭い切れないようです


Ma大統領:

「実は……国内の一部で、陛下が『王権の守護者』であるかのような噂が立ち、かつての王家であるオルレアン家の支持者たちが活気づいているのです。もしかしたら、彼らが陛下に接触を図るかもしれません。その時は是非、フランス共和国の立場をご理解いただきたい」


p.admin:

「なるほど、私が『王様仲間』を増やそうとしていると思われたわけですか……ご安心ください。接触自体は、正当な名目があれば拒絶しませんが、貴国の政治体制を変えるような約束や支援は、絶対にしないことをお約束します」


その明確な言質を得て、Ma大統領はようやく満足げな笑みを浮かべました


最後に、フランス外務大臣がスケジュール帳を開きました


フランス外務大臣:

「では、我が国との国交締結式典は二週間後ということでよろしいでしょうか?」


外務大臣の提案を聞いたN君は即座に反応しました


N君:

「いえ、日程については後日調整させてください。Mei子大使からの報告を待って決定します」


フランス外務大臣:

「……承知しました。それと、以前打診していた『使用済み核燃料の除去』の件ですが…」


p.admin:

「ああ、それなら妻のさや……彼女が経済産業総括官の立場から見積もりが出ています。核施設1ヶ所につき5億ユーロ(約800億円)。量は問いませんが、施設単位での契約となります」


Ma大統領苦笑いながら、その「値段」に認めた


Ma大統領:

「5億ユーロ……高いが、数万年の保管コストとリスクを考えれば安いものか……契約しましょう」


* 会談終了:p.adminの溜息


1時間強に及ぶ濃密な会談を終え、フランス一行が退室していきました

ドアが閉まった瞬間、p.adminはテーブルに突っ伏しました


p.admin:

「……疲れた。なんでどいつもこいつも、一筋縄じゃいかないんだ。王政復古なんて知るかよ……」


N君:

「お疲れ様です。でも、Mei子さんを先に送り込んだのは英断でしたね。彼女なら、自分の家庭の事情も含めて、本当に『野心のない』医師を見極められるでしょう」


Oka先生:

「ああ。彼女にとっても、夫から離れて実力を発揮する良い機会になる……さて陛下、次はどの国ですかな?」


p.admin:

「……もう帰りたい」


バッキンガム宮殿の午後は、まだ終わりそうにありません


#### PM 15:00 - PM 18:00 王妃たちの奮闘と、舞台裏のシンデレラ


男性陣が外交という名の戦場に身を投じている頃、宮殿の奥深くにあるゲストルームでは、もう一つの「女たちの戦い」が静かに、しかし激しく繰り広げられていました 楽園島から帯同したデザイナーとアシスタントたちが、三人の妃(W子、R子、S子)のヘアメイクに全力を注いでいます


その傍らには、カミラ皇后陛下の配慮で配置された3人の専属使用人(A、B、C)が控えていました

その中の一人、凛とした佇まいの使用人Cを見たS子さやが、鏡越しに声をかけました


S子:

「あら、あなたは……Cさんね? 先日は夫のダンス練習に付き合ってくれて、本当にありがとう。おかげで昨日の練習では、私の足を踏む回数が劇的に減っていたわ」


使用人Cは優雅に膝を折って畏く返事した


使用人C:

「勿体ないお言葉でございます、さや妃殿下。朱雀陛下は非常に勘が良く、私の指導など不要なほどでした」


S子はW子とR子に向き直り、悪戯っぽく紹介しました


S子:

「二人とも、彼女はただの使用人じゃないのよ。お祖父様の代までは子爵家だったそうよ、正真正銘の『良家のお嬢様』なの。小さい頃から叩き込まれた礼儀作法は、私たちなんかよりずっと完璧なんだから」


W子かおり

「ええっ、子爵家!? すごい……どうりで立ち姿が綺麗なわけね」


使用人Cは頬を染めて、恥ずかしながら返事した


使用人C:

「いえ、そんな……祖父の代の古い話です。今はただの宮殿奉仕者ですので、妃殿下方のような高貴な方々の前では霞んでしまいますわ」


謙遜するCですが、その所作には隠しきれない品格と、英国美人特有の知的な美しさがありました。 R子リコは、ヘアメイクをされながら、鏡越しにCをじっと見つめました


R子(心の声):

(……綺麗。背も高いし、金髪も素敵。……旦那様は、練習とはいえ、この人と体を密着させて踊ったのよね……ダンスだから仕方ないけれど……ううん、ダメよリコ。嫉妬なんて醜いわ)


言葉には出しませんが、R子の視線がわずかに鋭くなったのを、S子は敏感に察知しました


S子(心の声):

(あーあ、リコちゃんが気にしてる……あの女たらしの旦那め。帰ったらお仕置きね)


* PM 16:00 ゼリーブレイク


ヘアメイクが大方完了した頃、使用人Aが銀のトレイを持って入室しました


使用人A:

「妃殿下方、晩餐会は20時開始と遅くなりますので、軽食をご用意いたしました。アールグレイと、宮殿厨房特製のショートブレッドでございます」


バターの芳醇な香りが漂い、W子が目を輝かせましたが、S子が即座に手で制しました


S子:

「待って。お気遣いは感謝するけれど、お茶もクッキーも下げてちょうだい」


W子:

「ええ〜っ!? さやちゃん、少しくらいいいじゃない!」


S子:

「ダメよ。紅茶の利尿作用を甘く見ないで。コルセットで締め上げたドレスを着て、晩餐会の最中にトイレに立てると思ってるの? ……私たちの『お茶会』はこれよ」


S子はバッグから、高カロリーの「エネルギーゼリー」を取り出し、二人に配りました


R子はゼリーを吸いながら苦笑い


R子:

「……バッキンガム宮殿で、ドレス姿でゼリーを吸うなんて、シュールすぎるわね……」


使用人たちは驚きましたが、S子のプロ意識(?)に無言で敬意を表しました


* PM 16:30 クリスタルの危機


「ゼリーブレイク」の後、いよいよデザイナーの自信作のイブニングドレスへの着替えが始まりました そして仕上げに、昨日銀座で購入した「クリスタル」のジュエリーが取り出されます。W子が身につけたのは、最新作の大ぶりなクリスタル・ネックレスでした


W子:

「わあ……! やっぱりキラキラしてて綺麗!」


しかし、その輝きを見た瞬間、使用人Cの表情が凍りつきました


使用人C:

(……まずい。これはクリスタルガラス……デザインは素晴らしいけれど、今夜の晩餐会には各国の王族や貴族が集まり、代々伝わる『本物の宝石』を身につけてくるわ。その中でこれを着けていれば、間違いなく『おもちゃ』だと嘲笑されてしまう……!)


Cは隣の使用人Bに目配せをしました。Bもまた、実家が宝石商に関係しており、事態の深刻さを察知しました 二人は王妃たちの着替えの手伝いをデザイナーに任せ、「飲み水を取り替えてまいります」と静かに退室しました


廊下に出た瞬間、二人は走り出しました


使用人C:

「急いで! 大典侍様へ報告しないと、妃殿下方が恥をかいてしまうわ!」


* PM 16:50 舞台裏のシンデレラ:皇后陛下の私室にて


大典侍の案内で、二人はカミラ皇后陛下の私室へと通されました

事情を聞いたカミラ皇后は、眉をひそめつつも、納得したように頷きました


カミラ皇后陛下:

「……なるほど。クリスマスガラスですか。悪気はないのでしょうけれど、ここの古狸(貴族)たちの格好の餌食になってしまいますね。よく知らせてくれました」


皇后は席を立ち、自身のジュエリーボックスを開けようとしました

その時、使用人Bが一歩前に出ました


使用人B:

「皇后陛下! ……恐れながら、もう一つお願いがございます!」


大典侍:

「控えなさいB! 御前ですよ!」


使用人Bは震えながらも顔を上げて、静かに口を開いた


使用人B:

「Cのことです! ……彼女は、先日朱雀陛下とのダンス練習においても、完璧なパートナーとして尽力しました。彼女は没落したとはいえ子爵家の血筋。ただ給仕として終わるにはあまりに不憫です……! どうか、彼女を晩餐会後の舞踏会に参加させていただけないでしょうか! きっと朱雀陛下のダンスのお相手として、お役に立ちます!」


使用人C:

「B、やめて……! 私なんて……!」


カミラ皇后は、必死なBと、赤面して俯くCを交互に見ました


カミラ皇后陛下:

「……Bよ。お前も知っているでしょう? 朱雀陛下には既に三人の愛すべき妻がおり、さらに日本のプリンセスK子殿下とも『極めて親密』なご様子……これ以上、火に油を注ぐような真似をさせるつもり?」


皇后の諭すような言葉に、Bは言葉に詰まりました

しかし、その目は「それでもCに夢を見させてあげたい」と訴えていました


沈黙が暫く立つと、カミラ皇后陛下はため息をついて、ふっと笑い出した


カミラ皇后陛下:

「……まあ、いいでしょう。晩餐会の席次は決まっていますから変更できませんが、C、貴女を晩餐会の給仕任務から外します」


使用人C:

「えっ……?」


カミラ皇后陛下:

「その間に着替えなさい。私の古いドレスで良ければ貸してあげます……食後の舞踏会への参加を許可します。陛下がお困りの時、貴女のリードで助けて差し上げなさい」


使用人B・C:

「「こ、皇后陛下……!!」」


二人は涙ぐみながら深く平伏しました


カミラ皇后陛下(独り言):

「……全く、朱雀という男は。私の可愛い孫娘(C王女)よりも先に、自国のスタッフまで虜にする気かしら……さて、ジュエリーを選ばないとね」


皇后は、かつて自分が貴族の宴会で使用していた、最高級のダイヤモンドとサファイアのセットを取り出しました


カミラ皇后陛下:

「これをW子妃たちへ届けなさい。『ガラスも素敵ですが、英国の夜にはこちらの“古いお守り”の方が、魔除けになりますわよ』と伝えてね」


こうして、王妃たちの「装備」は最強のものへとアップグレードされ、一人のシンデレラが密かに誕生しました


* PM 17:00 M子様とK子様の訪問と、カミラ皇后陛下の「守り」


使用人BとCがクリスタル問題の解決に奔走している頃、日本側の控室では、M子様とK子様がすでにイブニングドレスに着替えを済ませていました。 M子様は鏡の前で自身のジュエリーを確認しながら、ふと妹に声をかけました。


M子様:

「ねえ、K子……あちらの様子を見に行きましょうか」


K子様:

「え? 朱雀陛下と妃殿下方のところですか?」


M子様:

「ええ。朱雀陛下はともかく、かおり様たちは、こうした『古き良き欧州の魔窟』のような晩餐会は初めてでしょう? 何か困っているかもしれないわ」


K子様:

「……そうですね。お姉様の言う通りです。特に『服装』や『装飾』で足元を見られる場所ですから」


二人の内親王は、警護のSPを伴って廊下を歩き、W子たちのゲストルームを訪れました


* 煌めきの違和感と、日本皇室の限界


S子さやは使用人Aの知らせで二人の訪問を知ると、安堵の表情で迎え入れました


S子:

「M子内親王殿下、K子内親王殿下。ようこそお越しくださいました……ちょうど良かった、少し空気が煮詰まっていたところです」


ドアが開き、イブニングドレス姿のM子様とK子様が入室すると、その場の空気が一瞬で引き締まりました M子様は深みのあるミッドナイトブルー、K子様は淡い若草色のドレス。そしてその首元と耳元には、控えめながらも最高品質の真珠とダイヤモンドが品良く輝いています


M子様は微笑んで挨拶しました


M子様:

「ごきげんよう、かおり皇后陛下、リコ妃殿下、さや妃殿下。準備は順調かしら?」


W子かおり

「あ、M子様、K子様! ……うう、もう緊張で胃が痛いです……」


W子が立ち上がって挨拶をした瞬間、K子様の視線が彼女の首元に釘付けになりました

そこには、照明を受けて虹色に輝く大ぶりのネックレスがありました

デザインは洗練されていますが、その輝きは明らかに「ガラス(クリスタル)」特有の鋭く軽いものでした


K子様は小声でM子様に声を掛けました


K子様:

(……お姉様。あれはクリスタルです。とても綺麗ですが、バッキンガム宮殿の晩餐会には……)


M子様(小声で):

(ええ。『おもちゃ』扱いされてしまうわね。まずいわ)


K子様は瞬時に状況を判断しました

自分たちが持参したやネックレスは「宮内庁の備品(国有財産)」であり、他国の王妃に貸し出す権限はありません

しかし、私物の小物ならなんとかなります


K子様:

「あの……かおり皇后陛下。もしよろしければ、ですが……私と姉の予備のピアスをお使いになりませんか? とてもシンプルなダイヤモンドですが、どんなドレスにも合いますわ」


W子:

「えっ? いえいえ、そんな! K子様の大事なものをお借りするなんて悪いですよ。これは先日の銀座で買った新作なんです! キラキラしてて十分派手ですし…」


W子の無邪気な反応に、K子様は言葉に詰まりました

「それは安物に見えます」とは、口が裂けても言えません

S子が頭を抱え、助け舟を出そうとしたその時です


* 女王陛下の「武器庫」解放


ノックとともにドアが大きく開かれ、使用人BとCが、うやうやしくカートを押して入ってきました

そこには、黒いベルベットに鎮座した、圧倒的な存在感を放つジュエリーの数々が並んでいました


使用人C:

「失礼いたします。カミラ皇后陛下より、妃殿下方へお届け物でございます」


W子:

「えっ、皇后陛下から……?」


どよめく室内に、今度はカミラ皇后陛下ご本人が、大典侍を従えて静かに入室されました


カミラ皇后陛下:

「……お邪魔しますわね。あら、日本の内親王殿下方もご一緒でしたか。ちょうど良い、一緒に話に参加していただきましょう」


全員が最敬礼で迎える中、カミラ皇后はW子の前に立ち、そのクリスタルのネックレスを優しく見つめました


カミラ皇后陛下:

「かおり妃。そのクリスタル、とてもモダンで可愛らしいわ……でもね、今夜の晩餐会は『戦場』なのよ」


W子:

「せ、戦場……ですか?」


カミラ皇后陛下:

「ええ。ここに集まる古臭い貴族たちは、相手の身につけている石一つで、その国の品格や夫の甲斐性を値踏みします……朱雀陛下は私達家族の命の恩人。彼に『妻にガラス玉しか買えない男』という汚名を着せるわけにはいきません」


皇后はカートから、重厚な輝きを放つダイヤモンドとサファイアのセット(ネックレス、イヤリング)を指差しました

なお、ティアラだけは、W子達は日本王室からの「贈り物」で、相応の格式の物が揃っています(※D-DAY+138に参照)


カミラ皇后陛下:

「これは私が皇太子妃時代に使っていたものです。古いけれど、貴族たちの意地悪な視線を跳ね返す『魔除け(お守り)』にはなります……着けてくださるかしら?」


W子は、その言葉の重みと温かさに気づき、恐縮しながらも頷きました


W子:

「……はい。夫のお顔を立てるためにも、ありがたくお借りいたします」


S子とデザイナーたちは、心底ホッとして胸を撫で下ろしました


* 値段のない「歴史」


カミラ皇后の指揮の下、試着会が始まりました

W子には、最も格式高いダイヤモンドとサファイアのセット(皇后格)

R子とS子には、それぞれエメラルドとルビーをあしらった、繊細かつ豪奢なセットが選ばれました


R子リコが、震える手で使用人Cに首飾りを着けてもらっている時、ふと尋ねました


R子:

「あの……Cさん。これ、もし壊しちゃったらどうしよう……ちなみに、おいくらぐらいするものなんですか?」


使用人Cは、留め具を慎重に固定しながら、静かに微笑みました


使用人C:

「リコ妃殿下。こちらのジュエリーには、値段という概念はございません」


R子:

「えっ? タダってこと?」


使用人C:

「いいえ。『プライスレス』です……これは数代前の王室ゆかりの品で、オークションに出れば国家予算規模になるか、あるいは歴史的文化財として金額がつかない類のものでございます……ですので、お気になさらず、ただ優雅にお振る舞いくださいませ」


R子は使用人Cの話を聞いて、顔面蒼白のように呟いた


R子:

「……国家予算……」


R子は石になりましたが、鏡に映るその姿は、中世の深窓の令嬢そのものの気品を纏っていました

S子も自分の首に付けたルビーのネックレスを確認して感想を漏らした


S子:

「……ふふ。これなら、どこの国の王妃が来ても負けないわね。カミラ様、感謝します」


* PM 18:00 準備完了


カミラ皇后が満足げに退室された後、時計の針は午後6時を回っていました

三人の妃たちは、イブニングドレスドレスと、英国王室の至宝を身に纏い、完全な「戦闘態勢」に入りました

その様子を見届けたM子様とK子様も、ようやく肩の荷を下ろしました


K子様:

「……良かった。これで朱雀陛下も安心ですね」


M子様:

「ええ。カミラ皇后の『守り』は鉄壁だわ……さあK子、私たちも戻りましょう。日本の皇族として、負けていられないわよ」


二人は互いに頷き合い、煌めくドレスの裾を翻して、日本側の控室へと戻っていきました

いよいよ、歴史的な夜の幕が上がります


おまたせしました。次は晩餐会の話になります

本当はもう少し書きたかったが、1万2000字超えましたので自粛しました

p.adminもW子もR子も元庶民なので、若干意識高い系?のS子に強引に引っ張られる面があります

なお、p.adminの妻たちのネックレスとピアスはなんとかなりましたが

p.adminの腕時計はCASEOのままなので、後ほど少し話題になってしまいそうです(笑)

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