D-DAY+165 2027年6月上旬 W子の調停
* 楽園島時間 19:00 日本時間 15:00
楽園島の夜。p.adminは意を決して、今日起きた出来事のすべてを、20年連れ添った正妻・W子に打ち明けました
M子様からの強烈な「ダブルデート」の要求、そして断りきれなかった自分の不甲斐なさを
p.admin:
「……というわけなんだ。本当に、その場の空気を壊さないための、外交辞令のつもりだったんだけど……S子を怒らせてしまったし、君にも申し訳ないと思っている」
W子:
「……あなたらしいわね。昔から、強く頼まれるとNOと言えないところがある……でも、今回は相手が日本の内親王様で、しかもN君まで巻き込んでいる。あなたの『個性』が招いた、必然的なトラブルね」
W子の声は静かでしたが、その瞳には「正妻」としての覚悟が宿っていました
***
W子は、自室に引きこもっていたS子を呼び寄せました
p.adminは「余計なことは言わない」と約束させられ、ソファーの端で小さくなっています
S子:
「W子、聞いてください。この人、K子様のことを『好みだ』なんて私の前で言ったんですよ? しかも、私たちとの結婚を『納得の上の選択』だなんて……情緒も何もないわ!」
W子:
「S子、落ち着いて……彼の語彙力が絶望的なのは、今に始まったことじゃないわ。彼はね、『好き』という感情を理屈で説明しようとして自爆するタイプなの……でも、あの場でのデートの約束は、相手の熱量に押された結果。彼の『罪作りな性格』のせいであって、心変わりではないわ。今回だけは、私に免じて許してあげて?」
S子はW子の落ち着いた物腰に毒気を抜かれ、渋々ながらも頷きました。
***
一時間後。仕事終わりのR子が合流しました。事情を聞いたR子の表情は、瞬く間に暗く沈んでいきます
R子:
「……信じられません。私たちが必死に働いている間に、そんな約束をされていたなんて……旦那様は、私たちの気持ちをどう考えていらっしゃるの?」
W子: 「R子。悲しいけれど、彼はこれからもっとこういう立場に置かれるわ。世界中の人々が彼を求め、彼に媚びを売る。彼は本心で浮気をしたいわけではないの。ただ、他人の期待に応えようとするあまり、身近な私たちの心を置き去りにしてしまう……本当に、罪な人」
p.adminが何かを言おうと口を開きかけますが、W子が静かに手で制しました
W子:
「あなたは黙っていて。……R子、S子。今回は、この『4人での外出』を認めましょう。ただし、条件があるわ」
R子とS子が顔を上げます
W子:
「まず、N君を正式な『お目付け役』として機能させること。それから、私たち3人のうち、誰か一人が必ず同行すること……そして、あなた」
W子は、今まで見せたことのない鋭い視線で夫を見つめました
W子:
「あなたがK子様やM子様に示すべきは『慈悲』であって『愛情』ではない。それを一線でも踏み越えたら……この家に、あなたの居場所はなくなると覚悟して。いいわね?」
p.admin:
「……はい。肝に銘じます」
R子:
「……W子がそう仰るなら。でも、準備は私たちが徹底的に行います。……旦那様に隙を見せさせないように」
正妻・W子の見事な手綱さばきによって、家庭崩壊の危機は回避されました
しかし、p.adminに課せられた「ダブルデート」という名のミッションは、これまで以上に重い監視の下で行われることになったのです
#### 期待外れの「味方」
楽園島時間の午後10時。p.admin(朱雀 椿)は、ロンドンに滞在中のN参事官をホログラム通信で呼び出しました
妻たちとの「審判」を終え、ボロボロの精神状態で助けを求めた相手でしたが、返ってきたのは予想だにしない「冷徹な戦略論」でした
p.admin:
「……というわけで、M子様から君を指名してのダブルデートを要求されたんだ。悪いが、当日は私の潔白を証明するためにも、君が盾になってくれ。いいな?」
N君は少し考え込んだ後、淡々と返事した
N君:
「……なるほど。もしM子様が本当に私を気に入ってくださったのであれば、それは外交上、これ以上ないほど強力なカードになり得ますね。朱雀陛下、もしあなたが妃殿下たちの説得に成功し、K子様を『迎える』ことができれば、楽園島の影響力は盤石なものになりますが……」
p.admin:
「な……君、何を言っているんだ!? 私はそんなこと望んでいないし、妻たちの思いを考えれば……!」
N君:
「ええ、心情的な問題は理解しております。しかし、私は参事官です。必要であれば、私自身が政略結婚の駒になることに躊躇はありません……陛下、これは『チャンス』ですよ」
助けを求めた「親友」が、自分の感情を殺して「戦略の駒」としての自分を提示してきたことに、p.adminは激しいショックを受けました
* 「ワープゲート」という名のチェックメイト
追い打ちをかけるように、p.adminは宮内庁大夫からの「政府専用機ではなく、ワープゲートでの同行」という依頼についても伝えました。N君の瞳が、さらに鋭く光ります
N君:
「……陛下、それは決定的な失策かもしれませんよ」
p.admin:
「どういうことだ? 14時間の移動を短縮してあげようという、単なる善意じゃないか」
N君:
「陛下はそれをM子様の個人的な謀略だと仰いましたが……案外、これは日本政府が裏で糸を引いているかもしれません。想像してください。バッキンガム宮殿の式典当日、メディアの目の前で、朱雀陛下と奥方様、そしてK子様とM子様が『同じワープゲート』から揃って出現する姿を」
p.admin:
「…………!」
N君:
「世界中のメディアはこう書き立てるでしょう。『楽園島王家と日本皇室、かつてない親密な同盟』と。ゲートの共有は、文字通り『身内』であることの証明です。そうなれば、陛下とK子様の噂は憶測の域を超え、公式の墨付きを得た『事実』として一人歩きを始めます。日本政府は、一歩も動かずに陛下を外堀から埋め立てたわけです」
* 板挟みの王
p.adminは、その場に崩れ落ちそうになりました。 自分が「良かれ」と思って出した手が、すべて自分を追い詰める罠として機能していた
日本政府: 皇室の権威を楽園島に結びつけ、不可分な関係を構築しようとしている
K子様・M子様: 純真な憧れと大胆な行動力で、p.adminの懐に飛び込んできた
妻たち: W子を中心に「監視」と「自制」を求め、一線の越境も許さない
N君: 感情を切り離し、すべてを政治的メリットとして処理しようとしている
p.adminは頭を抱えてた
p.admin:
「……徹底的に、やられたな。善意で動いたつもりが、逃げ場のない檻の中だ……」
N君:
「陛下、嘆いている暇はありません。4日後には式典です。せめて当日のエスコートの手順だけでも、こちらで完璧にシミュレーションしておきます……すべては楽園島のために」
ホログラムが消えた後、p.adminは静まり返った部屋で、自分の「罪作りな性格」と、背負ってしまった「王」としての重責に、ただただ溜息をつくしかありませんでした
#### W子とR子の対話
p.adminが隣室でN君とのホログラム通信に頭を抱えている頃、リビングではW子とR子が、冷めかけたハーブティーを前に静かに向き合っていました。先ほどまでの厳しい追及の空気は消え、そこには長年連れ添った姉妹のような、穏やかで少し切ない時間が流れていました
R子:
「……W子。さっきは、あんなに取り乱してしまって、ごめんなさい。……でも、私……本当は怖いんです」
W子:
「怖い……? K子様が、彼の隣に並ぶことが、かしら?」
R子:
「……はい。イギリス患者達がやってきた最初の二日間、私は一番近くでK子様を見ていました。彼女は決して形だけの公務をされていたわけではありません。慣れない異星の医療機器を必死に学び、侍医の方々と共に、深夜まで患者さんのご家族を励ましておられた……その姿は、私が見ても胸を打たれるほどに気高く、そして『善良で優しい姫様』でした」
R子はティーカップを見つめたまま、声を震わせました
R子:
「……旦那様は、いつもご自分のことを『ただのデブのおっさんだ』なんて仰いますけれど、今のあの方は、世界中の希望を背負った『王』そのものです。……そんな旦那様の隣に相応しいのは、私のような普通の女ではなく、K子様のような、気品も血筋も尊い方なのではないか……そう思うと、胸が締め付けられるんです。」
R子の瞳には、嫉妬というよりも、自分自身への不甲斐なさと、夫への深い敬愛から来る「自己犠牲的な不安」が浮かんでいました
W子:
「R子、こちらを向いて」
W子は優しく、しかし有無を言わせぬ響きでR子を呼びました。R子が顔を上げると、W子は20年前と変わらぬ、どこか達観したような微笑みを浮かべていました
W子:
「あなたの言う通り、K子様は素晴らしい方。彼(p.admin)にはもったいないくらいだわ。……でもね、彼は完璧な『王』として生きることに、本当はひどく疲れているのよ」
R子:
「……旦那様が、ですか?」
W子:
「ええ。世界を救い、歴史を塗り替え、重い責任を背負う毎日……そんな彼が、楽園島に戻ってきて求めているのは、同じように完璧な『お妃様』ではないわ。一緒にハンバーガーを食べて笑い、疲れたら泥のように眠り、時にはくだらないことで言い合える……そんな『人間としての安らぎ』なの」
W子はR子の手をそっと握りました
W子:
「K子様がどれほど気高くても、あなたに代わることはできないわ。戦場で彼の背中を守り、共に汗を流した医師であるあなたの強さを、彼は何よりも信頼している。……Azureは不器用で、罪作りな男だけど、彼が最後に帰る場所は、私たちで作ったこの場所なのよ」
R子:
「……W子……」
W子:
「だから、自分を卑下しないで。あなたが胸を張って『妻』として笑っていれば、K子様の入る隙なんてないわ……それでもあの人がフラフラしたら、その時は二人で、思いっきりお仕置きしましょうね?」
W子の悪戯っぽい言葉に、R子の頬からようやく力が抜け、小さな笑みがこぼれました
R子:
「……はい。私も……もっと強くならなきゃいけませんね。……ありがとうございます、かおりさん。W子、安心して眠れそうです」
今回は短めです
次の話の下書きがあるが、一緒にすると読みづらいので別々で投稿します




