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サークル勧誘は始まったばかり

 今月二話目投稿達成!他作品も頑張ります( ≧∀≦)

 なぜここにいるの……。私何も聞いてない!ここにいるわけがない人が目の前にいる。このことに驚きを隠せない。私は今明らかに拍子抜けした顔をしているだろう。


「この度第一学年クラスAの担任を承りました、王室教師、エカテリーナ・ジョンソンと申します。卒業まで皆様がこのクラスであれば、最後までお付き合いすることになるでしょう。よろしくお願い致しますわ」


 キランと反射するモノクルがすごく目につくのは私だけ?恐る恐る周りを見ると、呆けている人が何人もいる。ほとんどを貴族が占めるこのクラスではここにエカテリーナ先生がいるという異様な光景に唖然としているのだろう。

 エカテリーナ先生は王室教師の中でも優秀と有名な人。王立学園のクラスAの担任は毎年王室教師から出るんだけど、エカテリーナ先生は何度も勧誘が来ていたにも関わらず、全て断っていたとか。そんなエカテリーナ先生が目の前にいるということが信じられない。

 そんな私たちを見て満足そうな笑みを浮かべているエカテリーナ先生は確信犯だと思う。ずるいなぁ。教えてくれても良かったのに。


「本日は私との対面、そして教室の場所の確認がここでのやるべき事です。この二つは終わりましたが、次の事柄までに少々時間がありますわね。自己紹介は明日のオリエンテーションとなっていますから……、皆様が気にしていらっしゃる、なぜ私がここにいるのかをご説明いたしましょうか」


 その瞬間、皆の体がピクリと反応した。多分私もなっているんだろうな。クスクスと口に手を当てて笑っているエカテリーナ先生の目がちょっと怖い。もしこれが公爵邸だったら冷ややかな笑みで感情を隠すように言われるだろうな。


「私がなぜここにいるのか。それは至極簡単な理由でございますわ。……私の気になる生徒がいますの。その生徒の成長を、是非ともこの目で見てみたいと思いまして。ですから立候補させていただきましたわ」


 途端、クラスがざわめきだす。私は感情を押し殺した笑みを浮かべてエカテリーナ先生を見据えた。エカテリーナ先生は私が見ていることを分かっていながら意味深げに微笑む。

 今、すごく現実逃避をしたいと思うのは悪いことだろうか。エカテリーナ先生の言っている『生徒』とは十中八九私のこと。エカテリーナ先生はことあるごとに、私の成長を一番側で見ていたいと言っていたから。自惚れではない。事実だもん。でもこれで合点がいったことがある。義父様に担任は誰かと尋ねたときに答えを渋られた。教えてくれたのは、立候補者が出たということだけ。こういうことだったのね。もう少し義父様を問い詰めておくべきだったかな。


「それでは、時間ですわ。今からサークル勧誘が始まりますが、くれぐれも自己防衛を怠らないように気を付けてくださいませ。救護室は講堂横の階段を一階分降りた所にあります。何かあったらそこに駆け込むように。質問はございますか?」


 え?待って。今からサークル勧誘だよね?今から戦争でも始まるの?


「エ、ジョンソン先生。お言葉の意味を理解しかねます。宜しければ何が起こるのかご説明いただいても?」


 非常に嫌な予感がして挙手した。私の方を見たエカテリーナ先生は待ってましたと言わんばかりに今日の最上級の笑みを見せる。嫌な予感が増大していき、冷めたいものが背中を伝った。これ、危険。頭の中で警報がなり響く。


「イリアナさん?説明してもよろしいのですが、実際に体感してみた方がより理解できると思いますわ。それでは時間ですので、私は避難します。ご武運を!」


 そう言い捨てるとエカテリーナ先生はさっさと詠唱して転移した。その瞬間、鐘の音が大きく鳴った。それを合図に教室の窓や扉、開くものが全て一斉に開く。そしてそこには今までいなかったはずの上級生。外で杖に乗って浮かんでいる人や騎獣に乗っている人、廊下には数えきれないほどの人がごった返している。

 

 考えている暇はなかった。私はすぐさま立ち上がり、リズのところまで移転して手を掴むと、学園内で最も魔力が集まっていないところまで移転した。その間、時間にして一秒。


「イル!一体何が?!」


 気が動転しているリズが掠れた声で尋ねた。私は予め手に持っていた魔導書を持ち上げてみせた。


「転移したの。ここは多分教官室近くの廊下だと思うよ。学園内で魔力持ちが少ないところを選んで転移してきたから安全、なはず。多分だけど」


 辺りを警戒しながら答えれば、リズはへなへなと座り込んでしまった。令嬢のお手本のようなリズとは思えない行動に心臓が跳ねた。もしかして転移慣れしていなかったのかな?!転移慣れしてなかったら酔うし、人によっては精神的なダメージを受けるってお父様が……。まさか?!


「リズ?!リズッ?!気持ち悪い?何か変な気分?ごめんね!何も言わずに強制的に来ちゃったから……」


 リズの顔を覗き込んで問えば、リズは壊れたように笑いだした。


「フ、フフフ……。フフフフ!ここまでとは思いもしなかった!お兄様から聞いていたのよ?でもここまでなんて!しかもイルが噂の人でしょ?」


 あ、壊れてはないみたい。目は死んでないから大丈夫。それより知っていたのなら教えてほしかったな。あれは生きた心地がしなかったからね。あと、噂とは一体……?私何もしてないよ……ね?


「取り敢えず大丈夫ね。立てる?」


 少々無理矢理になってしまうけど、いつ上級生たちが私たちに気付いて追いかけてくるか分からない。いつでも逃げられるように準備しておかなければ。

 私を支えにして立ち上がったリズは私に向き直った。


「ありがとう。それで、イルがあの噂の人でしょう?魔力量が尋常じゃないって噂の新入生」


 全くそんな噂知らないな……。ぱちくりと瞬きをするとリズは呆れたように笑った。


「その様子じゃ知らないようね。貴方、噂になっているのよ?あの第一王子にもする程の魔力量を持った生徒が今年入学するって。だから今年のサークル勧誘はその子目当てのサークルは、サークルの精鋭を全員使ってその子を手に入れようとしてるらしいのよ」


「怖っ。サークルの精鋭って何?そんなものあるの?私狙われてるの?もう入りたいところ決まってるんだけどなぁ」


 恐怖のあまり顔がひきつる。腕をさすると、思っていた以上に鳥肌が立っていた。


「それなら今すぐ参加届けを出しに行くべきよ。そうしなくてはずっと捜索は続くわ」


 リズがあまりにも真剣に言うものだから、本当にそうなりそうだと思えてきた。あ、考えたくない。ふと明後日の方向に目をやると、何かがこちらに向かってきているではないか!


「リズ、ちょっと魔法使うよ。光よ風よ、ここに集え。我が魔力を糧にして我が願いを叶えよ。何人にも悟られぬ加護を」


 魔導書を開いてそこに書いてあるものを詠唱する。柔らかな魔力の青い光が私の手から溢れだし、私とリズを包み込む。だんだんと色を失っていき、ついには透明のヴェールと化した。これでいい。これなら誰からも見られることも、音を聞かれることもない。気配も極限まで押さえられてるはずだし、魔力を察知されにくいはず。これを詠唱して使うのは初めてだからなかなか上手くいかないものだ。無詠唱、つまり私の場合()()()魔法を使えば気配も魔力も匂いも完璧に消せるんだけど……。詠唱はコントロールが難しいな。


「イル、これ何をしたの?」


「強いて言うなら透明人間になった、かな」


 目を瞬いているリズに答えると、リズはしげしげと自分の手を見つめた。そして私を見つめる。


「見えるわ」


「同じ術者によってかけられた人どうしは見えるよ。でも他の人からは見えない。ほら、ちょっと見てて」


 そう言って窓の外からこちらに向かってきている上級生の方を指差す。その上級生は私たちの目の前の窓をおもむろに開けて入ってきた。

 息を飲んだリズを見て私は思わず笑ってしまった。


「大丈夫。見つからないってば」


 私の言葉通りその上級生は辺りをキョロキョロと見渡して首を捻った。恐らく私たちを探しているんだと思う。


「おかしいな。誰かいると思ったのに」


 そうでしょう、そうでしょう。込み上げてくる笑みを口を押さえて我慢する。リズは驚いたようなワクワクしたような目で私を見ている。

 いつまでたっても上級生がここからいなくなってくれないので、近くの階段の方に石を生成させて音を立てる。すると思惑通りそちらへと向かって行ってくれた。


「ね?気づかれなかったでしょ?」


「ええ。すごいわね。私も早くここまでできるようになりたいわ。精進しなくてはね。まずはイルのサークル参加届けを出しに行きましょう。どこにするのかしら?」


「歴史研究サークルだよ」


 そえ答えれば、リズは淑女らしい素敵な笑みを浮かべてうなずいてくれた。私はこのリズの所作を見習わなくては。


「それでは行きましょうか」

 担任はエカテリーナ先生でした。エカテリーナ先生はどこまででもついてくるようです(笑)


 次話は歴史研究サークルと、他のサークル見学です。

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