10-3.
ふぅ、熱っつい。
咲紗は自由の利く右半身だけでお湯に浸かっていた上体を上げた。
俺が手を添えた小柄な体格に釣り合わない大きな胸が眼前に飛び込んでくる。
全身傷だらけの咲紗だが、頭から鳩尾の下までの前半身にはひとつもなく、ふたつの膨らみと桜色の頂点を示す胸、ウエストとヒップへと連なる造形は美しい。
「相手から情報を引き出すには、懐深く入り込んで警戒を解く必要があります。その切口は金銭欲、性欲、名誉欲、承認欲、様々な欲求から相手の望むものを満たしてやれば関係は築けるものです」
「父さんはどれもいらないと思うけど、その場合は?」
「間接的で時間は掛かりますが、父性本能に訴えかける、でしょうか」
逆もまた然り、を考えた俺は、説明する咲紗が父を篭絡出来るかと考えてみた。
咲紗が父から情報を聞き出すのは、行動予定と出張先程度で、業務内容については父から説明された場合に確認する程度。出張先の危険情報を提供する事はあっても、自分から会社の機密に触れる内容を聞き出した事は俺の記憶では全くない。
ハニートラップを仕掛けるとしても、女性に対する父の評価基準である母と咲紗では、男が好むプロポーションであるのは共通だが、比較にならない程タイプが違い過ぎる。
「今度、それとなく玲奈に聞いてみるよ」
「どの様に切り出しますか?」
「父さんを狙っているのか? って」
「……それとなく、はどこ行きましたかね?」
「咲紗、上がろうか?」
「はい」
咲紗が差し出す右手をとると、右脚だけで立ち上がろうとする危うい体勢を制して抱き上げた。ふと見れば背中に回した左腕は良いとして、膝下に差し込んだ右腕から伸びる右手は両の尻に添えている。
ハリがあって――、軟らかい……。
指が沈み込む感覚と跳ね返そうとする弾力。
「あ、あれっ? ……玲嗣さん、大丈夫ですか?」
「これくらい平気だよ」
「有難う御座います。心配しました。……嬉しい」
「全然重くないから」
「良かった。安心しました」
「体重なんか気にしなくて良いって」
脱衣場に出ると、咲紗をバスマットへ下ろす。
その時、何か引っ掛かった。股間にぐいっと食い込む感覚。
「あ!」
「私、向こうを向いていますね」
頬の赤い咲紗は背を向けてじっとしている。
「ぅ、うん」
華奢で小さな身体を拭いていると言われた。
「こんな私でも反応してくださったのですね。独り勃ち、おめでとう御座います」
「有難う御座います……、って、何のお祝い?」




