王立学園入学式
明けましておめでとうございます、と言いたいのですがそれを言える期間から随分と時間が経っています……。申し訳ありません!しかも一ヶ月以上更新できず( ノД`)…
今年の目標は一ヶ月に二回以上更新です!ちゃんと達成できるよう努力いたします!今年もよろしくお願いいたします。
「もう行ってしまうのね。早すぎるわ……。もう少しゆっくりしていってもいいのではなくて?」
「奥様、それは不可能なことにございます。これ以上長居しましてはお嬢様が式に遅刻するということになってしまいますので」
私をぎゅっと抱き締めて別れを惜しむ義母様と、困ったように笑うトトリ。そしてトトリの横で同じく困ったように笑っているシェリーと、私たち四人から一歩離れ、私たちを静観している義父様。先程から続いているこのやり取りは一体何回目だろう。心地よい秋風がさらりと頬を撫でていく中、私は義母様の腕の中で苦笑いをすることしかできない。
「あと少しだけなら、いいでしょう?」
「駄目です」
駄々を捏ねる義母様をトトリが素敵な笑顔でニッコリバッサリ切り捨てる。即答ね…。それでも義母様は諦められないようで、私を抱き締める腕を緩くするところか、もっときつく抱き締めてきた。く……苦しい……!
「グロリア、リーナが苦しそうだ」
突如放たれた義父様の声で私が息苦しんでいることに気付き、義母様は慌てて私を解放した。
「……ぷはっ!義父様ありがとう存じます」
そして時間が無いことを重々承知しているので、このまま義父様と義母様に別れの挨拶をする。
「私、イリアナ・シックザントはシックザント公爵家の名に恥じぬよう、そして将来を担っていく一員として尽力して参ります」
そう将来の人間界と魔界を繋ぐ架け橋としての役割を担っていくために努力してきます、お父様……!
「リーナ、其方は既に充分と言って良いほどの努力をしてくれている。無理だけはしないように」
義父様のいつもはピクリとも動かない口角が僅かに上がっている!そして目がすごく慈愛に溢れている。この一年で何とか義父様の表情を読み取れるようになってきたけど、ここまで分かりやすいのは初めてかもしれないな。
「そうよ。身体を壊したりなんてしないようにね?」
義母様もニッコリと聖母のような笑みを称えている。でも私のところまで駆け出さないように、義父様にしっかりと腰を掴まれているのが何か残念。そしてその手があるところで地味に攻防をするのはやめた方がいいと思うの。義父様の手が小刻みに震えてるから……。
「はい。義父様、義母様。それでは行って参ります」
二人の攻防を見なかったことにして自分にできる最大限の美しさでカーテシーをし、トトリに連れられて馬車へと乗り込む。
「ええ、気を付けてリーナ」
「行ってらっしゃい、リーナ」
義父様と義母様、そして屋敷の人たちに見守られながら私たちの馬車はゆっくりと進み出した。
◇◈◆◈◇◈◆
さて、あの夜会から一ヶ月がたち、今日は王立学園の入学式。日付としては10の月10日。つい5日前に私は誕生日を迎えて晴れて13歳になったの!義父様と義母様は誕生会を開くべきか悩んでいたけど、5日後に王立学園の入学式及び進級式があるのに開くことはできないっていうことで、家族だけでお祝いしてくれた。あと、シワコアトル孤児院の皆にも会いに行ったら皆お祝いの言葉をくれたの。
やがて馬車の歩みが段々と遅くなってきて、王立学園への到着を告げられる。この日のために誂えてもらった深紅のドレスを優雅に見えるようにつまみ上げ、空いている方の手でトトリの差し出した手を掴み馬車から降りる。私を降ろした馬車はシェリーを乗せて寮の方へと去っていく。シェリーはあちらで部屋の準備をしてからることになっている。ここからは私の行いは全てが私自身だけでなく、シックザント公爵家への評価にもなるので気が抜けない。
辺りを見回すと厳かで年季の入った校舎が目に入る。まるで魔界の魔王城みたい。石造りの壁なんて蔦は張っていないものの少々色褪せていて雰囲気がいかにも魔王城だ。懐かしさに目を細めると後ろから声がかかった。
「あら?そこにいらっしゃるのはイリアナ様ではありませんこと?」
聞き覚えのある凛としたその声に振り返ると、そこにはやはりクラリス様がいた。柔らかなスミレ色のドレスに黒のチョーカーが映えている。そして複雑に編み込まれたキャラメル色が柔らかいドレスの色とよくマッチングしている。優しく微笑むその顔は、一ヶ月前よりも幼さが鳴りを潜め、可愛いと言うよりも美しいと言える。
「ええ。お久し振りですね、クラリス様。クラリス様も今いらしたのですか?」
私も微笑み返せばクラリス様はぱぁっとにこやかな笑顔になった。前言撤回かな?やっぱり可愛い。
「はい、そうですの。早速イリアナ様にお会いできて嬉しいですわ。」
クラリス様は駆け寄りぎみに歩いてきて、胸の前で手を組みながらそう言った。すると、クラリス様の後ろからついてきていた執事らしき人が苦笑しているのが見えた。もしかして今来たのではなく、私が来るのを待っていたのかもしれない。そう思うと申し訳ないと思う反面、嬉しさも込み上げてくる。
「私も会えて嬉しいです。そろそろ時間ですね。一緒に入ってくださいますか?」
「ええ!もちろん。ねぇイリアナ様、私、イリアナ様のことを何てお呼びしたらいいのでしょうか?イリアナ様にはリズと呼んでいただきたいのですわ。」
「そうですね……、イルとお呼びください。そうだ。話し方も、もっと楽に話しません?堅苦しいのはどうかと……。」
二人で入学式の会場へと向かいながらそんな会話を交わす。私としてはクラリス様、ううん、リズと、友達と話すのにこんなに畏まった話し方をするのは嫌。もっと楽に話したいと思う。でもリズは生粋のお嬢様だから駄目かな?
「はい、イル!私もこんな堅苦しい話し方は嫌なの。良かったわ。イルがそうやって言ってくれて。ふふっ!お友達って感じね?」
口元を押さえて淑やかに笑うリズは本当にお嬢様だなあ、と思った。私もできないことは無いけどここまで様になってはいないと思う。だから努力しなくちゃね。
話しながら進んでいると講堂に着いた。この学園の講堂は結構広い。学園の全校生徒だけでなく、先生方、催し毎にやってくる生徒の保護者たちまでが全員座ってもまだ席が余るくらい。どうしてこんなに広いのかと不思議に思ったけど、それはすぐに思い至った。魔人族の分。この学園の設立は四、五百年ほど前。つまり、大戦の前なのでまだ魔人族もこの世界にいた頃。だからその魔人族の分も席があるということになる。案外、この学園にはそういった名残が多くあるかもしれない。
講堂での座席は自由になっているので二人揃って中央より三列前の席に座った。周りを見ると色んな服装の子がいる。孤児院にいたときに着ていたような服を着ている子もいれば私たちのように丁寧に仕立てられたお高い服の子も、民族衣装を着ている子もいる。この王立学園には国中の13歳になった子供たちが必ず通うと、話には聞いていたけど本当にそうだったのは驚きかな。
そうやって思案しているうちに式が始まった。
◇◈◆◈◇◈◆
長い長い学園長の挨拶が終わると、各自割り当てられた教室へと向かう。
「イルはクラスはどうなったの?」
「私はクラスAだよ。リズは?」
「私もよ。良かったわ、最初から知り合いも誰もいないなんてことにならなくて。ところで、さっきの学園長の話……。イルはどう思うのかしら?」
さっきの学園長の話とは、一ヶ月前のあの夜会でのことと、魔人族のこと。そして私があのときに言った『二百年前の真実』について。学園長は学園を上げてその歴史を紐解いていくつもりだと宣言していた。そしていずれ協定が結ばれたとき、魔人族と共存する世界を担っていく私たちにもそのことを強く心に置いてほしいと言っていた。
「私は学園長の言葉に賛成かな。あの時魔人族が言っていたのは私たちが信用に値するかどうかを見る、でしょう?私は今のこの世界を担っている大人じゃなくて次の世代、協定を結んだ後の世界を担う私たち子供が信用に足るかを見るんじゃないかと思っているから。」
実際に私が見ようとしていることを言ってみればリズは飴色の瞳をぱちくりと瞬いた。そして納得したように頷いた。
「すごいわ。私はそこまで考えが至らなかったわ。そうね。そうよね。あの時の魔人族はきっと私たちと同年代だわ。私たちを見やすいように同年代の子が送り込まれてきたのよ。」
リズのその理知的な猫目には真剣な光が宿っている。こんな目もするんだね。リズはしっかりと私の意を汲み取ってくれた。これで少しは協定を結ぶ未来が近づいたかな?
◇◈◆◈◇◈◆
クラスAの教室に着いて扉を開けると、既にほとんどの人が揃っていた。どうやら私たちが最後のみたい。前の黒板に貼り出された座席表を見て自分の席につく。
暫くして十の鐘が鳴ると、教室の扉が開いて一人の先生が入ってきた。どうやらこの人がこのクラスの担任のようだ。
「ごきげんよう、クラスAの皆様。」
教壇に立ち、意気揚々と私たちを見回した後はっきりた口調で挨拶をする先生。私は何も言葉を返すことができない。今は驚きを隠すので精一杯。だって、だって……!
────何でここにいるの!!
クラリスのキャラがちょっとぶれてる気が……。まあ、後から取り戻せるかもしれないのでそこで頑張ります。
次話は先生とサークル勧誘です。




