D-DAY+169 2027年6月上旬 楽園島・イギリス国交締結式典 その1
国交締結式典当日の朝。楽園島の広場は、感動と感謝の熱気に包まれていました 約200名のイギリス人患者とその家族たちが、治療を終えて帰国の途に就こうとしています
彼らの多くは、現代医学では「不可逆」とされた心臓病、糖尿病や腎不全を抱えていましたが、医療ベイによる細胞修復を経て、見違えるような健康体を取り戻していました
バッキンガム宮殿側はまだ前日の夜8時。メディアの目が届かないこの時間は、彼らにとって最後の「楽園」でのひとときでした
英国人患者(老婦人):
「朱雀陛下……もう二度と歩けないと思っておりました。この足でロンドンの土を踏めるなんて、夢のようです。本当に、ありがとうございました……!」
老婦人は涙を流しながら、p.adminの手を両手で包み込みました
p.adminは優しく手を握り返して
p.admin:
「いえ、元気になられて何よりです。ロンドンに戻っても、どうかお体を大切に。……W子、R子、こちらの方にも挨拶を」
W子:
「ええ。……お大事になさってくださいね。ご家族との時間を楽しんで」
R子:
「お元気で。……ロンドンは雨が多いそうですから、足元にはお気をつけて」
200人と一人ひとり握手を交わす重労働でしたが、p.adminたちの表情には疲労よりも充実感が漂っていました
彼らがゲートをくぐり抜けるたび、p.adminは自分が背負った「責任」の重さと「希望」の明るさを同時に噛み締めていました
* PM 13:00:ダンスの「裏技」
午後1時。仮眠から目覚めたS子が合流し、行政ビルの会議室は臨時の「ロイヤル・フィッティングルーム」と化していました。 つくば経由で到着したデザイナーとアシスタント3名が、慌ただしく動き回っています
【p.adminのダンス・プランB】
p.admin:
「……なあ、S子。ダンスの件だが、昨日の特訓で限界を悟った。だから本番は『テクノロジー』で解決することにした」
S子:
「はあ? 何をするつもり?」
p.admin:
「異星ドローンの重力制御で俺の体を微細にアシストする。さらに、ARホログラム表示で床に『足運びのガイド』を表示させる。これで俺は、リズムゲームをプレイする感覚で完璧に踊れるはずだ」
S子:
「……まあ。それは随分と『チート』な解決策ですね。でも、陛下が転んで恥をかくよりは良いかもしれません」
W子:
「あら、それなら私もアシストしてほしいくらいよ……でもあなた、表情までドローンは作ってくれませんから、笑顔だけは忘れないでくださいね?」
* ドレスの最終調整
デザイナーたちは、夜会用のイブニングドレスの最終チェックを行いつつ、これから着用する「デイタイム・ドレス(昼の正装)」の着こなしを調整しています
話題が夜のアクセサリーに移った時、デザイナーの視線が、例の「スワロフスキー」のネックレスに留まりました
デザイナー(心の中で):
(……バッキンガム宮殿の晩餐会に、クリスタルガラス……デザインは素晴らしいけれど、王室の『本物の宝石』の中に混じって大丈夫かしら……でも、皇后陛下がこれほど気に入っていらっしゃるのに、水を差すわけにはいかないわね)
彼女は一瞬曇った表情を見せましたが、プロとして笑顔で「とてもよくお似合いです」と告げました
なお、楽園島側は日本皇室みたいに侍従・女官・着飾り係の専任者がいないため、デザイナーさんとアシスタント3人の4人は、それを代わって務める事となった
なお、今までp.adminとS子はバッキンガム宮殿と往来するのにSPは同伴してなかったが、今回はp.admin自身にSP2人、妻たち1人にSP1名という体制で、楽園島警備隊の50人から、5人を選んでSPとして同行する事となった
* S子の非情な指令
出発準備が進む中、S子が真剣な顔でテーブルに「ゼリー飲料」を並べました
S子:
「いい、みんな聞いて。ここからが重要よ。これから明日の式典が終わるまで、水分の摂取は最低限に控えて。途中の食事も、この高カロリーゼリーで済ませること」
W子:
「ええっ? さやちゃん、そこまでする必要があるの? のどが渇いちゃうわ」
S子:
「ダメよ、かおり。バッキンガム宮殿の式典や晩餐会は長丁場なの。途中で『お手洗いに行きたい』なんて言えないし、中座すれば外交的な失礼にあたるわ。ドレスの構造上、トイレに行くのも大仕事なんだから……これは『戦場』に行く兵士の心得よ!」
p.admin:
「……うう、耳が痛い。分かった、トイレ我慢大会の始まりだな」
* PM 18:00:いざ、つくばへワープ
楽園島の空が茜色に染まる午後6時(日本時間 正午)。 ついに、ロンドン行きの「先遣隊」が出発の時を迎えました
p.admin: 慣れないディレクターズスーツに身を包み、少し窮屈そうに襟元を触っています。
W子・R子・S子:
銀座で購入した上品なデイタイム・ドレスを着用。アクセサリーはパールや小ぶりなダイヤで控えめにまとめ、夜の華やかさとは対照的な「清楚な外交官」の装いです
随行員:
デザイナーチーム4名(臨時の侍従役)、OZAさん(土木技術総括)、そして楽園島の精鋭SP5名。
p.admin:
「よし、全員揃ったな。……まずはつくばの大使館へ。そこでK子様とM子様をお迎えする」
OZAさん(スーツ姿):
「へへっ、スコットランドへの架け橋、しっかりまとめてきますよ。このスーツも久しぶりだなぁ」
S子:
「OZAさん、向こうに着いたら飲みすぎないでくださいね。……さあ、ゲートオープン!」
一行14名は、広場中央のワープゲートが放つ光の中に吸い込まれました
* 日本・つくば楽園島大使館(PM 12:00)
転送の光が収まると、そこはT先生(駐日大使)が管理するつくば楽園島大使館の屋上のワープゲートエリアでした
さっきまでは夕日の中でしたが、一瞬にして日本の初夏で熱い炎天下の景色となりました
p.admin一行を待ち構えたT先生は、モーニング姿で敬礼した
T先生:
「朱雀陛下、妃殿下。お待ちしておりました。……赤坂からの車列は、後ほどでこちらに到着予定です」
p.admin:
「ありがとう、T先生……いよいよだな。」
p.adminは深呼吸をして、スーツの皺を伸ばしました。この後、日本の内親王たちと合流し、日本の夕方6時からロンドンの「午前9時」へと飛び込みます
#### 正午 赤坂御用地 M子様とK子様の出発
D-DAY+169、正午。初夏の陽光が降り注ぐ赤坂御用地 重厚な正門が開くと、パトカーの先導と共に、漆黒の輝きを放つ2台のセンチュリーが滑り出してきました
沿道に詰めかけた報道陣や市民から一斉にフラッシュと歓声が上がります
後部座席の窓が静かに開き、M子様とK子様が姿を見せました。
M子様:
鮮やかなロイヤルブルーのスーツに身を包み、自信に満ちた笑みで手を振られます。その姿は「外交の舞台」へ向かう高揚感を隠そうともしません
K子様:
淡いクリーム色の参内服に同色のトーク帽。少し緊張した面持ちですが、清楚で凛とした微笑みと共に、沿道の人々に丁寧に会釈を繰り返されます
その後ろの車両には、見送りのために同乗されたご両親、H親王殿下とH親王妃殿下の穏やかな姿がありました
* つくばへの道程
車列は首都高速から常磐道へ。随行員8名(侍従・女官・着飾り係・皇宮護衛官)を乗せた車両も続き、厳重な警備体制の下、一路つくばを目指します
午後1時。車列は「つくば楽園島大使館」の敷地内へ到着 玄関前には、モーニングコートを完璧に着こなしたT大使が整列し、最敬礼で一行を出迎えました
T大使:
「H親王殿下、妃殿下。ならびにM子内親王殿下、K子内親王殿下。ようこそお越しくださいました。楽園島を代表し、心より歓迎いたします」
応接室へ案内された後、H親王殿下からT大使へ「出発前に、朱雀陛下ご一家と私たち家族だけで話をしたい」という異例の申し出がありました
K子様はお父様の発言を聞いてを聞いて慌てて制止しようとした
K子様:
「お父様! これから大切な式典へ向かう陛下のお時間を取るなんて……!」
H親王殿下:
「K子、大事なことだ……大使、取り計らってくれるかね?」
T大使は一瞬難色を示しましたが、H親王の眼光に「親としての覚悟」を感じ取り、p.adminへ確認を取りました
別室でT大使の報告を聞いたp.adminは、独り言のように呟いた
p.admin:
「……ついに、この場面か。避けては通れない道だな」
S子:
「向こうは日本の皇室、しかも父親として来るのよ。覚悟を決めて」
* 「釘刺し」:父としての矜持
T大使が用意した防音完備の特別室
H親王一家4人と、p.admin一家4人が対面しました
互いに挨拶を交わした後、H親王殿下が口火を切りました
その口調は丁寧ですが、言葉の端々に皇族としての重みと、ある種の圧力が込められていました
H親王殿下:
「朱雀陛下……以前、K子がチャールズ国王への医療助言の仕事をお務めましたが、今回は違います。公的な外交の場で、娘二人を貴国と同行させる……これは即ち、私の娘たちを『朱雀陛下に預ける』ことと等しい」
p.admin:
「……はい」
H親王殿下:
「公的にも私的にも、娘たちへの配慮を最大限にしていただきたい……私が何を言わんとしているか、お分かりいただけますね?」
H親王殿下の発言は礼儀作法を則って丁寧だが、どこかに「目上の人」のような立場を匂わせるような仕草でした
p.adminは背筋を伸ばして、慎重に回答しました
p.admin:
「H親王殿下、親王妃殿下。私共をご信頼いただき、光栄に存じます。M子様とK子様は、私の責任において必ず無事に、そして名誉を守り抜いて、ご家族の元へ送り届けることを保証いたします」
H親王は深く頷きましたが、視線は鋭いままでした
* 「相応の名分」という名の最後通牒
続いてH親王は、さらに踏み込んだ発言をしました。
H親王殿下:
「朱雀陛下や妃殿下方は、王室としての経験はまだ浅い。ご自身の責務や、国や世界に対する責任の重さを、もっと深く理解していただきたい……王室間に縁が結ばれることは大変喜ばしいことだが、もし『然るべき時』が来たならば、娘には相応の名分があることだけは、父親として譲れません」
R子:
(……え…H親王殿下は 「結婚」という言葉は使っていないけれど……これは事実上の「娶るなら、正妻格、あるいはそれに準ずる地位以外は認めない」という宣言だよね…やはり旦那様とK子様とは…)
p.admin:
「……ぜ、善処いたします」
p.adminは冷や汗をかきながら、そう答えるのが精一杯でした
「これ以上妻を娶らない」という誓いと、目の前の皇族からの圧力と、板挟みの苦しみが彼を襲います
* S子の助太刀と、嵐の後の静寂
K子様が「お父様、もうやめてください!」と声を上げようとした時、H親王妃殿下がそっと娘の手を制しました
その重苦しい空気を破ったのは、S子でした
S子:
「H親王殿下。親としてのお気持ち、深く拝察いたします……ですがご安心ください。私の主人は不器用ですが、一度預かった『命と名誉』を軽んじるような男ではございません。その覚悟があるからこそ、私たちは彼を『王』として支えているのです……娘様たちの未来は、誰かに強いられるものではなく、彼女たち自身が選び取るべき輝きだと、私たちは信じております」
H親王はS子をじっと見つめた後、ふっと表情を緩めました
H親王殿下:
「……なるほど。朱雀陛下には、頼もしい『盾』がついているようだ……貴国がイギリスと国交を結ぶ晴れの日に、水を差すつもりはありません。ご健闘をお祈りしております」
親王殿下ご夫妻はそう言い残し、颯爽と退室されました
* 残された6人の気まずさ
ドアが閉まり、T大使が親王ご夫妻を見送りに行った後、部屋にはp.admin一家と、M子様・K子様の6人が残されました
K子様は消え入りそうな声でp.adminに謝った
K子様:
「……申し訳ありません、陛下。父があのようなことを……」
M子様もため息をついて続いた
M子様:
「全く、お父様ったら……でも陛下、あれが『皇室の父親』という生き物なのよ。少しは免疫がついたかしら?」
p.admin:
「……免疫どころか、寿命が縮んだよ……さあ、気を取り直そう。イギリスではもっと手強い相手が待っているんだ」
#### 日本時間 PM 18:00 ロンドン AM 9:00 出発
つくばの夕暮れが街を茜色に染める頃、楽園島大使館の屋上にあるワープゲート前には、歴史的な一行が集結していました 楽園島側15名(p.admin一家、T大使、OZAさん、デザイナー、SP)、そして日本皇室側10名(M子様、K子様、随行員)。総勢25名の大所帯です。
心地よい初夏の風が吹くつくばの空の下、p.adminはスーツの襟を正し、全員を見渡しました
p.admin:
「それでは、出発いたします。皆様、心の準備はよろしいでしょうか?」
M子様は不敵な笑みを、K子様は緊張の中にも決意を秘めた瞳で頷かれました
p.adminは深く息を吸い、世界を変えるコマンドを口にしました
p.admin:
「システム命令! ワープゲート転送エリア内の全人員を、バッキンガム宮殿中庭・指定座標へ転送せよ!」
視界が純白の光に包まれ、つくばの夕日は一瞬にして消え去りました
* ロンドン AM 09:00 バッキンガム宮殿 中庭
一瞬の浮遊感の後、冷たく澄んだロンドンの朝の空気が肌を打ちました バッキンガム宮殿の中庭。そこには既に、昨日S子が手配した座標通りに、歴史的な瞬間を待ち構える無数のカメラの砲列がありました
パシャシャシャシャシャシャッ!!
光が収束し、一行の姿が現れた瞬間、鼓膜をつんざくようなシャッター音とフラッシュの嵐が巻き起こりました
中央: 朱雀椿(p.admin)とドレスを纏った三妃(W子、R子、S子)
右翼: 日本の伝統と気品を背負ったM子様とK子様
後衛: 屈強なSPと、モーニング姿の外交団
EBC記者(生中継):
「信じられません! 日本の内親王殿下方が、朱雀王家と共に『光の門』から現れました! これは日英、そして楽園島の結束を示す、今世紀最大の映像です!」
K子様は一瞬その熱狂に怯みましたが、隣のp.adminが堂々と手を振る姿を見て、すぐに皇族としてのロイヤルスマイルを取り戻し、優雅に手を振り返しました
* AM 09:15:国王の執務室と「黄金のパスポート」
宮殿内に足を踏み入れると、喧騒は嘘のように遮断されました。 ここで一行は分岐します。日本皇室一行は東棟の貴賓室へ、楽園島一行は西棟の特別控室へ
そこではN君、SADA大使、Lee先生、そしてOka先生たちが緊張した面持ちで出迎えました
一息つく間もなく、王室大典侍(Lord Chamberlain)がp.adminの元へ歩み寄りました
大典侍:
「朱雀陛下、ならびに三名の妃殿下。チャールズ国王陛下がお待ちです。執務室へご案内いたします」
通されたのは、歴史の重みを感じさせる国王の私的執務室 そこには、昨日の治療ですっかり血色の良くなったチャールズ国王が、満面の笑みで立っていました
チャールズ国王陛下:
「ようこそ、朱雀殿。そして美しき妃たちよ。昨日の治療のおかげで、私は即位以来この数年の中で最高の気分だ」
挨拶もそこそこに、大典侍が黒塗りの盆に載せた「二つの箱」を捧げ持ちました
大典侍:
「陛下のご意向により、朱雀陛下とS子と共に、かおり皇后陛下(W子)、ならびにリコ妃殿下(R子)へ、『英国名誉国民パスポート』を発行いたします」
W子とR子は隣室の撮影ブースへ案内され、わずか10数分後、完成したパスポートが手渡されました
それは通常のパスポートとは異なり、表紙と裏面が「純金」で加工された、ずっしりと重い特別なものでした
W子:
「こ、これは……本物の金ですか? すごく重い……」
R子:
「こんな高価なものを……パスポートとして使って良いのでしょうか?」
* 「Extended Royal Family」の称号
チャールズ国王は、困惑する二人を見て優しく語りかけました
チャールズ国王陛下:
「そのパスポートは、君たちに英国民としての義務を課すものではない。君たちの主人(p.admin)が、万が一の時に君たちを守れるようにと願って用意した『鍵』だ。世界中どこにいても、英国政府は君たちを自国民として全力で保護する」
続いて、同席していた英外務大臣が、羊皮紙に記された「勅令」を読み上げました
英外務大臣:
「英国王室はここに、朱雀家を『Extended Royal Family(王室準構成員)』として遇することを宣言する。爵位は付与しないが、貴族院における最上位の礼遇を保証する。また、ロンドン市内のベルグレイヴィア地区にある邸宅、およびスコットランド・ハイランド地方の荘園を、朱雀家の『永久領地』として寄進する」
p.admin:
「……領地、ですか? そんな過分なものを……」
チャールズ国王陛下:
「受け取ってくれ、友よ。これは『土地』ではない『居場所』だ。もし君たちが世界に疲れた時、いつでも帰ってこられる家だと思ってくれ」
* 式典へのカウントダウン
黄金のパスポートを胸に抱いたW子とR子の心中は複雑でした。それは最高級の特権であると同時に、自分たちがもはや「ただの一般人」には戻れないことを示す、重い鎖のようにも感じられました
W子:
「……ありがとうございます、チャールズ国王陛下。この重み、生涯忘れません」
R子:
「私たちの第二の故郷として、大切にいたします」
S子は、そんな二人とp.adminの背中を、頼もしさと一抹の寂しさが入り混じった表情で見つめていました
大典侍:
「さあ、皆様。式典開始まであと1時間です。最終準備のため、控室へお戻りください」
執務室を出た4人は、N君たちが待つ控室へと戻りました
廊下を歩きながら、先ほどの光景を思い出し感慨深いように考えました
p.admin(独白):
「黄金のパスポートに、スコットランドの領地か……また背負うものが増えたな。……だが、今は目の前のミッション、式典と晩餐会とダンスだ」
運命の国交締結式典、開演まであと60分となった
おまたせしました
次回の投稿は、仕事の関係で時間は少し開くと思いますので、来週末には執筆の時間を取れるように頑張ります




