D-DAY+167 2027年6月上旬 感情(良心)に任せた代償
イギリスとの国交締結式典を2日後に控えた朝。p.adminは、昨夜の日本での「大盤振る舞い」と、K子様による「デート白紙化」の件をN君に説明しました
ホログラム越しに映るN君の表情は、いつになく険しいものでした
* 外交的致命傷
画面越しのN君は溜息をつき、眼鏡を拭きながら話した
N君:
「……陛下。あなたは、とんでもない爆弾を私に投げつけましたね。日本に医療ベイを3台追加、計4台ですか……これは外交実務者から言わせれば、『悪手中の悪手』です」
N君の言葉を聞いて、p.adminはバツが悪そうに反応した
p.admin:
「……分かっている。だが、W子にあそこまで言われては、首を縦に振るしかなかったんだ。K子様の必死な覚悟も、無視できるものではなかった」
N君:
「感情論は横に置いてください。問題は、イギリス王室がこの事実を知った時の反応です『なぜ日本だけが優遇されるのか?』これは単なる嫉妬ではなく、『楽園島は日本に偏った不公平な中立国である』というレッテルを貼られる原因になります。最悪の場合、式典直前でイギリス側から条件の再交渉を突きつけられるでしょう」
* 3台の追加設置案
p.admin:
「……やはり、バッキンガム宮殿にも3台追加すべきか? 黙っていればバレない、というわけにもいかないだろう?」
N君はこの考え方を即座に否定した
N君:
「黙秘は論外です。情報が漏れた時のダメージが大きすぎる……得策は一つ。『国交締結の祝答品』として、陛下自らが3台の追加設置を式典前に提案することです」
p.admin:
「ギフトとして?」
N君:
「ええ。日本への設置は『人道的緊急措置』という名目で事後報告し、イギリスへは『永続的な友好の証』として同数を贈る。これで表面上の公平性は保たれます。ワープゲートを使えば輸送コストはゼロですし、幸い、イギリス国民へのアピールとしても、式典当日に『今日から治療能力が4倍になる』と発表させるのは、極めて強力な演出になります」
* 「ダブルデート」の続行
話題がK子様からの「デート辞退」に移ると、N君の表情はさらに冷徹なものに変わりました
p.admin:
「それから……K子様が責任を感じて、M子様とのダブルデートの件を白紙にしたいと言ってきた。私もそれが妥当だと思うし、君もその方が助かるだろう?」
N君:
「……陛下、あなたは本当に、女性の心理も外交の力学も分かっていらっしゃらない。そのキャンセルは、認められません」
p.admin:
「なぜだ? 君だって、M子様に振り回されるのは御免だろう?」
N君:
「私個人の感情などどうでもいいのです。考えてもみてください。M子様は、自分の知略で掴み取った『陛下との接点』と『私との時間』を、妹の勝手な良心で潰されたのです。彼女のプライドは今、修復不可能なほど傷ついています。ここで無理に白紙にすれば、彼女は楽園島にとっての『予測不能な敵』に変わりますよ」
p.admin:
「デートがなくなった位で敵に……?」
N君:
「ええ。彼女のようなタイプは、無視されることを最も嫌います。デートという『公認の遊び』で繋ぎ止めておかなければ、彼女は別の手段……それこそ、イギリスのメディアや政界を使って陛下を揺さぶりにかかるでしょう。K子様の謝罪など、彼女にとっては火に油を注ぐようなものです。ここは陛下が『4人で行くのは、私の意志だ』と強弁して、予定通り遂行すべきです」
* 板挟みの継続
p.admin:
「……つまり、私はイギリスに3台のベイを献上し、さらに気まずい思いをしながらK子様のエスコートもしなければならないということか」
N君:
「それが、昨日陛下が『感情』で動いたことに対する外交的なコストです……大丈夫です。当日は私が完璧なタイムスケジュールを組み、M子様の関心を私に集中させます。陛下はK子様と『教育の続き』でもしていればいい」
p.admin:
「……君は、本当に冷徹だな」
N君:
「陛下が甘すぎるのです……では、イギリス王室への追加設置打診は、私の方から水面下で進めておきます。陛下は、奥方様たちに『仕事が増えた』と説明しておいてください」
#### 楽園島 PM 12:00 日本時間 AM 8:00 気まずさの連鎖
イギリス国交締結式典を目前に控え、楽園島の行政ビルの執務室では、世界を動かす「王」が、あまりにも個人的で情けない問題で頭を抱えていました
N君の最後通牒
ロンドンにいるN君のホログラムが、デスクの向こうで冷徹な光を放っています
N君(ホログラム通信):
「……いいですか、陛下。外交において『一度出したカードを引っ込める』のは敗北を意味します。M子様はあのデートを『楽園島とのパイプ構築』と意味しており。K子様の辞退をそのまま受け入れれば、M子様の面子を潰し、将来的な火種を残すことになる。今日中に、陛下ご自身の口から『予定通り遂行する』と伝えてください。これは『諫め』に近い助言です」
p.admin:
「分かってはいるんだけど……だが、昨日あんなに意地悪をして泣かせた相手に、自分から『やっぱりデートしよう』なんて……どの面下げて言えばいいんだ? 恥ずかしくて死にそうだ」
N君:
「陛下、あなたの羞恥心と楽園島の国益、どちらが重いか考えるまでもないでしょう。失礼します」
プツリ、と通信が切れました
p.adminは、ちょうど隣で医療データの整理をしていたS子に、縋るような視線を向けました
p.admin:
「S子……お願いだ、君からK子様に連絡を入れてくれないか? 『陛下も本当は楽しみにしているから、白紙なんて言わずに予定通りに出かけましょう』って、柔らかく伝えてくれれば……」
S子は作業の手を止め、氷のような視線で夫を射抜きました
S子:
「……はあ? あなた、今なんて言ったの?」
p.admin:
「いや、君ならK子様とも仲が良いし、角が立たないかと思って……」
S子: 「あのね、あなた。N君の理屈は筋が通っていると思うわよ。でもね……自分の妻に、別の女性へ向かって『どうか私の夫とデートしてください!』なんて頼ませる男が、この世のどこにいるの?」
p.admin:
「う……」
S子:
「この意地なし! 自分で蒔いた種でしょう。デートの続行には同意してあげるけど、連絡くらい自分でしなさい……これ以上情けないこと言うなら、ロンドンへ行く前に私があなたの口を縫い合わせるわよ?」
完全に逃げ場を失ったp.adminは、力なく項垂れるしかありませんでした
* T先生の説教:終わらない後始末
自分でする決意を固めたp.adminでしたが、重大な問題に気づきました。彼はK子様やM子様の個人の連絡先を知らなかったのです
彼は再びホログラムを起動し、つくばの大使館にいるT先生(大使)を呼び出しました
T先生はホログラムに出るなり直ぐ「説教モード」に入った
T先生:
「……朱雀陛下。開口一番に申し上げますが、昨日の今日で、こちらの事務方は死にかけていますよ。仙洞御所にいきなり4台、さらにはイギリスにも追加で3台!? 外交バランスと後始末の段取りを誰がやっていると思っているんですか!」
p.admin:
「……申し訳ない、T先生。本当に感謝している……ところで、折り入って相談なんだが、K子様か宮内庁大夫の緊急連絡先を教えてもらえないだろうか?」
T先生:
「……はあ? なぜ私にそんな私的なことを聞くんです。宮内庁とのホットラインは遊びじゃありませんよ」
p.admin:
「いや、実は……昨日キャンセルされかかった『4人での外出』を、やはり予定通り行うと伝えなきゃいけなくて……」
T先生は暫く沈黙のあと、深い溜息をついて口を開いた
T先生:
「……全く、陛下は。世界を救う力があっても、自分の身辺整理一つ満足にできないんですから……大夫に連絡してみます。ただし、これで貸しが一つ増えましたよ。帰国したら最高級のウィスキーを用意しておいてください」
* 姫様の電話番号
約20分後。p.adminの手元のスマホが震えました
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[件名] なし
[送信元] T大使
[本文]
大夫から許可を得ました
K子内親王殿下の個人端末の番号です。くれぐれも失礼のないように。 090-XXXX-XXXX
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p.adminは、表示された番号を見つめ、生唾を飲み込みました
p.admin:
「……やるしかない。ここで逃げたら、一生S子に笑われる……」
彼は震える指で、メッセージの作成画面を開きました
***
p.adminは行き成り電話する代わりに、まずはメッセージで連絡する事を決めた
悩みながらも、彼は事務口調のメールを作成しました
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[件名] 電話のご都合の伺い
[送信先] K子内親王殿下
[本文]
K子内親王殿下、楽園島の朱雀です、いつもお世話になっております。
M子様と4人でのお出かけの件について、相談したい事がございますのでご都合の宜しい時間を教えていただけますでしょうか?
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p.admin:
「これなら問題ないはずだ…よし、送信ボタンをポチっと…」
すると、すぐにK子様の返信が来て、丁寧の言葉を重ねたが「いつでもお電話ください」という趣旨の内容でした
* AM 08:30 赤坂御用地:宮内庁大夫からの「異例の打診」
昨夜の自責と、姉・M子様との衝突で、K子様は殆ど眠れないまま朝を迎えていました
重い瞼を擦りながら、朝の支度を整えていた時、内線電話が鳴りました。相手は、皇室の事務方トップである宮内庁大夫でした
大夫:
「……朝早くに恐縮でございます、K子内親王殿下。実は、つくばの楽園島大使館を通じて、朱雀陛下より『殿下の連絡先』を教示いただきたいとの要請がございました」
K子様:
「えっ……陛下が、直接私の番号を……?」
大夫:
「はい。本来であれば、大使館や当庁を通すべき公務上の連絡が通例ですが、陛下ご自身が『個人的な相談がある』と仰っているようで……殿下のご意思を尊重いたしますが、いかがいたしましょうか?」
K子様は心臓が跳ね上がるのを感じました。昨日のあのような冷徹な対応の後で、なぜ? 叱責の続きか、それとも――
K子様:
「……はい。陛下には、大変お世話になっておりますから。私の番号をお伝えしても構いません」
大夫の「承知いたしました」という言葉を聞いた後、K子様は自分のスマホを握りしめ、鏡の前で深く息を吐きました
* 楽園島 AM 12:50 日本 AM 08:50 メッセージと着信
p.admin(朱雀)が悩み抜いた末に送った、あの「ビジネスメール」のようなショートメッセージがK子様の元へ届きました
K子様はそれを見て、少しだけ安堵しました
(……朱雀陛下らしい、とても丁寧で……事務的な文面。きっと、昨日の出来事を踏まえて、正式な手続きとしてデートのキャンセルを承諾してくださるのね)
そう思い、彼女は「いつでもお電話ください」と返信しました
その数分後、スマホの画面に「090-XXXX-XXXX(p.adminの携帯番号)」の着信が表示されました
補足ですが、ここでは海外番号にならなかったのは、楽園島携帯4G/5Gネットワークは、つくば大使館⇔楽園島の量子通信を用いてADDIが島内に五つの通信局を開設した為、楽園島のモバイルネットワークは、日本国内の延長とシステム的に見なされる為であった
K子様は震える声で電話を出ました
K子様:
「……はい、K子でございます」
p.admin:
「あ、ええと……K子様。楽園島の朱雀です。朝早くに申し訳ありません。……ええと、お出かけの件、つまり例のダブルデートの件なのですが。やはり、イギリスとの国交締結の後に……約束通り、ご案内させていただこうかと思いまして」
K子様:
「……えっ? ですが、陛下。昨日は…M子姉様に不作法なお願いを取り下げていただいたし……何より、かおり皇后陛下や妃殿下方に、これ以上ご迷惑をおかけするわけには参りません。どうぞ、お気になさらないでください」
* 「キャラクター」を演じたp.adminの決断
p.adminは、受話器の向こうでN君の冷徹な顔を思い浮かべました
「M子様を敵に回すな」「外交的カードを捨てるな」そしてS子の「意地なし!」という罵声
彼は恥ずかしさを強引に捻り潰し、脳内の「恋愛シミュレーションゲームの主人公」のスイッチを入れました
p.admin:
「……いえ、M子様の立場を尊重することも、同盟国として大事なことです……それに、さらに言うと……」
ここで言葉が止まります。喉まで出かかった恥ずかしさを、彼は「これは演技だ、公務だ」と言い聞かせて一気に吐き出しました
p.admin:
「……さらに言うと、私自身も、K子様と……二人で、ゆっくりとお話しできる時間が欲しい、と思っているのです。 ですから、どうか断らないでいただけませんか?」
K子様:
「…………!」
…沈黙
K子様はあまりの衝撃に、返事を忘れて立ち尽くしました。あの冷徹な「王」だった彼が、そんな情熱的(に見える)な言葉を投げかけてくるとは
しばらくしたら、K子様は頬を染めながら返事した
K子様:
「……左様でございますか。……陛下はそこまで仰ってくださるのなら……はい、喜んで、ご一緒させていただきます」
* 通話終了後のK子様の苦悩
電話が切れ、静まり返った自室で、K子様はスマホを胸に抱いたままベッドに座り込みました
K子様(独り言):
「……嬉しい。あのような言葉をいただけて、本当に……でも……」
喜びはすぐに、彼女の聡明な分析によって「複雑な思い」へと変わっていきました
K子様:
「……陛下のあのお声、少しだけ、無理をなさっているように聞こえました。あのようなことを仰る方ではないはず……。やはり、N参事官がM子姉様のプライドを配慮して、陛下に助言なさった結果ではございませんか? ……それとも、かおり皇后陛下が、私を不憫に思って、陛下に命じられたのかしら……?」
昨日、自分が「陛下に踊らされている」と姉に指摘されたことが、澱のように心に溜まっています
K子様:
「……それでも。たとえ誰かの助言だったとしても……陛下は私に『時間が欲しい』と仰ってくださいました……それが嘘か、それとも……わずかばかりの真心が含まれているのか……この目で見極めなければなりませんわね」
p.adminからの震えるような着信を終えたK子様は、火照る頬を両手で押え、乱れた呼吸を整えました
そして、まだ気まずさの残る隣室のドアを再びノックしました。
* 氷解しない報告
ドアが開くと、そこには少し意外そうな顔をしたM子様が立っていました
K子様:
「……姉様。昨日は、一方的にお断りすると言って申し訳ありませんでした……先ほど、朱雀陛下から直接お電話をいただきまして。やはり、イギリスから戻った後、予定通り4人でお出かけすることになりました」
M子様は目を細め、不敵な笑みを浮かべて口を開いた
M子様:
「あら……あんなに頑なだったあなたが、もう前言撤回? 陛下も随分と情熱的な説得をなさったのね」
K子様:
「……陛下は、その、私とゆっくりお話ししたい時間がほしいとも仰ってくださいました。ですから、私もそのお気持ちに応えたいと……」
* 見透かされた「演技」の影
K子様の言葉を聞いた瞬間、M子様は楽しそうにクスクスと笑い声を上げました
その笑いには、妹の純真さを憐れむような、冷徹な響きが混じっています
M子様:
「ふふっ……流石はNさん、私が見込んだ男だわ。期待以上の仕事をしてくれるじゃない」
K子様:
「……えっ? どういう意味ですか、姉様」
M子様:
「分からない? 陛下があなたに直接電話をして、そんな甘い言葉を吐くように仕向けたのは、間違いなくロンドンにいるNさんよ。彼は陛下の『弱点』が奥様方であることを利用し、同時にあなたの『弱点』が陛下であることを知り尽くしている……彼は、陛下に恥をかかせてでも、この『外交の場』を維持することを選んだのね。実に見事な手際だわ」
K子様は唇を噛み締めて反論した
K子様:
「……姉様。何でもかんでも、裏があるように仰るのはおやめください。陛下は、あんなに……一生懸命なご様子だったのに……」
M子様:
「その『一生懸命』こそが、Nさんの書いた台本なのよ、K子。……まあいいわ。行き先はどこになったの? 陛下のことだから、バッキンガム宮殿のような場所は避けるでしょうけど」
* 次なる舞台:南武遊園地
K子様:
「……はい。陛下のご提案で、埼玉の『南武遊園地』に決まりました。遊園地と動物園が併設されている、とても賑やかな場所だそうです」
M子様は意外そうに眉を上げ
M子様:
「南武遊園地? そんな……国民の方々で溢れかえるような場所へ? ……ふふ、面白いじゃない。カピバラを眺めながら、Nさんがどんな交渉を仕掛けてくるのか、今から楽しみだわ」
K子様:
「……私は、純粋に陛下と過ごせる時間を大切にしたいだけです。失礼します」
K子様は姉のあまりに打算的な態度に、言葉にできない不満を感じながら部屋を後にしました
自室に戻ったK子様は、ドレッサーの前に座り、鏡の中の自分を見つめました
K子様(独白):
「……姉様の仰る通りかもしれません。陛下のお言葉は、どなたかの助言だったのかもしれない。……でも。もしそうだとしても、陛下は私のために、慣れない『演技』までしてくださった……その事実だけで、今は十分です」
彼女は、スマホに残る通話履歴をそっと指でなぞりました。 埼玉の遊園地。そこは、皇族としての義務も、外交の駆け引きも忘れて、ただの「一人の人間」として笑える場所であってほしい
別に…M子様を悪役令嬢として描写したい訳ではありませんが
物語の構成上、彼女はもっとポジティブで自ら動き出すタイプのキャラクターとして設定する必要がありますあから
いつかM子様の名誉を挽回する回は書きますのでM子様ファンの読者がいたらご容赦ください…
デートの話は一旦終わるので、次からはイギリス国交締結式典直前の準備や本番の話になります




