11-2.
「こんなにゆっくり出来るの久し振り。なんか私達カップルみたいだねっ!」
「そのものでしょ? 周りもその様に見ていた様だよ」
店を出ると、こっちだよ、と手を引かれて人通りの少ない裏道を行く。
スキップ交じりのステップだったり、俺の両手を取るとくるくると円を描く
ダンスの様だったり。
「玲嗣と一緒だと何でも楽しいんだよ!」
全身で喜びを表していた玲奈。
足がゆっくりになると止まって周りを見渡している。
「ここら辺も変わっちゃったなぁ。随分経ったから、仕方ないよね」
眺めて呟くと、何が変わったか分からないままの俺の腕を掴み歩道脇に
引き込んだ。
「玲嗣 大好きだよ」
唇の柔らかさが俺の眉を跳ね上げた。咲紗とは異なる甘い香り。
「ここでキスしたかった。好きな人とキスしたかったの」
殺風景で街灯があるだけの路地裏。
なぜここかと聞けば、想い出の場所だから、と言う。
何の想い出なのかと聞いても意味深に微笑むだけで言わない。
書店で学術図書と服飾文献を漁り、ゲームセンターで殴る蹴る系遊具にフラストレーションを叩き付け、ファッションビルでアクセサリーを買い求める。
「ちょっとでも顔が見えるとキラキラ輝いて人目を惹くから、隠さないと
ダメだよ」
サングラスとマスクを掛け忘れていた俺に玲奈が言う。
「ミラーボールか? 俺の顔ってそんなに面倒臭いの?」
「うん。よそ見事故が増えるから隠してくれって、お巡りさんから言われるよ」
サングラスとマスクを掛け、ショーウィンドに映る自分の姿を見て改めて思う。
「これって、銀行入ると非常ベル鳴らされる?」
「保証する。見せても隠しても警察の御厄介になるなんて、罪な男だね、
玲嗣って」
寄り添う俺が人目を惹いている事はないと思う。
人目を惹いているのは玲奈だ。
桜丘華子ではないか? と尾行しては遠巻きにしている者達が増えている。
「ギャラリー増えているよ。隠れる?」
「逆だよ逆。もっと、も~っと集めたいなぁ」
ノーガードでギャラリー引き連れたまま、尚も街中歩き周っての帰路。
駅前のスクランブル交差点の信号は青点滅。
止まった俺の顔を覗き込む玲奈が訊ねる。
「私達って、彼氏彼女だよね? ね?」
「そうだよ。どうかしたか?」
頷いた玲奈は満面の笑顔で口走る。
「よおぉし。やっちゃいますかぁ」




