エカテリーナ先生と規格外な私
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「では先生。ここはこうなる、ということで宜しいのでしょうか?」
「はい。素晴らしいですわね。イリアナ様は理解するのが速くて助かりますわ。」
あれから半年、私はあの後すぐに12歳になり、公爵令嬢として沢山のことを学んでるの。今は数学の勉強。正直に言って簡単過ぎる。だって私は既にやっていることだもん。出来て当たり前なの。
そして今私に教鞭を振るってくれているのはエカテリーナ先生。算数は勿論、マナーや魔術まで全てを私に教えてくれる。義父様が私のために王室教師から引き抜いてきてくれたんだって。エカテリーナ先生は流石王室教師って感じ。私が理解力が高いって分かったら物凄い速度で進んでいくの。半年経って、本来三年かけてやるところまで終ってる。エカテリーナ先生恐るべし。
ところで、これは半年前の話なんだけど…。
◇◈◆◈◇◈◆
「お初にお目にかかります。イリアナ・シックザントと申します。これから宜しくお願い致します、エカテリーナ様。」
シックザント家に来て3日。私に家庭教師が付くことになった。どうやら人間界では親が子に教えるのでは無く、別に教師が付くみたい。そして、私に付いてくれるのは王室教師様らしい。何で王室教師様が私に教えてくれるかと言うと、義父様のおかげって。シェリーさんから聞いたんだけど、義父様は私がこの家の養女になると決まる前から手配していたらしいの。義父様ありがとうございます。
私の目の前にいるのは私の家庭教師となるエカテリーナ様。あ、エカテリーナ先生かな。エカテリーナ先生はいかにも教師ですって見た目をしてる。淡い栗毛のひっつめ髪にモノクル。そして厳格な眼差し。会った瞬間失敗は許されないって肌で感じたよ。
「これは丁寧にありがとう存じます。私はエカテリーナ・ジョンソンですわ。此方こそ宜しくお願い致しますわ、イリアナ様。」
優しく微笑んでくれたから、さっきの挨拶は及第点のようだ。朝、トトリさんからエカテリーナ先生は初対面が肝心だって言われたの。エカテリーナ先生は第一印象が悪かったら教鞭を振るわないこともあるんだって。
「それでは早速魔力量を測らせてくださいな。」
私の部屋に移動して、エカテリーナ先生は開口一番そう言った。魔力量の測定。正直不安なんだよね。ここに来てからというもの、義父様と義母様から感じる魔力量が私よりも少ない気がしているの。魔界で魔力の一部封印をしたとき、お父様は私に人間の魔力量の平均より少し上って言っていた。だから私の魔力量は人間の平均の少し上…のはず。でもね、何か見落としてる気がするのは私だけかな?何か間違っているような気がするんだよねぇ。
エカテリーナ先生が魔術が掛けられている鞄から水晶玉を取り出す。これで測るんだね。
「これに魔力を流してくださるかしら?もし魔力が扱えなくても勝手に取り出してくれますわ。」
言われたとおりに水晶玉に手を当てる。もうどうなったって知らない!
魔力を一気に流し込む。すると水晶玉は段々と光を帯びてきて輝きだした。それも目が眩むほどの目映い輝き。そして何色もの光が交じり合っている。
思わず目をぎゅっと瞑ってしまう。流石に耐えられないからっ!
ピキッ…。
────えっ?今の何っ?
どこからか何かにひびが入る音が聞こえてきた。嫌な予感しかしない…。
「イリアナ様っ!今すぐ魔力を止めてくださいましっ!危険ですわっ!」
エカテリーナ先生の鋭い声が飛んでくる。危険なのっ?!
慌てて水晶玉から手を離し、魔力の流れを断つ。その瞬間ピキピキピキッと高い音を立てて水晶玉が粉々に砕け落ちた。
「壊れ…ちゃった…。」
突然のことに呆然としてしまう。まさか砕けるなんて思いもしなかったんだもん。
「イリアナ様、お怪我はございませんかしら?」
「は、はい。」
「それにしても、この水晶玉を壊してしまうなんて…。」
思慮深げに呟くエカテリーナ先生。これは良かったの?それともかなり大変なことしちゃった?
「あの…、エカテリーナ先生?その…。」
「素晴らしいですわ!何て魔力なんでしょう!王族をも凌ぐ程ですわね。恐らく国一、二番と言っても過言ではありませんわよ!」
私を見てはっきりとそう言われた。これは良かったと考えていいのかな?それより…、お父様。お父様の考えている平均の意味がよぉ~く分かったよ。魔界に来ていた人間の平均だよね。人間の国王の平均だよね。それより上って相当だと思うよ、人間界では。
遠い目になるのを必死で我慢する。お父様に報告しなければならないよ。
◇◈◆◈◇◈◆
そう。こんなことがあったの。あの後ちゃんとお父様に連絡したよ。お父様は凄く驚いてた。だって、これより魔力が低いって相当だもんね、魔人族からしたら。あるからは怒濤のごとく…って感じで日々が過ぎ去っていったよ。そして今に至る…と。
エカテリーナ先生は私の能力が高いということに気がついてから日に日に内容の質やペースを上げてきたの。だから半年で三年分。
魔術も粗方っていうかこの国では学園があって、そこに通わないと魔術は詳しく教えてもらえないの。だから私が今学ぶことができる範囲のことはもう既に学び終えちゃったよ。既に知ってることだったしね。正直に言って詠唱が面倒なんだよ~。そこだけ押さえれば何とかできたし、まぁ、いっか。
◇◈◆◈◇◈◆
「そろそろ社交界デビューをしましょうか。」
夕食の途中で義母様がそんなことを言った。社交界デビューか…。この国の貴族は、十歳になると社交界に出ていくようになるらしい。私は十二歳で、あと半年もすれば十三歳。そして、十三歳になると、貴族は強制的に国立学園に入ることになる。それまでの四年間で社交界デビューしないといけないんだって。大概の貴族は十歳の誕生日パーティーが社交界デビューらしいんだけど、わたしの場合は既に十二歳でしょ?だから次の誕生日まで待ってられないの。それに私は学園の入学日ギリギリに誕生日が来る。そこで社交界デビューなんてしてたら学園に行って知り合いか一人もいない、なんて状態になっちゃう。それは流石に避けたいしね。
「でも義母様、近々何かパーティーでもあるのですか?私は何も聞いていないのですが…。」
「今回のはあることを貴族全体に陛下がご報告するために開かれるのよ。だから貴女が知らないのも無理はないわ。」
あることの報告か。大体の予想はつくよ。十中八九魔人族との協定のことだろうね。どう報告するんだろう。それに、報告しても受け入れられないと思うんだよね。この人間界にある大戦の歴史は偽りで塗り固められてるから。さて、どうするかな。
「あること、ですか?義母様たちはそれが何なのかご存知なのですか?」
「ああ。知っている。私も一枚噛んでいるからな。だがそれを今イリーに教えるわけにはいかないのだ。…すまない。」
義父様が一枚噛んでいるね。これは協定のことで間違いない。私はこの協定に賛成だから行動を起こすことにしようかな。
◇◈◆◈◇◈◆
「…ということなんだけど。人間に忠告をしてきてもいいかな、お父様。」
『そうだね。そうしてくれるかい?今回の機会を逃したら次はいつになるか分からないからね。』
夜になって私は自分のベッドの周りに結界を張り、お父様と連絡を取る。事を大まかに説明すると、お父様も忠告することに賛成してくれた。
「じゃあ、パーティーで魔力の封印解除するよ?」
『かまわないよ。存分にやってきなさい。それは私たち魔人族のためにも、人間のためにもなるからね。』
「分かった。じゃあね。お休みなさいお父様。良い夢を。」
『ああ。お休み、リーナ。良い夢を…。』
次話はイリアナが人間に忠告します。どんな感じで忠告するのでしょうか…?




