10-7.
「ちょ、ちょっと待って下さい。話が急過ぎて――、整理が全然追い付きません」
頭を傾げて暫く考え込んでいた咲紗が息を吐くと口を開いた。
「玲奈について伺ったお話が事実なら、玲嗣さんと結婚出来ない、むしろしてはならないのは理解致しました。ですが、なぜ玲奈は玲嗣さんを篭絡しようとするのか分かりません。旦那様か奥様はご存知ですか?」
俺と玲子さんは視線を合わせた。一瞬言葉が止まった。
「……知っている」
二人で頷いた。
「正直どうかな、玲嗣は恋愛対象になるかな? 咲紗の本音を聞かせて欲しい」
「はい。正直に申しまして、恋愛対象より、まだ保護対象です。……玲嗣さんは、自分の事を後回しにしますから」
咲紗が間髪を入れず回答したと言う事は、考えが揺るがない証拠だ。
私も玲子さんも、真面目だな、と口から出た。
「なぜ私を玲嗣さんの妻にしようとしているのですか?」
咲紗の視線がゆっくりと床へ落ちた。そのまま声だけ流れる。
「私は嫁として期待に応えられない駄目な女だとご存知の筈です」
「そんな事ないわ。なりたくてそうなった訳ではないでしょう? ちゃんと
フォローする方策は考えてあるのよ」
「これから説明するので良く聞いて欲しい」
「お待ち下さい」
顔を上げた咲紗が両の掌を向けて制止した。
「もし、それでも玲嗣さんが私を選ばなかった時は、如何なさるおつもり
ですか?」
いつもの温和さがどこにもない真顔の咲紗。
余りのシリアスさに私も玲子さんも言葉が止まった。
「確かにその選択肢も考える必要があるな」
「そうですね。ですが、私達の子供ですから――」
玲子さんは無言で私を向くと視線で同意を求める。
私は頷いて言う。
「大丈夫! 俺達の息子だから、色仕掛けで篭絡出来る!」
「もぅおぉ~♡ 貴方を堕とした昔の手口、私から咲紗に教えちゃいます?」
「採用した場合、責任の所在は御二人という事で宜しいでしょうか?」
「玲嗣には効果が強過ぎるかな?」
「昔の貴方みたいに、鼻血が出血多量になるかも知れませんね♡」
「度々の病院送りはお止め下さい。寝言で看護師怖いと言っていましたので」
漫才を終えて一息入れると咲紗へ切り出した。
「フォローの具体な内容だが、――――」
私は玲子さんと考え出した筋書きを告げた。




