10-6.
「玲子さん」
「はい。お呼びですか、貴方」
「あれっ、故障していたのでは?」
玲奈がいる時だけは休止させていた玲子さんを呼び出した。
白のブラウスにスリムフィットのデニム姿と云う生前の普段着姿で現れた。
玲嗣相手だと「放送禁止」「猥褻」「R18」「全身にモザイク」「乳出すな」など、じゃれつきが滅茶苦茶楽しくてエスカレートしているそうだ。
「どうしました? 貴方」
嫋やかに床に座ると両脚を揃えて流し、背筋を伸ばす。その瞬間、張った胸元のボタンが、ブツッ! と音を立てて飛び去り、胸の谷間がはらりと現れるアトラクション付き。
驚きから目を皿にして見詰める咲紗を他所に、テヘヘヘ、と頭を掻いて照れる玲子さんは、笑うのも笑わせるのも大好きな普通の女性だった。AIと化してからお笑い能力が自己強化されるとは思ってもいなかったが。
「玲奈が何者なのか咲紗に説明しようと思ってね。良いかな?」
「異存御座いません。貴方のご判断にお委ね致します」
「お知り合いのご令嬢の事を、私などに説明される必要があるのですか?」
事情が理解出来ない咲紗は戸惑った表情で私達夫婦を見ている。
「あるんだよ。むしろ、長い付き合いになるかもしれないから是非知って
貰いたい」
「――はい。お伺い致します」
「結局、それって……」
三〇分以上一方的に説明し、そこからまた三〇分程、質疑応答を交わした。
私達の説明を聞き終えてもまだ考え続けているのか、驚きました、と何度も口にしていた咲紗は言葉を失ってしまった。視線も定まっていない。
「もし大昔でしたら、もし研究者のご家庭でなかったら、到底出来なかった事
ですね」
「そうだね、それは間違いない」
「貴方、宜しいでしょうか?」
玲子さんが発言の許可を求めてきたので、掌を差し出して促した。
「以前、玲嗣の嫁に相応しいと言った際に固辞していた。私達は咲紗の過去全てと、全身のコンディションがどうなっているかも詳細に知っている。勿論年齢についても。確かに重大な問題だから相応しくないと拒むのも分かるの」
そう告げた玲子さんは居住まいを正すと、私に目配せして告げて欲しいと
促した。
「私達はそれでも咲紗が玲嗣の妻に相応しいと思っている」
「玲嗣から求められたら、結婚を前提として交際してあげて。お願いします」




