D-DAY+168 2027年6月上旬 S子の戦い
* 楽園島 AM 7:00
朝日が昇る楽園島。R子の監視のもとに、バッキンガム宮殿から送ってくる滞在患者の食材パレットが次々とワープゲートから運び込まれる中、S子は凛とした表情で旅装を整えていました
S子:
「明日が式典本番だから、今日のうちにすべて終わらせるわよ。国王陛下たちの治療と、医療ベイ3台の増設……。終わったら明日の朝一度戻るから、それから皆で正装して出発しましょう」
p.admin:
「ああ、わかった。……下準備の重労働をS子一人に任せてしまって、本当にすまない。ロンドンにはLee先生もいるはずだ。SADA先生(大使)の件も含めて、よろしく頼むよ」
S子:
「ふふ、旦那様は今日一日、しっかりダンスの練習をしておくことね! 日本側との最終調整はT先生がやってくれるけど、何かあったらあなたが責任者として対応しなさいよ。……じゃあ、行ってきます!」
R子:
「S子、お気をつけて……私たちの分まで、陛下たちによろしくお伝えくださいね」
S子は短く頷くと、光り輝くゲートの向こうへと消えていきました
* ロンドン D-DAY+167 PM 18:00:宮殿の裏舞台
バッキンガム宮殿の中庭。資材搬入の喧騒の中から現れたS子を、王室の大典侍が恭しく迎えました
大典侍:
「お待ちしておりました、さや妃殿下。……こちらへ、N参事官とL医師がお待ちです」
応接室へ向かうと、そこには疲れも見せずに執務をこなすN君と、イギリス王室医療チームを率いるL医師が待機していました
L医師:
「妃殿下、医療ベイの追加、心より感謝いたします。現在ある1台は、既に十数人の難病児を救っています。我々はN参事官の助言に従い、対象者を事前に公表せず、ご家族にも土壇場まで伏せる『サイレント・ケア』を徹底しております。おかげで混乱もなく、希望の光だけが広がっておりますよ」
N君:
「陛下たちも、追加の3台があれば『子供たちの順番を奪わずに済む』と、非常に安堵しておられました……さあ、設置場所の確認をしましょう」
* PM 19:00 歴史の回廊を浮遊する医療ベイ
夜の帳が下り、宮殿内が静まり返る中、中庭の作業スタッフも居なくなった頃
人目を避けるためにS子は大典侍や使用人の案内で、最初にp.adminと一緒にワープしてきた例の「中庭の資材置き場」に行きました
ここで、S子はp.adminと「家族指輪」を通じたホログラム通信を繋ぎました
S子:
「旦那様、準備はいい? 私が指示したタイミングと座標に、医療ベイを1台ずつ転送して……いくわよ」
p.admin(通信越し):
「了解だ。いつでもどうぞ……転送開始!」
使用人は懐中電灯でS子と周りを照らしてもらいながら
暗い資材置き場に、眩い光と共に1台目の医療ベイが出現しました
S子はやや不慣れな指示を異星ドローンに命じながら、反重力フィールドで巨大な医療ベイを浮かせます
S子:
「そこ、右へ2インチ寄せて! 絨毯を傷つけないで……ああっ、そのドア、一度外さないと通らないわ!」
使用人たちが慌ただしく歴史的な重い扉を取り外し、豪華な家具を移動させる中、医療ベイが宙を滑るように進んでいきます
応接室(パブリック用): 新たに2台を追加。計3台体制となり、治療スピードは飛躍的に向上しました
特別室(ロイヤルプライベート用): 王族の居住区に近いエリアに1台を設置。これでチャールズ国王たちも、人目を気にせず治療を受けられます
* PM 21:00:独り、バッキンガムの夜に思う
設置作業を終えたS子は、N君から現状報告を受けました
N君:
「Lee先生は現在SADA大使の公邸に滞在されています。SADA先生の仕事ぶりを監督しつつ、息子のJay君の教育も見てくださっているようです。実に頼もしい『お目付け役』ですよ」
S子:
「ふふ、Lee先生らしいわね。……さて、本番に備えて、私も少し休ませてもらうわ」
国王陛下もカミラ皇后陛下もお休みになられたようで、チャールズ国王陛下やカミラ皇后陛下の若返り治療は、明日の朝で行われることを王室医療チームに共有しました
その後、使用人に案内されたのは、いつもはp.adminと一緒に泊まる豪華な客室。しかし今夜は、S子一人だけです
S子(独白):
「……広いベッドね。旦那様がいないと、少しだけ寂しいかしら」
窓の外、雨に濡れるロンドンの街並みを見つめながら、S子はふと、明後日(イギリス時間)の式典、そしてその後に控える「南部遊園地でのダブルデート」に思いを馳せました
S子:
「……あの意地なしの旦那様が、K子様に何を言ったのか……明日、その顔を見るのが楽しみだわ」
S子は小さな溜息をつくと、戦装束である、あの「スカーレットのドレス」が届くのを楽しみしながら、そっと灯りを消しました
* D-DAY+168 ロンドン UTC AM 7:00
ロンドンの朝霧が晴れきらぬ午前7時。バッキンガム宮殿のプライベート・ダイニングルームには、重厚な銀食器の触れ合う音と、香り高い紅茶の湯気が立ち込めていました 上座にはカミラ皇后陛下、その脇を固めるのは王室医療チームトップのL医師と外交官たち。そして対面には、楽園島を代表してS子と、ロンドン駐在のN参事官が着席しています
カミラ皇后陛下はティーカップを置き、静かに口を開く
カミラ皇后陛下:
「さや妃殿下。昨夜は遅くまで、3台もの医療ベイの設置作業……本当にありがとうございました。チャールズ(国王)も、これで自分の治療が子供たちの未来を奪わずに済むと、心の底から安堵しておりましたわ」
その言葉を聞いて、S子も優雅に微笑んで返事した
S子:
「勿体なきお言葉でございます。主人である朱雀も、英国王室の皆様と国民の皆様に、少しでも多くの『時間』をお贈りできればと願っております」
カミラ皇后陛下:
「ええ。そこで、私たちは内々に決めましたの。明日の国交締結式典にて、夫の口から正式に『楽園島からの贈り物(3台の追加設置)』を国民に公表いたします」
S子&N君:
「!」
カミラ皇后陛下:
「今朝のニュースで見ましたわ。日本の仙洞御所でも、たった一台の機械にすがるために、多くのご家族が涙を流していると……。胸が痛みます。……イギリスも日本も、すべての子供が救助されることを、私たちは願わなくてはなりません」
カミラ皇后が祈るように手を組むと、その場の全員が姿勢を正し、静かに声を合わせました
全員:
「……すべての子供が、救助されんことを(May all children be saved)。」
祈りの余韻の中、目の下にクマを作りながらも、瞳に希望の光を宿したL医師が発言しました
L医師: 「……さや妃殿下。医師として、一人の人間として、朱雀陛下に感謝いたします。従来の一台では、どうしても『助かる命』を選別せざるを得ませんでした。しかし、これでキャパシティは4倍……。もはや、トリアージという名の死刑宣告をせずに済みます。」
L医師の声は震えていました。S子は彼の真っ直ぐな視線を受け止め、p.adminの代弁者として力強く答えました。
S子: 「L先生、ありがとうございます。……私の主人は、口下手で不器用な男ですが、一つだけ譲れない信念がございます。それは、『生まれながらにして背負わされた理不尽な困難(難病)』によって、未来ある命が奪われるのを許せない、ということです。この医療ベイは、与えた試練に対する、彼なりの『抗議』なのです」
その言葉に、カミラ皇后は深く頷き、S子に対して「同志」を見るような温かい眼差しを向けました
* 皇后陛下の直感
食事が進み、話題は明日の式典のロジスティクスへと移りました
カミラ皇后陛下:
「そういえば……N参事官。明日の式典には、日本の皇室からM子様とK子様もご参列されると伺いましたけれど……まさか、飛行機ではなく?」
N君:
「はい、陛下。日本の内親王殿下方は、つくばの楽園島大使館より『ワープゲート』を使用し、朱雀陛下および三名の妃殿下と共に、宮殿内のワープゲートより直接ご到着される予定です」
カミラ皇后陛下:
「……!」
カミラ皇后の手が止まりました (……他国の王族である内親王が、楽園島の王家と「同じ門」をくぐる……それは、ただの同盟国以上の、極めて親密な「家族」のような振る舞い……K子様といえば、確かまだ独身でお若い……)
カミラ皇后は少しの間、何かを考え込むような表情を見せましたが、すぐに柔和な笑みに戻りました
カミラ皇后陛下(独白に近い声で):
「……そう。それは賑やかになりそうですわね。日本の『お姫様』たちにお会いできるのを、楽しみにしていますわ」
* 迫るメディア
朝食会がお開きになる直前、窓の外を気にした英国外交官がS子に忠告しました
英外交官:
「さや妃殿下。老婆心ながら申し上げます。宮殿のゲートの外には、既に世界中のメディアがキャンプを張っております。さらに明日は、式典取材のために数多くの記者が宮殿内に入り込みます……特に日本の週刊誌の記者は、手段を選ばないことで有名です。ご移動の際は、くれぐれもご注意ください」
S子: 「ええ、承知いたしました……もっとも、私達は『目立つこと』に関しては諦めのという共通認識がおりますゆえ…」
S子は軽くジョークを交えつつも、気を引き締めました。 朝食会が終わると、彼女は自室には戻らず、N君を一瞥して合図を送りました
S子:
「さて、感傷に浸る時間は終わり。……私はこれより特別室に新設した医療ベイの最終動作チェックを行います。この後の治療でエラーなんて出したら、楽園島の恥ですからね」
S子はドレスの裾を翻し、足早に廊下へと消えていきました。その背中は、夫を守り抜く「前線の指揮官」そのものでした
* AM 09:00 バッキンガム宮殿・王室特別室
バッキンガム宮殿の奥深く、一般の目に触れることのない王族専用の居住区画に近い一室 深紅のダマスク織の壁紙と、金箔を施したロココ調の家具が並ぶ重厚な空間に、異質な輝きを放つクリスタルでできた透明の「医療ベイ」が鎮座していました
昨日S子が搬入したこの装置は、王室専属のL医師と大典侍が見守る中、静かに駆動音を響かせています
始めにチャールズ国王陛下の治療を行い、1時間後、若返り治療が終了しました
チャールズ国王陛下:
「……おお。素晴らしい。膝の痛みが消え、肺が深く空気を吸い込めるようだ。S子妃、これは魔法以上の贈り物だよ」
国王陛下は1時間ほどの若返り治療を終え、杖を使わずに力強く立ち上がりました
その表情は即位当時の覇気を取り戻しています
S子:
「お役に立てて光栄です、陛下……では次は、カミラ皇后陛下、お願いいたします」
入れ替わりでカミラ皇后が医療ベイに横たわり、カバーが静かに閉じられました
ここからまた1時間の治療が始まります。
* AM 10:30 「母」としての王太子妃の追及
部屋の隅にあるソファには、午後の治療を待つ王太子妃とS子が座っていました
当初は和やかな世間話でしたが、カミラ皇后の治療が中盤に差し掛かった頃、王太子妃の声色がふと変わりました
王太子妃殿下:
「……ところで、さや妃殿下。今朝のタイムズ紙をご覧になりまして? 日本のK子内親王と、朱雀陛下に関する記事が出ておりましたわ。」
S子は王太子妃殿下から振られてきた話題に内心で警戒しつつも、回答しました
S子:
「ええ……拝見しました。メディアというのは、いつの世も物語を作るのが好きなようですね」
しかし、王太子妃殿下は探るような視線でさらに追及した
王太子妃殿下:
「ただの物語……でしょうか? K子様は先日、我が国の患者たちのために、身を粉にして尽力されました。その献身と高潔さは、私も深く尊敬しております。……そして、朱雀陛下のお傍に相応しい資質をお持ちだとも」
S子はティーカップを持つ手を止めました。王太子妃の指摘は鋭く、外交辞令の壁を突き崩しに来ています
S子:
「……K子様は気品高く、心優しい方です。そして私の大切な親友でもあります。彼女が主人の活動を支え、役に立っていることは事実ですが……それ以上のことは、私の一存では申し上げられません」
S子は「否定」も「肯定」もしないギリギリのラインで答えました
しかし、王太子妃は微笑みを崩さず、さらに一歩踏み込んできました
王太子妃殿下:
「ええ、分かりますわ……ただ、もし仮に、朱雀陛下が『4人目の妃』を迎える前例をお作りになるのであれば……私たち王室としても、未来の可能性を考えなくてはなりません」
S子:
「未来……ですか?」
王太子妃殿下:
「ええ。私の娘、Cは今12歳。聡明で、責任感の強い子です……あと6年もすれば、成人として立派に役割を果たせるようになります。もし、世界を救う『王』の隣に立つ機会が、国籍を問わず平等に開かれているのであれば……母として、娘にもそのチャンスがあって然るべきだと考えますの」
S子は冷や汗が背筋を伝うのを感じました
S子:
(この人……本気だわ。もしK子様が輿入れすれば、次はイギリス王室が『政略結婚』のカードを切ってくる。C王女を人質にしてでも、楽園島の血脈に入り込むつもりね……!)
S子が返答に窮し、部屋の空気が張り詰めたその時、医療ベイから完了のアラームが鳴りました。プシュウ、と音を立ててカバーが開き、肌の艶を取り戻したカミラ皇后が体を起こしました
カミラ皇后陛下:
「……ふう。素晴らしい気分だわ。まるで20年前に戻ったよう」
S子は救われた思いで話題をカミラ皇后陛下に変えました
S子:
「皇后陛下! お加減はいかがですか?」
カミラ皇后陛下も即座に二人の空気を感じ取り、王太子妃を見て宥めた
カミラ皇后陛下:
「キャサリン、あなたも気が早いわよ。Cはまだ子供、それに朱雀陛下は『これ以上妻を娶らない』と公言されている堅物な方よ……さや妃殿下をあまり困らせないであげて」
カミラ皇后陛下の「宥め」に対して、王太子妃殿下く微笑んで答えた
王太子妃殿下:
「ふふ、失礼いたしました……ただ、可能性としてさや妃殿下に聞いておきたかったのです」
皇后と王太子妃は目配せをし、S子に礼を言って退室しました。S子はソファに深く沈み込み、大きく息を吐きました
S子(独り言):
「……恐るべし、英国王室。旦那様、あなたのモテ期は、国家レベルの戦略兵器になりつつあるわよ……」
#### AM 11:00 ヒースロー空港:K首相の爆弾発言
同時刻、ロンドン・ヒースロー空港 冷たい風が吹き荒れるタラップを、日本のK首相が降り立ちました。出迎えたのはイギリスのJ首相と外務大臣、そして夥しい数のフラッシュです
共同記者会見の場にて、英国EBCの記者が手を挙げました
英記者:
「総理! 今回の訪問団に、K子内親王殿下の姿が見えません。彼女は先日、我が国の重症患者救済のために素晴らしいリーダーシップを発揮されました。今回の歴史的式典には参加されないのですか?」
K首相は、計算された冷静な表情でマイクに向かいました
K首相:
「ご安心ください。M子内親王殿下、およびK子内親王殿下は、時期に日本を出発されております……ただ、我々とはルートが異なります」
英記者:
「ルート? 民間機で後ほど到着されると?」
K首相:
「いいえ。両殿下は、楽園島の朱雀陛下および三名の妃殿下と共に、わが国のつくばの『ワープゲート』を利用して、直接バッキンガム宮殿へ到着されると聞いております」
その瞬間、会場は静まり返り、次いで爆発的な騒ぎとなりました
記者A(英国):
「ワープゲート!? ということは、日本のプリンセスは楽園島王家と『同伴』されているのか!?」
記者B(日本・週刊誌):
「総理! それは事実上の『家族扱い』ということですか!? 政府はK子様と朱雀陛下の関係を公認しているのですか!」
記者C:
「王室専用の移動手段を共有するなんて、外交儀礼の枠を超えている!」
K首相は内心で(これで外堀は埋まったな)とほくそ笑みつつ、「詳細は宮内庁にお尋ねください」とだけ言い残し、車に乗り込みました
このニュースは瞬く間に世界を駆け巡りました
『日本の内親王、楽園島王家と家族同然に?』
『深まる絆か、新たなロマンスか? ヒースローに現れなかったプリンセスの行方』
S子が恐れ、王太子妃が予見した通り、K子様のロンドン入りは、到着前から世界的なセンセーションとなっていたのです
#### 楽園島の経済戦略
* AM 11:00 戦略会議:空の価格とワープの価値
カミラ皇后たちが退室した後、S子は大典侍の案内で応接室へ移動しました
そこではN君、そして「お目付け役」のLee先生の監視下で借りてきた猫のように大人しくしているSADA先生(大使)が待機していました
S子:
「N君、Lee先生、ごきげんよう……あら、今日は随分と真面目な顔をしているのね、SADA先生」
SADA先生:
「あー、うん。Lee先生の監督……いや、助言のおかげで、外交業務に集中できているよ。N君が式典の指揮を執ってくれているから、私は実務的な『ワープゲート網』の調整を進めている」
SADA先生の報告によると、イギリスの主導で、英連邦とのネットワーク構築は順調でした
オーストラリア: シドニー近郊に1ヶ所
カナダ: 東部と西部に各1ヶ所
運賃設定: 人員は航空機と同等。貨物は船便と航空便の中間価格。収益は英政府と楽園島で折半
つまり、英連邦間の流通が多いほど、楽園島も潤う仕組みになっている
N君:
「ここまでは順調です。問題は、駐英日本大使から打診されている『ロンドン⇔つくば』間の英在住日本人専用ワープ便です。ウクライナの時は人道支援として片道1万円という破格設定にしましたが……」
S子:
「今回は『平時』の運用よ。安易な安売りはJALやANAといった既存航空会社の利益を損なうし、何より楽園島のブランド価値を下げるわ」
SADA先生:
「向こうは『在英邦人への恩恵』としてリーズナブルな価格を求めている。だが、移動時間ゼロのメリットを考えれば、航空機より高くても文句は言われないはずだが……」
S子:
「いいえ。ここは『東京⇔ロンドン』の乗り継ぎ1回ありの格安航空券、その平均相場を基準にしましょう。片道5万円。これなら駐在員のご家族も気軽に帰国できるし、航空会社との棲み分けもできる。そして楽園島の収益も確保できるラインよ」
N君:
「妥当な落とし所ですね。では、その金額で日本大使へ回答します」
S子の即断即決に、SADA先生は「さすが、財布の紐を握る女神様だ」と感心して頷きました
* PM 12:00 英王室不在のランチタイム
正午。王室メンバーは参加せず、大典侍の案内で、楽園島側の4人だけのためのランチスペースが用意されました
S子は食事のナプキンを広げながらニヤリと発言した
S子:
「……ふふ。これ、きっとカミラ皇后陛下のご配慮ね」
SADA先生:
「配慮? 日々の激務を労って、我々だけでリラックスできるように、ということかい?」
S子:
「いいえ。『前回、子供を使って私との昼食会をすっぽかした無礼な大使を、私の食卓に同席させるのは気まずいでしょう?』という、高度な皮肉と配慮よ」
SADA先生はギクリとして萎縮した
SADA先生:
「うっ……そ、それは……返す言葉もない」
Lee先生:
「SADAさん、こから地道に努力して信頼を挽回しましょう」
S子の意地悪な指摘に、SADA先生は小さくなりながらスプーンを動かしました
しかし、気心の知れた4人での食事は、明日の本番を前にした貴重な休息となりました
* PM 14:00 王太子妃の治療
午後2時。S子は再び特別室へ向かい、王太子妃の全身回復治療を開始しました 午前中の「娘の将来」を巡る会話の余韻が残っていましたが、S子はそれを一切顔に出さず、王太子妃もまた、完璧なロイヤルスマイルで横たわりました
S子:
「では、開始いたします。少し眠くなるかもしれません」
王太子妃殿下:
「ええ、お任せしますわ。……よろしくお願いします」
治療は滞りなく終了し、王太子妃は若々しい活力を取り戻しました
そこには、母としての野心と、恩恵を受ける者としての感謝が、奇妙なバランスで共存していました
* PM 16:00 現場の医師たちと「静かなる希望」
夕方、S子は、3台の医療ベイがフル稼働している応接室を視察しました
現場を指揮する王室医療チームのC先生とD先生が駆け寄ります
C先生:
「さや妃殿下! 医療ベイの処理能力への把握はもう大方できています。当初の待機リスト40名は順調に消化し、現在は次のリストを作成中です」
S子:
「混乱はありませんか? 家族からの問い合わせが殺到しているのでは?」
D先生: 「ええ。ですが、N参事官のアドバイス通り『完全非公表・当日連絡』を徹底しています。選ばれなかったご家族も、抗議するよりは『いつか自分たちにも順番が回ってくる』という静かな希望を持って待ってくれています……かつての絶望とは大違いです」
S子は、規則正しく動く医療ベイと、その横で喜ぶ親子の姿を見て、深く頷きました
S子:
「先生方、ありがとうございます。……この光景こそが、夫が一番見たかったものです」
* ロンドン PM 18:00 / 楽園島 D-DAY+169 AM 07:00 帰還
ロンドンの空が夕闇に包まれる頃、S子は大典侍や使用人の案内で宮殿の中庭へ出ました
そこは楽園島へ送る物資の搬入作業で活気づいていました
S子:
「さて、ロンドンの下準備は完了した……次は、本番の衣装に着替えないとね」
S子はドレスの裾を翻し、ワープゲートの光の中へ
一瞬の浮遊感の後、彼女が降り立ったのは、朝日が眩しいの楽園島でした
おまたせしました
著者としても早く式典当日の描写をしたいが、下準備の話もやはり必要と感じました
ちなみに、p.adminは12歳のC王女には一切興味はないと思いますのでご安心ください
次は、式典当日の描写に力を入れます




