14章 その名はカーニヴォラス
診療所の処置室からアルドフッドが出てきた時、既に時刻は18時を回っていた。
待合室に戻ってきた彼の顔は、いつもの豪胆さが消え失せてしまったかのように疲れ切っている。
無理もないだろう。自身の傷を治療した上、重症で発見されたナイリンを今まで治していたのだ。
「アルドフッドさん。……彼女の容体は?」
「あぁ、無事だ。深手を負っているが命に別状はねぇ。しばらくは絶対安静だがな」
「そうですか……」
無事を聞いた俺は安堵し、待合室の長椅子に腰かけた。
もしもナイリンが殺されていたら大事になっていたところだ。
派遣した護衛が殺されたとなれば中立国家も静観するわけにいかず、ゼロへの報復攻撃を開始していただろう。そうなれば、今日の一件で神成島の森林が消失したように、この世界の様々な場所が戦火に巻かれて破壊し尽くされていたはずだ。
「随分と待たせちまったな。おう。じゃあ早速、情報共有を始めようじゃねえの」
6時間以上ぶっ通しで治療を行っていたアルドフッドが、軽食のサンドイッチを豪快に食いながら仕切る。俺とアイは頷き、襟と姿勢を正した。
――今回の一件は『ゼロ』による奇襲攻撃。確認されただけでも幹部2名と部隊長1名が作戦に参加している。
恐らく狙いはアルドフッドの持つ『自爆魔法』の奪取、そして鬼龍とやらが「アルドフッドの殺害をボスから直々に命じられている」と言っていたことから、アルドフッド殺害も図っていたのだろう。ただし、スカーレットという男だけは、アルドフッドを仲間に引き入れることを目的としているらしい。
退却ではなく一時撤退という表現をしていたことから、今回の攻撃は第一次進攻であると考えられ、近い将来に第二次進攻の発生が予想される。幹部2名の戦闘力は現在のアルドフッドを上回っており、再度会敵した場合は死を覚悟しなければならない。
そして、ハルについては……。
「交換条件の為の人質、と考えるべきだろうな」
アルドフッドがそう断言した。同じ考えを持っていた俺も首肯する。
「もしも別の要件でハルを捕獲しようと考えていたならば、わざわざアルドフッドさんを強襲するタイミングと被せたりしませんからね。恐らく最初から、誰でもいいから人質を1名確保する予定だったんでしょう。第一次進攻で攻めきれなかった場合を考えて確保したのか、他の用途を考えているのかは分からないですが……」
「だなぁ。それと――マドーサっていうド変態がハルモニアの嬢ちゃんの正体を知っていたって言うなら、ある程度の安全も確保できるってもんだ。世界の水面下に潜伏した組織が、メース国の王女を拉致して殺害なんて目立つことするわけがねぇ。デメリットがデカすぎるからな」
殺害にするにしても様々な方法がある。事故を装ったり、メース国と敵対している国の人間を唆したり、戦争中の惑乱に紛れて狙撃したり。……少なくとも本気で殺害を目論むなら、ゼロが関わったという痕跡を消臭するはず。
マドーサは危害を加えるような発言をしていたが、あれもどうせ『人質を見捨てれば凄惨な目に遭わせるぞ』ということを示唆したいだけだ。これもまた、本気で殺害を目論んでいるならば、怨みを買うだけのあり得ない発言でしかない。
……それが分かっていられるからこそ、なんとか冷静でいることができる。本当なら今ごろ、草の根を掻き分けてでもゼロの奴らを探し出して、半殺しにしてハルの居場所を吐かせていただろう。
「……じゃあ、しばらくしたら向こうからコンタクトを取ってくるってことなのかな?」
首を捻りながらアイがそう言うと、「だろうな」とアルドフッドが頷いた。
ただし、それがいつになるかは敵次第だ。今すぐかもしれないし、明日かもしれないし、もしかしたらこのまま数週間を経るかもしれない。あまり長いこと拉致されたままだと、俺のメンタルが持つかどうか分からないだろう。
――と、思った時……待合室の扉が開き、ワムが姿を現した。
「あの、おてがみです……おてがみが来ました……っ」
ワムが掲げた右手には、差出人の名前も切手も消印も何もない、真っ白な手紙が握られていた。誰がどう見たって郵便局を経由した正式な手紙ではないと分かるだろう。
このタイミングでそんなものを送りつけてくる奴らの正体なんて、もはや口に出すことすら馬鹿馬鹿しい。
「おう、あんがとよ。…………想像通りの文面だな、芸がねぇ奴らだ」
ワムから手紙を受け取ったアルドフットは、ポスティングされた広告を扱うように手紙を荒々しく開封し、中身の便箋を検めて鼻で笑った。
「今夜21時、神成島見晴台にて人質の引き渡しを行う。交換内容は以下の通り、此方は『メース・M・ハルモニアの身柄』、其方は『自爆魔法に関する全資料』と『グラシディア・アルドフッドの遺体』。引き渡し代理人として、シロガラ・G・クロスエッジを指名する。……とのことだ」
「え、俺……?」
いや、考えてみれば当たり前の話だ。向こうの要求はアルドフッドの遺体なのだから、誰かが代理人として引き渡しを担わなければならない。向こうの差し出すものがハルであるならば、俺が務めるのも至極当然の話だ。
しかし、なんか……おかしい気がする。
本来あるべき何かが記載されていないような、気味の悪い違和感がある。もしも俺が奴らの立場なら、きっと、多分……。
「……『アルドフッドの遺体』か、随分と不思議な文言だ。なぁ?」
手紙を全力で丸めて壁に投げつけながら、アルドフッドがそう問いかけてくる。壁に跳ね返って地面に転がった紙をアイが拾い、ご丁寧に皴を伸ばしていた。
「敵の幹部であるスカーレットが、そんな文章を許可するはずがないってことですか?」
「あぁ。奴が目を通していたなら、ここは遺体ではなく身柄と書かれるべきだろ。えぇ? そう考えると、色々な可能性が浮上するよなぁ」
幹部の意向を無視するような手紙。それが罷り通る状況を考えるならば、例えば、鬼龍とかいう幹部とスカーレットの間で致命的な不和を起こしており、命令系統が混乱しているとか。スカーレットが作戦から外されたとか。それとも、本作戦の司令官が幹部ではなく部隊長であり、最終的な決定を下す立場が歪になっているとか……。
「ま、行きゃあ分かるか。おいクロスエッジ、行ってハルモニアの嬢ちゃんを取り戻すぞ」
「当たり前のことですけど、遺体になって引き渡される……なんて言わないですよね?」
「たりめぇだ、まだ死ねるかよ。大暴れして奪還するに決まってんだろ」
「……勝機はあるんですか?」
「情けねぇやり口だが、自爆魔法の資料を後生大事そうに抱えてやらぁ。俺に危害を加えれば資料が消失するだろ。奴らが自爆魔法を求める限り、多大なハンデを背負わせることができるじゃねぇか」
確かに情けない作戦だが、奴らにとっては有効な一手だ。
かつて戦場に、拉致した敵国の子供を自分の体に括り付けて出陣していた者がいたのだが、大層効果的だったらしい。資料でも躊躇させることくらいは十二分にできるだろう。
「……………………」
真剣に話し合いをする俺たちの姿を、ワムがどこか虚ろな目で見つめていた。心此処に在らずと言うべきか、何かに思い詰めているような表情だ。
「……ん、どうしたワム。体調悪ぃのか、おう」
「あ……いろいろあって疲れたかもです……ふしぎな体験をしたので……すこし、やすんできます……」
声をかけられて我に返ったワムが、どこか逃げるように後ずさり、そのまま走って部屋を出て行ってしまう。
それを見たアルドフッドが首を傾げ、「まあ死にかけたら気分も悪くなるわな」と一人で納得していた。
「……」
ワム。本名、和村小夜子。
あの時――崖から落下した時に見せた動きは、明らかに人間としての水準を大きく上回っていた。日々過酷な生態系で生きている野生動物が長い年月をかけて身につけたような、そんな曲芸染みた非人間的な動作だ。
ワムの正体は、人間ではない……?
しかし魔法を行使したならば、少なからず魔精反応が出るはずだ。あれだけ近くにいて、誰にも見つからずに魔法が使えるわけもない。
「……アルドフッドさん、一つだけ話しておかなければならないことがあります」
「あン? なんだ?」
「ワムのことなんですけど…………」
数刻、時は遡る。
神成島近傍の何処か、人知の及び届かぬ場所。
第一次進攻を終えたゼロの工作員たちは、やがて訪れる第二次進攻まで英気を養うため、ひと時の休息に羽を伸ばしていた。
彼らが真の意味で神成島を蹂躙するのは、まだ少し先の話になる。ここからが彼らにとって最大の見せ場であり、最高の悦楽を得る段階でもあるのだ。
とはいえ彼らが心身を休める中であっても、幹部と部隊長は休むことを許されない。
来たる第二次進攻に備えて、部隊と目標の状況を共有しなければならないのだが――。
「……釈明はどうした、スカーレット」
幹部用のテントの中で、安っぽい折り畳み机を挟んで、鬼龍とスカーレットが対峙していた。テント内の空気は酷くピリついていて、今にでも殺し合いに発展しそうなほど一触即発の燻りが感じられる。
「釈明ィ? なんそれ、頑張りましたァくらいしか言うことねェけど」
議題の俎上にいるスカーレットは平然と鼻をほじりながら、スモークサーモンとレタスの挟まったサンドイッチを荒々しく齧る。どこでそんなパンを買ったのかは不明だが、サンドイッチの直径は扇風機の羽根一枚ほどの異常なサイズだった。
「独断専行、作戦妨害、内紛行為。普通の工作員なら人生数回分の後悔をするほどの罰則が課せられる所業だ。……貴様、我ら組織に反旗を翻すつもりか?」
「ブァカ、普通の工作員じゃなくて独断が許される立場だからやったんだろォ。無意味な仮定を出すな低能」
人の癇に障ることに慣れているのか、スカーレットはお見事なまでに人を煽りまくる表情をご覧に入れた。長年の人生経験によって忍耐と辛抱を極めた鬼龍でさえも、この七変化どころか百面相と呼ぶべき煽り顔の数々には業腹が抑えられない。
「反旗も何もさァ、元々ボスから下った命令は『アルドフッドというイレギュラーの無力化』だろォ? それを勝手に殺害だと解釈したのはお前らボケナスじゃん。俺は仲間に引き入れて手綱を握ることでイレギュラーじゃなくするつもりなの。ボスの命令を忠実に守った上で戦力増強もできるだろォ。お前らバカ、俺天才」
「ならば作戦に参加せず、個人で遂行すれば良かろう。作戦に参加した以上、貴様には指揮官に隷従する義務が生じる。貴様の行動は指揮系統を混乱させるだけの利敵行為でしかないのだぞ」
「あ゛ーうっせぇ死にぞこないだなァ、さっさと骨になれよォ。俺はお前らが企ててた作戦を聞いてアルドフッドが神成島にいることを知ったの、そんでお前らの作戦を利用するのが一番手っ取り早かったの。ちょっと考えれば分かるだろ痴呆。ちったァ俺の気持ちも考えろよ、利用するのが一番楽ならそうするだろ。人の心が分ッかんねぇヤツだなァー、そのハゲ頭地表まで下げて謝れよ」
「…………………………」
どう考えても道理は鬼龍側に在るのだが、どれだけ糾弾したところでスカーレットに通じるはずもなく、時間を浪費するだけだ。鬼龍はそれ以上の問答を諦め、最大限の嫌味を込めた歎声を落とした。
そしてテントの隅っこで脂汗を流しながら幹部同士の喧嘩を見ているマドーサに向き直り、有無を言わさないほど強い口調で告げる。
「造反者が所属している以上、作戦を順守する意味は無い。儂は自分の意思でやらせてもらおう。異論が有れば貴様が直接申せ」
「え、いや、あの……」
引き留める言葉も待たず、鬼龍は踵を返してテントの端にあるパイプ椅子に座り、著名な散文詩が綴られた詩集を読み始めてしまう。残されたマドーサはどうすべきか迷いながら揉み手を繰り返していた。
そんな彼に大股で近づき、気安く肩を組んだのはスカーレットだ。
「クソ部下ァ! アイツは甘いヤツだからな、『スカーレットを作戦から外します』って言やァ作戦に戻ってきてくれるだろうな! ……でもおめぇはそんなことしないよな。なァ?」
ボン! と片手の上で景気良く爆発魔法を発生させながら、まるで親友にでも向けるかのようにとてつもなく馴れ馴れしい口調でそう言った。
誰がどう見たって脅迫だ。爆死したいか生きたいか、選択の余地のない二択を選ばせようとしているだけ。
だからマドーサは、過度な拷問をされた兵がようやく殺してもらえる時みたいなぐちゃぐちゃの笑顔を浮かべながら、首の骨が折れかけるくらい首肯をすることしかできない……。
「で! ……『これ』を有効活用する手紙は送り付けたんだろうなァ?」
密着していたマドーサを突き飛ばし、スカーレットはテントの隅に置かれた『それ』を見ながら問う。
まるで粗大ゴミかのように無造作に転がされているのは、人質として拉致されたハルだった。
結束バンドによって後ろ手で固定され、足も紐で縛られ、地上に揚げられた魚のように地面へ横たわることしかできていない。口は猿轡で、耳は爆音の流れるヘッドフォンで、目は三重のアイマスクで塞がれ、周囲の状況を一切感知することができそうになかった。
「えぇ、ええ! 勿論、部下に手紙を出すよう命じましたとも! 今夜21時に受け渡しを行う予定です。へへ、抜かりないですとも。へへへへ……」
「……ほぉ……抜かりが無い、ねぇ……」
意味深に言葉を復唱しながら、スカーレットが横たわるハルに近づいていく。
耳も目も使えず、今のハルには接近を感じられないはずだが――誰かが近づいてきた気配を感じ取ったのだろう。ハルは身を固くし、緊張の様相を見せる。
「あのさァ、もしも受け渡し前に逃げられたらどうすんの? そんで逃走中に事故で死んだら俺たちが殺したようなもんだろ。メース国から目ぇ付けられるよなァ」
「は……いや、でも、拘束してありますからその心配は……」
「抜かり無いっていうのはさァ、こうだよ、こう」
スカーレットはハルの右足を掴み、靴と靴下を手早く脱がしていく。
何をされているのか理解できないハルの足の小指を掴み――そのまま勢いよく、反対側にへし折った。
「……!!!!!!」
日常生活ではそうそう聞くことのない歪な音が響き、小指がおかしな方向へとひん曲がる。ハルの体は電流を流されたかのように跳ね、震え、猿轡を噛まされた口から涎が垂れ落ちていった。
「後学の為に見ておけ。拘束する場合は抜け出された時のことを考えるんだよォ」
そのまま中指と薬指を一気に掴み、寝る前に部屋のスイッチを切るかの如く当たり前に、捻りながら叩き折る。
「常人なら爪を剥がせば歩けなくなるし、アキレス腱を切るのも楽だぞ。民間の女なら裸にひん剥いちまえ。平和ボケした国だとさァ、服着てねぇからって脱出を躊躇するヤツが結構な割合でいるからさァ。マヌケだよなぁ」
そしてそのまま……流れ作業のように人差し指と親指も。
絞り出された絶叫は、猿轡を貫通して漏れ出ていた。
ハルは戦場に出向いていた化物なので、時にはこれ以上の苦痛を感じることもあっただろう。
しかし拉致されて拘束された状態で受ける苦痛は、質が違う。『これから仕打ちがエスカレートするかもしれない』という疑念が渦巻き、恐怖心が苦痛を助長させる……。
「ほらクソ部下、練習だ。左足でやってみろ。爪を剥がす練習もしとくか? 剥がすだけじゃなくて、剥がした後の剥き出しになった肉を指で抉るんだぞ。アドレナリンが出ても走れないように徹底的にな」
「おい」
制止の声は鬼龍のものだった。医学の発展のために他人を解体することは大好きだが、拷問することはあまり好きではないマドーサが、助かったとばかりに胸を撫で下ろす。
「退けスカーレット。貴様の言い分は尤もだが、右足だけで存分だ。無用な苦痛は報復に繋がるぞ」
「あァ? テメ、刀抜きながら言うんじゃねえよ……」
鈍い光を放つ日本刀を向けられたスカーレットが、鬼龍の足元に向かって唾を吐きかけた。
しかし指を5本折って満足したのだろう。事を荒げようとはせず、己の尻を破壊するかのような勢いでパイプ椅子に座る。
「ンで! 俺が手配しておいたブツは、ちゃんと機能しているんだよなァ。第二次進攻で必要になるんだぞ、なァ?」
「それはご心配なく!」
得意分野の話になったことでマドーサが急に元気を取り戻し、洋服がはちきれんばかりに胸を張る。現にボタンが一つ吹っ飛んでいた。
「我々の送り込んだ化物が、既に彼らの中に潜入中です。へへへ……。今は小康状態になるよう制御していますが、指令を与えればいつでも機能しますとも」
マドーサの手中に収まっている携帯デバイスには、1人の少女の画像が写し出されていた。
金色の髪と瞳、色濃い褐色の肌、あまりにも幼過ぎる顔と高校生程の体格。まるで様々な年代の人間を継ぎ接ぎにしたような、違和感の塊とも呼べる少女。
彼女の名前はカーニヴォラス・ワ=ムー。マドーサによって産み出された、化物と呼ぶしかない何かだ。
「小康状態ということは、今はまだ普通の少女に擬態してるってわけかァ」
「そうですとも。しかし! アレの脳には欲求を制御する魔力部品が込められておりまして、遠隔から特定周波数の魔力を届ければ即座に! 蛆虫としての本分を思い出すという訳です!」
その少女は人間ではなく、蛆虫をベースとして造られた人工体だ。人間の脳を埋め込むことにより『非常に人間らしい』動作を可能にしているが、生命としての本分は蛆虫に準ずる。
また、幾種類もの生物からブレンドして肉体を構成し、人間離れした肉体を保有している。装備無しで崖を駆け下りることも、人を喰いちぎることも、何もかもが思うが儘だ。
マドーサによって産み出された彼女は成果物として扱われ、『ごく丁重』に管理されてきた。しかしそれは書類上の話であり、実態とは異なる。
化物なのだから人権などあるはずがなく、どれだけ痛めつけても問題ないのだ。犬や猫のような生命でもない、コンクリートやプラスチックと同じ人工物。殴ろうが蹴ろうが、煙草の火を押し付けようが首を絞めようが、電気を流そうが爪を剥がそうが、自身の所有する人工物なのだから何をしても許される。
常人なら死ぬような責め苦でも大丈夫。……だって人間とは比べ物にならないほどの力を持つ、蛆虫の化物なのだから。
「機能してくれるならそれで良い。……くっくくくく……」
スカーレットが低く、唸り声にも聞こえるような音で笑う。
そして、嫌味でも皮肉でも無い、本心からそう思っているような口調で呟いた。
「アルドフッド……喜んでくれるかなァ……」




