9章 2人の顧問
それから、俺たちは演劇部で練習を続けていた。
放課後が来るたびに部室へと足を運び、土日には自宅で(音響魔法で近所迷惑にならないようにしながら)自主練をし、演技を始めたばかりの頃よりはある程度レベルアップしたと言えるだろう。自分がどれほど成長したかはあまり分からないが、隣にいるハルの成長ぶりを見れば大体は推し量れる。
……そして気づけば12月12日。演フェスの内部発表が15日なので、俺たちは3日後には人前で演劇を披露することになる。
徐々にその日が近づくたびに緊張が増し、そして、これまで培ってきた成果を発揮する瞬間が少しだけ楽しみに思えていた――。
放課後、俺たちはいつもの通り部室へと来ていた。
「うん、随分とまあ、ええ感じに育ったもんやねぇ。あともうちょい声量出せば立派な演者やわ」
「ホントですか」
手放しで褒めてくれた葵先輩にシャス!と運動部みたいな一礼をし、シャツで背中の汗を少しだけ拭う。どれほど演技に慣れてきたとしても、人の目線を浴びるたびに背中にうっすらと汗を掻くことだけは変わらなかった。
「私は? 私はどう、ええ感じ!?」
「うん、ハルさんもええなぁ。でも逆に声量出し過ぎやね、最前列のお客さんが音響外傷起こしそう。もうちょい加減したり」
「任せなさい!!」
声量に注意しろと言われたのにその返事が法外なド声量なのだが、恐らく本人は無意識なのだろう。テンションが上がってしまったハルの声のでかさと言えば襲い来るクマを撃退できるレベルなのでどうしようもない。
練習開始から大体2週間ほどが経過し、俺たちは素人にしては上出来な付け焼刃をモノにしていた。とはいえ得意不得意があり、ハルと鳳輔はグングンと成長し、俺とアイはまだ役にのめり込めていないような状態だ。
「うーむ、声の大きさで言えば俺とハルちゃんが少々大きめだな。逆にクロとアイは声絞りすぎだ、もうちょい腹から声を出した方がいいと思われる」
意外と真面目に取り組んでいる鳳輔が腕を組みながらそんなことを言ってくる。
「いやー、これでもあたし的には声を出してるんだけどなー。……というか演劇って声量揃えたほうがいいんですか、あれ、音楽でいうマスタリングみたいな感じに」
「まぁ基本はそうやねぇ。役どころとか場面にも依るけど、あんまり声量がバラバラ過ぎると聞きにくいわ。映画とかでもそうやろ、静かなシーンで急に爆音出されると辟易するやん」
確かに、と俺が大変感情を込めて頷く。その場の雰囲気を読まないハルと同居しているとそういう場面が多いのだ。
そんな俺たちに冷や水を浴びせかけてきたのは、意外にも毎日練習に出ている坂浦だった。
「なぁオッサン、褒めて伸ばすのはいいけど甘すぎンだろ。もうちょいビシッと言ったれよ、演技が素人クセェって。人の台詞を待ってる時にもじもじするわ、読み上げてる最中に視線が斜め上を向くわ、基本がなってねぇじゃんかよ」
「とっちゃんは厳しいなぁ。でもなぁ、これでも最初期よりは大層立派になったもんやで? 特にハルさんなんか、台詞を待ってる時に暇だからって他の部員に手ぇ振ってファンサしてたし」
「立派になったっつうか常識を身に付けただけだろそれ」
「そんなに褒められるとのぼせ上がるわね……」
褒められたと勘違いして有頂天になっているハルだが、確かに最初期の酷さと言ったら本当にどうしようもなかったので、これでもかなり成長したほうなのだ。特に読み合わせの途中で飽きちゃって雑談を始めやがった時には法に触れてもいいので何らかの物理攻撃をくらわせてやりたかった。
「つーか手本見せてやれよ手本ンー。オッサン、バカほど上手ぇんだろ。技術を目で盗ませろよ」
「えー……俺、部室で演技するのしんどいんやけどなぁ」
坂浦から演劇要求を受けた葵先輩は、珍しく本当に困ったような顔をしていた。綴流から彼の情報は色々と聞いているが、確かに目の前で演技をしてもらったことはない。この様子からして部員である坂浦も見たことがないようだ。
……というより、恐らく誰も見たことが無かったのだろう。俺たちとは別のグループとして演劇の練習をしていたその他の部員たちも、見たい見たいとでも言うようにこちらへ視線を向けている。鳳輔も負けじと幼児のトラウマとなりそうな裏声で見たいと追随している。
「いいだろ別に、顧問のバカが見てるわけでもねぇんだし。助っ人共を育てると思ってここはひとつさァ」
「んー……………………ま、参考になる言うなら……一度くらいかまへんか」
逡巡というには長すぎる葛藤を経て、葵先輩が台本を片手に簡易舞台の上へと移動する。舞台というか使われなくなった教室から持ってきた教壇なのだが、抜群のルックスを誇る葵先輩が立つだけで伝統的な劇場の舞台に思えた。
そして目を閉じて、小さな一呼吸があって――その瞬間、世界から音が消え失せたかのよう。空気が一気に張り詰め、全てが凍り付く。
葵先輩が再び瞼を開いた瞬間、彼はもう芝原葵ではなかった。俺たちが演じる脚本の中に登場する神様役、そう、神そのものになっていた。
「『……ずっと、迷っておったのだ。果たして神の力など、この世に必要なのだろうかと』」
口調も声も浮かべる表情も、全てが葵先輩とは異なる。顔が似ているだけの別人だと錯覚してしまうほどに、彼の全てが別の人間へとなり替わり――。
「『考えてみれば、時を戻す能力などバカげた力だ。元々人が道を誤った時に、失敗をなかったことにする力。人類という種にとっての補助輪でしかない。……貴様らには、もう、不十分な代物であるな』」
この役は本来、坂浦が担うべき役のはずだった。だから役の印象は坂浦の演技に引っ張られていたのだが――全てが変わってしまう。
まるで正解を見せられたかのように、彼の演技を誰もが受け入れてしまっていた。
「『吾人は全ての始まり、世界の開闢と共に生まれた神。その存在が消えれば……もう二度と時が戻ることもないだろう』」
世界の一部である登場人物を演じるのではなく、彼自身が世界を創り出しているかのよう。
どれだけ端役を与えたところで、きっと、彼を中心とした物語になってしまうのだ。
「『……後悔はないな?』」
不意に視線を合わせられて心臓が跳ねた。本当に神の眼光を浴びたかの如く、体の自由が全て失われていく。
「『犯した罪も、すれ違いの過ちも、なにもかもが取り戻せない。そんな、当たり前の世界が訪れるとしても――貴様らは、強く生きていけるか?』」
そして部室内に静寂が訪れる。
そう、台本通りに行くならば、この問いかけに対して俺たちが返答をしなくてはならない。台詞だって憶えている、継ぐべき台詞さえ口に出せば劇を続けることができるというのに――誰も言葉を発せない。
このあまりにも上質すぎる演技に、自分の無粋な演技を挟み込もうなんて蛮勇を発揮できる奴はいないのだ。あのハルでさえも言葉を失っているのだから、誰もが口を閉ざしてしまうにきまっている。
……そして数秒間の沈黙を経てから、葵先輩が少しだけ気恥ずかしそうに笑った。
「…………まあ、こんなところやね。見てた? 演技中は観客と目ぇ合わせたりして語り掛けるような印象を与えるんよ。要所要所で使うと結構効果的」
その台詞によって、ようやく演技が終わったことを察知した俺たちは、手持ち花火が噴出するかのようにイキのいい拍手を送った。氷解した空気が拍手によって溶かされていくが、それでもまだ鳥肌は消え失せない。
思わず俺は隣にいる鳳輔の服を引っ張っていた。
「なぁ、すっげえな……色々演劇の映像とか見て研究してきたけど、今まで見てきた演技の中でも3本の指に入るぞ」
「ああ、俺も全く同じだ、3本の指が入る」
「同調するふりしてケツの様子を報告するな」
恐らく冗談であろう一言を流していると、今度は俺の服をハルが引っ張ってきた。
「さすがイケメンは舞台に映えるわねぇ。顔面偏差値の暴力だわ、私も然り」
「人を褒め称えるフリをしてのぼせ上がるな」
「まあ、でも……顔面偏差値の話はクロには関係ないかもしれないわね……」
「なんだよその、クロもイケメンになったらいいのにねぇとでも言いたげな生ぬるい視線は。生まれ持った顔なんだから仕方ないだろ、こと顔面に関してはクーリングオフとかできないんだよ」
比較的整った顔が生まれやすいメース家の血を継いだだけのくせに……と恨みがましい視線を向けていると、鳳輔が俺の肩に手を添えてくる。
「まあ落ち着けクロ、そうハルちゃんの挑発に乗っていきり立つもんじゃない。俺たちの顔にだってどこかに需要があるかもしれないぞ、俺のこの顔とて夜の世界に飛び込めば一撃1千万オーバーだって狙えるかもしれん」
「懸賞金の話か?」
「待ってクロ、保釈金の話かもしれないわ」
雑を極めし雑談はありつつも、葵先輩の卓越した演技に部員たちが大いに沸いていると――。
「……ん? なーにやってんだお前」
突如、部室の扉が開いて一人のオッサンが姿を現した。
到底生徒には見えない年配が立ち入ってきて、事情を知らない俺たち学園祭実行委員会組は大いに疑問符を浮かべる。しかし演劇部の面々には見知った相手のようで、警戒心をむき出しにするような真似はしていなかった。
……警戒心こそはないが、揃いも揃って微妙な表情。この男が演劇部にとってあまり好ましくない人間なのは容易に想像がつく。
「お前、まさか演技してるわけじゃねぇよな。勝手な真似すんなっつってんだろ」
「やだなぁセンセ、舞台での立ち振る舞いを見せて教えてただけですわ。立ち姿も立派な技術の一つなんですよ?」
「……ふぅん。ま、それはどうでもいいけど」
あまり友好的とは言えない雰囲気が部室内に漂う。そんな中、坂浦が身を乗り出して小さい声で俺たちに話しかけてきた。
「アレ、ウチの顧問。演技のことなんか何一つ知らねぇくせにやたら偉そうなクズ」
「ああ、なるほど……」
それは確かに、部員たちから疎みの視線を受けるだけのことはある。初対面である俺でもあの偉そうかつどうでもよさそうな態度には多少のイラつきを覚えてしまう。
「くれぐれも演技だけはすんじゃねーぞ。俺ァお前の親父さんに管理を頼まれてんだ、余計なことされたら顔向けできねぇ」
「……えぇ、重々分かってますわ」
「ホントに分かってんのかよ。……いいか、お前は演劇界から預かった高級商品なんだ。大人しくしとけ」
「…………そうですねぇ、分を弁えますわ」
管理、高級商品。……そんな人間相手に発するとは思えない言葉が当然のように飛び出してきて、俺は思わず目を見開いていた。
葵先輩が様々な賞を受賞してきた凄い人だというのは知っているが、ここまで厳しく管理する必要があるのだろうか。実績じはあれども彼はまだ高校生だというのに。
「あー……んで、要件なんだけど、15日になんか……フェス? とかいうの出るんだろ?」
後頭部をがしがしと掻きながら顧問は至極どうでも良さそうに言う。手を掻くたびに綿雪のようなフケが舞い散っていた。
「えぇ、我が演劇部の今年最後の晴れ舞台ですわな」
「なんかそれで車出せって話してたよな、あのあれ、なんか運ぶとかで……」
「お願いさせていただきましたなぁ、衣装とセットとかの運搬が必要なんですわ」
「ワリ、それ無理だわ」
え? と声に出すことはなかったが、部員全員に無音の緊張が走る。
「前日飲み会が入ってさぁ、深酒になるからあんま運転したくねーのよ。多分酒抜けねーし。つーわけで別の人に頼んでもらえるか、他にアテくらいあんだろ?」
あまりにも納得しかねる理由に誰もが異議を唱えたさそうな顔をしているが、喉元までせり上がれども言葉にはならない。恐らく、この教師に歯向かったところで面倒臭い反応か逆ギレが飛んでくるのだと誰もが知っているのだろう。
「あー……俺からはそんだけ。ケツ拭くの面倒臭えから問題起こすんじゃねーぞ」
言いたいことだけ言い捨てて、顧問はさっさと部室を出て行ってしまう。彼が去った後も、どこか脂ぎった臭いだけは残り香として室内に漂い続けていた。
いきなり誰かがキレた時のように、誰もが微妙な表情をして口を閉ざす中――葵先輩がしょうがなさそうに苦笑する。
「……ほんま、奔放なお人やねぇ」
「いや、しみじみと苦笑いしてる場合じゃないですよ。なんですかあの態度、人をモノ扱いして……!」
どこか他人事な葵先輩に向かってそう言うと、彼は殊更困ったような顔をして首を傾けた。
「まあ……アレについてはあのセンセが悪いんと違うよ、ウチの親の問題。親が……まあ、過保護でなぁ、管理外で演劇をしないように厳命しとるんよ」
「……じゃあもしかして、演劇部では……」
「そうやね、一度も演劇に出たことないなぁ。俺が出れるんは親が出ろ言うたコンクールとかだけやわ」
恐らく三年間、演劇部に名を連ねていて……一度も舞台に上がったことがない。それはもはや過保護を超えた何かだ。あの教師が言う通り、管理という言い方のほうが適切だろう。
しかし、何故そこまで厳重な管理を施すのか。葵先輩の家族関係を知らない今の俺には、その理由が全く理解できなかった。
「ま、そんな些末なことより、運搬手段が無くなったことの方が重要やね。誰かアテのある人とかおる? 平日だから親の助けを借りんのもムズいと思うけど……」
まるで話を逸らすように、葵先輩がその場の全員に語り掛ける。
しかし誰もが名乗りを上げず、少しだけ空気が重くなり始めた時――。
「オース! オメーら励んでるかぁ!? 綴流チャンがマモセンとナシつけてきてやったぜ、全員その場で服を脱いで正座して感謝の意を示せ!」
ドバン! と扉を蹴破りながら現れたのは綴流だった。妙に意気軒昂としたテンションで総員の顔を見回し、背後にいる人物の顔をクイッと指さす。
彼女と共に現れたのは、見覚えがありすぎる人物で……。
「あ、まもり先生」
「おォ、真面目にヤってんじゃねーか」
俺たちのクラスの担任である成田まもり先生だ。教育委員会に賄賂でも渡しているんじゃないかと疑いたくなるような相変わらずのプリン頭と、口に咥えた使い古しの禁煙グッズ。子供なら泣き叫んでしまうような三白眼で俺たちを見て、やる気がなさそうに手を振っている。
「え、なんでまもり先生が演劇部に来てるんですか。どちらかと言えばVシネのほうが好きそうな見た目だけど実は演劇に興味あったり?」
「あァ、アタシ演劇部の副顧問やってッからな。たまーに様子見に来てんの」
そうだったのかと驚く。見れば他の部員たちもきゃっきゃと朗らかにまもり先生を迎えていた。先ほどの顧問とは違ってだいぶ受け入れられている様子だ。
「うーわ懐くなオメーら、ヤニの臭いが染み付ッから。指導員に嗅がれたらマジ一発で停学だかんな。おい直接嗅いでんじゃねーよ根性焼きすンぞ鶴ヶ島」
部員たちに囲まれて、まもり先生は少しまんざらでもなさそうだ。見た目こそ非道徳的だがその実、中身はかなり生徒想いの教師なのだ。懐かれるのも道理と言えよう。
「……ほんで、なして綴流がセンセと一緒に来とるん。ナシ付けたってなんよ」
「おぉー、本番直前で詰め込み時期だろ? マモセンに無理言ってよぉ、合宿の段取りを組んでもらったんだよォ」
「合宿!?」
楽しそうな言葉を聞いてハルが大仰に復唱した。そして例の如く俺の名前を呼んで「今の聞いた!?」とでも言いたげな表情をしたが、例え綴流の言葉が聞こえていなかったとしてもハルの声量がデカすぎて聞き漏らすことなどありえない。
「そうだぜぇー。明日から休日だろ? 土日を有効活用して最後の追い込みをかけてぇってわけよ。綴流チャンにしてはいい案だろぉー?」
「でも、この辺りにこない大人数が泊まれる場所なんてあるんか? 演劇の練習するってことは街から離れた場所じゃなきゃアカンよ」
「万事問題ねぇよ~。マモセンに相談してピッタリの穴場を見つけてもらったからよぉ。面積も広くて防音もバッチリ、調理場もあってトイレも無駄にたくさんある。欠点は風呂場がねぇことだけの素敵な場所だ!」
「……それって、まさか」
「おぉー、喜べ野郎ども、まさかの学校じゃ!」
学校!? と今度はハルだけではなく全員が復唱する。さすがの俺とてこれには奥ゆかしくない大声を上げてしまった。
「え、えっ、土居さん、学校に泊まるとかアリなのか……!?」
「ウチに聞くなよぉ。GOサインを出したマモセンに確認してくれよなー」
「まもり先生、アリなんですか……!?」
「あァー? ま、いんじゃねーの。学園祭の前とか、間に合わなくて泊まり込んでるクラスとかあったしなァ。近所迷惑になるほど騒ぎすぎなきゃヘーキだろ、知んねぇけど」
一番権限と知識を持っているはずの教師によく分かんねぇみたいな顔をされてはお手上げだが、確かに学園祭の時に宿泊届を出しているクラスがあったのは事実だ。確か前日になって部品の破損が見つかって、その修理を夜通しやっていたのだとか。
「つーわけでオメーら、親御さんに相談して明日明後日外泊できッか聞いとけよ。さすがに親が反対するようなら来たくても来れねぇからな」
おー!という小学生のような返事が随所から湧き上がる。学校に泊まるなんて非日常的なイベントに総員心を躍らせているようだ。
そんな中、葵先輩が手を上げてまもり先生に話しかける。
「あの、実はさっき渡辺センセに機材の運搬を断られましてん。可能なら車とか出してもらえるとありがたいんですけど……」
「あァ? アイツまたサボりかよ、フヌケのゲロカス野郎が…」
坂浦に負けず劣らずの暴言を吐き、ここにはいない顧問に向かってまもり先生がエコーロケーションにでも使えそうなほどの甲高い舌打ちを放つ。
「助けになりてぇのは山々だが、アタシぁ二輪の免許しかねぇな。ATの免許取ろうとして仮免でくたばった女だ、永遠に車は転がせそうにねぇ」
「そうですかぁ……車さえあれば解決するんですが、どーにも上手くいかんですねぇ……」
最悪ワゴンタクシーを手配して運搬する手はあるだろうが、会場までの距離によってはとんでもない金が必要になるだろう。しかも往路と復路で2回分だ、部費で賄うのも難しいはず。
俺たちが魔法を行使して運んでもいいのだが、絶対に方法を追究されるだろうし、そのためだけに記憶を操作して整合性を取るのもあまり宜しくないし……。
「あ」
その時、俺の脳裏に天啓が降りてくる。
俺たちの知り合いに一人、車の免許を取るために学校をズル休みしている宝塚系の先輩がいるではないか。免許合宿に行っていたのが2ヵ月前程なので、順調にいっているならば今ごろ免許が取れているはず。
問題は学校側に休学と偽って免許を取りに行っていることなので、まもり先生をどう誤魔化すかが課題になるのだが。
「あの……俺に一人、アテがあります」
俺がそう申し出ると、全員の視線が注がれてくる。
頭の中をフル回転させて、なんとか学校側に委員長のサボりが露呈しないようなカバーストーリーを考えつつ、俺はその場にいる全員にアイデアを報告するのだった――。
以前活動報告に書いた通り、シーズン1を三分割しました!
ストーリーは変わりませんが、1-1の6章(の途中)から8章は書きおろしです。
この部分だけで完結する内容ですので、先まで読んでいる方々も是非!




